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第四章

魔人保護

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 アルフェンたちは、S級寮でレイヴィニアとニスロクを相手にしていた。
 ガーネットたちは王城へ報告に。ガーネット曰く『S級は益々有名になる。覚悟しておくんだね』とのことだ……正直、アルフェンはどうでもよかった。
 問題は、これから二人がどうするか。
 フェニアは、レイヴィニアに言う。

「これからどうするの……?」
「……うちら、もう用済みだって。魔帝様、完全に力を取り戻したら、自分で魔獣操れるし……うちらの能力、もういらないみたい」
「うぅ~……」

 ニスロクも悲し気だった。
 アネルは、ウィルに言う。

「ウィル、どうする?」
「オレに聞くな。まぁ、魔帝の元に戻っても処分されるだろうな。『色欲』はオレが殺すからともかく、『強欲』の魔人がお前たちを生かしておくとは思えない」
「……うん」

 レイヴィニアは、スッと立ち上がる。

「出てくよ。ベルゼブブはオウガみたいにここに乗り込んでくるほど馬鹿じゃないと思うけど……ここにいたら、人間たちに迷惑かける。最後くらい、綺麗な場所でのんびり過ごしたい。ニスロク……いい?」
「うん。ちび姉についてく。ぼくら、この世界でいろんな色を見れたし、もう満足~」

 ニスロクはにっこり笑った。
 レイヴィニアも笑ったが……とても、悲し気な笑みだった。
 アルフェンは、そんな二人に言う。

「ここにいろよ」
「……え?」
「お前たち、S級に入れよ。召喚士じゃなくて召喚獣だけど……まぁ、特例だ」
「ちょ、アルフェン!?」
「お前たち、身体張ってみんなを守ろうとしたもんな。もう信用できる」
「アタシもそう思う。ウィルは?」
「……好きにしろよ」

 アネルは頷き、振られたウィルも適当に頷く。
 フェニアは驚きこそしたが笑った。

「そうだね……うん。レイヴィニア、ニスロク、ここにいなよ。魔人とか関係ない、一緒にいよう!」
「で、でも……うちらがいたら、フロレンティア姉ぇやベルゼブブが」
「大丈夫。俺らがいる」
「それに、『色欲』が来る。オレがぶっ殺せば『強欲』だけだ」
「……いいのか?」
「ああ。な、みんな」

 アルフェンが言うと、フェニアもウィルもアネルも頷いた。
 レイヴィニアは、輝くような笑みを浮かべる。

「ん、じゃあ……ここにいるぞ!! な、ニスロク!!」
「んん~……眠くなっちゃたぁ」
「寝るな馬鹿!!」

 レイヴィニアは、ソファで丸くなるニスロクの頭をぶっ叩いた。

 ◇◇◇◇◇◇

 その後。
 寮に戻ってきたサフィーとメルは、レイヴィニアたちに正式な挨拶をした。
 そして、レイヴィニアたちはかならず保護するとメルは約束する。
 サフィーは、今度は絶対に戦うと意気込んでいた。

 その後、アルフェンたちS級は正式に『魔人保護』をした。
 様々な意見が出たが、魔人討伐者であるアルフェンたちがそれを望んでいること、二十一人の召喚士の内五人がそれを許可したことで認められた。
 『嫉妬』の魔人レイヴィニアと『怠惰』の魔人ニスロクはS級寮に保護、そこで生活をすることに。
 S級召喚士(ウィル除く)の意向により、ガーネットからこの世界の常識を学んだりすることに。購買までなら外出の許可も出た。
 S級召喚士は、英雄となった。
 二十一人の召喚士ですら討伐できなかった『憤怒』の魔人を討伐したことで、それぞれ勲章が授与され、莫大な報奨金も得た。
 大量の金貨が詰まった樽が寮に届いたときに、アネルは卒倒しフェニアは錯乱しかけた。ウィルは『飲み代ができた』と喜び、サフィーは自室に保管した。
 アルフェンは、可能な限りF級のクラスメイトたちの実家に金貨を送った。自分で持つには大金だし、実家に送るのは死んでもごめんだったからだ。

 それから数日が経過……やはり、『色欲』は来なかった。
 オウガを討伐したこと、そしてレイヴィニアたちが裏切ったことが伝わったのだろう。ウィルの怒りはすさまじく、アルフェンたちが四人がかりでなんとか止めたほどだ。

 S級召喚士は、もはや国になくてはならない存在となった。
 B級の生徒たちも半数ほどがS級召喚士を支持し、買い物中のフェニアたちに媚を売る者まで現れたり、アルフェンやウィルに取り入ろうと近づいてくる者も増えた。
 ウィルの場合、下心丸出しで近づく相手には一切の遠慮がなかったが。

 S級召喚士たちが日常を取り戻すまで、一か月の時間が必要だった。
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