召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう

文字の大きさ
上 下
149 / 178
第八章

イザヴェルからアースガルズへ

しおりを挟む
 残り八十日。
 アルフェンたちは、アースガルズ王国へ戻ることにした。
 身支度を終え、荷物をマルコシアスの背負う箱に入れる。
 最後の朝食を食べ、出発準備を終えた。
 アルフェンたちは、バーソロミューとユイシスに別れを告げる。

「バーソロミューさん、お世話になりました」
「気にすんな。それより、やることやったらさっさと戻って来な。ここはあんたの領地なんだ……いつまでもあたしが世話できると思ったら大間違いだよ」
「うっ……わ、わかりました」
「ふっ……冗談さね。気を付けてね」
「はい。ありがとうございます」

 アルフェンは、バーソロミューと握手した。
 フェニアたちは、ユイシスに抱きついたり別れの挨拶で盛り上がっている。
 それを見ながらアルフェンは思う。

「…………答え、出なかったな」
「あぁ?」
「あ、いや、別に」
「……変な野郎だ」

 ウィルはフンと鼻を鳴らす。
 気持ちを切り替えるため、アルフェンはウィルに聞いた。

「そういやお前、牧場に行ってたみたいだけど」
「……別に」
「なぁ、何かあったのか?」
「やかましい」

 そう言って、一人外へ。
 別れの挨拶を終えたフェニアたちもその後を追い、アルフェンもユイシスに挨拶して外へ出た。
 外では、フェニアとサフィーが召喚獣たちに言う。

「グリフォン、飛ばし過ぎないように」
「マルコシアスもですよ?」
『キュルル……』
『うぉん』

 アルフェンたちを乗せ、グリフォンは飛び上がる。
 マルコシアスも走り出す。
 アルフェンは、グリフォンの籠から身を乗り出し、バーソロミューたちに手を振った。

「また来ます!! ありがとうございました!!」

 バーソロミューとユイシスは、笑顔で手を振っていた。

 ◇◇◇◇◇◇

 やや飛ばしすぎたものの、アースガルズ王国に到着した。
 S級寮前でグリフォンから降り、荷物を下ろして談話室へ。
 ウィルがお茶を淹れようとすると、アネルが言った。

「わぁ……みんな、いっぱい手紙来てるよ。全員分あるんじゃないかな」
「あ、うちのも!?」
「あんたのはない」
「ぅぅ……」

 レイヴィニアとニスロクを除いた全員に、手紙が届いていた。
 個人宛てに届いたのは、パーティーの誘いやラブレター。全員に共通して届いたのは、S級召喚師を晩餐会に誘いたいという貴族のモノだ。
 サフィーは、いくつかの招待状を見て言う。

「私の家ではない公爵家からのお誘いもきてます……」
「公爵家……行かないとマズい?」
「行かなくていいわ。ってか、そんな場合じゃないでしょ?」

 メルが言うと、全員が頷いた。
 するとアルフェンは、一通の手紙を読んでいた。
 フェニアがこっそり横から見ると……それは、リグヴェータ家の家紋が入っていた。
 アルフェンは、フェニアに言う。

「家に来いだとさ。アースガルズ王国内に別荘買ったから招待するって」
「……行くの?」
「行くわけないだろ。かったるい」
「……おい、これは?」

 ウィルがアルフェン宛ての手紙から取り出した便箋を受け取る。
 そこには『リリーシャ』と書かれていた。どうやらリリーシャからの手紙。
 さっそく開封し、中身を読む……全員が理解した。アルフェンの表情が歪んでいく。

「訓練場に来いだとさ。どうやら、『来るべき日に備えて模擬戦を行う』らしい」
「……お前、殺されるんじゃね?」
「かもな。俺の代わりにニュクスと戦うって言いたいんだろ。ピースメーカー部隊の強さを見せつけて、魔帝討伐の役目を奪うつもりだ」
「……よくわかってるじゃない」

 メルが腕を組み、足を組み換えながら言う。

「まったくもって愚かね。身内同士で……身内なんて言葉使いたくないけど……身内同士で足を引っ張ってどうするのよ。アルフェン、行かなくていい。わたしから抗議」
「いや、行く」
「……え?」
「いくつか試したいことがあるんだ。ニュクスと戦うにはもっと強くなくちゃいけない。相手がいたほうがいい」
「でも、あなた……」
「いいって。せっかくだし、キリアス兄さんにも挨拶してくるよ」

 アルフェンは立ち上がり、部屋へ。
 制服に着替えて戻ると、全員が驚いていた。
 フェニアは驚きつつも言う。

「ちょ、アルフェン…‥い、今行くの?」
「ああ。早い方がいいしな」
「いや、帰ってきて早々ってのも」
「いいだろ別に。ウィル、飯はキリアス兄さんと食べてくるからいらない」
「オレが作る前提なのかよ。まぁいいけどよ」

 それだけ言い、アルフェンは寮を出た。
 ピースメーカー部隊の訓練場は王国郊外。
 歩きながら、右手を開き閉じる。

「……よし」

 イザヴェルで考えた新技を試すチャンス。
 アルフェンは笑みを浮かべ、ピースメーカー部隊の訓練場へ走り出した。

 ◇◇◇◇◇◇

 アルフェンは、一人と一匹でピースメーカー部隊の本部へ向かった。
 一匹というのは、ディメンションスパロウの『くろぴよ』だ。ここに、イザヴェルで買ったお土産などを収納している。
 アースガルズ王国で最も大きな訓練場は、国家予算の十分の一を注ぎこんで作られた、まさに平和のための部隊に相応しい施設だ。
 ここの総責任者であり、ピースメーカー部隊の総隊長がリリーシャだ。
 アルフェンは、入口にある巨大な門を眺めながらつぶやく。

「こんなデカい門、無駄だろ……」
『ぴゅぅるるる』
「ほら、お前は寝てろよ」
『ぴゅいい』

 くろぴよはバスケットの中で寝てしまった。
 アルフェンは門を見上げる……まるで、見せつけるかのような門だ。
 ピースメーカー部隊の紋章が刻まれ、おそらくA級であろう門番が四人もいる。
 アルフェンは、ゆっくりと門に近づき、門兵の一人に手紙を渡す。

「リリーシャに呼ばれてきた。案内してくれ」
「…………」

 門兵は手紙をひったくるようにアルフェンから奪い、中身を確認する。
 そして、フンと鼻を鳴らして言った。

「確認した。案内する」

 案内を買って出たのは、頭髪のないスキンヘッドの男だった。
 門が開き、スキンヘッドの男は無言で歩きだす。
 白い軍服のようなピースメーカー部隊の制服を見ながらアルフェンは言う。

「綺麗な制服だな」
「…………」
「ったく。王国最強の戦力がそんな無愛想でいいのかよ。国と国民を守るためのピースメーカー部隊だろ? ちょっとくらい会話してくれよ」
「…………話す必要はない。リリーシャ様の命令だ」
「命令ねぇ……やれやれ、ヒトは権力を持つと変わるっていうけど、あいつはその典型だなぁ」

 アルフェンは、つまらなそうに吐き捨てる。
 リリーシャは、昔から『強さ』と『権力』に執着していた。それが、こんな形でリリーシャの手に転がり込んできたのだ。
 アースガルズ王国は、騎士団や召喚師団が王国の守護を任されている。だが、徹底した規律を重んじる『軍隊国家』のようなものではない。このピースメーカー部隊は、その軍隊を感じさせる重さがあった。
 恐らく、リリーシャの趣味嗜好だろう。

「なぁ、俺の予想言ってもいい?」
「…………」
「たぶんだけど、リリーシャはこのピースメーカー部隊をアースガルズ王国の主力部隊に据える。んで、リグヴェータ家はダオームに任せて、自分はピースメーカー部隊でその手腕を振るうってところか。辺境伯と王国主力部隊総隊長じゃなぁ。あいつ、土地管理より部隊とかに指揮してる方が楽しそうだしな」
「…………」
「んで、模擬戦と称してご自慢のピースメーカー部隊で俺を潰す。さらに『S級では魔帝を相手にするのに力不足』とか言うんだろ」
「…………」
「あいつ、頭いいけど単純で思考が読みやすいんだよな。すぐ熱くなりそうだし……その辺、ダオームとすっげぇ似てる」
「…………」
「まぁ、模擬戦に俺が来たのはさ、俺も実験したいからなんだ」
「…………?」

 ここで、スキンヘッドの男がわずかにアルフェンを見た。
 
「たぶん。ニュクスと戦うには力や技だけじゃダメだ……俺はもっと、この『力』を理解しないといけない。そのためには、実戦が一番なんだ」

 アルフェンは、右手を開いては閉じる。
 『硬化』と『終焉世界』の先にある『力』に、何かヒントがある。
 ジャガーノートには、まだ隠された能力があるかもしれない。
 そして、敷地内にある大きな『塔』に到着した。
 スキンヘッドの男は、手を掲げる。

「来い、『ジャターユ』」
「おお!」

 スキンヘッドの男が召喚したのは、一言で表すなら『老いた鶴』だった。
 背中が広く、脚は枯れ枝のように細い。
 スキンヘッドの男がジャターユに乗ると、アルフェンに言う。

「乗れ。最上階まで案内する」
「飛行型かぁ……すっごいな」
「早く乗れ」

 アルフェンはジャターユに乗る。
 グリフォン以外の背に乗るのは初めてだった。だが、不思議と心地よい。
 そのまま塔の天辺まで飛び、広い入口に降りる。
 スキンヘッドの男は、そのまま端に移動。入口にいた兵士が巨大な開き戸を開けた。
 開き戸の先は通路になっており、アルフェンは進む。

「凝りすぎだろ……馬鹿じゃねぇの」

 そうつぶやき、通路の最奥へ。
 最奥のドアは自動で開くと、中は広々とした空間だった。
 豪華な絨毯、来客用の高級ソファ、家具や調度品も全て高級品。
 部屋には、十人ほどの男女がいた。
 アルフェンが真っ先に向かったのは、兄キリアスの元だ。

「キリアス兄さん、お久しぶりです」
「お、おま、あ、ああ。うん。いや……その」
「兄さん、お土産を買って来たんです。これを」
『ぴゅいい』

 バスケットを開け、くろぴよの頭を撫でる。
 すると、イザヴェルで買ったお土産の箱が口から出てきた。
 イザヴェルで買ったバターやまんじゅうなど、お菓子ばかりだ。

「今度、兄さんをイザヴェルに招待します。きっと気に入ると思いますよ」
「あ、ああ……すまん、今は」
「え? ……ああ、そうでした」

 この場にいたのは、キリアスだけではない。
 リリーシャは柔らかそうな椅子に座ったまま睨み、ダオームは爆発寸前、アルフェンの両親は何も言えず硬直し、他にも数名のA級召喚士がいた。
 アルフェンは、その全員を眺めながら、右腕を巨大化させた。

「じゃあ───模擬戦、始めるか」

 アルフェンの右目が、この場にいる全員を睨みつけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...