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第四章 炎砂の国アシャ

末期魔竜ドゥルジ②

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「ディアブレイズ様、加勢します!!」
「あぁ? お前、レクスか? 久しぶりだなあ!!」

 ディアブレイズ様は、豪華に魔竜の……ホルシードの側頭部をブン殴る。
 俺はムサシに命令する。

「ムサシ、右前足を攻撃!!」
『ガウ!!』

 ムサシは砂地を滑るように移動し、魔竜の右前足を斬り付ける。
 そして、アミュアが叫ぶ。

「アグニベルト、あたしたちは左前足!!」
『ガロロロ!!』

 アグニベルトが身体を丸め、アミュアがジャンプして蹴り飛ばすと、ダンゴムシ……いや、アルマジロみたいに転がるアグニベルトが、魔竜の左前足に直撃した。
 ディアブレイズ様は大笑いする。

「はっはっは!! なんだ、やるじゃねぇか!! おいレクス、お前役立たずで追放されたんじゃねぇのかよ!?」
「まあ、いろいろ事情がありまして!!」

 俺はムサシを使役しながら叫ぶ。
 すると今度は、シャクラとヴァルナが飛び出した。

「レクス、後ろは任せろー!!」
「ああ、頼む!!」

 シャクラは大剣を振り被って魔竜の左後足を斬り、ヴァルナがシャクラの斬った傷に槍を突き刺す。

『『グオオオオオオオオンンンン!!』』

 魔竜が苦しんでいる。
 だが、黒いモヤのようなモノが魔竜を包み込むと、傷が少しずつ回復していく。
 このモヤ……不思議なことに、俺とムサシにしか見えていない。アミュアも、ディアブレイズ様も、俺たちの後ろでどうしていいのかわからずミドガルズオルムの背でワタワタしているヘルも、シャクラも、ヴァルナもだ。
 だが……絶対に言えることは、このモヤは魔竜の味方をしているということ。

「ディアブレイズ様!! 動きを封じますんで、トドメを!!」
「応!! と言いてえが……魔力使いすぎた!!」

 え……な、なに言ってんのこの人。
 アミュアを見ると頭を抱え、シャクラとヴァルナは首を傾げている。
 すると、アミュアが叫ぶ。

「───ヘル!!」
「え、あ、はい!!」
「あんた、まだほとんど魔力使ってないよね!! ドラゴンブレス、できる!?」
「どど、どうやって!?」
「だぁぁァァァァァッ!! ンなもん気合だ!! ミドガルズオルムに命じればいーんだよ!!」
「ひいい!? めめ、命じる、命じる……」

 ヘルはワタワタしながら、自身が座るミドガルズオルムの頭をペしぺし叩く。

「みみ、ミドガルズオルム、ドラゴンブレスだってドラゴンブレス!!」
『……ふぅむ。どうすればいいのかの?』
「ぶわってやるの、ぶわって!! き、気合だって!!」
『……ふうむ』

 断言する。ボケジジイだこのミドガルズオルム。
 アミュアは俺を見て頷く。

「……ムサシ!! 火属性、『羽翼形態』!!」
『がうう!!』

 ムサシは羽翼形態へ変形。
 ディアブレイズ様は言う。

「レクス、やれんのか!?」
「はい!! 今の俺の魔力なら……!!」

 目の前には、黒いモヤを纏う魔竜。四肢をやられ、少しずつ再生を始めている。
 いずれ完全に復活する。でも、今なら。
 すると、ディアブレイズ様はアミュアに叫ぶ。

「アミュア、押すぞ!!」
「押す……あ、はい!!」

 ディアブレイズ様は、なんとか立ち上がろうとする魔竜……ホルシードの頭部へ。
 アミュアは、同じくフシャエータの頭部へ。
 
「吹っ飛べやああああああああああああああ!!」
「アグニベルト、全力全開いいいいいいいい!!」

 ディアブレイズ様の拳、アミュアのアグニベルトによる全力パンチが、魔竜を吹き飛ばす。
 ムサシは一気に上空に飛び、口を開け魔力を集中させた……その時だった。

 ◇◇◇◇◇

『───もらうよ、レクス』

 ◇◇◇◇◇

 何かが聞こえたような気がした瞬間、魔力の八割が消えた。
 そして、上空にいたムサシを見て、俺は目を見開き、何度も擦る。

「え……む、ムサシ?」

 上空にいたのは、火属性の羽翼形態のムサシ……では、なかった。
 巨大な、七枚の翼を持つ、神々しいドラゴン……の、ような。

 ◇◇◇◇◇

『ゴアアアアアアアアア!!』

 ◇◇◇◇◇

 ムサシが火炎を吐くと、地上にいた魔竜の直撃……一気に炎上した。

『『ギャアアアア!! ギャウウウウウウウ!!』』

 魔竜は苦しみ、地面を転がり……身体が崩れ、目の『竜魔玉眼』がころりと落ち、完全に消滅した。
 ディアブレイズ様は近づき、落ちた四つの『竜魔玉眼』を回収。

「……派手な逝きっぷりだったぜ。あばよ」
「「…………」」
「う、うう……わ、私」

 俺とアミュアは黙とう、何もできなかったヘルは居心地悪そうにもじもじしていた。

 ◇◇◇◇◇

 魔竜は消滅した。
 アシャワンもドルグワントの戦士たちも、みな大喜び……今、砂漠と森の戦士たちが手を取り合い、新たな時代が幕を開けたのかおしれない。
 ディアブレイズ様は、俺の元へ。

「お前、最後のなんだ?」
「え……」
「あのブレス。六滅竜に匹敵する魔力が込められていた。だがお前は昏倒もせず、こうして立っている……バルトロメイの奴、なんでお前を追放した? お前……オレんとこ、来るか?」
「い、いえ……俺、もう平民なんで。それに、まだ旅の途中ですし」
「しかしなあ……」
「そ、それに、俺なんかより、ディアブレイズ様の方がすごかったっすよ。めちゃくちゃ強かったです!!」
「お、お? なんだ、わかるじゃねぇか!! はっはっは!!」

 な、なんとか誤魔化せた……のか?
 余計なこと言われる前に退散しようとした時、アミュアがそっと近づいて言う。

「私、町の宿に泊まるから……あとで話、しよ」
「ああ、わかった」
「ここは任せて。ディアブレイズ様は上機嫌だし、離れた方がいいわ。それと……さすがに、虚偽申告するわけにもいかないから、あなたとムサシのことは話しちゃうけど……」
「仕方ない、か……」

 いずれ、こうなる気はしていたしな。
 俺はアミュアに礼を言い、エルサと合流すべく走り出すのだった。
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