大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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緑龍の村・夏祭り

第589話、ラクシュミと過ごす夏祭り

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 兄さんや父上たちが起きてきた。
 そして、どこか緊張しているエクレールとスサノオ。
 エルミナ、ローレライとクララベルはいない。俺は、久しぶりに会うエクレールとスサノオに挨拶した。

「おはよう、エクレールにスサノオ。元気にしてたか?」
「おじ上。おひさしぶりです」
「おひさしぶりです」

 なんと、エクレールはスカートをつまんでちょこんと一礼、スサノオも貴族令息として一礼した。
 ちょっと驚き兄さんとルナマリア義姉さんを見て、俺も久しぶりに貴族っぽい一礼をした。
 すると、ルナマリア義姉さんが俺に耳打ちする。

「もう貴族教育が始まってるんだ。どこで聞いたのか、アシュトの話を聞いたようでな……」
「俺の話?」
「お前の功績だよ。難しいことはまだ理解していないが、お前が『すごい人物』だっていうのはよく理解したようでな……スサノオはお前を目標にしている」
「お、俺を?」
「ああ。エクレールはシェリーのような魔法使いに、スサノオはお前のような頭脳明晰を目指しているそうだ」
「は、はぁ……」

 頭脳明晰って、俺が?
 まぁ、勉強は死ぬほどしたけど……魔法適性が判明してからでもいいんじゃないかな。
 ヒソヒソ話はおしまい。俺は二人に言う。

「さ、朝食はお茶だけにしよう。二人とも、今日はお祭りだ。いっぱい出店があるから、好きな物をお腹いっぱい食べるんだぞ」
「「お祭り……」」
「ははは。楽しいぞ~? 今日だけはいっぱい食べても大丈夫! ね、兄さん」
「アシュト……まったく、お前というやつは」

 兄さんは苦笑していた。
 シェリーが兄さんの肩を叩き、ミュディとルナマリア義姉さんも笑っている。
 父上、母上もニコニコしてるし、朝からいい気分になった。
 二人を座らせ、シルメリアさんの紅茶を飲む。

「おっきいねこ……」
「ねこ……」

 シルメリアさんを見て、スサノオとエクレールはそう呟いた。
 シェリーは、ダイニングルームを見渡しながら言う。

「そういえば、ラクシュミは?」
「ラクシュミ様はまだお休みでした。先ほどシャーロットが起こし、今は着替えをしているかと」

 シルメリアさんが言う。
 すると、ダイニングルームのドアが開いた。

「遅れたっ! みなさんオハヨッ!」
「ラクシュミ。朝から騒々しいですよ」
「も、申し訳ございません、叔母様」

 母上の一括。
 ラクシュミは萎縮し、俺の隣に座って紅茶を飲む。
 しばし紅茶を楽しみ、俺は言う。

「えーと。今日はお祭りで……父上と母上、兄さんと義姉さんと子供たちは別行動ですよね。ラクシュミは俺が案内する……で、いいのかな」
「うんうん! アシュトくん、よろしくね」
「ラクシュミ」
「す、すみません」

 母上、怖いな。
 すると、外で『華火』が上がった。

「お、祭りが始まった。よし、じゃあ今日はお祭りを精いっぱい楽しみましょうか!」

 俺が言うと、全員が頷く。
 シェリーは立ち上がり、大きく伸びをした。

「さ~って……ミュアとクララベルが待ってるし、あたしは行くね。リュウ兄、お父さんお母さん、あたしのお店に顔出してね。じゃ、また」

 シェリーは手を振って部屋を出た。
 ミュディも「わたし、待ち合わせしてるから」と部屋を出て、父上と母上、兄さんと義姉さんたちも祭りの会場へ向かう。
 残されたのは、俺とラクシュミ。

「さ、アシュトくん。エスコートよろしくね」
「はいよ。じゃ、行きますか」

 俺とラクシュミは家を出て、お祭りの中心地へ向かった。

 ◇◇◇◇◇◇

 というわけで、ラクシュミと祭りを回ることに。
 まずは腹ごしらえ。

「何食べる?」
「ん~……お腹に優しいの」
「わかった。そうだな……お、見ろ、あそこ」

 俺が指さしたのは、妖狐族の屋台だ。
 カエデが尻尾を揺らしながら何か包みを売っている。
 近づくと、カエデは胸を張って言った。

「おはようなのじゃ! そしていらっしゃいなのじゃ!」
「おはよう。カエデ」
「かわぃぃぃ~!! 尻尾モフモフ!! 何この子!!」

 妖狐族。狐族の上位種族と説明……ラクシュミは首を傾げる。
 妖狐族なんて聞いたことないしな。俺もここに来て初めて知ったし仕方ない。
 ラクシュミは、カエデの尻尾に触りたがっていたが、俺が止める。

「カエデ、ここは何を売ってるんだ?」
「むふふ。朝なので『朝食セット』を販売してるのじゃ。妖狐の宿で作った絶品朝ごはんなのじゃ!!」
「それはうれしいな。ラクシュミ、朝はこれでいいか?」
「もちろん。ね、カエデちゃん……尻尾触っていい?」
「接客中はダメなのじゃ」

 残念でした。
 笹の葉に包まれた小さな包みを二つ買い、近くのベンチへ……って、いつの間にベンチが。
 たぶん、席の少なさに気付いたディアーナ辺りが指示したんだろうな。
 包みを開けると、小さなコメの握りが二つに、笹の葉で作った入れ物に焼き魚や野菜の『つけもの』が入っていた……この『つけもの』ってのは、妖狐族特製の『野菜の塩漬け』で、コメと一緒に食べると絶品なんだよな。
 俺は朝食セットに魅入っていたが、ラクシュミは違った。

「これ……笹の葉に魔法がかけられてる」
「え? あ、ほんとだ。ほんのり温かいのは魔法のせいか」
「噓でしょ。笹の葉よ? 笹の葉に『保温』の魔法かけられてる!! すっごい!!」
「妖狐族は魔法のプロだからな。魔道具作りとかも得意な人いるかも」
「やっぱりあたしここに住む!!」
「お、落ち着けって」

 魔法はともかく、朝食セットは絶品でした!
 ラクシュミはしばらく興奮が収まらず、笹の葉をポケットにしまっていた。
 
「よーっし! 今日は楽しむぞぉ!」
「ほら、はぐれるなよ」
「はーいっ!」

 やれやれ。ラクシュミ、まだまだ子供だな。
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