手乗りドラゴンと行く異世界ゆるり旅  落ちこぼれ公爵令息ともふもふ竜の絆の物語

さとう

文字の大きさ
上 下
84 / 129
第四章 炎砂の国アシャ

アシャワンの集落

しおりを挟む
 アシャワンの集落。
 岩を加工した家、砂地の訓練場、でかいオアシス……普通の集落に見えるが、住んでいる人はみんなアシャワンの戦士なのか、恰好がすごい。
 男は上半身裸に腰みので、女性はヤシの実ビキニで下は腰みの。女性の場合、胸を隠すというより『動いて邪魔』というのが本音らしく、隠さずに堂々と晒して歩く人もいるので目のやり場に困る。
 それと、みんな白い刺青みたいなので身体に模様を付けている……文化の違いってすごいな。

「レクス。まずは長に挨拶するぞ!!」
「お、おお……あのさ、今さらだけど、俺たちってこの集落に来てよかったのか?」
「問題ないぞ。アタシと一緒だしな」

 安心していいポイントだろうな。
 フリーナはずっとエルサの袖を掴んで離さないし、エルサは何故かキョロキョロして……あ、あっちで肉焼いてる。なんか香ばしい香りもするし、スパイスみたいなの振りかけてるの見えた。
 シャクラは堂々と歩き出す。

「ヤイサホー!!」
「ヤイサホー!!」
「は?」

 いきなり『ヤイサホー!!』と叫ぶ戦士。意味がわからず首を傾げる俺。
 シャクラも「ヤイサホー」と叫んだ。

「おいシャクラ、今のなんだ?」
「挨拶だ。オマエらだって『こんにちは』って言うだろ」
「あ、ああ……そういうことね」

 文化の違い……まあいい、もう指摘しない。
 それから奥へ進み、一番デカい岩の居住地へ。
 カーテンもなにもないので、シャクラはズカズカ中へ。

「ヤイサホー!! 長、戻ったぞ」
「シャクラか。ふむ、そちらの者は友人だな?」

 長……すっげえ、典型的な『部族の族長』って感じだ。 
 腰みの。上半身裸。骨のアクセサリーで全身を飾り、真っ白い髪に顔を覆う髭。皮膚はたるみ、かなりの高齢だと見てわかる。
 長は、俺たちを見て言う。

「シャクラの友人よ。ワシはアザザイ……アシャワンの戦士にして、アシャワンの長である」
「れ、レクスです……」
「エルサと申します」
「……フリーナ、です」

 アザザイ。すっごい名前だな。
 シャクラは言う。

「長。レクスがフシャエータ様を魔竜とか言ってるんだ。一度確認させてほしい」
「おま、いきなりすぎじゃね!?」

 ツッコむ俺……いや、いきなりすぎでしょ。
 アザザイさんは「ふむ」と言い、俺に言う。

「レクスと言ったな。お主、竜滅士か?」
「……まあ、そんなもんです」
「ほう……では、ホルシードも魔竜と気付いたのか?」
「───……待ってください。ホルシード、も?」

 俺はアザザイさんをまっすぐ見た。すると、アザザイさんは頷く。

「うむ。フシャエータ様は魔竜じゃ」
「……やっぱり」
「な、え、ちょ……お、長!! どういうことだ!!」

 驚くシャクラ。
 アザザイさんは続ける。

「シャクラ。レクスの言う通り、フシャエータ……そして、ホルシードは魔竜じゃ。それもただの魔竜じゃない。『邪竜』の力を得た魔竜じゃよ」

 邪竜? 邪竜ってなんだ?
 アザザイさんは俺を見る。

「レクス。お主……邪竜のことは知っているか?」
「いえ、知りません」
「なら話しておこう。邪竜とは、恐るべき最悪のドラゴン……神に反逆した、神の力を持つドラゴンのこと」
「……聞いたことありません」
「うむ。リューグベルン帝国では現在、復活する邪竜に対抗するため、世界各国から戦士を集めておる。シャクラよ、おぬしも戦士を率いて、リューグベルン帝国に向かうのだ」
「なに? ど、どういう」
「もはや、砂漠の民、森の民と言い争う程度の話ではない。邪竜は世界を破滅させる力を持つ……リューグベルン帝国の『六滅竜』と、世界各国の戦士たちと共に戦うのじゃ」
「ま、待った。世界って、もしかして……」
「当然、ドルグワントも含まれておる。ドルグワントの長も、ワシと同じ態度のようじゃ。間もなく森に戻り、ドルグワントの戦士たちに全てを説明する」
「じゃあ、フシャエータ様は……」
「……アシャ王国にいる竜滅士が援軍を派遣する。六滅竜『炎』のディアブレイズを派遣するそうじゃ」

 ろ、六滅竜『炎』のディアブレイズ……って、アミュアの専属上司で、六滅竜でもかなりの武闘派竜滅士じゃん。何度か会ったけど、マジで怖くてたまらなかった。
 シャクラは叫ぶ。

「フシャエータ様は殺されるのか!?」
「シャクラ……あれはフシャエータ様ではない。望まぬ進化を続けた憐れなドラゴンじゃ」
「う、ぅぅぅ……」

 というか、俺は気付いた……あれ、けっこうヤバいんじゃ。

「あ、あの……実は俺たち、けっこうヤバいかも」
「ぬ? どういうことじゃ?」

 俺は説明した。
 攫われたフリーナ、それを取りかえすためにドルグワントの戦士に喧嘩を売り、ホルシードに喧嘩を売り、森に火を放って逃げ出したこと。

「……なんと」
「す、すみません」
「れ、レクス。攫ったのはあっちだし、生きるためにやったことよ。あ、謝る必要なんてないわ」

 フリーナが、エルサの背に隠れて言う。
 アザザイさんは頷いた。

「うむ。まあ、過ぎたことは仕方ない……今大事なのは、二体の魔竜が、まだ大人しいことじゃ。我々が信仰の対象と見ているせいか、自身を『神』と思っておる。その関係が崩れたらどうなるかわからん……今は一刻も早く、六滅竜を待とう。シャクラよ、お前はアシャ王国に向かい、六滅竜『炎』のディアブレイズを迎えに行け」
「……はい」
「レクスよ、同行を願ってもよいか?」
「わ、わかりました」

 正直、あまり関わりたくない。
 リーンベルはともかく、六滅竜ってみんな曲者ぞろいだし。
 俺が除名されたことは知っているだろうけど……まあ、仕方ないか。

「じゃあ、エルサとフリーナもアシャ王国まで一緒か。それ以降は、お前たちの迎えに任せるしかないけど」
「……そう、ですね」
「……うん」

 二人とも、少し悲しそうだ。
 俺のせいかな……そりゃ、別れたくないけど仕方ない。
 アザザイさんは、手をポンと叩いた。

「さて。今宵は宴にしようかの。シャクラよ、客人たちを宿まで案内しなさい」
「あ、その前に……できれば、フシャエータの確認をさせてください」
「ふむ。では、シャクラ。案内を」
「はい……レクスたち、案内するぞ」

 シャクラも、どこか沈んでいた。
 ずっと信じていたフシャエータが、ただの魔竜と知ったせいか。
 でも……魔竜は危険なんだ。そこだけはわかってほしい。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。