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天の国へ新婚旅行!

第379話、天空都市へ新婚旅行

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 アドナエルが帰り、俺とミュディたちは集まった。
 俺、シェリー、ミュディ、ローレライ、クララベル、エルミナ。そして給仕のシルメリアさんとミュアちゃん。俺の太ももを枕にしているルミナだ。
 シルメリアさんのお茶を飲みつつ、アドナエルの話を共有した。

「「「「「新婚旅行?」」」」」
「ああ。メィロン料理のお礼らしい。天空都市の別荘を俺たちにくれるってさ。新婚旅行に来るなら、いろいろ融通利かせてくれるって」
「おおー! なんか面白そうじゃない!」

 エルミナがニコニコしながら前のめりになる。
 おいおい、紅茶のカップに気を付けろ。お前の胸が当たったら大惨事になるぞ。
 すると、シェリーが椅子にもたれかかる。

「天空都市ヘイブンだっけ? 天使たちの住まう町とか面白そう!」
「わたしも行きたーい! 最近お留守番ばっかりだしー、ねぇ姉さま!」
「確かに、私も興味があるわね……ミュディは?」
「わたしも行きたいなぁ。お空の上とか、ちょっと怖いけど……」

 どうやら、みんな乗り気のようだ。
 それに、俺も興味ある。天空都市にある薬草とか、木々の生体とか。
 
「みゃう……」
「よし、じゃあ行くか。アドナエルの好意に甘えよう」
「「「「「賛成!!」」」」」
「みゃあ……うるさい」
「おっと、悪い悪い。よーしよーし」
「みゃあぅ……」

 ルミナを撫でながら予定を立てる。
 
「アドナエルから聞いた話だと、俺たちがもらった別荘は海沿いにあって、町からも近いらしい。観光したり、海で泳いだりできるらしい」

 ミュディが確認する。
 
「海……ミズギが必要かな?」
「ああ。天使の町で買えるみたいだ。必要なものは大抵町で揃うらしいぞ」
「お金は……」
「それも支給してくれるって。お金の心配は一切しなくていいってさ。メィロン料理のお礼だって」

 ディミトリもだが、アドナエルもだいぶ太っ腹だ。
 ここで暮らすようになってからお金に無頓着だったなぁ……今はベルゼ通貨が当たり前になっているし、ディアーナがお金の管理はしてくれているけど、もうちょっと考えるべきだった。
 ま、それはおいおい。

「にゃあ、いいなー」

 お茶のおかわりを注ぎにきたミュアちゃんが、ネコミミをピコピコ動かしながら言う。
 相変わらず可愛らしいけど……さすがに、新婚旅行に連れて行くのはなぁ。
 とりあえず頭を撫でる。

「ごめんね、今回は連れて行けないよ」
「にゃう……わかったー」
「その代わり、お土産いっぱい買ってくるからね。それと、寂しいなら今日は一緒に寝ようか?」
「にゃあ、いいの?」
「もちろん」

 ミュアちゃん、最近は俺の布団に潜り込まないんだよな。
 シルメリアさんが禁止したってのが一番の理由だ。
 朝起きるとネコミミが顎にサワサワ触れる瞬間が好きなんだけどね。

「みゃう。ずるいぞ」
「あはは、ルミナも一緒な」
「にゃあ。わたしも」
「よし、ミュアちゃんも一緒ね」
「にゃう。おふろも一緒にはいるー」
「いいよ」
「みゃあ、あたいも」
「いいぞー」
「……お兄ちゃん、甘やかしすぎ。めっちゃデレデレしてんじゃん」

 シェリーの冷たい視線が俺に突き刺さる。
 というか、みんなが冷たい目で俺を見ていた……な、なんで?

「アシュト、前から思ってたけど……ネコミミと子供好きなの?」
「お兄ちゃん、ネコミミならわたしも付けるよ!」
「やめなさいクララベル。アシュト……少し抑えたほうがいいわ」
「もしかして、『どこでもネコミミ』ってアシュトのためだったとか? さっすがミュディじゃん!」
「ち、違うよエルミナ。偶然だよ!」
「…………」

 なんか勘違いされていた……そりゃネコミミは好きだけどさ。

 ◇◇◇◇◇◇
 
 翌日。
 では天空都市へ出発!!というわけにはいかない。
 準備もあるし、仕事を放りだしていけない。なので、各々の準備が整うまで仕事をして、その後に休暇という形で新婚旅行に出かけることになった。 
 各職場では、みんな好意的だった。
 新婚旅行はまだ先、ということを伝えていたので、いざ新婚旅行に行くとなるとみんな気を遣ってくれた。

 ミュディは、抱えている仕事を終わらせ、製糸場の従業員たちに仕事を任せた。
 シェリーは、竜騎士団の訓練を一時的に抜け、ドラゴンのアヴァロンはランスローとゴーヴァンに面倒を見てもらうことにした。
 ローレライは、司書の仕事を悪魔司書四姉妹に任せた。
 クララベルは、料理修行をお休みした。
 エルミナは、新しいお酒の開発を中断した。
 俺も、フレキくんとエンジュに薬院と温室を頼むことを伝える。

「ってわけで……毎度のことで申し訳ないんだけど」
「もちろん大丈夫です。温室と薬院はお任せください!」
「うちもええでー、故郷でのんびりできたし、休んだ分は働くで」
「ありがとう。お土産いっぱい買ってくるから、楽しみにしてて」
「あ、うち甘いお菓子がええなぁ」
「ボクはお任せします。師匠が選んだものに間違いはないので!」

 エンジュはともかく、フレキくんの信頼がすごい。
 ともかく、これで準備は整った。新婚旅行に出発できる。
 
 俺は自分の部屋で荷物をまとめる。
 着替え、杖に『緑龍の知識書ムルシエラゴ・グリモワール』と……あれ、準備終わった。
 ま、こんなものだろう。

「天空都市に行くのね?」
「はい。ってシエラ様!? い、いつの間に……」
「はぁい♪」

 いつの間にか、シエラ様が俺のベッドに座っていた。
 と思ったら、ベッドの上に寝転がりゴロゴロ転がる。

「アシュトくん。天空都市にはアーカーシュがいるから気を付けてね? あの子、私に関わった匂いに敏感だから……アシュトくんの新婚旅行が邪魔されちゃうかも」
「え、それは困る」
「ふふ、冗談よ♪ あの子には邪魔しないように言っておくから、旅行を楽しんでね」
「は、はい。あの……アーカーシュ様ってシエラ様が大好きなんですか?」
「ええ。本当に変わった子なの……ま、そこが可愛いんだけれど、ちょ~っと気持ち悪いところもあるから困ってるのよねぇ……聞きたい?」
「……や、やめときます」
「ふふ♪」

 シエラ様はにっこり笑う……ちょっと怖い笑顔だったのは気のせいじゃない。
 
「アーカーシュはともかく、天空都市はベルゼブブとは違った美しさがあるわ。新婚旅行にはピッタリかも」
「おお、シエラ様のお墨付きですか。それは楽しみです」

 シエラ様はクスクス笑い、ベッドから起き上がる。

「アシュトくん。楽しんできてね」
「はい!!」

 新婚旅行……楽しくなりそうだ!!
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