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第五章 氷礫の国ウォフマナフ
氷華祭②
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さて、ファウードさんの手伝いを終えた。
大変だった。彫刻の展示場はオークション会場になり、金持ちがファウードさんの氷彫刻にこれでもかと値段を付ける……俺、どうしたらいいのかわからなかった。
でも、シャルネが大活躍。
思った以上に楽しかったのか、ノリノリでオークションの司会を始めたのだ。
オークションが終わり、いろんな金持ちがファウードさんに握手を求め、氷彫刻を買った金持ちに挨拶をし……ファウードさんはようやく、俺とシャルネの元へ。
「いやあ、助かったよ……毎年、オークションみたいな競りになってね、一人でアレコレやるのは大変だが、今回はきみたちがいてくれたから助かったよ」
「いえいえ。あたし、すっごく面白かったです!!」
「俺は疲れた……すっごく目立ってたし」
三人で笑い合い、売約済みの札が掛けられたファウードさんの氷彫刻を眺める。
「今回は自信作だ。それもこれも、すべてきみたちのおかげだ。レクスくん、本当にありがとう」
「いえ。役に立てたのなら。それに、俺も楽しかったです」
「あたしは途中参加だったけど、面白かった~」
「ははは。あれ……エルサさんは?」
「ちょっと絵画物語の物色しに……」
嘘ついてもしょうがないので真実を話す。
「エルサも、この競り見ればよかったのに。すっごく楽しかった」
「ははは。彼女には改めて、お礼を言おう。さて……私はそろそろ城に行くよ」
「城?」
俺が疑問に首を傾げると、シャルネが小突く。
「忘れたの? 氷彫刻は全部で三体。自身の最高傑作をイズベルグ様に見てもらうの」
「あ、そうだった。それ、俺たちも見れるのか?」
「ふふん。こんなこともあろうかと、あたしがイズベルグ様に許可もらったわ。まあ、ドラグネイズ公爵家の名前出せば一発だけど……」
そういうので権力使いたくないな……まあ、いざとなれば使うけど。
というわけで、俺たちも行くか。
「あ、そうだ。ファウードさん、エルサを迎えに行ってきます」
「では、私も一緒に行こう。絵画物語は第二広場だったかな? 通り道だし、少し疲れたから散歩しながら行きたいんだ」
「あはは。じゃあ一緒に」
「お兄ちゃん、あたし喉乾いた。ファウードさんも立ちっぱなしで疲れたでしょ?」
「確かに……では、私が飲み物を奢ろう」
こうして、俺とシャルネとファウードさんは、町をブラつきながら第二広場にいるエルサを迎えに行くのだった。
◇◇◇◇◇◇
「…………」
「「「…………」」」
いた。
即売会みたいな会場で、エルサは一つのブースに張り付き、絵画物語を読んでいた。
そして、本を閉じ頷き、財布からお金を出す。
「新刊、既刊を一冊ずつ」
「ありがとうございます!!」
五冊くらいまとめ買いし、手提げ袋に入れていた。
な、なんか怖いくらい真剣だな……俺もファウードさんもシャルネも声を掛けられん。
「お、お兄ちゃん……この第二広場って、なんか怖い」
「まあ、こんなもんだろ」
「な、何が?」
第二広場は、横長のテーブルがいくつも並び、サークル……じゃなくて絵画物語の作者が本を並べ、手売りをしていた。なんか夏とか冬にやる某イベントみたいな感じがする。
エルサの手提げを見ると、すでに大量の本が入っている。背を向けたので気付いたが、リュックも背負っており、そこにも本がいっぱい入っていた。
エルサ、ガチだな……絵画物語、そんなに気に入ったのか。
「レクスくん、真剣みたいだし、私の出店を見なくても構わないが……」
「いやいやいや、そんなわけにいきませんよ。お世話になった人の真剣勝負が始まるんですよ? ぜひ応援させて欲しいです」
「プロポーズだよね……なんか、あたしも緊張してきた」
エルサを見ると、また別のサークル……もうサークルでいいや、サークルで立ち止まり本を物色する。
なんか永遠に終わらない気がしたので、俺は声をかけた。
「エルサ!!」
「ひゃあ!? あ、あれレクス? シャルネに、ファウードさん!?」
「いっぱい買ったねぇ……エルサ。ね、お兄ちゃん」
「ああ。いっぱい買ったな」
「あ、いえこれはその」
「ははは。いいじゃないか、趣味があるのはいいことだよ」
「あう、あう……」
エルサは真っ赤になり、手提げやカバンをアイテムボックスに収納した。
なんかこれ以上言うのも可哀想なので本題へ。
「エルサ、そろそろファウードさんの発表会が始まる。応援しに行こうぜ」
「あ、そっか!! プロポーズ……!!」
「あ、ああ。はは……緊張してきたよ」
「あ、あたしも緊張してきた。ふう……」
「大丈夫です!! ファウードさん、自分を信じてください。わたしは、応援しています!!」
「……ありがとう」
「よし。じゃあみんなで行きますか」
さあて、目指すはウォフマナフ王城……そこで、イズベルグ様を審査員とした発表会だ!!
大変だった。彫刻の展示場はオークション会場になり、金持ちがファウードさんの氷彫刻にこれでもかと値段を付ける……俺、どうしたらいいのかわからなかった。
でも、シャルネが大活躍。
思った以上に楽しかったのか、ノリノリでオークションの司会を始めたのだ。
オークションが終わり、いろんな金持ちがファウードさんに握手を求め、氷彫刻を買った金持ちに挨拶をし……ファウードさんはようやく、俺とシャルネの元へ。
「いやあ、助かったよ……毎年、オークションみたいな競りになってね、一人でアレコレやるのは大変だが、今回はきみたちがいてくれたから助かったよ」
「いえいえ。あたし、すっごく面白かったです!!」
「俺は疲れた……すっごく目立ってたし」
三人で笑い合い、売約済みの札が掛けられたファウードさんの氷彫刻を眺める。
「今回は自信作だ。それもこれも、すべてきみたちのおかげだ。レクスくん、本当にありがとう」
「いえ。役に立てたのなら。それに、俺も楽しかったです」
「あたしは途中参加だったけど、面白かった~」
「ははは。あれ……エルサさんは?」
「ちょっと絵画物語の物色しに……」
嘘ついてもしょうがないので真実を話す。
「エルサも、この競り見ればよかったのに。すっごく楽しかった」
「ははは。彼女には改めて、お礼を言おう。さて……私はそろそろ城に行くよ」
「城?」
俺が疑問に首を傾げると、シャルネが小突く。
「忘れたの? 氷彫刻は全部で三体。自身の最高傑作をイズベルグ様に見てもらうの」
「あ、そうだった。それ、俺たちも見れるのか?」
「ふふん。こんなこともあろうかと、あたしがイズベルグ様に許可もらったわ。まあ、ドラグネイズ公爵家の名前出せば一発だけど……」
そういうので権力使いたくないな……まあ、いざとなれば使うけど。
というわけで、俺たちも行くか。
「あ、そうだ。ファウードさん、エルサを迎えに行ってきます」
「では、私も一緒に行こう。絵画物語は第二広場だったかな? 通り道だし、少し疲れたから散歩しながら行きたいんだ」
「あはは。じゃあ一緒に」
「お兄ちゃん、あたし喉乾いた。ファウードさんも立ちっぱなしで疲れたでしょ?」
「確かに……では、私が飲み物を奢ろう」
こうして、俺とシャルネとファウードさんは、町をブラつきながら第二広場にいるエルサを迎えに行くのだった。
◇◇◇◇◇◇
「…………」
「「「…………」」」
いた。
即売会みたいな会場で、エルサは一つのブースに張り付き、絵画物語を読んでいた。
そして、本を閉じ頷き、財布からお金を出す。
「新刊、既刊を一冊ずつ」
「ありがとうございます!!」
五冊くらいまとめ買いし、手提げ袋に入れていた。
な、なんか怖いくらい真剣だな……俺もファウードさんもシャルネも声を掛けられん。
「お、お兄ちゃん……この第二広場って、なんか怖い」
「まあ、こんなもんだろ」
「な、何が?」
第二広場は、横長のテーブルがいくつも並び、サークル……じゃなくて絵画物語の作者が本を並べ、手売りをしていた。なんか夏とか冬にやる某イベントみたいな感じがする。
エルサの手提げを見ると、すでに大量の本が入っている。背を向けたので気付いたが、リュックも背負っており、そこにも本がいっぱい入っていた。
エルサ、ガチだな……絵画物語、そんなに気に入ったのか。
「レクスくん、真剣みたいだし、私の出店を見なくても構わないが……」
「いやいやいや、そんなわけにいきませんよ。お世話になった人の真剣勝負が始まるんですよ? ぜひ応援させて欲しいです」
「プロポーズだよね……なんか、あたしも緊張してきた」
エルサを見ると、また別のサークル……もうサークルでいいや、サークルで立ち止まり本を物色する。
なんか永遠に終わらない気がしたので、俺は声をかけた。
「エルサ!!」
「ひゃあ!? あ、あれレクス? シャルネに、ファウードさん!?」
「いっぱい買ったねぇ……エルサ。ね、お兄ちゃん」
「ああ。いっぱい買ったな」
「あ、いえこれはその」
「ははは。いいじゃないか、趣味があるのはいいことだよ」
「あう、あう……」
エルサは真っ赤になり、手提げやカバンをアイテムボックスに収納した。
なんかこれ以上言うのも可哀想なので本題へ。
「エルサ、そろそろファウードさんの発表会が始まる。応援しに行こうぜ」
「あ、そっか!! プロポーズ……!!」
「あ、ああ。はは……緊張してきたよ」
「あ、あたしも緊張してきた。ふう……」
「大丈夫です!! ファウードさん、自分を信じてください。わたしは、応援しています!!」
「……ありがとう」
「よし。じゃあみんなで行きますか」
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