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魔法学園の講師

第509話、新たな移住希望?

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 教師になって十日。授業にも慣れ、他の教師との交流(飲み会)も順調にこなしていた。
 二ヶ月の予定だが、このままここで働いてもいい気がしてきた。俺、教師って向いてるかも……すっごく楽しいし、ぶっちゃけ辞めたくない。
 ま、世の中そう甘くはない。約束の期日がきたらやめる。
 それはそうとして、ミュアちゃんが拾って来た猫だが。

『にゃぁ~ご』
『みぃ』『ミィィ』

 すっかり元気になり、俺の部屋で遊びまわっていた。
 親のブチ猫は大人しいのだが、二匹の子猫の元気がすさまじい。
 ブチ猫もミルクが出るようになり、白ネコとトラ猫は毎日いっぱいミルクを飲んでいる。痩せていた身体も元に戻り、元気いっぱいだ……さすが野生。
 さて、ここで問題が出てきた。
 俺は、シルメリアさんと一緒に、家の暖炉そばで丸くなっているブチ猫に話をする。

「なぁ、お前はどうしたい? このまま家に住むか、それとも……魔法学園に帰るか」
『……ゴロゴロ』
「できればここに住みたい、だそうです」

 シルメリアさんが通訳する。
 『ゴロゴロ』にそんな意味があるのか俺にはわからない。でも、シルメリアさんには俺と会話しているような感じで理解できるのだそうだ。ネコからすれば、俺やシルメリアさんが『ゴロゴロ』鳴いているように聞こえるとか。
 シルメリアさんは、ブチ猫に言う。

「ここに住む許可はいただけました。ですが、魔法学園にはあなたの仲間がいるのでは?」
『にゃぁ~ご……ゴロゴロ、ゴロゴロ』
「……それは、どうでしょうか。確認をしませんと」
『にぁぁぁ』
「……わかりました」

 いや、全然わからない。
 シルメリアさんは、困ったように言った。

「その、仲間もここに住まわせて欲しいと……魔法学園には多くの野良猫があふれ、日々の食事もままならないと。魔法学園が好きで残る猫もいますが、居心地のいいこの村に住みたいと」
「あー……でも、ウチだけでいっぱい猫を飼うのもな」
「はい。ですので、餌だけを準備して、普段は村の中で放し飼いでいいと。寒ければ家の縁の下に行けばいいし、気に入った猫がいたらそのまま飼い猫でも構わないと。魔法学園にいるのが嫌ということで……」
「……それなら、いいかな」

 シルメリアさんは、ブチ猫に伝える。
 ついでに、村に住んでいる動物や家畜についても言った。ネズミのニック率いるネズミ軍団と喧嘩にならないようにしないと。あとでニックにも事情を説明しておこう。
 ブチ猫は、俺を見て鳴いた。

『にゃぁご』
「感謝する、だそうです」
「ど、どうも」

 ブチ猫、前脚を俺に伸ばしてきたけど……あ、握手ってことかな?
 とりあえず、差し出された前脚を掴んで握手っぽくしてみた。

 ◇◇◇◇◇◇

「にゃあ。ご主人さまー」
「戻ったぞ」
『みぃ』『ミィィ』

 ブチ猫と握手していると、子猫を連れたミュアちゃんとルミナが戻ってきた。
 すっかり仲良しになったミュアちゃんたちと子猫たち。こういうのを見ると、この猫たちを魔法学園に帰すなんてできない。
 俺は、ブチ猫を軽く撫でてミュアちゃんたちに言った。

「ちょうどよかった。二人にお願いがあるんだ」
「にゃう?」
「なんだ?」
「じつは……」

 俺はこの猫を正式に引き取ること、そして魔法学園にいる野良猫たちを村で受け入れることを伝えた。
 すると、ミュアちゃんはとても喜んだ。

「にゃあー! ネコがいっぱいになるの?」
「ああ。二人には、このブチ猫と一緒に、魔法学園にいる猫に移住意志があるか確認して欲しいんだ」

 俺は念のためジーニアス先生に確認。ミュアちゃんとルミナには魔法学園にいる猫に話をしてもらう。念のため、シルメリアさんにも付いてもらおう。
 
「明日はみんなで学園に行こう。ミュアちゃん、ルミナ、シルメリアさん。よろしくね」
「にゃぁうー!」
「ふん。まかせとけ」
「かしこまりました。ご主人様」

 というわけで、村に野良猫を受け入れることにした。

 ◇◇◇◇◇◇

 翌日。
 ジーニアス先生に相談したら『かまいませんよ』の一言で済んだ。
 学園側でも、野良猫の対応には困っていたらしい。従属魔法のためにどうしても小動物が必要なので、飼うことに問題はないのだが。
 さっそく、ミュアちゃんたちが野良猫の勧誘をしてくれた。
 俺は授業があるから手伝えなかったが、お昼に合流したミュアちゃんは「いっぱい!」と言っていたので、多くの野良猫が村に移住するのだろう。
 そして夕方。
 ミュアちゃんたちに合流し、シルメリアさんが言う。

「合計二十の野良猫が移住を希望しました。他にも誘ったのですが、やはりこの地がいいという猫も多く……」
「二十か……多いのか少ないのかわかんないな」
「ええ。あと、実は……」
「ん?」

 チラリと、ミュアちゃんとルミナのいる方を見る。
 俺もそちらを見ると、そこには……なんとも可愛らしい柴犬が三匹いた。

『わんわん!』『くぅぅ』『きゅるる』
「え、あれ……犬?」
「はい。野良犬です……野良猫たちと一緒にいたようで」
「い、犬か……ライラちゃんが喜びそうだ。あの子たちも?」
「はい。移住希望です」
「……まぁ、いっか」

 柴犬三匹を村に連れ帰り、ライラちゃんを呼ぶと。

「わぅ!? 犬だー!!」
『わぅぅん』
「えへへ。こんにちは、わたしはライラ」
『きゅうーん』『くるるる』
「わわ、もふもふ……かわいい。あ、わたしのお友達紹介するね! お兄ちゃん、魔犬のお姉さんのところ行っていいー?」
「うん、いいよ」
「わぅぅん! ありがとう!」

 ライラちゃんは大喜び。
 製糸場で働く魔犬姉妹の元へ向かった。今夜はあっちに柴犬とお泊りかな。
 こうして、緑龍の村に新しい住人……人じゃないな。とにかく増えた。

 ◇◇◇◇◇◇

 野良猫たちは、村に来て餌を食べて身体を綺麗にした後、いつの間にかいなくなっていた。
 それから、村では野良猫がよく見られるようになった。
 東屋の屋根で昼寝していたり、鍛冶場のテーブルで寝ていたり、図書館を我が物顔で歩いていたりと……なんともまぁ、ほっこりした。
 意外にも、ネズミたちと仲良しだった。喧嘩することなく、よく一緒に昼寝している。
 柴犬たちは、ライラちゃんたち魔犬族が飼うことになった。今ではシロの子分みたいな存在で、ユグドラシルの周りでよく遊んでいる。シロにもいい友達ができてなによりだ。

 俺は、自室で読書をしていた。
 今日は授業がないのでお休み。のんびり椅子に座って読書をしていると、ブチ猫がのそのそやってきて俺の太ももで丸くなる。
 
「はは、なんだお前」
『ごろろ』
「……ふふ、癒されるな」

 猫を飼うっていいな。すっごく癒されるよ。
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