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第四章 炎砂の国アシャ

エルサと一緒

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 早朝。
 俺はベッドで目を覚ますと……隣で寝ていたエルサが身じろぎしたのを感じる。
 俺とエルサは恋人同士になった。
 お互い、大事な人と認識してからの行動は早い。エルサは甘え、俺もエルサに甘える。
 部屋も一緒だし、気恥ずかしいけど一緒にいたい気持ちが強い。
 ムサシも「やれやれ……邪魔者は引っ込んでるぜ」と言わんばかりに呼んでも来ないし。
 俺は、静かにベッドから起き、着替えを済ませる。

「……ん、レクス?」
「あ、起こしちゃったか。おはよう」
「はい……あ」

 エルサも急いで着替えをする……もちろん、俺は見ていない。
 恋人同士だが、そういう線引きはしっかりしている。
 互いに顔を見合わせ、なんとなく照れてしまう。

「……えっと、朝飯でも食いに行くか」
「は、はい」
「そのあと、城下町を散策しよう。シャクラに『行くべき場所』をいっぱい聞いたし、まずは観光かな」
「はい。久しぶりに二人ですし、いっぱい楽しみましょうね」
「ああ、そうだな」

 部屋を出て、一階の食堂で朝食。
 ナンみたいに平べったいパンに、肉そぼろ、乾燥野菜などを挟んだ、アシャ王国にしかなさそうなサンドイッチだ。しかも、スパイスがふんだんに使われているので、味が濃い。
 出されたのは、ヤギのミルクみたいな牛乳……けっこう濃い感じ。

「ん~、辛くておいしいですっ!! ミルクも濃厚ですねえ」
「エルサ、こういうの好きそうだよな……」

 エルサはおかわりを注文。
 俺はパンだけおかわりし、ミルクは一杯だけ……そして、宿の人に頼んで瓶に入れてもらう。
 この牛乳、カフェオレの牛乳に合いそうなんだよな。
 朝食を終え、俺とエルサは外へ。

「朝から暑いですね……」
「ああ。まずは、涼しむために『大オアシス』に行こう。ビーチもあるみたいだし、お金払えば泳ぐこともできるみたいだぞ?」
「み、水着ですよね……まだ持ってますけど」
「俺も。あー……恥ずかしいかな?」
「え、ええ。レクスの前でならいいですけど……」

 エルサ、かわいいやつめ。
 とりあえず、泳ぐ泳がないはあとにして、涼むために大オアシスへ向かうことにした。

 ◇◇◇◇◇

 さて、やって来たのはアシャが誇る大オアシス。
 一言で表現するなら、『ハルワタート王国のビーチ、アシャ王国版』だな。言いにくいし意味も伝わりにくいけど、そんな感じだ。
 ヤシの木ではなくサボテンが周囲に生え、タープで日よけを作り、露店では冷えた酒や食べ物などが売っている。
 オアシスでは、水着の人たちが涼んだり、泳いだりしていた。
 
「わぁ~……綺麗ですねぇ」
「海と違うのは透明度と深さかな。沖……って言っていいのかな。オアシスの水は砂地から湧いているみたいだから、深くても二十メートルないくらいらしい」

 と、シャクラが言っていた。猪突猛進タイプのくせに、意外にも知識が深い。
 エルサは、波打ち際まで近づくと素足になり、足を付ける。

「わ、気持ちいいです」
「だな。この暑さに対して、水の温度は低いから最高だ」

 俺は手で掬い、エルサの足に軽くかけた。

「わ、レクス」
「はは、気持ちいいだろ?」
「はい。じゃあレクスも」

 と、エルサが俺のとなりにしゃがみ、手を濡らして俺の頬に触れる。
 冷たい感覚が気持ちいい。思わずエルサの手を掴んで引き寄せる。

「わ……れ、レクス」
「いたずらっ子め。ふふふ、どうしてくれようか」
「うー……どうするんですか?」
「ん~……」

 俺は顔を近づけてみた……すると、エルサは少し照れつつも、顔を近づけてくる。
 そして、俺の頬に軽くキスし、すぐに離れてしまう。

「こ、ここではおしまいです。もう……レクスのばか」
「ははは、ありがとうございます」

 可愛いな……みんな見てるか? エルサ、俺の恋人なんだぜ?

 ◇◇◇◇◇

 さて、オアシスを歩きながら、露店で飲み物を買う。
 果物を凍らせ、薄いレモン水に入れた飲み物だ。酸っぱい味、溶けた果物の甘みが混ざり、なんともいえない美味さとなっている。
 
「おいしい~」
「アシャ王国って美味いモノの宝庫だな」
『きゅいー』

 ムサシは、俺の肩で凍った果物をボリボリ食べていた。さすがに俺とエルサのデートの間ずっと、紋章の中で暇しているのに飽きたらしい。
 
「次は……アシャ本国内にある、アシャワンの神殿かな。いちおう、ドルグワントの神殿もあるけど」
「せっかくなので両方見ましょう!!」
「実は俺もそう考えていた。じゃあ、行きますか」

 というわけで、オアシスを堪能したあとは神殿へ。
 町の西側にアシャワンの神殿、東側にドルグワントの神殿があり、まずは近いアシャワンの神殿へ向かう。
 神殿に到着したが、やはり驚いた。

「すっげえ……デカい石像だな」

 でかい石像……モアイ像みたいなのが神殿を包囲するように立ち、アシャワンの戦士を模した石像が入口にあった。かなり細部の細かい石像で、スマホあれば写真を連射していただろう。
 さっそく中に入ると、大勢の人がいた。

「観光地……だな」
「はい。人でいっぱいです」

 神殿内はかなり広い。
 観光客が大半で、神殿の奥にあるのは巨大な『アシャワンの戦士』だ。自由の女神レベルででかい……近くで見上げると全貌が把握できないので、遠くから眺めることにした。

「アシャワンの戦士か……あれ?」
「……この石像。よく見ると女性ですね」

 それ、俺も今言おうとした。
 巨大なアシャワンの戦士の像は女性だった。しかも、大剣を担いでいる。

「……なんか、シャクラに似ているな」
「ですね。カッコいいです!!」

 シャクラに似た石像、か。
 もしかしたらあいつ、この偉大なるアシャワンの戦士の子孫とか……漫画、ラノベの見過ぎかな。
 一通り神殿を見学し、エルサは『戦士のお守り』を買った。俺も同じのを買い、アイテムボックスに入れておく。なんかペアルックみたいな……恥ずかしいからこれ以上は言わん。

 さて、次はドルグワントの神殿だ。
 町の東側にあり、驚いたことにこっちの神殿は『木製』だ。そして、木彫りの戦士像が神殿を取り囲んでおり、石材で作られているアシャワンの神殿とはまた雰囲気が違う。
 こっちの神殿にも、観光客がいっぱいいた。
 そして……ドルグワントの神殿にいた『ドルグワントの戦士』像も女性。

「……ヴァルナに似ているな」

 ドルグワントの戦士ヴァルナ。
 俺たちを殺そうとしたドルグワントの戦士。正直、もう二度と会いたくない。
 似ている石像、木像か……何か深い意味があるのかな。

「歴史を感じますね……」
「まあ確かに」

 ま、いいか。
 城下町を観光したら次はウォフマナフ国だ。もう、こっちの面倒なイベントは、このあとに来る六滅竜『炎』のディアブレイズ様にお任せすればいいや。
 ウォフマナフ国は雪の国。寒いらしいし、いろいろ準備をしないとな。
 その前に……まずは、エルサと恋人らしくイチャイチャしますかね!!
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