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第二章
召喚獣ヘッズマン
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話し合いが終わり、ウィリアムはS級寮に住むことになった。
制服は数時間後に届き、簡素な家具や着替え、生活に必要な物もすぐに支給された。
ガーネットから入寮の手助けをするようにと言われたアルノーの手際がいいのか、夕方にはウィリアムの入寮が終わる。
アルフェンは、サフィーを呼び改めてウィリアムに挨拶することにした。
ウィリアムは、談話室のソファに座っている。
「あの……その、自己紹介してなかったな」
「…………」
「ごきげんよう。私はサフィア・アイオライトと申します。サフィーって呼んでくださいね」
「俺はアルフェン・リグヴェータ。アルフェンでいい」
「……ウィリアム。お前たちみたいな貴族のボンボンじゃない、ただの平民だ」
ウィリアムは、それだけ言うと黙ってしまう。
アルフェンは、言うべきことだけを言う。
「お前に襲われたことも腹が立つけど……とりあえず、仲間としてよろしく頼む。お前の境遇を聞いて、どうも他人とは思えないからな」
「……お前もか?」
「ああ。失った……大事な仲間をな」
「…………」
「魔人が襲撃してきて、クラスメイトは全員死んだ……俺も半殺しにされて、俺の召喚獣がこの右手をくれた……はは、さっきのお前の話と似てるな」
「……そうかい」
ウィリアムは鼻を鳴らし、被っていた帽子を脱ぐ。
「お前たちに一つだけ言っておく……これから先、『色欲』の魔人が現れたら絶対に手を出すな」
「……仇、ですか?」
「ああ。家族の、妹の、村の仲間の仇だ。あの女……フロレンティアは、オレが殺す」
ウィリアムは左手の人差し指と親指を立てると、鮫肌のような質感に変わり、二の腕部分が翡翠をくっつけたような形に変化した。
「キラキラして綺麗ですね……翡翠、ですか?」
「ああ。ヘンリー……いや、『召喚獣ヘッズマン』っていう。能力は『貫通』……どんな物だろうと、能力を載せた弾丸は全てを貫通する。お前には通用しなかったがな」
「それは、俺の能力と関係あるんだよ」
アルフェンとサフィーはウィリアムの真向かいに座り、それぞれの能力やこれまでの話をした。
意外にも、仲良く話ができた。
そして、三十分ほど話し込むと……ウィリアムが言う。
「そろそろ、腹減ったな……」
「では、夕食にしましょう。ウィリアムさんの歓迎会も兼ねて、盛大に!」
「その料理は俺が作るんだけどな……」
「……料理か」
アルフェンは立ち上がり、エプロンを装備してキッチンへ。
サフィーは超絶不器用でジャガイモ剥きすらできないので、飲み物を準備してもらう。
すると、エプロンを装備したウィリアムがキッチンへ。
「……自分のメシくらい自分で作る」
「いや、歓迎会だし大丈夫だって。休んでろよ」
「いい。それに、料理は嫌いじゃない」
「え……?」
ウィリアムは冷蔵庫の中身をチェックし、使っていい食材をアルフェンに確認。
朝食分の食材を抜いて全ての食材を出すと、包丁を掴んだ。
「久しく包丁を握っていないからな。勘を取り戻させてもらうぜ」
「え、なにそのプロっぽい発言。おい、まさか料理好きなのか?」
「黙ってろ」
そして───アルフェンは見た。
目にも止まらぬ包丁さばきで、肉や野菜がカットされていく瞬間を。
熱した鍋を左手で摑み、肉野菜調味料を入れて豪快に鍋を振るうウィリアムの姿を。
「「…………」」
アルフェンとサフィーはウィリアムに釘付けだった。
上手い───料理のプロがいる。そう感じた。
そして、調理が終わり、テーブルには様々な料理が並ぶ。
「ま、適当な有り合わせの適当料理だ。好きに食え」
「いやお前絶対料理好きだろ!? なんだよさっきの包丁さばきと鍋さばき!?」
「す、すごいです! 食材が踊るように鍋の中で跳ねて……すごいです!」
「いいから食え。冷めるぞ」
「「い、いただきます……」」
二人はさっそく料理に手を伸ばす。
アルフェンは野菜炒めを一口……あまりの美味さに驚いた。今まで食べていた野菜炒めは何だったのかと思えるくらいシャキシャキで、肉はジューシーだった。
「う、うまっ……美味い!!」
「おいしい……素晴らしいです!!」
「ふん……これで手打ちだ」
「え……あ、もしかしてお前、さっきの」
「いいから食え」
ウィリアムは、それ以上何も言わずに食べ始めた。
アルフェンにはわかった。ウィリアムは、城下町の公園で襲い掛かったことを謝っている。料理という形で、アルフェンとサフィーに謝罪したのだ。
「……素直じゃねーの」
「お前、うるさいぞ」
「はいはい」
「アルフェンアルフェン、このお肉すっごくジューシーです!! ウィリアムさん、すごいです!!」
「ああ!! ウィリアム、お前マジですごいな」
すると、ウィリアムは……めんどくさそうに呟いた。
「ウィルでいい」
「「……え?」」
「フン、さっさと食え。片付けはお前らでやれよ」
アルフェンは思う……ウィリアムと、仲良くやれそうだと。
制服は数時間後に届き、簡素な家具や着替え、生活に必要な物もすぐに支給された。
ガーネットから入寮の手助けをするようにと言われたアルノーの手際がいいのか、夕方にはウィリアムの入寮が終わる。
アルフェンは、サフィーを呼び改めてウィリアムに挨拶することにした。
ウィリアムは、談話室のソファに座っている。
「あの……その、自己紹介してなかったな」
「…………」
「ごきげんよう。私はサフィア・アイオライトと申します。サフィーって呼んでくださいね」
「俺はアルフェン・リグヴェータ。アルフェンでいい」
「……ウィリアム。お前たちみたいな貴族のボンボンじゃない、ただの平民だ」
ウィリアムは、それだけ言うと黙ってしまう。
アルフェンは、言うべきことだけを言う。
「お前に襲われたことも腹が立つけど……とりあえず、仲間としてよろしく頼む。お前の境遇を聞いて、どうも他人とは思えないからな」
「……お前もか?」
「ああ。失った……大事な仲間をな」
「…………」
「魔人が襲撃してきて、クラスメイトは全員死んだ……俺も半殺しにされて、俺の召喚獣がこの右手をくれた……はは、さっきのお前の話と似てるな」
「……そうかい」
ウィリアムは鼻を鳴らし、被っていた帽子を脱ぐ。
「お前たちに一つだけ言っておく……これから先、『色欲』の魔人が現れたら絶対に手を出すな」
「……仇、ですか?」
「ああ。家族の、妹の、村の仲間の仇だ。あの女……フロレンティアは、オレが殺す」
ウィリアムは左手の人差し指と親指を立てると、鮫肌のような質感に変わり、二の腕部分が翡翠をくっつけたような形に変化した。
「キラキラして綺麗ですね……翡翠、ですか?」
「ああ。ヘンリー……いや、『召喚獣ヘッズマン』っていう。能力は『貫通』……どんな物だろうと、能力を載せた弾丸は全てを貫通する。お前には通用しなかったがな」
「それは、俺の能力と関係あるんだよ」
アルフェンとサフィーはウィリアムの真向かいに座り、それぞれの能力やこれまでの話をした。
意外にも、仲良く話ができた。
そして、三十分ほど話し込むと……ウィリアムが言う。
「そろそろ、腹減ったな……」
「では、夕食にしましょう。ウィリアムさんの歓迎会も兼ねて、盛大に!」
「その料理は俺が作るんだけどな……」
「……料理か」
アルフェンは立ち上がり、エプロンを装備してキッチンへ。
サフィーは超絶不器用でジャガイモ剥きすらできないので、飲み物を準備してもらう。
すると、エプロンを装備したウィリアムがキッチンへ。
「……自分のメシくらい自分で作る」
「いや、歓迎会だし大丈夫だって。休んでろよ」
「いい。それに、料理は嫌いじゃない」
「え……?」
ウィリアムは冷蔵庫の中身をチェックし、使っていい食材をアルフェンに確認。
朝食分の食材を抜いて全ての食材を出すと、包丁を掴んだ。
「久しく包丁を握っていないからな。勘を取り戻させてもらうぜ」
「え、なにそのプロっぽい発言。おい、まさか料理好きなのか?」
「黙ってろ」
そして───アルフェンは見た。
目にも止まらぬ包丁さばきで、肉や野菜がカットされていく瞬間を。
熱した鍋を左手で摑み、肉野菜調味料を入れて豪快に鍋を振るうウィリアムの姿を。
「「…………」」
アルフェンとサフィーはウィリアムに釘付けだった。
上手い───料理のプロがいる。そう感じた。
そして、調理が終わり、テーブルには様々な料理が並ぶ。
「ま、適当な有り合わせの適当料理だ。好きに食え」
「いやお前絶対料理好きだろ!? なんだよさっきの包丁さばきと鍋さばき!?」
「す、すごいです! 食材が踊るように鍋の中で跳ねて……すごいです!」
「いいから食え。冷めるぞ」
「「い、いただきます……」」
二人はさっそく料理に手を伸ばす。
アルフェンは野菜炒めを一口……あまりの美味さに驚いた。今まで食べていた野菜炒めは何だったのかと思えるくらいシャキシャキで、肉はジューシーだった。
「う、うまっ……美味い!!」
「おいしい……素晴らしいです!!」
「ふん……これで手打ちだ」
「え……あ、もしかしてお前、さっきの」
「いいから食え」
ウィリアムは、それ以上何も言わずに食べ始めた。
アルフェンにはわかった。ウィリアムは、城下町の公園で襲い掛かったことを謝っている。料理という形で、アルフェンとサフィーに謝罪したのだ。
「……素直じゃねーの」
「お前、うるさいぞ」
「はいはい」
「アルフェンアルフェン、このお肉すっごくジューシーです!! ウィリアムさん、すごいです!!」
「ああ!! ウィリアム、お前マジですごいな」
すると、ウィリアムは……めんどくさそうに呟いた。
「ウィルでいい」
「「……え?」」
「フン、さっさと食え。片付けはお前らでやれよ」
アルフェンは思う……ウィリアムと、仲良くやれそうだと。
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