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第六章 蓬雷の国アムルタート
国境の町ウーメへ
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さて、いつも通りに王都を出て、国境の町まで行く。
国境まで乗合馬車が出ていたので迷わず乗ったが、乗ってからエルサに言う。
「そういや、歩かず当たり前のように乗合馬車に乗ったな……以前だったら、普通に徒歩で行ったかも」
「うう、確かに……そ、その、実はウォフマナフに来てから、少し太った気がします」
「え、そうか? 俺はわからないけど……けっこう見てるつもりだけどな」
「れ、レクス!!」
おっと失言……エルサの身体についてアレコレここで言うのはやめておく。
まあ、女の子が太ったって言うならそうなんだろう。
運動したいのなら毎晩付き合うけど……なんてセクハラはしない。
「魔獣との戦闘もゼロ、野営もほとんどしてない、冒険者ギルドで依頼も受けてない、町で美味い物とにかく食べた……ウォフマナフでは芸術鑑賞メインで、とにかく楽で、しかも楽しい旅だったな」
「はい。楽がダメとは言わないけど、もう少し頑張った方がいいかもです」
ファウードさんに報酬もらったおかげで、共用の財布はかなり潤った。
しばらく冒険者やらなくていいけど、それでも少しは働かねば。
「エルサ。アムルタートでは、もう少し冒険しようか」
「はい。そういえば、ファウードさんが『少し危険』って言ってましたね」
「だな……国境の街で少し調べてみるか」
と、乗合馬車は国境の町へ進むのだった。
◇◇◇◇◇◇
国境の町ウーメへ到着した。
ここから、蓬雷の国アムルタートへ行ける。
馬車から降り、すぐに気づいた。
「そういや……雪、消えてるな」
「寒さも感じません。むしろ、温かいです」
『きゅいい』
ムサシも気持ちいいのか、エルサの頭、帽子の上で寝そべっている。
コロンちゃんを召喚すると、気持ちいのか地面にゴロンと寝そべった。エルサはコロンちゃんを抱っこする。
「まず、宿を確保しましょう。それと……少し暑いのでコートを脱ぎたいです」
「だな。いつもの格好に着替えて、アムルタートの情報を得るか」
さっそく、ウーメの中心地へ向かい、宿を発見。
と……俺は、妙な既視感を感じていた。
「レクス?」
「…………あれ、まさかこれって」
アムルタート側に近い宿屋。
俺は、宿屋の形を見て懐かしさを感じた。
「か、瓦屋根? 嘘だろ……異世界に瓦屋根? しかもこの引き戸、障子戸じゃん……え、まさか、もしかして……!?」
宿の入口に入ると、なんと『梅の花』が花瓶に生けてあった。
それだけじゃない。ランプは行燈、扉は障子戸があった。
まさか、アムルタートって。
「アムルタートって、『和』の国なのか!?」
「わ?」
『きゅ?』
『もあ?』
エルサ、ムサシ、コロンちゃんが同時に首を傾げた。
俺は受付へ。そこにたのは、なんと和服を着た時代劇で出てきそうなお姉さんだ。
「おおお……わ、和服!!」
「あら、ワ服をご存じ? ふふ、アムルタートの文化ですのよ」
「おおお……!! あ、あの、一部屋二名でお願いします!!」
「はぁい。じゃあこれ鍵ね」
金属製の鍵を受け取り二階へ。
部屋の前にはなんと、南京錠があった。鍵を開けてドアを開けると、そこは和室……!!
畳敷き、行燈、障子戸、ちゃぶ台、座布団……!! マジかマジか、アムルタートって時代劇みたいな文化の国なのか!? おおおおおお!!
「おおおおおお!!」
「れ、レクス? わあ……不思議な香りがしますね。じゃあ中へ」
「待った!! エルサ、この部屋は土足厳禁。靴を脱ぐんだ!!」
「え、あ、はい……」
靴を脱いで畳の上へ。
畳の感触が素晴らしい。ちゃぶ台の上には和菓子があり、急須と湯呑も置いてあった。湯沸かし器だけは普通の魔道具だが、鉄瓶で湯を沸かすようだ。
「わあ、不思議な床板ですね」
「畳って言うんだ。これはちゃぶ台で、こっちが座布団。この座布団の上に座ってくれ」
「はい……こうですか?」
エルサは女の子座りで座布団へ……かわいい。
さっそく、俺はお湯を沸かす。鉄瓶にエルサに水を入れてもらい、魔道具で湯を沸かす。その間に急須に茶葉を入れ、湯呑を用意。お湯が沸き、そのままお茶を淹れた。
緑茶のかぐわしい香り……うん、いいね。
和菓子は、きんつばみたいなお菓子だった。皿に乗せてエルサに出す。
「これ、なんですか?」
「キンツバだ。このナイフで切って食べるんだ。お茶によく合うぞ」
「きんつば……あむ。あれ、おいしい」
『きゅいい!!』
「はは、ムサシもだな。ほれ、俺のぶん」
俺はムサシにきんつばを食べさせると、美味しいのか部屋の中をビュンビュン飛んだ。
さて、部屋の確認だ。ドアがあったので開けると、立派な檜風呂があった。
「これ……お風呂ですか?」
「ああ。けっこう広いし、二人で入れるな」
「……レクスのえっち」
当たり前のように言ってしまい、俺も照れる……エルサ、嫌とは言わないんだよな。
他にも、行燈を見たり、急須や湯呑を眺めたり、座布団がフカフカでエルサが欲しがったりもした。
和室……やっぱりいいな。生前の俺も、実家の部屋は和室だったし。
「アムルタートの文化も、面白そうですね」
「ああ!! なんか俺……将来はアムルタートに住んでいいかも」
「ふふ、そういえばアムルタートの隣はリューグベルン帝国でしたね。隣同士なら、シャルネやアミュアさんたちも来れるし、いいかもしれませんね」
「うんうん。よし、一息ついたし、街に出てみるか」
さて、アムルタートの情報収集だ。なんだかワクワクしてきたぞ!!
国境まで乗合馬車が出ていたので迷わず乗ったが、乗ってからエルサに言う。
「そういや、歩かず当たり前のように乗合馬車に乗ったな……以前だったら、普通に徒歩で行ったかも」
「うう、確かに……そ、その、実はウォフマナフに来てから、少し太った気がします」
「え、そうか? 俺はわからないけど……けっこう見てるつもりだけどな」
「れ、レクス!!」
おっと失言……エルサの身体についてアレコレここで言うのはやめておく。
まあ、女の子が太ったって言うならそうなんだろう。
運動したいのなら毎晩付き合うけど……なんてセクハラはしない。
「魔獣との戦闘もゼロ、野営もほとんどしてない、冒険者ギルドで依頼も受けてない、町で美味い物とにかく食べた……ウォフマナフでは芸術鑑賞メインで、とにかく楽で、しかも楽しい旅だったな」
「はい。楽がダメとは言わないけど、もう少し頑張った方がいいかもです」
ファウードさんに報酬もらったおかげで、共用の財布はかなり潤った。
しばらく冒険者やらなくていいけど、それでも少しは働かねば。
「エルサ。アムルタートでは、もう少し冒険しようか」
「はい。そういえば、ファウードさんが『少し危険』って言ってましたね」
「だな……国境の街で少し調べてみるか」
と、乗合馬車は国境の町へ進むのだった。
◇◇◇◇◇◇
国境の町ウーメへ到着した。
ここから、蓬雷の国アムルタートへ行ける。
馬車から降り、すぐに気づいた。
「そういや……雪、消えてるな」
「寒さも感じません。むしろ、温かいです」
『きゅいい』
ムサシも気持ちいいのか、エルサの頭、帽子の上で寝そべっている。
コロンちゃんを召喚すると、気持ちいのか地面にゴロンと寝そべった。エルサはコロンちゃんを抱っこする。
「まず、宿を確保しましょう。それと……少し暑いのでコートを脱ぎたいです」
「だな。いつもの格好に着替えて、アムルタートの情報を得るか」
さっそく、ウーメの中心地へ向かい、宿を発見。
と……俺は、妙な既視感を感じていた。
「レクス?」
「…………あれ、まさかこれって」
アムルタート側に近い宿屋。
俺は、宿屋の形を見て懐かしさを感じた。
「か、瓦屋根? 嘘だろ……異世界に瓦屋根? しかもこの引き戸、障子戸じゃん……え、まさか、もしかして……!?」
宿の入口に入ると、なんと『梅の花』が花瓶に生けてあった。
それだけじゃない。ランプは行燈、扉は障子戸があった。
まさか、アムルタートって。
「アムルタートって、『和』の国なのか!?」
「わ?」
『きゅ?』
『もあ?』
エルサ、ムサシ、コロンちゃんが同時に首を傾げた。
俺は受付へ。そこにたのは、なんと和服を着た時代劇で出てきそうなお姉さんだ。
「おおお……わ、和服!!」
「あら、ワ服をご存じ? ふふ、アムルタートの文化ですのよ」
「おおお……!! あ、あの、一部屋二名でお願いします!!」
「はぁい。じゃあこれ鍵ね」
金属製の鍵を受け取り二階へ。
部屋の前にはなんと、南京錠があった。鍵を開けてドアを開けると、そこは和室……!!
畳敷き、行燈、障子戸、ちゃぶ台、座布団……!! マジかマジか、アムルタートって時代劇みたいな文化の国なのか!? おおおおおお!!
「おおおおおお!!」
「れ、レクス? わあ……不思議な香りがしますね。じゃあ中へ」
「待った!! エルサ、この部屋は土足厳禁。靴を脱ぐんだ!!」
「え、あ、はい……」
靴を脱いで畳の上へ。
畳の感触が素晴らしい。ちゃぶ台の上には和菓子があり、急須と湯呑も置いてあった。湯沸かし器だけは普通の魔道具だが、鉄瓶で湯を沸かすようだ。
「わあ、不思議な床板ですね」
「畳って言うんだ。これはちゃぶ台で、こっちが座布団。この座布団の上に座ってくれ」
「はい……こうですか?」
エルサは女の子座りで座布団へ……かわいい。
さっそく、俺はお湯を沸かす。鉄瓶にエルサに水を入れてもらい、魔道具で湯を沸かす。その間に急須に茶葉を入れ、湯呑を用意。お湯が沸き、そのままお茶を淹れた。
緑茶のかぐわしい香り……うん、いいね。
和菓子は、きんつばみたいなお菓子だった。皿に乗せてエルサに出す。
「これ、なんですか?」
「キンツバだ。このナイフで切って食べるんだ。お茶によく合うぞ」
「きんつば……あむ。あれ、おいしい」
『きゅいい!!』
「はは、ムサシもだな。ほれ、俺のぶん」
俺はムサシにきんつばを食べさせると、美味しいのか部屋の中をビュンビュン飛んだ。
さて、部屋の確認だ。ドアがあったので開けると、立派な檜風呂があった。
「これ……お風呂ですか?」
「ああ。けっこう広いし、二人で入れるな」
「……レクスのえっち」
当たり前のように言ってしまい、俺も照れる……エルサ、嫌とは言わないんだよな。
他にも、行燈を見たり、急須や湯呑を眺めたり、座布団がフカフカでエルサが欲しがったりもした。
和室……やっぱりいいな。生前の俺も、実家の部屋は和室だったし。
「アムルタートの文化も、面白そうですね」
「ああ!! なんか俺……将来はアムルタートに住んでいいかも」
「ふふ、そういえばアムルタートの隣はリューグベルン帝国でしたね。隣同士なら、シャルネやアミュアさんたちも来れるし、いいかもしれませんね」
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