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秋の訪れ

第603話、お月見ルミナ

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 ある日、ルミナがかなり不機嫌だった。
 薬院で仕事中、いつもは俺の手伝いをしてくれるんだけど……今日は一切俺に話しかけず、ココロの手伝いをしていた。うむむ、なんだかいつにも増して不機嫌だな。
 ココロは、こっそり俺に言う。

「先生、なんだかルミナが不機嫌です」
「俺も思った……こういう時、いつも俺が撫でると機嫌を直すんだけど、今日は俺にも近づいてこない」
「じゃあ、先生が何かやっちゃったんですか?」
「お、俺?」

 俺が何かをやった……?
 うーん。全く心当たりがないぞ。
 ルミナに近づくと、スイっと離れてしまう。
 ネコミミも、片方だけ萎れている……不機嫌の証だな。 
 
「先生、痛い~!」
「あ、ごめん。すぐ治療するから」

 俺は、製糸場で指を切った天使族の少女に薬を塗る。
 とりあえず、今はルミナのことは置いて、仕事をしなきゃ。
 天使族の子を治療していると、鍛冶場で火傷をした悪魔族の青年と、採掘場で爪の欠けたブラックモールのポンタさんがやってきた。

「いたたた……すみません、やっちゃいました」
「痛いんだな、痛いんだな~!」
「はいはーい。ルミナ、ポンタさんの治療を頼む。ココロは火傷の治療を」
「……ん」
「はい!」

 ルミナはポンタさんの手を取り、ココロは火傷軟膏を手に取る。

「爪、欠けてる……このままだとさらに割れちゃうから、少し削って形を整える。痛みは、痛み止めを出す」
「うう、ブラックモールなのに爪が欠けるなんて不覚なんだな……」

 落ち込みポンタさんも可愛いな。じゃなくて……診断は正確だ。
 ココロも、火傷部分を洗浄して軟膏を塗り、包帯を巻いているし。
 俺も天使族の子の治療を終えた。二人を手伝おうかと思ったけど、すでに処置は終わっていた。
 全員帰り、今日の仕事も終わった。
 後片付けと掃除をしていると、ココロが俺の傍へ。

「先生、ルミナのこと」
「わかってる」

 俺は机を拭いているルミナへ近寄るが、すいっと回避されてしまう。
 頭をなでなでしようと手を伸ばすが……またしても躱された。
 こりゃマジで俺が原因っぽいぞ。

「な、ルミナ」
「…………」

 こっちを見たけど、ネコミミが片方だけ萎れている。
 こうなったら、ずばり聞いてみるか。

「ルミナ、その……何かあったのか?」
「…………」
「俺、何かしたか? 何か気に障ることがあったなら教えてほしい」
「…………」
「今日はまだ、ルミナを撫でてないんだ。なでなでさせてほしいな」
「…………」

 ルミナはムスッとしたまま、薬院から出て行った。

 ◇◇◇◇◇◇

 こういう時は、誰かに相談だ。

「ふーん」
「なるほどね……」

 リビングルームでドラゴンチェスをしていたエルミナ、ローレライに相談した。
 ローレライは、『ワイバーン』の駒を弄びながら言う。

「ルミナが不機嫌になったの、つい最近のことなんでしょう?」
「ああ」
「なら、その辺りに原因がありそうね」

 ローレライがそう言うと、エルミナは『リザード』の駒を動かす。

「まったく、私の妹を悲しませたら許さないからね……これでどう?」
「ふふ、いい手ね」

 エルミナ、ルミナが一字違いだからって妹みたいに思ってるんだよな。
 でも、触るのを許されているのはローレライだ。エルミナが触ろうとするとルミナは思いっきり抵抗して暴れる。
 ローレライは、「リヴァイアサン」の駒を動かし、エルミナの「リザード」を取る。

「あぁ!?」
「ね、アシュト。最近何があった?」
「最近? ん~……芋煮会だろ」
「芋煮会、ルミナが不機嫌になるようなことあった?」
「こっちの駒がこう来て、こっちがこう……ん~~~~、これ!!」
「いや、特にないと思う。ルミナも芋煮を美味しそうに食べてたし」
「なら、その次は?」
「その次?」
「ええ。何かイベントあった?……ドラゴンチェックメイト」
「げっ!? ま、待った、ローレライ待った!!」
「うーん……妖狐族の……あ」
「ふふ、何か思い出した?」
「ああ、もしかしたらだけど」
「ローレライ、待った!! 待った、待った!!」
「駄目。じゃあアシュト、行ってあげなさい」
「ああ。ありがとう、ローレライ」
「ぐぁぁぁぁ!! ローレライ、もう一回!!」

 エルミナは盤面をぐちゃぐちゃにし、ローレライはにっこり笑顔で手を振った。

 ◇◇◇◇◇◇

 えー……ルミナがいません。
 いつもは俺の部屋で寝てるんだけど、今日はいない。
 新しくできたルミナの部屋にもいない。コタツをめくってもいない。
 
「どこ行ったんだ……?」

 翌日。
 今日のルミナはお休み。俺とココロだけで仕事をしている。
 朝、少しだけ探したけどいなかった……うーん、参ったな。
 考え事をしていたせいで、積んでいた本を崩してしまった。
 床に本が散らばり、俺とココロで拾う。

「先生、大丈夫ですか?」
「ん、ああ……ごめん」
「ルミナの事ですか?」
「ああ。不機嫌の原因がなんとなくわかった」

 と、薬院のドアが開き、シエラ様が入ってきた。

「やっほ~♪」
「シエラ様、怪我……なわけないか。どうしたんですか?」
「ふふ、クリがいっぱいあるからお裾分け~」

 シエラ様は、クリの入った袋を俺に渡す。 
 村にもクリの木はあるけど、収穫量があまり多くない。
 
「ふふ、クリの木の群生地で拾ってきたの。クリごはん、美味しいわよ~?」
「クリご飯……美味そうな響き」
「ふふ。ココロちゃんも食べてね」
「は、はい」

 あ、そうだ。シエラ様なら知ってるかも。

「あの、シエラ様。ルミナを見ませんでしたか?」
「ルミナちゃん? あの子なら、薬院の屋根の上でお昼寝してたわよ~?」
「この上!? き、気付かなかった……」

 まさかの屋根。
 外に出て屋根を見上げると……いた。身体を丸めて昼寝してる。
 ネコミミは……うーん、まだ片方だけ萎れている。
 
「おーい。ルミナ」
「……」

 お、片目だけ開けて俺を見た。
 まだ不機嫌だな……仕方ない。

「ルミナ、おやつあるぞ。こっちで食べないか?」
「……!」

 お、ネコミミが反応した。
 ルミナは立ち上がり、屋根から飛び降りる。
 頭をなでると、今度は拒絶されなかった。
 俺は、棚からクッキーを出してルミナへあげる。
 ココロは気を遣い、診療記録の整理をしに部屋を出た。

「うまいか?」
「みゃう」
「いっぱいあるから全部食べていいぞ」
「ん」

 ルミナはもそもそとクッキーを頬張る。
 俺は、ルミナの頭を撫でながら言ってみた。

「ごめんな、ルミナ」
「…………」
「妖狐族の里、行きたかったんだな」
「…………」

 ネコミミがプルっと動いた。
 そう、ルミナは妖狐族の里に行きたかったのだ。
 カエデの家に行ったとき、ミュアちゃんたちはいたけどルミナはいなかった。その日はカエデの家にお泊りだったし……ルミナは、一人で俺の部屋のベッドで寝たのだ。
 それが羨ましくあり、寂しかったのだ。だからこうして無言の抗議をしている。
 ルミナは、俺をジーっと見た。

「ふん……」
「お詫びに、今度どこかに行こうか。釣りとかどうだ? 川釣りじゃなくて、湖とか海釣りもいいな」
「魚、焼くのか」
「ああ。そうだな……海なら魚だけじゃなくて貝も焼けるぞ。どうだ?」
「……いく」
「よし決まりだ。ふふ、楽しみだな」
「みゃう……おい、撫でろ」
「ああ、よしよし」
「ごろごろ……」

 ルミナのネコミミがピンと立った……よかった。ようやく機嫌が直ったぞ。
 すると、シエラ様が言う。

「ん~……よくわからないけど、仲直りできたみたいね♪」
「あはは……」
「そうだ! あのね、今夜お月見しない?」
「お月見?」
「ええ。月見団子を食べながら空を見上げてお月様を見るの。秋の月ってとても綺麗なのよ?」
「月ですか」

 月かぁ。あんまりじっくり見たことないな。
 お月見っていうのも初めて聞いた。
 
「みゃう。お団子食べるぞ」
「……わかった。じゃあ今夜、お月見するか」
「あのー、わたしもいいですか?」
「もちろん。団子はシルメリアさんに頼むか」
「ふふ、お酒も飲んじゃいましょ~」

 というわけで……今夜はお月見となった。

 ◇◇◇◇◇◇
 
 夜。
 秋の空は澄んでおり、月が綺麗に見えた。
 星も瞬き、理想のお月見となった気がする。
 俺の家は村の中心で、大樹の傍にあるので夜空が見にくい。なので、場所をデーモンオーガたちの解体場にした。
 参加メンバーは、俺の家に住んでる人全員。
 解体場に大きなテーブルを用意し、そこに飲み物を準備しておく。
 すると、シルメリアさんたち銀猫とクララベルが、大きな皿をたくさん運んできた。

「みんな、おまたせー!」

 皿には、たくさんのカラフルなお団子が……って、おいおい。

「クララベル、これ……多すぎないか?」
「えへへ。いろんな味を混ぜてたらいっぱいになっちゃった」

 月見団子。
 シンプルな白い団子から、赤青黄緑紫桃橙黒……とにかくカラフルだ。
 そして数。一皿百個で計算しても、十皿以上……千個以上ある。
 なんとなく、クララベルと銀猫たちで作るの盛り上がったんだろうなぁ……とわかった。
 そして、エルミナ。

「んまぁ~~~っ!! 妖狐族のイモ焼酎、うまいっ!!」
「お前な、もう酔ってんのかよ」
「い~でしょべつにぃ」

 フヨウさんがイモ焼酎とかいうサツマイモの酒を大量にくれたんだよな。エルミナ、この味にハマったのか毎晩これで晩酌してる。
 呆れていると、シェリーが俺の背中をパシッと叩いた。

「お兄ちゃん、お団子硬くなっちゃう。食べよ」
「あ、ああ。じゃあみんな、今日はお月見ということで……綺麗な月を見ながら、おいしいお団子を食べよう! じゃあ、いただきまーす」

 さっそく白い団子を手に取り食べる……ん、甘くておいしい。これ、砂糖だけのシンプルな団子だ。
 
「にゃあ。ご主人さま、おちゃ」
「ありがとう、ミュアちゃん。ほら、ミュアちゃんもいっぱい食べなよ」
「にゃうー」

 ミュアちゃんは、マンドレイクとアルラウネと一緒にお団子を食べ始めた。
 さて、ルミナは……いた。

「ルミナ、いっぱい食べろよ」
「みゃあ。うまいぞ」

 ルミナは団子をモグモグ食べている。
 俺はルミナの隣に座り、桃色の団子を食べた……あ、これセントウの味する。
 周りを見ると、みんな楽しんでいるようだ。

「ん~おいしい。クララベル、この緑のなに?」
「ホウレンソウなの。ホウレンソウ、甘くておいしいでしょ?」
「うん。やるじゃん」
「えへへ」

 シェリーとクララベルは団子を食べながら笑い合っている。

「ね、ミュディ。久しぶりに勝負しない?」
「こ、ここでもドラゴンチェス? いいけど……わたし、弱いよ?」
「ふふ、お団子食べて、ちょっとお酒飲みながらやるのも楽しいわよ?」

 ミュディとローレライは、ドラゴンチェスを楽しんでいる。
 こっちはお酒を飲んでいるようだ。ドラゴンロード王国から送られてきたワインのようだ。
 銀猫たちも、お団子を食べながら談笑している。
 すると、バルギルドさんとディアムドさんがやってきた。

「これは……」
「……なんの騒ぎだ?」

 あ、やべ……そういえば、解体場使うこと二人に言ってない。
 すると、アウグストさんとマディガンさんも来た。

「なんだ、ずいぶん楽しそうじゃねぇか」
「おいおい、こんなとこで何してんだ?」

 俺は立ち上がり、バルギルドさんたちに説明。
 お月見、お団子、星の見える広い場所と説明すると、全員が納得してくれた。
 そして、エルミナが言う。

「うぉ~~い、アウグストにバルギルドたちぃ……アシュトの細かい話なんていいからさぁ、こっちきて飲みなさいよぉ~! 妖狐族のイモ焼酎、おいしいわよぉ~?」
「ほ。酒のお誘いは断れねぇな。行くぞマディガン」
「……いただこう」
「バルギルド。オレは家族たちを呼んでくる」

 あらら……これは宴会になりそうな予感。
 まぁ、飲み物は山ほどあるし、団子も食いきれないしありがたい。というかエルミナ……俺の細かい話ってどういうことだっつーの。
 一気に宴会モードになった。
 酒を飲み、お団子を食べ、チェスに興じ、たまに空を見上げる。 
 俺は、一人で椅子に座り空を見上げるルミナの隣へ。

「団子、もっと食べるか?」
「いい。おなかいっぱい」

 ルミナは立ち上がり、俺の太腿に正面から座り、俺の胸に頭を擦りつける。
 ネコミミがせわしなく動く……撫でろってことね。
 俺はルミナの頭をなでると、尻尾が満足そうに揺れた。

「ふふ、寂しかったのねぇ」
「……シエラ様」

 いつの間にかシエラ様が隣に座っていた。もちろん、驚かない。
 シエラ様は、花瓶に入れた妙な草を机に置いた。

「シエラ様、なんですかそれ?」
「ススキっていう植物なの。魔を払い、厄除けをするために飾るのよ」
「へぇ~……なんか、掃除用具のハタキみたいですね」
「ふふ、そうねぇ……」

 シエラ様は空を見上げる……うーん、やっぱりとんでもない美人だ。
 ルミナは俺に甘えているので、ネコミミを揉んで頭を撫でる。すると、小さな寝息が聞こえてきた。

「シエラ様。ありがとうございました」
「ん~?」
「お月見なんて行事、誰も知りませんでした」
「ふふ、妖狐族なら知ってるかも。それと、ハイエルフたちも昔はやっていたかなぁ?」
「そうなんですか?」
「ええ。あの月、わたしが作ったんだけど……いろんな種族が『神様の住まい』だの、『空に浮かぶ宝石』だの言って、すごく面白かったのよねぇ」
「…………」

 なんかとんでもないことを言ったような気もするけど……まぁいいや。

「みゃう……」
「よしよし」
「ごろごろ……」

 ルミナを撫で、俺はシエラ様と一緒に空を見上げた。
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