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第四章 炎砂の国アシャ
アシャ王国ってどんなところ?
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宿屋『イブラヒムの風』に入り、二部屋取る。
まずはチェックインし、それぞれの部屋へ。
室内は……なんとハンモック。それに椅子もテーブルも岩を削って作った物で、シャワールームにはデカい水瓶が二つ置いてあるだけだった。
どうやら、水浴びが基本らしい。
部屋の確認を終えると、ドアがノックされエルサが入ってきた。
「レクス、いいですか?」
「ああ」
堅い石の椅子に座る。
「シャワー、水瓶だけだったな……」
「たぶんですけど、この国境の町はアシャ王国寄りなので……アシャ王国はシャワーみたいなものはないみたいですし、しっかり慣れろってことだと思います」
「なるほど、そういうことか」
アシャ……なんか、これまでとは違うようだ。
すると、エルサがパンフレットをテーブルに並べる。
「さて。アシャ王国に行く前に復習しましょう!!」
「お、おお……楽しそうだな」
「はい。玄徳さん、愛沙さんに聞いた話では、アシャ王国は砂漠の国らしいです」
玄徳と愛沙はアールマティ王国を拠点としていたから、アシャ王国にはあまり詳しくなかった。
というか、主要なことだけ聞いて、俺たちがあまり聞かなかったこともある。やっぱり、アールマティ王国にいる間は、アールマティ王国に集中したいしな。
なので、アシャ王国は『砂漠の国』ってことしか知らん。
さっそく、俺はパンフレットを手に取る。
「なになに……アシャ王国は砂漠の国。オスクール商会が設置した『砂漠街道』は安心安全……やっぱオスクール街道ってすげえな。砂漠も適応してるのか」
「あれ? ……わ、これって」
「ん、どした?」
エルサがパンフレットを見て驚いている。
そのパンフレットを、俺に見せつけてきた。
「アシャ王国、砂漠の国と思っていましたけど……緑の国でもあるみたいです」
「緑の国?」
パンフレットを受け取ると、そこには『緑の国アシャ、アシャの森は自然の宝庫』とあった。
詳しく読むと……驚いた。
「驚いたな。アシャって砂漠五割、森が五割の国みたいだ」
領地をちょうど半分に割り、半分が砂漠、もう半分が森。二つの中心に大オアシスがあり、オアシスの周りは観光の町になっているようだ。
これは知らなかった。まさか……森の国でもあるとは。
「レクス、森には『ドルグワント』、砂漠には『アシャワン』っていう部族が住んでいるらしいです」
「……まさか、その部族って仲悪いとかないよな」
めちゃくちゃそんな予感がした。
砂漠の部族、森の部族。そして領地の中心にある大オアシス……そこを巡り両部族で争っている!! なーんて妄想をしてしまった。
「さすがにパンフレットには書いてないですね……でも、それぞれ独自の文化を持つようです」
「なあ、アシャ王国ってどこにあるんだ?」
「えーと、領地の中心にある大オアシスのところですね。そこに『大自然の神アルドワヒシュト』を象徴する、アシャ王国で一番大きな石像があるみたいです」
「ふむふむ、大自然の神ね……」
というか、覚えにくい。
アールマティ王国では漢字寄りの名前だったけど、また横文字に戻った感じ。
「えーと、アシャ王国は砂漠と森に分かれて、それぞれ砂漠と森の部族がいる。そして領内の中心に大オアシスがあって、そこがアシャ本国……って感じか」
「そんな感じみたいです」
まあ、そこまで覚えておけばいいか。
すると、エルサは別なパンフレットを出す。
「砂漠を渡るためには準備が必要みたいです」
「なになに……水は当然として、肌の露出を押さえるためにローブが必要なのか。さらに夜はとんでもなく冷えるから分厚いコート……なるほど」
「野営用のテントも、冬用のが好ましいみたいですね」
「確か俺たちのは冬用だったな。テントと寝袋は何とかなるけど、ローブと分厚いコートは買うしかないな」
「オスクール街道は整備されていますけど、それでも砂地を歩くことになるので、専用のブーツも必要みたいですね。それと……ラキューダっていう砂漠の乗り物があればもっといいみたいです」
「さすがに動物の世話は……あ、そうだ」
と、俺はムサシを召喚。寝ていたようだが、俺が突くと欠伸をして起きた。
「ムサシ、寝てるところ悪いけど……お前、俺とエルサを乗せて砂漠歩けるか?」
『きゅ?』
「砂漠。砂地の上を歩くんだ。風属性か地属性の陸走形態で歩いて欲しいんだけど……」
『きゅるる~!! きゅいっ!!』
任せな、ベイビー……と、鳴いたような気がした。
とりあえず、乗り物に関してはいいだろう。
「さて、もうそろそろ昼になるし、外でメシ食ってそのまま買い物行くか」
「はい。砂漠越えの支度ですね」
砂漠かあ……転生して行くことになるなんて、考えもしなかったぜ。
◇◇◇◇◇◇
お昼は、肉料理だった。
というか……イブラヒムの町、肉料理店が大半らしい。
国境が砂漠寄りってのもあるけど、マンガ肉をそのまま出す店って初めて見た。
「反対側の国境では、野菜や果物が多いみたいですよ。あっちは森側の国境ですから」
「極端だなあ」
俺はステーキを切り分け口に入れる。
美味い。塩味が利いてる。
「な、アイテムボックスに野菜いっぱい入れて行こう」
「賛成です。美味しいんですけど……その、太っちゃいそう」
『きゅるるる』
ムサシは肉を豪快に齧って満足そうにしている。
さて、食事しながら買う物の確認だ。
「とりあえず、食材と服がメインかな」
「水は、私が魔法で出せるので。でも、魔力の節約のために、樽でいくつか買った方がいいかも」
「そうだな。なんか、こういう二人だけの会話、久しぶりだ」
「ですね……アシャ王国の次も、その次も……同じような会話をするんでしょうか」
「……かもなあ」
これからも、出会いと別れを繰り返すのだろうか。
俺は、エルサと旅をしているけど……いつまで一緒なのだろうか。
エルサのことは好きだ。でも、アミュアやリーンベルとは違う『好き』なのかどうか、まだわからない。
アミュアとリーンベル。この二人とは一緒に長く過ごしたけど……リーンベルとはそういう関係にはなっていない。まあ、そんなことするつもりはないけど。
「さ、食事がすんだらお買い物に行きましょうか」
「ああ、そうだな」
エルサのこと、もっとちゃんと考えないとな。
まずはチェックインし、それぞれの部屋へ。
室内は……なんとハンモック。それに椅子もテーブルも岩を削って作った物で、シャワールームにはデカい水瓶が二つ置いてあるだけだった。
どうやら、水浴びが基本らしい。
部屋の確認を終えると、ドアがノックされエルサが入ってきた。
「レクス、いいですか?」
「ああ」
堅い石の椅子に座る。
「シャワー、水瓶だけだったな……」
「たぶんですけど、この国境の町はアシャ王国寄りなので……アシャ王国はシャワーみたいなものはないみたいですし、しっかり慣れろってことだと思います」
「なるほど、そういうことか」
アシャ……なんか、これまでとは違うようだ。
すると、エルサがパンフレットをテーブルに並べる。
「さて。アシャ王国に行く前に復習しましょう!!」
「お、おお……楽しそうだな」
「はい。玄徳さん、愛沙さんに聞いた話では、アシャ王国は砂漠の国らしいです」
玄徳と愛沙はアールマティ王国を拠点としていたから、アシャ王国にはあまり詳しくなかった。
というか、主要なことだけ聞いて、俺たちがあまり聞かなかったこともある。やっぱり、アールマティ王国にいる間は、アールマティ王国に集中したいしな。
なので、アシャ王国は『砂漠の国』ってことしか知らん。
さっそく、俺はパンフレットを手に取る。
「なになに……アシャ王国は砂漠の国。オスクール商会が設置した『砂漠街道』は安心安全……やっぱオスクール街道ってすげえな。砂漠も適応してるのか」
「あれ? ……わ、これって」
「ん、どした?」
エルサがパンフレットを見て驚いている。
そのパンフレットを、俺に見せつけてきた。
「アシャ王国、砂漠の国と思っていましたけど……緑の国でもあるみたいです」
「緑の国?」
パンフレットを受け取ると、そこには『緑の国アシャ、アシャの森は自然の宝庫』とあった。
詳しく読むと……驚いた。
「驚いたな。アシャって砂漠五割、森が五割の国みたいだ」
領地をちょうど半分に割り、半分が砂漠、もう半分が森。二つの中心に大オアシスがあり、オアシスの周りは観光の町になっているようだ。
これは知らなかった。まさか……森の国でもあるとは。
「レクス、森には『ドルグワント』、砂漠には『アシャワン』っていう部族が住んでいるらしいです」
「……まさか、その部族って仲悪いとかないよな」
めちゃくちゃそんな予感がした。
砂漠の部族、森の部族。そして領地の中心にある大オアシス……そこを巡り両部族で争っている!! なーんて妄想をしてしまった。
「さすがにパンフレットには書いてないですね……でも、それぞれ独自の文化を持つようです」
「なあ、アシャ王国ってどこにあるんだ?」
「えーと、領地の中心にある大オアシスのところですね。そこに『大自然の神アルドワヒシュト』を象徴する、アシャ王国で一番大きな石像があるみたいです」
「ふむふむ、大自然の神ね……」
というか、覚えにくい。
アールマティ王国では漢字寄りの名前だったけど、また横文字に戻った感じ。
「えーと、アシャ王国は砂漠と森に分かれて、それぞれ砂漠と森の部族がいる。そして領内の中心に大オアシスがあって、そこがアシャ本国……って感じか」
「そんな感じみたいです」
まあ、そこまで覚えておけばいいか。
すると、エルサは別なパンフレットを出す。
「砂漠を渡るためには準備が必要みたいです」
「なになに……水は当然として、肌の露出を押さえるためにローブが必要なのか。さらに夜はとんでもなく冷えるから分厚いコート……なるほど」
「野営用のテントも、冬用のが好ましいみたいですね」
「確か俺たちのは冬用だったな。テントと寝袋は何とかなるけど、ローブと分厚いコートは買うしかないな」
「オスクール街道は整備されていますけど、それでも砂地を歩くことになるので、専用のブーツも必要みたいですね。それと……ラキューダっていう砂漠の乗り物があればもっといいみたいです」
「さすがに動物の世話は……あ、そうだ」
と、俺はムサシを召喚。寝ていたようだが、俺が突くと欠伸をして起きた。
「ムサシ、寝てるところ悪いけど……お前、俺とエルサを乗せて砂漠歩けるか?」
『きゅ?』
「砂漠。砂地の上を歩くんだ。風属性か地属性の陸走形態で歩いて欲しいんだけど……」
『きゅるる~!! きゅいっ!!』
任せな、ベイビー……と、鳴いたような気がした。
とりあえず、乗り物に関してはいいだろう。
「さて、もうそろそろ昼になるし、外でメシ食ってそのまま買い物行くか」
「はい。砂漠越えの支度ですね」
砂漠かあ……転生して行くことになるなんて、考えもしなかったぜ。
◇◇◇◇◇◇
お昼は、肉料理だった。
というか……イブラヒムの町、肉料理店が大半らしい。
国境が砂漠寄りってのもあるけど、マンガ肉をそのまま出す店って初めて見た。
「反対側の国境では、野菜や果物が多いみたいですよ。あっちは森側の国境ですから」
「極端だなあ」
俺はステーキを切り分け口に入れる。
美味い。塩味が利いてる。
「な、アイテムボックスに野菜いっぱい入れて行こう」
「賛成です。美味しいんですけど……その、太っちゃいそう」
『きゅるるる』
ムサシは肉を豪快に齧って満足そうにしている。
さて、食事しながら買う物の確認だ。
「とりあえず、食材と服がメインかな」
「水は、私が魔法で出せるので。でも、魔力の節約のために、樽でいくつか買った方がいいかも」
「そうだな。なんか、こういう二人だけの会話、久しぶりだ」
「ですね……アシャ王国の次も、その次も……同じような会話をするんでしょうか」
「……かもなあ」
これからも、出会いと別れを繰り返すのだろうか。
俺は、エルサと旅をしているけど……いつまで一緒なのだろうか。
エルサのことは好きだ。でも、アミュアやリーンベルとは違う『好き』なのかどうか、まだわからない。
アミュアとリーンベル。この二人とは一緒に長く過ごしたけど……リーンベルとはそういう関係にはなっていない。まあ、そんなことするつもりはないけど。
「さ、食事がすんだらお買い物に行きましょうか」
「ああ、そうだな」
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