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新たな開拓

第653話、まずはどんな種族か③

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 さて、本日は白猫族、幽鬼族に会いに行く。
 お供はディアーナ、ミュアちゃん、黒髑髏エルダーリッチのワイトさん、護衛のグラッドさん、そしてミュディの六人だ。
 白猫族に興味を持ったミュアちゃん、そして幽鬼族と交流経験のあるワイトさんが同行してくれる。ミュディはたまたま休みで、誘ったら一緒に行くことになった。
 白猫族の住処までは、ハイエルフの里から歩いて四日ほどの距離だ。なので、まずはセンティを連れてハイエルフの里まで転移し、そこからセンティに乗って移動する。

『久しぶりのお出かけ、楽しみやで』
「センティ、頼むな」
『お任せを!!』

 というわけで、転移。
 ハイエルフの里近くに転移し、センティに乗る。

「では、アシュト村長。お願いします」
「はいよ」

 白猫族の住処までは、俺の出番。
 杖を抜き、『緑龍の知識書ムルシエラゴ・グリモワール』を開く。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 〇植物魔法・案内
道案内の綿毛ガイダンスポポ

 ふわっと綿毛が道案内。
 行きたい場所をお願いしよう!
 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「記せ我が道。風に乗って飛んで行け、『道案内の綿毛ガイダンスポポ』」

 呪文を唱えると、杖から種がぽとっと落ち、一気に成長する。
 ギザギザした緑色の葉っぱ、太い茎、そして蕾に咲くのは綿毛だ。

「にゃあ、ふわふわー」
「ふふ、そうだね」

 ミュディはミュアちゃんを抱っこしている。
 その後ろで、ワイトさんが骨をカタカタ鳴らしていた。

『ハハハ、コレは面白いですナ!!』
「ひっ……そ、そうですね」

 まだワイトさんが怖いのか、ミュディがビクッと震えた。
 ディアーナは眼鏡をくいっと上げて俺に言う。

「では村長」
「ああ。じゃあ……白猫族の住処へ」
 
 綿毛にそう命じると、一本の綿毛が俺の声に反応して抜けて飛んだ。
 センティが、それを追ってゆっくり走り出す。

「あとは着いて行くだけだな」
「にゃあうー」
「けっこうゆっくりだし、のんびり行けそうだね」

 さて、白猫族……どんな種族かな?

 ◇◇◇◇◇
 
 さすがセンティ。四日の道を、半日で進んだ……というか、綿毛の飛ぶ速度もかなり早かった。
 いきなりセンティで行くと驚かれるので、住処の近い場所で降りる。
 ここまで来たら、あとはディアーナの案内で進める。ディアーナ、何度か来たことがあるようだ。
 全員で、住処まで歩く……ミュディが気付いた。

「そういえば、道があるね」
「白猫族の通り道なのかもな」
「その通りです。白猫族は、この辺りの木の実や果実を採取したり、近くに小さな畑を作って生活しています。力が弱いので、狩りなどは不得手のようですが……」
「なるほど……」
「にゃうー」

 ミュアちゃんと手をつないで歩く。
 すると、クイクイと袖を引かれた。

「おい、あっちから匂いするぞ」
「あっち? ディアーナ、向こうだって」
「えっと……そうですね、あっち……ん?」
「え?」

 と、聞き覚えのある声。
 俺は隣を見ると……なんと、ルミナがいた。

「お、お前、いつの間に!?」
「みゃう。あたいをのけ者にするなんて許さないからな」
「お、お前な……まぁ、いつのもことか」
「にゃあ。ルミナ、いつの間にー」
「……オレも気付きませんでした」

 グラッドさんも気付かなかったようだ。
 ミュディはルミナの頭を撫でようとしたが、ススッと躱された。どうやらシオンがいないとお触りはダメなようだ。残念。
 ディアーナが咳払いし、再び歩きだす。
 そのまま三十分ほど進むと、見えてきた。

「到着です。ここが、白猫族の住処ですね」

 ようやく到着した。
 粗末な掘っ立て小屋がいくつかあり、小さな泉が中央にある。
 そして、いた。

「おお、あれが白猫族……」
「あ、あの……どちら様でしょうか」

 住処の入口にいたのは、男性だ。
 痩せているし、着ている服も布の継ぎ合わせたものだ。
 裕福ではないのだろう。
 ディアーナが男性に話をすると、男性は何度も頭を下げ、長を呼びに行った。
 一分もせず、長が来た……けど、若いな。

「これはこれは。緑龍の村からわざわざ……ありがとうございます」
「初めまして。緑龍の村の村長、アシュトです」
「初めまして。集落の長、白猫族のハルベと申します」

 ハルベさん。
 白猫族の特徴は、真っ白な髪、真っ白な肌、真紅の瞳だ。そして長い白猫尻尾に、ミュアちゃんやルミナみたいなネコミミ。ネコミミも真っ白だ。
 ハルベさん、長って割には若い。どう見ても二十代後半くらいだ。
 よく見ると、周りの人たちも若い。十代後半~二十代後半くらいの白猫族が、三十人くらいいる。

「白猫族は、その……力も弱く、狩りもできません。僅かな畑を耕し、木の実や果実を採取して生活しています。そんな時、噂を聞きまして……緑龍の村は、様々な種族を受け入れている、と。ですが……我々は、エルダードワーフやハイエルフのように、何かが得意というわけではないので……それぞれの種族の、お手伝い程度しかできないと思います……その、それでもよろしければ、移住の許可を」

 当然だが、何もできないからと言って『ダメ』とは言わない。
 今回来たのにはちゃんと理由がある。

「ハルベさん。今回、俺たちが来たのは確認のためなんです」
「確認、ですか?」

 俺は、緑龍の村近くに『新しい村』を作る話をした。
 新しい村に、巨人族、小人族、幽鬼族を受け入れるという話もする。

「なるほど……我々としては問題ありません」
「当然ですが、生活が安定するまでは、緑龍の村から支援を行います。何人かは緑龍の村に住んでいただくことにもなると思います」

 もちろん、巨人族と小人族から、代表者が先行して村に住んでもらっている。
 新しい村を作るために、いろいろ話し合いしなくちゃいけないからな。
 ハルベさんは頷く。

「わかりました。全てお任せします。移住の件、よろしくお願いします」
「はい、お任せください……ん?」

 と、ここで気付いた。
 俺の袖を掴む小さな手。そちらを見ると、可愛らしいネコミミ少女が俺を見上げていた。

「ふにゃ……」
「えっと…‥きみは?」
「ふにゃあ」

 少女は俺の手をギュッと掴み、きゅっと抱きついて頭をグリグリ押し付ける。
 なんだなんだ。一体どうした。

「にゃあ!! しろねこ」
「みゃう……なんだこいつ」
「ふにゃー」

 ミュアちゃんとルミナが近づくと、白猫少女は俺の背中によじ登る。
 ハルベさんが慌てた。

「こ、こらシロネ、やめなさい」
「ふにゃ」
「も、申し訳ございません。この子はまだ幼くて……こら、シロネ」
「ふにゃあ」

 ハルベさんが少女を引きはがそうとしたが、少女は抵抗する。
 するとミュディがハルベさんを止め、そっと頭を撫でる。

「こんにちは。シロネちゃん」
「ふにゃ……」
「ふふ、かわいい。ね、わたしのところに来ない?」
「……ふにゃ」

 少女は俺の背中からミュディの胸に移動した。
 そのまま抱きしめ、頭を撫でたりしているとスピスピと眠ってしまう。

「も、申し訳ございません……ちょうど、この子の両親が畑に出向いているようで」
「あの、この子……いくつですか?」
「まだ五歳です。言葉は覚えているんですが、どうも人見知りがあって……同族にも、なかなか心を開かなくて」

 正直、めちゃくちゃカワイイ。
 真っ白な髪と肌、赤い瞳に、サラサラストレートのロングヘア。ミュディの胸に甘える姿は子供にしか見えない。ミュディは母親のように、シロネちゃんの頭を撫でた。

「にゃあ。かわいい……」
「みゃう……」
「ふふ、撫でてみる?」

 ミュアちゃんとルミナが、シロネちゃんの頭を撫でた。
 せっかくだ。提案してみるか。

「ハルベさん。緑龍の村に先行して来てもらう人……シロネちゃんの家族でもいいですか?」
「……え?」
「見たところ、ここで一番若いのはシロネちゃんですよね。うちのミュアちゃんたちともいい友達になれそうですし……」
「……わかりました。この子の両親が戻ったら説明しましょう」
「では、新しい村に付いては、私から説明します。それと……今夜、幽鬼族の方と話し合いをしますので、それまでここに滞在してよろしいでしょうか?」

 ディアーナが言うと、ハルベさんは「もちろんです」と言う。
 さて、俺もシロネちゃんのところに行こうかな。

「ふにゃ」
「ん~かわいい。アシュト、この子すごくカワイイよ!!」

 ミュディが興奮してる……まぁ、確かに可愛いけどな。
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