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第五章 氷礫の国ウォフマナフ
雪国らしい光景
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カフェから出ると、ファウードさんは『部屋で考え事する』と言って帰った。
俺はそのままカフェで熱い紅茶を飲んでいると、どこかほんわりとしたエルサが俺を見つけ、俺の真正面に座ってニコニコする。
「素敵なお話でした……」
「お、おお……そんなによかったのか」
エルサは、吟遊詩人の恋愛歌を聞いたらしい。
悲恋物かと思いきや、最後はハッピーエンドで終わったようで、お客の中には泣いている人もいたようだ。
エルサはニコニコしながら紅茶を注文し、ゆっくり飲む。
「あまりにも素敵で、帽子の中に銀貨入れちゃいました」
高額なおひねりだ。きっと、それくらいよかったのだろう。
俺は本を閉じ、紅茶を飲み終える。
「な、せっかくだし……二人で町を見て回らないか?」
「……あ、それって」
「まあその、うん」
言葉には出さない……照れくさいし。
まあつまり、俺はエルサをデートに誘った。恋人同士だし、それくらいはいいよな。
エルサも察してくれたのか、嬉しそうにほほ笑んだ。
◇◇◇◇◇◇
さて、どこに行くか。
喫茶店を出て、エルサと腕を組んで歩く。
「レクス。ここは吟遊詩人の町ですけど、博物館もあるみたいです」
「博物館? どれ、行ってみるか」
「はい」
エルサの言う『博物館』は、すぐに見つかった。
町の中心広場から案内看板があり、すぐ近くにある大きな建物。
そこは、吟遊詩人の歴史や、初代吟遊詩人の持っていた楽器や装備などが展示されているらしい。
見学は無料なので、さっそく中へ。
「おお、すげえ……」
「歴代の、高名な吟遊詩人たち……ですね」
歴史年表、着ていた服、楽器、詩などが展示されていた。
ケースの中には、ボロボロのリュートが展示してある。
「これ、始まりの吟遊詩人が使っていたリュートみたいだ」
「ボロボロですね……」
「でも、歴史を感じるな。吟遊詩人は、この町から始まったのか……」
年表を読むと、吟遊詩人は世界中にいるが、発祥はこの町らしい。
ここは吟遊詩人にとって故郷であり聖地、か……すごいな。
エルサは、ボロボロのリュートを見ていた。
「リュート……わたしでも弾けるかな」
「お、引いてみたいのか?」
「い、いえ……ちょっとだけ引いてみたいなって。そんなしっかり、がっつりやりたいわけじゃないです」
「ははは、お土産で買うのもいいんじゃないか?」
博物館を出て、俺たちは談笑しながら歩く。
「なんか、芸術を堪能しまくってるなー……厄介ごともないし、とにかく観光万歳だ」
「あはは。確かに……ウォフマナフはいいところですね。コロンちゃんにも出会えたし」
「ああ。とういや、次で最後なのか……」
「最後?」
「ああ。クシャスラ、ハルワタート、アールマティにアシャ、ウォフマナフ。次に行くのは蓬雷の国アムルタート……最後の国だ」
「……旅も終わり、ですか?」
「いや、わからん。まだまだ世界を回りたいし……」
「ですよね……」
エルサは笑った。
でも、これだけは言う。
「エルサ。その……旅が終わるとしても、ずっと一緒にいてくれ」
「……ふふ。プロポーズみたいです」
「あ、いや……その」
恥ずかしいなおい!!
でも……俺は、エルサとずっと一緒にいたい。その気持ちは間違いなくあった。
「あ、明日は文豪の町に行くってさ。今日はゆっくり休もうぜ」
「はい。あの……寒いですし、宿でサウナに行きませんか?」
「行く。あったまろうぜ」
なんだか照れくささを感じつつも、俺はエルサと一緒に腕を組んで歩くのだった。
明日は文豪の町。ここから近いみたいだし、楽しみだ。
俺はそのままカフェで熱い紅茶を飲んでいると、どこかほんわりとしたエルサが俺を見つけ、俺の真正面に座ってニコニコする。
「素敵なお話でした……」
「お、おお……そんなによかったのか」
エルサは、吟遊詩人の恋愛歌を聞いたらしい。
悲恋物かと思いきや、最後はハッピーエンドで終わったようで、お客の中には泣いている人もいたようだ。
エルサはニコニコしながら紅茶を注文し、ゆっくり飲む。
「あまりにも素敵で、帽子の中に銀貨入れちゃいました」
高額なおひねりだ。きっと、それくらいよかったのだろう。
俺は本を閉じ、紅茶を飲み終える。
「な、せっかくだし……二人で町を見て回らないか?」
「……あ、それって」
「まあその、うん」
言葉には出さない……照れくさいし。
まあつまり、俺はエルサをデートに誘った。恋人同士だし、それくらいはいいよな。
エルサも察してくれたのか、嬉しそうにほほ笑んだ。
◇◇◇◇◇◇
さて、どこに行くか。
喫茶店を出て、エルサと腕を組んで歩く。
「レクス。ここは吟遊詩人の町ですけど、博物館もあるみたいです」
「博物館? どれ、行ってみるか」
「はい」
エルサの言う『博物館』は、すぐに見つかった。
町の中心広場から案内看板があり、すぐ近くにある大きな建物。
そこは、吟遊詩人の歴史や、初代吟遊詩人の持っていた楽器や装備などが展示されているらしい。
見学は無料なので、さっそく中へ。
「おお、すげえ……」
「歴代の、高名な吟遊詩人たち……ですね」
歴史年表、着ていた服、楽器、詩などが展示されていた。
ケースの中には、ボロボロのリュートが展示してある。
「これ、始まりの吟遊詩人が使っていたリュートみたいだ」
「ボロボロですね……」
「でも、歴史を感じるな。吟遊詩人は、この町から始まったのか……」
年表を読むと、吟遊詩人は世界中にいるが、発祥はこの町らしい。
ここは吟遊詩人にとって故郷であり聖地、か……すごいな。
エルサは、ボロボロのリュートを見ていた。
「リュート……わたしでも弾けるかな」
「お、引いてみたいのか?」
「い、いえ……ちょっとだけ引いてみたいなって。そんなしっかり、がっつりやりたいわけじゃないです」
「ははは、お土産で買うのもいいんじゃないか?」
博物館を出て、俺たちは談笑しながら歩く。
「なんか、芸術を堪能しまくってるなー……厄介ごともないし、とにかく観光万歳だ」
「あはは。確かに……ウォフマナフはいいところですね。コロンちゃんにも出会えたし」
「ああ。とういや、次で最後なのか……」
「最後?」
「ああ。クシャスラ、ハルワタート、アールマティにアシャ、ウォフマナフ。次に行くのは蓬雷の国アムルタート……最後の国だ」
「……旅も終わり、ですか?」
「いや、わからん。まだまだ世界を回りたいし……」
「ですよね……」
エルサは笑った。
でも、これだけは言う。
「エルサ。その……旅が終わるとしても、ずっと一緒にいてくれ」
「……ふふ。プロポーズみたいです」
「あ、いや……その」
恥ずかしいなおい!!
でも……俺は、エルサとずっと一緒にいたい。その気持ちは間違いなくあった。
「あ、明日は文豪の町に行くってさ。今日はゆっくり休もうぜ」
「はい。あの……寒いですし、宿でサウナに行きませんか?」
「行く。あったまろうぜ」
なんだか照れくささを感じつつも、俺はエルサと一緒に腕を組んで歩くのだった。
明日は文豪の町。ここから近いみたいだし、楽しみだ。
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