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17・愛する仲間と愛する恋人

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 レオンたちが無事にそれぞれの施設に送られ半年が経過した。
 最初は脱走もあったらしいけど、首輪から電流が流れ気絶し、その度に連れ戻されたそうだ。

 それぞれの近況の報告を俺は受けた。

 レオンは、鉱山や炭鉱での発掘作業をしてる。
 仲間の半分が犯罪者で、しかも全員が男。
 レオンは若く、かなりのイケメンなので、男たちからは歓迎されたそうだ。
 仕事は辛く厳しいらしく、最初の3日でレオンは逃げた。
 しかし、首輪が発動してあっさりと捕まる。
 その後、なぜか尻を押さえて仕事をこなすレオンの姿があったそうだ。
 まぁ、何があったかは闇の中だ。知りたくない、尻だけに。

 サテナは、淡々と仕事をこなしてるらしい。
 果樹園の業務に、果実の加工業務。
 従業員は、犯罪者な男女が混合で働いている。
 王国の城下町に、サテナの手掛けたワインや果物が並ぶのも、そう遠い未来じゃない。
 なんだかんだでサテナは目を覚ました。
 ちゃんと罪を償って欲しいと俺は思う。

 ネプチュンは、町の下水処理施設で働いている。
 毎日、鬼のような形相で、町の下水道から流れてくる汚物相手に格闘してる。
 当然ながら一度は脱走し、首輪が発動して気絶。
 不幸なことに気絶した場所が悪かったのか、気を失い汚物の貯まる溜池にドボンしたそうだ。うっげぇ、可哀想。
 
 ウラヌスは、収容所で働いている。
 犯罪者たちの食事を作り、施設の掃除や手入れなどをこなしてる。
 誰とも喋らず、死んだような目で黙々と作業をする姿は、同じ犯罪者たちから見ても異様な姿に見えるらしい。
 
 50年。
 長い処罰は始まったばかり、頑張ってくれ。


 そして俺は、王様からある提案を受けていた。


 ********************


 「魔王領土の調査······ですか?」
 「そうだ」

 魔王討伐が終わり、俺は騎士団で鍛錬しつつ日々を過ごしていた。
 時間が空いた日はルルとデート。
 ふーちゃんたちとケーキを食べたり、ルルとお忍びで町でデートを重ねていた。
 ルルは俺の婚約者ということは、誰もが知ってる。
 王様やお后様も認めてるし、毎日が幸せの日々だ。

 「この半年、魔王領土の調査を行い、魔王領土でしか取れぬ鉱石や薬草、または果実などが豊富に見つかり、これからの人間界の資源になると我々は予想した。だが、危険地帯にはまだまだ多くのモンスターがいる。なので勇者マイトよ、お前に魔王領土の調査の責任者になって貰いたい」
 
 魔王領土の調査か。
 確かに、あそこには変わった果実が多かった。
 ふーちゃんたちなら、食べられるかそうじゃないかの区別も付くだろうし、手伝ってくれるかな。

 「わかりました。謹んでお受けいたします」
 「うむ。それと、魔王領土の拠点は魔王城を使うといい。造りも強固だし、資材はこちらで運んでおこう」
 「······はい。ありがとうございます」

 そっか、じゃあ······暫くルルとはお別れか。
 仕方ないよな。うん、仕方ない······。

 「出発は3日後。それまで支度を整えておけ」
 「はい」


 とりあえず、ふーちゃんたちに同行を頼むか。


 ********************


 『もちろん、ボクも同行しますよ』
 『ああ。この半年、お前には世話になりっぱなしだからな』
 『そうね、借りは返すわ』
 『ぶも』
 「みんな······ありがとう」

 いつもの森の中。ふーちゃんたちに魔王領土の調査の同行を頼んだら、あっさりと承諾した。
 ルルは公務でいない。どうやら俺の出発には間に合わないそうだ。

 「······はぁ」
 『どうしたんですか、マイトさん?』
 『バカね。お姫様が居なくて寂しいんでしょうが』
 「ま、確かにそうだ。あぁ、行く前に会いたいなぁ······」
 『ぶも』

 俺はどんちゃんを抱き締め寂しさを紛らわす。
 プニプニした子豚のどんちゃんは、今日も可愛い。

 『おい、あっち行ったらケーキ食えないのか?』
 「あー······よし、俺が作るよ」
 『え、出来るんですか?』
 「多分。ルルのケーキ作り、よく手伝ってるし」
 『手伝いと作るのは違うんじゃない?』
 「ま、なんとかなるよ」

 魔王城で生活するにあたり、調理師や世話係とかも着いてくる。
 なら、ケーキは最悪その調理師に作ってもらおう。

 「出発は3日後だから。それまでゆっくり休んでね」
 『ははは。ボクたち、ここに来てずっと休んでますよ?』
 「そーいやそうか」


 俺は笑い、ふーちゃんたちも笑った。


 ********************
 

 それから3日後。
 出発の支度を終え、俺は王様に挨拶した。

 「それでは、行って参ります」
 「うむ。気を付けてな」
 「お気を付けて、マイト」

 リリーシャ様は、だいぶ立ち直った。
 最初はレオンのことで落ち込んでいたが、それを忘れようとするかのように、国の公務に打ち込んだ。
 これから先、いい出会いがあればいいな。
  
 結局、ルルには会えなかった。
 公務が忙しいらしく、挨拶も出来なかった。
 
 「······はぁ」

 寂しいぜ。
 俺は専用の馬車を見つけ、近くにふーちゃんたちが居るのを確認する。

 「おはよう、みんな」
 『おはようございます、いい天気ですね』
 『おう、久しぶりの外出だぜ』
 『ぶも』

 みんなに挨拶すると、まるちゃんが言う。

 『さ、馬車に乗って行きましょう。ふふふ······』
 「どうしたのまるちゃん、ご機嫌だね」
 『ま、すぐに分かるわ』
 「へ?」
 『いいから、早く馬車に乗りなさいって』

 まるちゃんに急かされ、馬車のドアを開ける。
 するとそこには。



 「おはようマイト、いい天気ね」



 俺の愛するルルがいた。


 ********************



 「る······ルル?」
 「驚いた? ふふ、サプライズ成功ね」
  
 ルルは俺に抱きつき、俺は強く抱きしめる。
 柔らかく、甘いケーキのような匂い。間違いなくルルだ。

 「お父様にお願いしたの、マイトが行くなら私も行くってね。そうしたら家族のみんなが賛成してくれたわ。ふふふ、これでずっと一緒ね」
 「ま、マジで······⁉」
 「もちろん、大真面目よ?」
 
 マジかよ、こんな嬉しいことはない。
 ルルと一緒。幸せの毎日だ。

 「それに、ふーちゃんたちに美味しいケーキを作らなきゃいけないし、魔王領土にある果物に興味もあるわ」
 『おぉ、これは嬉しいですね』
 『やったぜ‼ これでお姫様のウマいケーキが食えるっ‼』
 『ま、あたしは馬車からお姫様のニオイがしたからわかってたけどね』
 『ぶも』

 ふーちゃんたちも大喜び。
 ま、俺の作るケーキより、ルルのケーキが美味いのは当然だ。


 「ははは······じゃあ、行こうか‼」


 こうして俺たちは魔王領土へ出発した。
 
 勇者として聖なる武具に選ばれ戦った。
 失った物はたくさんあった。
 だけど、手に入れた物もたくさんあった。

 これから魔王領土で、新しい生活が始まる。
 愛するルル、友達のふーちゃん、ながちゃん、まるちゃん、どんちゃん。


 みんながいれば、きっと毎日が輝く。
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みんなの感想(3件)

OTONASYNERGY
2021.04.02 OTONASYNERGY

久々に探したら削除されてて膝をついたけど
あるふぁにあってよかったです……

テンポ感といい人間描写の生臭さといい、名作……
当初予定されていた?
二章『レオンたち脱走、復習してやる編』
三章『魔界領土編』
四章『魔王再び編』 (なろう版一章エピローグのあとがきより参照)

も読んでみたいですが……
二章の途中まではなろうでも読んでましたけど

解除
伊予二名
2020.02.22 伊予二名

魔王さまケジメつけてませんね。

解除
XFOX
2019.04.02 XFOX

裏切り物たちのターンからあっという間に決着がついたw
ダラダラ長引くよりテンポ良くて好きw
ウラヌスの高速掌返しは無効かされてしまった!残念!

解除

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