大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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妖狐族の奇病

第442話、妖狐の温泉郷

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 消臭華を植え終え、カエデたちと一緒にフヨウさんの屋敷に戻った。
 屋敷にはバルギルドさんとディアムドさん、エルミナとミュディもいた。どうやら諸々の作業が一段落し、フヨウさんに呼ばれて集まったようだ。
 仕事を終えた魔犬族のみんなや、手伝いに来た住人は帰ったようだ。
 さっそく、屋敷の部屋を借りてミーティングを開く。

「工事は順調だ。サラマンダーたちと妖狐族が新たな『川』を掘ってる。大体の工事は終わって後は妖狐族にあかせたから……たぶん数日で終わるだろうぜ」

 アウグストさんには、雪解け水の通り道となる川とため池を作ってもらった。
 エルダードワーフたちと地図を見て作った川だ。ため池も一緒に掘ったので、もう心配はないだろう。
 本来ある大きな川は、何日かすれば綺麗な川に戻る。飲み水にも使える。

「オレも手伝おうと思ったが、妖狐たちに任せてきた……」

 ディアムドさんは周辺に危険な魔獣がいないか調査してもらった。でも、妖狐の里は結界が張ってあるので魔獣が入り込むことはできない。なので、川やため池を掘る作業をしてもらった。
 妖狐たちが頑張っているから、もう大丈夫とのことだ。

「わたしの方も、看護師さんに任せてきた」
「アシュトの薬、効いたみたいね」

 ミュディとエルミナは患者の看護。
 薬を飲ませた後の経過観察を頼んだが、どうやら問題ないようだ。

「俺の方も問題なし。消臭華を植えてきたから、キツイ硫黄の匂いも少し収まった。あとは妖狐族に任せても大丈夫だと思う」
「そーね。はぁ~……一日で収束したけど、濃い一日だったわぁ」

 エルミナが肩を落とす。
 確かに、濃い一日だった……でも、すぐに原因が解明できたからだ。
 もし温泉のことを知らなかったら、ガスやガスに溶けた水が人体に有害だって知らなかったら……被害はこの里全てに広がっていただろう。
 早く収束できてよかった……ホッとしたよ。

「みゃう。お腹減ったぞ」

 すると、ルミナが俺の袖をくいくい引く。
 確かに、腹減った……メシ、出してくれるのかな?
 エルミナたちも疲れ切ってるし……フヨウさんのところに行くか。

 ◇◇◇◇◇◇

 フヨウさんのところへ、この伝染病の結末を説明した。
 
「ありがとうございます。本当に……この里を救っていただいた恩は、決して忘れることはないでしょう。妖狐族を代表して、ここに感謝を」
「いえ。そんな……」

 フヨウさん、モミジさん、カエデは、座布団の上で頭を下げた。
 本当に、大事にならなくてよかった。
 頭を上げたフヨウさんは、にっこりと笑う。

「ささやかですが、酒宴の席を用意させていただきました。宴会場への御移動をお願いいたします」

 着物を着た妖狐女性が襖を開けて入ってきた。
 一礼し、俺たちを別室に案内してくれる。
 宴会場は椅子テーブルではなく、畳に座布団、個別のお膳が用意されていた。さらに、ステージには龍虎の屏風が置かれ、とにかく立派な造りだ。
 
「ほぉ……こいつは立派なモンだ」
「こういうのは慣れないな……」
「うむ……」

 アウグストさんは和風建築に興味津々。ディアムドさんとバルギルドさんは立派過ぎる宴会場に苦笑。

「う~ん美味しそうねぇ!」
「……綺麗な着物だなぁ」

 エルミナは料理に釘付け、ミュディは案内してくれた妖狐さんの着物に魅入っている。どっちもわかりやすいな。

「わぅぅ、おなかへった」
「あたいも。魚食べたい」

 ライラちゃんとルミナのお腹がきゅうきゅう鳴る。
 俺たちは案内された場所に座ると、フヨウさん、モミジさん、カエデも座った。
 そして、綺麗な着物を着た女性妖狐がゾロゾロと入ってきて、俺たちにお酌してくれる。
 陶器の入れ物を受け取り、透明なお酒を注がれた……なんだこれ?

「白蛇酒という、白蛇の体液から作られたお酒です。妖狐族はこのお酒を飲んでますの」
「へぇ~……白蛇酒かぁ」

 妖狐族のお酒か。
 ルミナとライラちゃんとカエデは、柚子水という果実水をもらった。
 フヨウさんがグラスを掲げ、挨拶する。

「では……アシュト殿とご一行様に感謝を込めて。乾杯」

 グラスを掲げ、静かに乾杯した。
 さっそく白蛇酒を口に……って、なんじゃこりゃ!?

「ぶふっ!? か、辛い……すっごく喉に来る!!」

 強烈な辛みが口の中を支配する。
 吐き出すわけにもいかず、なんとか飲み込む……すると、全身がポカポカと温まってきた。
 すごい……なんて強烈なお酒だ。

「ッッッかぁぁっ!! こりゃすっげぇ曲者だな!!」
「……美味い。いい酒だ」
「ああ。いいな」
「おいしーっ!! 水みたいに透き通ってるのにこの酒精……白蛇酒だっけ? ねぇねぇ、作り方教えて!!」

 アウグストさん、ディアムドさん、バルギルドさん、エルミナには好評だった。
 ミュディは一杯で顔を真っ赤にしている……仲間はお前だけだ。
 俺は料理を食べることにした。

「え、これ……あ、アゲ物だ」

 料理は、煮物やアゲ物、小鍋には肉や魚が煮え、なんとコメまである。
 そういえば、妖狐族の食生活とか素材とか知らないな。病気のことで頭がいっぱいだった。
 まさかコメがあり、アゲ物まである。今まで取引した種族と共通する部分がある。

「アシュト、この煮物美味しいよ」
「アゲ物も美味い。野菜や山菜のアゲ物か……コメが進むな」
「みゃあ。魚うまい」
「わぅぅ。お肉もおいしいー!」

 ミュディは煮物をモグモグ食べ、ルミナやライラちゃんも料理に満足している。
 アウグストさんたちはフヨウさんにお酒のこと聞いてる……確かに、白蛇酒なんて聞いたことないからな。
 すると、モミジさんがお酌に来てくれた。

「ささ、アシュト殿。どうぞ」
「あ、ありがとうございます」

 モミジさんに白蛇酒を注いでもらう。
 ぶっちゃけ、酒精が強くて飲みにくい。でも、断るわけにはいかない。
 酒をちびちび飲みつつ、聞いてみた。

「妖狐族の里、いいところですねぇ」
「ほほ。ありがとうございます。我々妖狐は決まった種族としか取引しないのですが……アシュト殿と緑龍の村の皆様なら、取引をしてもよいと決まりまして」
「え、本当ですか?」
「ええ。温泉郷として観光に来るもよし、温泉に入るのもよし、甘味を求めて来るもよし……ふふ、里が賑やかになりますなぁ」
「そうですね。温泉かぁ……」
「アシュト殿。此度のお礼ですが……金品ではなく、この妖狐族の里にある別荘を進呈させていただきます」
「え」

 モミジさんはにっこり笑う。
 とんでもない美人の笑顔にたじろぐ俺。
 フヨウさんはアウグストさんに質問攻めされてるから、代わりにモミジさんが言う。

「アシュト殿。いつでも、温泉に入りにきてくだされ。もちろん、ご家族やご友人を連れて」
「あ、ありがとうございます……」

 この日は、深夜まで宴会となった。

 ◇◇◇◇◇◇

 宴会が終わり、宿へ戻ってきた。
 アウグストさんとディアムドさんとバルギルドさんはフヨウさんを誘って里の居酒屋へ。
 ルミナとライラちゃんはカエデのところにお泊りで、宿には俺とミュディ、エルミナの三人だけで戻ってきた。
 ミュディはコップに水を注ぎ、俺とエルミナに渡す。

「はぁ~……いろいろあって疲れたな」
「でも、お料理美味しかったし、妖狐さんたちの踊りも綺麗だったね。わたし、明日になったら着物の製法を教えてもらうんだ」
「私はお酒!! 白蛇酒ってこの辺りの森にいる白蛇を水に漬け込むとできるんだって!! お土産に何匹か狩っていきたいわね」
「俺は薬草採取かな。この辺り、知らない薬草が自生してるし」

 何日か里に滞在してから帰ることにしたので、明日は自由行動だ。
 しばし、のんびりしていると、ミュディが言う。

「そういえば、ここにも温泉あるんだよね」
「ああ。温泉付きの宿だしな」
「ふーん……ねぇアシュト、ミュディ、一緒に入らない?」

 エルミナが俺にそっとすり寄ってくる……可愛いな、こいつ。
 ミュディも負けじとすり寄り、腕を取った……あ、もしかして酔ってるな?
 少し大胆な二人……まぁ、いいか。

「じゃあ、三人で温泉入るか」

 妖狐族の里の温泉は、とっても気持ちよかったです!!
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