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ヤマタノオロチのお酒
第526話、エルミナと蛇王魔酒(前編)
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エルミナは、自分で仕込んだ清酒の瓶にラベルを張り、わざわざ特注で依頼して木箱を作ってもらい、そこに清酒を入れた。
木箱には焼き印が押され、『最高傑作』と書かれている。
その酒をテーブルの上に置き、うんうんと満足げに笑っていた。
「最高傑作に最高の木箱、うんうん……いい。最高かも」
見てくれは高級酒にしか見えない。
もちろん、味には自身がある。ずっと清酒の研究をしてきたのは伊達ではない。
研究室の棚にそっと木箱を納める。
棚には、これまで仕込んだ自信作が並んでいた。
そして、棚の隅に置いてある瓶を見た。
「そういえば以前、リザード族からもらったお酒……これ、白蛇酒よね。妖狐族の里じゃ当たり前だけど、自分で作ったことってないわ」
以前、リザード族の手助けをしたときに、お礼としてもらったお酒だ。
清酒造りのきっかけであり、今はもう飲み干してしまったのでない。
だが、大事なきっかけだ。瓶だけ保存しているのである。
「うーん。妖狐族の里で白蛇を捕まえようとしたけど、無理だったのよね……白蛇酒。私も仕込んでみたいなぁ」
エルミナは、腕組みをして唸る。
そして……ちょっとだけ思いついた。
「そうだ!……なにも白蛇酒にこだわらなくてもいいじゃん! ふふふ、いいこと考えた」
エルミナはニヤリと笑い、研究室を出て行った。
◇◇◇◇◇◇
エルミナが向かったのは、村の外れにある東屋だ。
川沿いにあるのでとても落ち着く雰囲気であり、アシュトやローレライがよくここで読書をしていた。
だが、今日はいない。別人がいた。
「あ、いた! おーいシエラ-!」
「あら~? エルミナちゃん、どうしたの?」
大きな岩に座り、川に足を付けて涼んでいたシエラだった。
エルミナはバシャバシャと川に入り、シエラの傍へ。
「あのさ、蛇酒って知ってる?」
「ええ、もちろん。辛口で美味しいのよねぇ~♪」
「それでさ、美味しい蛇酒を仕込みたいんだけど……この辺で、すごい蛇いない?」
アバウトな質問だが、シエラには伝わった。
エルミナは、わざわざ妖狐族の里に行かず、この辺りで捕まえることができる蛇でお酒を仕込もうというのだ。
シエラは、小さく首を傾げた。
「エルミナちゃん。なんで私に聞くのかな? アシュトくんは~?」
「うっ……実はここだけの話。最近アシュトってばお酒の話するといい顔しないのよ。そりゃ毎日飲んでるし、けっこう酔っ払って迷惑かけちゃうけど」
「あらら~……でも、きっとそれだけじゃないはずよ? アシュトくん、エルミナちゃんの身体を心配してるのよ。エルミナちゃん、かなり不摂生だしねぇ」
「うぐぐ……で、でも。九千年以上生きてるけど、風邪の一つもかかったことないし。それに、飲みすぎて二日酔いになるけど、半日もすればよくなるし……」
「理屈じゃないのよ。アシュトくんはエルミナちゃんをすっごく大事に想ってるから、もっと身体を労わってほしいんだと思うわ」
「……うん」
と、思わぬ説教にエルミナは俯く。
そんなエルミナの頭を優しく撫でるシエラ。
「でも、美味しいお酒は飲みたいわね」
「!!」
「ふふ。知恵を貸してあげる♪」
シエラは、とても気まぐれな猫のような笑みを浮かべた。
◇◇◇◇◇◇
シエラから知恵をもらったエルミナは、さっそくドワーフの鍛冶場へ向かった。
鍛冶場にいたアウグストに声を掛けた。
「おーい! アウグスト、おーい!」
「んん? おお、なんじゃエルミナ」
「作って欲しいモンがあるのよ!」
いきなり要件を話すエルミナ。だが、アウグストは「フン」と鼻を鳴らしただけ。
アウグストは、ニヤリと笑った。
「おめーのことだ。どうせ酒絡みだろう?」
「ふふん。さすがねアウグスト。緑龍の村、初期のメンバーは違うわ」
「へ、おめーとはそこそこの付き合いだからな。で、何が望みだ?」
エルミナは、鍛冶場の図面制作用テーブルにあった羊皮紙を掴む。
そこに、一軒家がすっぽり入りそうな大きさの瓶を書いた。
「えっとね、これくらい大きなスライム瓶を作ってほしいの」
「……いやはや、デケェな。こんな巨大な瓶、初めてだぞ」
「だからいいの。ふふふ……アウグスト、蛇酒ってわかるよね?」
「…………ッ!? まさか!!」
「そうよ。これだけ大きな瓶に入れて漬ける蛇酒……気にならない?」
エルミナが教わったレシピは、『蛇王魔酒』という伝説の酒だった。
蛇王ヤマタノオロチという魔獣を酒に漬け込んで作るという物で、最後に作られたのは数万年前。現存している物はほんの瓶一本もないという。
シエラから、ヤマタノオロチの居場所も聞いていた。
「私はこれからバルギルドたちのところに行くわ。アウグスト、お酒と瓶の用意、よろしくね」
「任せとけ!! カッカッカ!! 久しぶりに楽しくなってきたぜ!!」
エルミナとアウグストは握手……酒好きとして通じ合った。
◇◇◇◇◇◇
バルギルドたちは、魔獣の解体を終え、解体後に出た骨を磨いていた。
骨は磨き、ディミトリ商会を通じて売っている。
ベルゼブブの富裕層が美術品として飾ったり、博物館などが欲しがるのだ。
エルミナは、バルギルド一家とディアムド一家に『蛇王魔酒』の話をする。
「ほう……面白そうだな」
「ヤマタノオロチ……聞いたことがない」
「伝説の蛇だって。シエラが言ってたけど、バルギルドとディアムドの一家総出で勝てるくらいの強さらしいわ。あんたら、最近刺激を感じてないでしょ? 楽しいバトルもできるし、美味しいお酒も飲めるわよ?」
「「…………」」
バルギルドとディアムドは顔を見合わせる。
すると、アーモとネマが言った。
「確かに、最近強い魔獣と戦っていないわね」
「それに、村の居心地が良すぎて少し肥えたかも……」
「……どこがよ」
ネマとアーモのスタイルは抜群だった。どこがどう肥えたのか知りたいエルミナ。
そして、シンハとノーマが挙手。
「はいはーい! 家族総出でとか楽しそう! おれやりたい!」
「あたしもっ! ふふふ、腕が鳴るわ」
さらに、キリンジは腕を組み、エイラは首を傾げる。
「蛇の魔獣か……ヤマタノオロチ、聞いたことがない」
「へび、おいしいのー?」
それから、家族で少し相談。
十分後。バルギルドはエルミナに言う。
「いいだろう。そのヤマタノオロチとかいう魔獣、オレらが倒す」
「あ、倒す時はあんまり傷付けないでね。ヤマタノオロチ漬けこむから」
「……わかった」
こうして、エルミナの『蛇王魔酒』造りは始まった。
木箱には焼き印が押され、『最高傑作』と書かれている。
その酒をテーブルの上に置き、うんうんと満足げに笑っていた。
「最高傑作に最高の木箱、うんうん……いい。最高かも」
見てくれは高級酒にしか見えない。
もちろん、味には自身がある。ずっと清酒の研究をしてきたのは伊達ではない。
研究室の棚にそっと木箱を納める。
棚には、これまで仕込んだ自信作が並んでいた。
そして、棚の隅に置いてある瓶を見た。
「そういえば以前、リザード族からもらったお酒……これ、白蛇酒よね。妖狐族の里じゃ当たり前だけど、自分で作ったことってないわ」
以前、リザード族の手助けをしたときに、お礼としてもらったお酒だ。
清酒造りのきっかけであり、今はもう飲み干してしまったのでない。
だが、大事なきっかけだ。瓶だけ保存しているのである。
「うーん。妖狐族の里で白蛇を捕まえようとしたけど、無理だったのよね……白蛇酒。私も仕込んでみたいなぁ」
エルミナは、腕組みをして唸る。
そして……ちょっとだけ思いついた。
「そうだ!……なにも白蛇酒にこだわらなくてもいいじゃん! ふふふ、いいこと考えた」
エルミナはニヤリと笑い、研究室を出て行った。
◇◇◇◇◇◇
エルミナが向かったのは、村の外れにある東屋だ。
川沿いにあるのでとても落ち着く雰囲気であり、アシュトやローレライがよくここで読書をしていた。
だが、今日はいない。別人がいた。
「あ、いた! おーいシエラ-!」
「あら~? エルミナちゃん、どうしたの?」
大きな岩に座り、川に足を付けて涼んでいたシエラだった。
エルミナはバシャバシャと川に入り、シエラの傍へ。
「あのさ、蛇酒って知ってる?」
「ええ、もちろん。辛口で美味しいのよねぇ~♪」
「それでさ、美味しい蛇酒を仕込みたいんだけど……この辺で、すごい蛇いない?」
アバウトな質問だが、シエラには伝わった。
エルミナは、わざわざ妖狐族の里に行かず、この辺りで捕まえることができる蛇でお酒を仕込もうというのだ。
シエラは、小さく首を傾げた。
「エルミナちゃん。なんで私に聞くのかな? アシュトくんは~?」
「うっ……実はここだけの話。最近アシュトってばお酒の話するといい顔しないのよ。そりゃ毎日飲んでるし、けっこう酔っ払って迷惑かけちゃうけど」
「あらら~……でも、きっとそれだけじゃないはずよ? アシュトくん、エルミナちゃんの身体を心配してるのよ。エルミナちゃん、かなり不摂生だしねぇ」
「うぐぐ……で、でも。九千年以上生きてるけど、風邪の一つもかかったことないし。それに、飲みすぎて二日酔いになるけど、半日もすればよくなるし……」
「理屈じゃないのよ。アシュトくんはエルミナちゃんをすっごく大事に想ってるから、もっと身体を労わってほしいんだと思うわ」
「……うん」
と、思わぬ説教にエルミナは俯く。
そんなエルミナの頭を優しく撫でるシエラ。
「でも、美味しいお酒は飲みたいわね」
「!!」
「ふふ。知恵を貸してあげる♪」
シエラは、とても気まぐれな猫のような笑みを浮かべた。
◇◇◇◇◇◇
シエラから知恵をもらったエルミナは、さっそくドワーフの鍛冶場へ向かった。
鍛冶場にいたアウグストに声を掛けた。
「おーい! アウグスト、おーい!」
「んん? おお、なんじゃエルミナ」
「作って欲しいモンがあるのよ!」
いきなり要件を話すエルミナ。だが、アウグストは「フン」と鼻を鳴らしただけ。
アウグストは、ニヤリと笑った。
「おめーのことだ。どうせ酒絡みだろう?」
「ふふん。さすがねアウグスト。緑龍の村、初期のメンバーは違うわ」
「へ、おめーとはそこそこの付き合いだからな。で、何が望みだ?」
エルミナは、鍛冶場の図面制作用テーブルにあった羊皮紙を掴む。
そこに、一軒家がすっぽり入りそうな大きさの瓶を書いた。
「えっとね、これくらい大きなスライム瓶を作ってほしいの」
「……いやはや、デケェな。こんな巨大な瓶、初めてだぞ」
「だからいいの。ふふふ……アウグスト、蛇酒ってわかるよね?」
「…………ッ!? まさか!!」
「そうよ。これだけ大きな瓶に入れて漬ける蛇酒……気にならない?」
エルミナが教わったレシピは、『蛇王魔酒』という伝説の酒だった。
蛇王ヤマタノオロチという魔獣を酒に漬け込んで作るという物で、最後に作られたのは数万年前。現存している物はほんの瓶一本もないという。
シエラから、ヤマタノオロチの居場所も聞いていた。
「私はこれからバルギルドたちのところに行くわ。アウグスト、お酒と瓶の用意、よろしくね」
「任せとけ!! カッカッカ!! 久しぶりに楽しくなってきたぜ!!」
エルミナとアウグストは握手……酒好きとして通じ合った。
◇◇◇◇◇◇
バルギルドたちは、魔獣の解体を終え、解体後に出た骨を磨いていた。
骨は磨き、ディミトリ商会を通じて売っている。
ベルゼブブの富裕層が美術品として飾ったり、博物館などが欲しがるのだ。
エルミナは、バルギルド一家とディアムド一家に『蛇王魔酒』の話をする。
「ほう……面白そうだな」
「ヤマタノオロチ……聞いたことがない」
「伝説の蛇だって。シエラが言ってたけど、バルギルドとディアムドの一家総出で勝てるくらいの強さらしいわ。あんたら、最近刺激を感じてないでしょ? 楽しいバトルもできるし、美味しいお酒も飲めるわよ?」
「「…………」」
バルギルドとディアムドは顔を見合わせる。
すると、アーモとネマが言った。
「確かに、最近強い魔獣と戦っていないわね」
「それに、村の居心地が良すぎて少し肥えたかも……」
「……どこがよ」
ネマとアーモのスタイルは抜群だった。どこがどう肥えたのか知りたいエルミナ。
そして、シンハとノーマが挙手。
「はいはーい! 家族総出でとか楽しそう! おれやりたい!」
「あたしもっ! ふふふ、腕が鳴るわ」
さらに、キリンジは腕を組み、エイラは首を傾げる。
「蛇の魔獣か……ヤマタノオロチ、聞いたことがない」
「へび、おいしいのー?」
それから、家族で少し相談。
十分後。バルギルドはエルミナに言う。
「いいだろう。そのヤマタノオロチとかいう魔獣、オレらが倒す」
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