3 / 17
3・ギンガ王国と王様と修行
しおりを挟むギンガ王国。
それは、人間界最大の王国にして中心の国。
規模はもちろん、住んでる人間の数もハンパじゃない。
当然、この王国の象徴であるお城もメッチャデカい。
「おぉ~~~……」
馬車に揺られながら、俺は城下町を眺めていた。
道行く人はそれぞれが違う顔に格好だし、冒険者や商人、さらには傭兵なんかもいる。
城下に並ぶ家屋も石や煉瓦造りで、村にあった木の造りの家は殆ど無い。
馬車の窓を開けると、村では味わえない都会の香りがする。
「うぅ~~ん。甘い匂い~~」
「ホントだ~~~」
ウラヌスとネプチュンが窓から顔を出して外の空気を……いや、ニオイを嗅ぐ。
確かに。パン屋とかお菓子屋から甘い匂いがする。
「おい見ろマイト、冒険者だぜ!! カッコいい!!」
「ホントだ。すげぇ」
「確かに……憧れるわね」
サテナはウラヌスやネプチュンみたいな女の子趣味より、俺やレオンみたいな男の子趣味に興味を示した。
「そろそろ着く。さぁ、おとなしくしてなさい」
「「「「「は~い」」」」」
窓を閉め、キチンと座る。
大人のカッコいい騎士がいうと、何か違うな。
そして、俺たちを乗せた馬車は王城へ入っていく。
**********************
城下町を抜けた先は森になっていた。
そこを馬車で抜けるとメッチャ広い広場があり、その先に王城がある。
どうやらこの広場は王様の演説があるときに、国民が集まるスペースらしい。
森も広く、川が流れたり小鳥が飛んでいた。
都会もいいけど、俺としてはこういう森の方が落ち着く。
「さぁ着いたぞ。これから陛下に謁見だ。失礼のないように」
「「「「「はい!!」」」」」
俺たちは全員、それぞれの武具を持ち、城の中へ。
城の中に入ると緊張からか無言になる。レオンでさえ黙っていた。
見たことの無いような煌びやかな造りの廊下を進み、案内の騎士とは別の騎士が守る、大きな扉の前に着く。
騎士が扉を開けると、その先の広間……謁見の間に到着した。
俺たちは緊張して立ち止まってしまう。
「近くに寄れ」
固い、岩のような声が聞こえた。
その声の主は、まるで岩のような男だった。
「ほぅ、それが聖なる武具……」
あ、あれが国王か。
服の上からだけど、筋肉がハンパないのがわかる。
ちょっと胸を張れば、着てるシャツのボタンも弾けそうだ。
顔も厳つく、まるで熊みたいだ。
王様の隣には、同い年くらいの少女が2人いた。誰だ?
「緊張せんでよい。さて、まずは自己紹介だな。私はギンガ王国の王、シュバーンだ」
なるべくフレンドリーに話してるんだろうが、それでも怖い。
ニコッと笑ってるんだろうが、ニィィゴォォッ!! って感じだ。
「ひ、ひぃぃ……」
あ、ウラヌスが泣いちまう。
杖を抱えてプルプル震えてる。
「あ、あの王様!! その……こ、この武具って、聖なる武具ですよね、じゃあ俺たち、魔王と戦うんですか!?」
俺は思わず立ち上がって聞いた。
ウラヌスのために、早く終わらせるしかない。
「そうだ。その武具は魔王軍との戦いにおける切り札。キミ達は勇者として、この国で鍛錬を積んでほしい」
王様の話は、村で聞いた話と一緒だった。
魔王の復活により、モンスターが頻繁に現れ始めたこと。
そして、これから5年間ギンガ王国で鍛錬を積んで武具を使いこなす。
そして、17歳になったら魔王討伐の旅に出る。
「我がギンガ王国の軍勢が、人間界と魔王領土の境界を守護してる。魔王は復活したばかりで力が弱いが、聖なる武具が無ければ封印出来ない。なので5年キミ達の鍛錬に当て、それから魔王討伐に出て貰う」
5年。その間はギンガ王国の軍がモンスターから国境を守る。
魔王も復活したばかりで弱ってるが、目覚めたばかりの聖なる武具も同じ。
5年では魔王の力は完全にはならない、だが俺たちは5年あれば武具を使いこなせるということか。
すると王様は、隣にいた少女たちを紹介してくれた。
「おぉそうだ、紹介しよう。私の娘のリリーシャとルルーシェだ。年も近いし、良き友人となってくれ」
やっぱお姫様だったか。
金髪のルルーシェ様に銀髪のリリーシャ様。どっちもスゴい美少女だ。
顔立ちも似てるし、双子かな?
「初めまして勇者さま。私はリリーシャと申します」
「私はルルーシェです。どうぞよろしく」
2人は立ち上がり、ドレスをチョコンとつまむ。
気品もあるし、お姫様なんだなぁ。
「さて、長旅で疲れただろう。今日はゆっくり休むがいい」
こうして、俺たちの王城生活が始まった。
**********************
学ぶことはたくさんある。
まずは、それぞれの武具の特性を理解すること、そして身体を鍛えることから始まった。
俺の武具は盾と一体型の籠手(ガントレット)。不思議とサイズはピッタリで、12歳の子供の手にもフィットした。
武具にはそれぞれ役割が有り、レオンの聖剣が前衛、サテナの太刀が中衛、ネプチュンとウラヌスが後衛で、俺は全体の守護とサポートに長けている。
俺の武具、『聖盾パンドラ』の能力は守護。
5つの武具には特殊な能力が3つ備わっている。
俺の盾の能力は、各種領域展開・感知・絶対防御の3つだ。
『各種領域展開』は、いろいろなフィールドを出せる。
遮音フィールドだったり、認識阻害フィールド、当然ながら防御フィールドなど。
『感知』は盾に付属する常時発動型能力で、様々な気配を感知する。集中すれば小石の落ちる音や、水滴の落ちる音も聞こえる。
そして最後……『絶対防御』は、究極の防御フィールド。
どんな攻撃も防げるが、1度使うと24時間は全ての盾の機能が停止する。
俺の訓練は攻撃を見切る訓練と近接の回避訓練、様々な武器を盾で受け流すのが主だった。
一応、剣術の訓練も受けたけど、そこらの一般騎士レベルまでしか使えなかった。まぁそれでもかなり強いんだろうけど。
だけど、盾の扱いは誰にも負けない自信がある。
一般騎士レベルの剣なら、3人相手でも捌けるぜ。
そして、俺たちが城で生活を始めて2年が経過した。
1
お気に入りに追加
389
あなたにおすすめの小説
勇者、追放される ~仲間がクズばかりだったので、魔王とお茶してのんびり過ごす。戻ってこいと言われても断固拒否。~
秋鷺 照
ファンタジー
強すぎて勇者になってしまったレッグは、パーティーを追放され、一人で魔王城へ行く。美味しいと噂の、魔族領の茶を飲むために!(ちゃんと人類も守る)
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載。
愛しい彼女に浮気され、絶望で川に飛び込んだ俺~死に損なった時に初めて激しい怒りが込み上げて来た~
こまの ととと
恋愛
休日の土曜日、高岡悠は前々から楽しみにしていた恋人である水木桃子とのデートを突然キャンセルされる。
仕方なく街中を歩いていた時、ホテルから出て来る一組のカップルを発見。その片方は最愛の彼女、桃子だった。
問い詰めるも悪びれる事なく別れを告げ、浮気相手と一緒に街中へと消えて行く。
人生を掛けて愛すると誓った相手に裏切られ、絶望した悠は橋の上から川へと身投げするが、助かってしまう。
その時になり、何故自分がこれ程苦しい思いをしてあの二人は幸せなんだと激しい怒りを燃やす。
復讐を決意した悠は二人を追い込む為に人鬼へと変貌する。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。
隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。
婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。
しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……
悲しいことがあった。そんなときに3年間続いていた彼女を寝取られた。僕はもう何を信じたらいいのか分からなくなってしまいそうだ。
ねんごろ
恋愛
大学生の主人公の両親と兄弟が交通事故で亡くなった。電話で死を知らされても、主人公には実感がわかない。3日が過ぎ、やっと現実を受け入れ始める。家族の追悼や手続きに追われる中で、日常生活にも少しずつ戻っていく。大切な家族を失った主人公は、今までの大学生活を後悔し、人生の有限性と無常性を自覚するようになる。そんな折、久しぶりに連絡をとった恋人の部屋を心配して訪ねてみると、そこには予期せぬ光景が待っていた。家族の死に直面し、人生の意味を問い直す青年の姿が描かれる。
彼女の浮気相手からNTRビデオレターが送られてきたから全力で反撃しますが、今さら許してくれと言われてももう遅い
うぱー
恋愛
彼女の浮気相手からハメ撮りを送られてきたことにより、浮気されていた事実を知る。
浮気相手はサークルの女性にモテまくりの先輩だった。
裏切られていた悲しみと憎しみを糧に社会的制裁を徹底的に加えて復讐することを誓う。
■一行あらすじ
浮気相手と彼女を地獄に落とすために頑張る話です(●´艸`)ィヒヒ
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる