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第五章 氷礫の国ウォフマナフ
文豪の町オセロ
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オスクール街道を通り、文豪の町オセロに到着した。
乗合馬車に乗って半日……あっという間の到着に、思わず俺は言う。
「……魔獣も出ない、道はきれーに除雪されてるから馬車の揺れもない、妙なイベントもないし出会いもない。本当に『パッと』到着しちまった」
なんだろう、この手抜き感というか、物足りなさ。
いつもは妙な出会いやイベントが発生し、厄介ごとに巻き込まれるんだが。
寄り道もない。絶景な景色とか見ることもあるんだが、雪国なので主要街道以外の道はあまり整備されていない。なので、脇道に入ることがあまりないのだ。
町の入口で物足りなさに飢えていると、エルサが言う。
「平和なのはいいことじゃないですか。ね、コロンちゃん」
『もぁぁ~』
『きゅるる』
コロンちゃんがエルサの足元で鳴き、いつの間にか肩にいたムサシもウンウン頷く。
ムサシの戦闘もないし、もっと戦え見たいに言うかと思ったが、ムサシは満足していた。
ファウードさんは「ははは」と笑う。
「以前も言ったが……ウォフマナフは魔獣が少ないんだ。だからこそ、芸術に没頭できる」
「ですよね……」
「ここは文豪の町オセロ。小説家たちが集まる街で、多くの出版社も本社を構えている街さ。街の至るところに本屋があるから、読書好きにはたまらない街でもある……さあ、行こうか」
ファウードさんに案内され、俺たちは街へ。
宿を二部屋取り、さっそくファウードさんは言う。
「私は、作品の資料集めに行ってくる。レクスくん、エルサさんは……そうだな、初めてなら『オセロ大図書館』に行ってみるといい。ウォフマナフで最大の図書館だ、きっと気に入ると思う」
そう言い、ファウードさんは出て行った。
俺はエルサに確認する。
「オセロ大図書館だって。行ってみるか?」
「はい!! 恋愛小説、あるといいな」
「俺は冒険譚のが好きだな。よし、行ってみよう」
俺とエルサは、町の中心地にある『オセロ大図書』に向かうのだった。
◇◇◇◇◇◇
オセロ大図書。
巨大な円柱が何本もまとまって建っている。鉛筆を五本まとめて輪ゴムで縛ったような形って言えばいいのかな……とにかく、円柱が一か所に五本、まとめて立っていた。
すごい作りだ。てっきり、長方形のデカい建物想像していたし。
「すごいですね~」
「ああ、中はどうなってんだ?」
エルサと一緒に中に入ると……やはり、見たまんま。
円柱の壁一面に本棚があり、円柱の中心に螺旋階段があった。
何階建てなのか。十階建てくらいかな。
ああ、だるま落としって言えばいいのか。フロアごとに分かれているみたいだ。
「よし、本……おっと、図書館ではお静かに、だ」
「はい……レクス、何を探しますか?」
「俺、冒険譚。エルサは恋愛?」
「はい。探しに行きましょう」
『もぁぁ~』
エルサは、「コロンちゃん、静かにね」と言って紋章にコロンちゃんを戻す。
俺も、ムサシを紋章に収納……周りを見ると、本を探す人、座って読書する人しかいない。
一階に受付があったので、俺とエルサは聞いてみた。
「あの、恋愛小説と冒険譚を探してるんですけど……」
「恋愛小説は二の塔、冒険譚は四の塔にあります」
ああ、なるほど……五つの塔でジャンル違うのか。
エルサは言う。
「じゃあ、わたしは二の塔に行ってみますね」
「ああ、俺は四の塔に」
「ふふ、なんだか冒険みたいです。じゃあ、後で」
エルサは、一階にある渡り廊下を通って二の塔へ。
ちなみに、今いるのは三の塔。俺はエルサと反対の方に向かい、四の塔へ。
「……間取りは同じか」
中央に螺旋階段、壁は全て本棚。
ここ、冒険譚だけじゃないな。創作系、ファンタジー系の小説がいっぱいある。
「よし。とりあえず、今日は読書して過ごすか……」
さっそく、俺は本棚を漁るのだった。
なんだか平和すぎる。イベントが起きない日常ってのも、ある意味退屈かもしれん。
でもまあ……もうすぐ『氷華祭』が始まるし、今はのんびりさせてもらいますか。
乗合馬車に乗って半日……あっという間の到着に、思わず俺は言う。
「……魔獣も出ない、道はきれーに除雪されてるから馬車の揺れもない、妙なイベントもないし出会いもない。本当に『パッと』到着しちまった」
なんだろう、この手抜き感というか、物足りなさ。
いつもは妙な出会いやイベントが発生し、厄介ごとに巻き込まれるんだが。
寄り道もない。絶景な景色とか見ることもあるんだが、雪国なので主要街道以外の道はあまり整備されていない。なので、脇道に入ることがあまりないのだ。
町の入口で物足りなさに飢えていると、エルサが言う。
「平和なのはいいことじゃないですか。ね、コロンちゃん」
『もぁぁ~』
『きゅるる』
コロンちゃんがエルサの足元で鳴き、いつの間にか肩にいたムサシもウンウン頷く。
ムサシの戦闘もないし、もっと戦え見たいに言うかと思ったが、ムサシは満足していた。
ファウードさんは「ははは」と笑う。
「以前も言ったが……ウォフマナフは魔獣が少ないんだ。だからこそ、芸術に没頭できる」
「ですよね……」
「ここは文豪の町オセロ。小説家たちが集まる街で、多くの出版社も本社を構えている街さ。街の至るところに本屋があるから、読書好きにはたまらない街でもある……さあ、行こうか」
ファウードさんに案内され、俺たちは街へ。
宿を二部屋取り、さっそくファウードさんは言う。
「私は、作品の資料集めに行ってくる。レクスくん、エルサさんは……そうだな、初めてなら『オセロ大図書館』に行ってみるといい。ウォフマナフで最大の図書館だ、きっと気に入ると思う」
そう言い、ファウードさんは出て行った。
俺はエルサに確認する。
「オセロ大図書館だって。行ってみるか?」
「はい!! 恋愛小説、あるといいな」
「俺は冒険譚のが好きだな。よし、行ってみよう」
俺とエルサは、町の中心地にある『オセロ大図書』に向かうのだった。
◇◇◇◇◇◇
オセロ大図書。
巨大な円柱が何本もまとまって建っている。鉛筆を五本まとめて輪ゴムで縛ったような形って言えばいいのかな……とにかく、円柱が一か所に五本、まとめて立っていた。
すごい作りだ。てっきり、長方形のデカい建物想像していたし。
「すごいですね~」
「ああ、中はどうなってんだ?」
エルサと一緒に中に入ると……やはり、見たまんま。
円柱の壁一面に本棚があり、円柱の中心に螺旋階段があった。
何階建てなのか。十階建てくらいかな。
ああ、だるま落としって言えばいいのか。フロアごとに分かれているみたいだ。
「よし、本……おっと、図書館ではお静かに、だ」
「はい……レクス、何を探しますか?」
「俺、冒険譚。エルサは恋愛?」
「はい。探しに行きましょう」
『もぁぁ~』
エルサは、「コロンちゃん、静かにね」と言って紋章にコロンちゃんを戻す。
俺も、ムサシを紋章に収納……周りを見ると、本を探す人、座って読書する人しかいない。
一階に受付があったので、俺とエルサは聞いてみた。
「あの、恋愛小説と冒険譚を探してるんですけど……」
「恋愛小説は二の塔、冒険譚は四の塔にあります」
ああ、なるほど……五つの塔でジャンル違うのか。
エルサは言う。
「じゃあ、わたしは二の塔に行ってみますね」
「ああ、俺は四の塔に」
「ふふ、なんだか冒険みたいです。じゃあ、後で」
エルサは、一階にある渡り廊下を通って二の塔へ。
ちなみに、今いるのは三の塔。俺はエルサと反対の方に向かい、四の塔へ。
「……間取りは同じか」
中央に螺旋階段、壁は全て本棚。
ここ、冒険譚だけじゃないな。創作系、ファンタジー系の小説がいっぱいある。
「よし。とりあえず、今日は読書して過ごすか……」
さっそく、俺は本棚を漁るのだった。
なんだか平和すぎる。イベントが起きない日常ってのも、ある意味退屈かもしれん。
でもまあ……もうすぐ『氷華祭』が始まるし、今はのんびりさせてもらいますか。
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