手乗りドラゴンと行く異世界ゆるり旅  落ちこぼれ公爵令息ともふもふ竜の絆の物語

さとう

文字の大きさ
上 下
65 / 129
第四章 炎砂の国アシャ

砂漠への準備

しおりを挟む
 さて、まずは昼飯。
 買い物に時間を割きたかったので、お昼は宿の近くにある飲食店へ。
 レンガ作りでドーム状の、石窯みたいな店に入った。
 ここはアシャ王国で出されるような食事が体験できるらしいが……エルサがヤバかった。

「すごい!! 本当にすごいです!!」
「お、おお……」

 俺たちの前に出されたのは、これでもかとスパイスを振りかけた肉盛合せ。
 しかも……辛い。とにかく辛かった。
 辛い物大好きエルサはもう大変。「アシャ王国、わたし大好きです!!」と行ってもいないのに大好き宣言しちゃった……パンフレットによると、アシャ王国はスパイスの国でもあるらしい。

「なになに……へえ、アシャは香辛料を貿易の材料にしているのか。砂漠でどうやって育ててるんだろ」
「お土産は決まりましたね」

 いや、まあいいけど……エルサ、ほんと辛いの好きだな。
 アシャ王国では、濃い味付けの料理が多いようだ。基本的に水気がないから、料理は『焼き』が基本。魔獣の肉を焼いてスパイスたっぷり振りかけたり、野菜分などは輸入した物を使っているそうだ。
 まあ俺も若いし、肉は好きだし濃い味付けも好きだけど……食物繊維は大事よ。
 というわけで、アイテムボックスには野菜多めに入れておこう。野営では野菜スープは必ず作る。

「よし、メシ食ったし買い物行くか」
「はい。ふふふ、香辛料……」

 エルサが楽しそうで何より……さて、まずは服だな。

 ◇◇◇◇◇◇

 服屋には、風通しのいいマントやターバンみたいなのが売っていた。 
 俺は適当にマントと帽子を買い、適当に合わせてアイテムボックスへ……男の買い物なんてこんなもんだ。
 エルサは、いろいろな刺繍の入ったマントをいくつも見比べて悩んでいた。こういうのは男にはわからん。

「ん~……レクス、どっちがいいと思いますか?」
「どれどれ」

 エルサが悩んでいるのは、涼し気な氷の結晶みたいな刺繍の入ったマントと、冷たげな水の波紋みたいな刺繍のマントだ。どっちも暑い砂漠にはぴったりだろう。
 とまあ……俺の意見としては。

「どっちも買えば? 気分で変えればいいじゃん」
「そういう問題じゃありません。どっちがいいかを聞いてるんです!!」
「は、はい……すみません」

 怒られた。
 な、なんか間違えたな……よし。

「じゃ、じゃあ……そっちの水の波紋みたいなやつ。エルサは水属性だし、ぴったり……かなぁ」
「なるほど。じゃあこっちにしますね!!」

 正解……なのか?
 女の子に似合う服とか選ぶのは、俺にはまだ無理みたいだ。
 一緒に会計に持っていくと、店員さんが言う。

「アシャ王国に入るんですね? だったら、アシャ王国の伝統衣装はいかがです?」
「「伝統衣装?」」
「はい。砂漠のアシャワン部族が着ている衣装ですね」

 と、店員が見せてくれたのは……なんとまあ、すげえ。

「こ、これ……ですか?」
「ええ、これが女性用。こっちが男性用です」

 一言で言うなら、『裸に近い民族衣装』だった。
 男は上半身裸、褌、腰蓑だけ。女は胸を隠すシールみたいなやつ、腰蓑に、骨とかで作ったアクセサリーだ。
 男はまあいい。ってか女の方やべえ……胸を隠すの、ブラジャーみたいなやつじゃなくて、胸にカポッとはめるような、押さえるというかくっつけるような、ヤシの実を半分に割ったような胸当てだ。
 これに腰蓑って……変態だろ。
 なんとなくエルサを見ると、目が合った。

「れ、レクス……これ、着ます?」
「いや無理」
「で、ですよね」

 このヤシの実ブラを付けたエルサを想像……うおぅ、エロい。

「……何か想像しました?」
「滅相もない」

 余計な事言ったら殺されるかも。
 というか、アシャワン部族、みんなこれ着てるのか? 文化が違うのは理解しているが……さすがにこれを着た女性とは顔を合わせにくいぞ。
 とりあえず民族衣装は買わないでマントと帽子を買い、店を出た。
 しばし無言で歩くと、エルサが言う。

「……レクス、あれを着た人、見たいですか?」
「……どんな答えを期待してるんだ」

 とりあえず、もうこの話はおしまいだ!!

 ◇◇◇◇◇◇

 その後、新鮮な野菜をいっぱい買い、野営道具を買い足した。
 砂漠では薪が買えるかわからないので、薪もいっぱい買う。
 水も樽でいくつか買い、旅の資金がかなり減ってしまった。
 
「参ったな……資金がそろそろヤバイぞ」
「ですね。けっこうお買い物したし、アールマティ王国ではあまりお金稼いでないですし……」
「そうだな……国境の町の冒険者ギルドで、アシャ王国に向かう依頼とかあれば受けるか? お金稼ぎつつ、アシャ王国に向かう依頼とかあれば最高だよな」
「あ、確かにいいですね。そろそろ冒険者活動もしたいですし」
「……まだ時間あるな」

 時間的には、夕方前くらいだ。
 冒険者ギルドに顔を出し、依頼掲示板を確認するくらいはできるだろう。
 さっそく、エルサと冒険者ギルドに向かう。
 冒険者ギルドは町の中央にあり、横長のレンガ造りで、どこか砦みたいに見えた。
 さっそく中に入り、依頼掲示板を確認すると。

「あ、レクス。これ見てください……『砂漠行き、隊商護衛』ですって」
「お、どれどれ」

 依頼は、国境の町からアシャ王国に向かう隊商を護衛するという内容だ。
 商人は二人組で、依頼金もけっこう安い。
 向かう先は、国境からオスクール街道を進んだ『アサドの町』だ。

「最初の町に向かう依頼か。ちょうどいいな」
「はい。じゃあ、受けちゃいますか」

 依頼書をはがし受付へ。
 依頼を受け、明日の朝一番にギルドへ来るように言われた。

「よし。じゃあ明日出発だ。準備も終わったし、自由行動にするか?」
「そうしましょう!! ふふふ……わたしは激辛巡りをしてきますので。ではまた!!」

 エルサはギルドを出て行った……速い。
 さて、晩飯はまだ早い。俺はムサシを召喚し肩に載せる。

「さて、少し散歩でもするか」
『きゅるる~』

 明日は砂漠だ。どこか高台にでも登って、砂漠を確認しておこうかな。
 アールマティ王国ともお別れ。砂漠ではどんな出会いがあり、どんな戦いがあるのだろうか。
 俺はワクワクしながら、町を散歩するのだった。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。