158 / 511
日常編⑩
第295話、デーモンオーガのお土産タイム
しおりを挟む
ビッグバロッグ王国から戻った翌日。
俺は久しぶりに日課の温室手入れへ向かう。メンバーはいつもの温室手入れ組だ。
「おはようございます師匠!! お久しぶりです!!」
「おー、なんや村長。久しぶりやん」
「フレキくん、エンジュ。久しぶり……あとでお土産渡すから」
「あ、ありがとうございます!!」
「おーきに。律儀なやっちゃなぁ」
そして、薬草幼女ことマンドレイクとアルラウネ。
首からは俺のあげたネックレスをしてご満悦。俺の足にしがみついていた。
そしてウッド。地面に埋まって寝ていたところをマンドレイクとアルラウネに引っ張られ起床。眠いのか欠伸をしていた。
そして、ルミナ。
「みゃぁぁぅぅ~……」
「なんだ、眠そうだな」
「みゃぁう……銀猫たちにお土産渡したら撫でられた。触るなって言ってるのにベタベタしてきて……あんまり寝られなかった」
「はは。愛されてるな」
「…………」
ネコミミがピコピコ動き、眠そうに眼を擦っていた。
全員揃ったので温室手入れに向かう。
留守の間はフレキくんたちに任せっぱなしだったが、俺の温室も含め綺麗に手入れされていた。
「師匠。アルォエの葉とドクダミーを摘んで干してあります。あとはムィントの消費が多かったので備蓄があまり……」
「わかった。ムィントは俺が魔法で成長させておく。足りない薬草があったら言ってくれ」
「はい。それと、師匠がいない間の治療記録もまとめてありますので、確認を」
「うん。ありがとう」
温室の雑草を摘みながら、フレキくんに留守の間のことを聞く。
「あ、あの……病気や処方薬のことに関して、師匠に必ず報告するようにと言われてますので……その」
「ん? 何かあったの?」
「え、えーっと……え、エルミナさんが『アシュトには内緒!!』って言ってたのですが、やはり師匠は裏切れないので報告します。エルミナさんが地下の貯蔵用ワインを一樽飲んでしまって、お腹を壊して……整腸剤を処方しました」
「…………そう」
エルミナ、あとでお仕置き。
地下に貯蔵してあるワインは寝かせ用のワインだ。これから数十、数百年寝かせて味に深みを出そうとしているのに……許せん。
「報告ありがとう。後は?」
「えーっと、クララベルさんが包丁で指を切ったんですがすぐに完治。火傷と腹痛のドワーフさんたち、爪が割れたブラックモールさんたちに爪の補修クリームを処方しました。大きな怪我や病気はありません」
「わかった。っと……そう言えば、人狼族の村の往診は?」
「まだです。師匠が戻ってから向かうつもりでしたので」
「そっか。じゃあ、明日にでも行けるように準備しよう。フレキくんのことだし、足りない薬品や持っていく薬品はリストアップしてあるんでしょ? 今日はそっちの準備をしようか」
「い、いいんですか?」
「うん。あとエンジュは……」
エンジュを見ると、マンドレイクとアルラウネを追いかけて遊んでいた。何やってんだよあいつは……。
「おーいエンジュ!!」
「ん、なんやー?」
「ちょっとこっち来―い!!…………あのさ、お前ってダークエルフの里に帰らなくてもいいのか?」
「……え、うち追放されるん?」
「違う違う。フレキくんみたいに里帰りしないのかってこと。緑龍の村で仕事してくれるのはすごく助かるけど、たまには実家に帰るのもいいんじゃないか? フウゴやライカもいるし……」
「あー……確かにそうやな。つーかあいつら、またここに来たいゆうてたしな。うちの話を聞かせてやるのもおもろいやん」
「しばらく留守を任せてたからな。フレキくんもエンジュも、実家に顔を出してきなよ」
というわけで、フレキくんとエンジュを帰省させることにした。
フレキくんの護衛にマカミちゃん、エンジュの護衛にバオブゥさんとサラマンダー数名を付けてやる。
エンジュがフレキくんと離れ離れになることにやや難色を示したが、それ以外は普通だ。
乗り物は、バルギルドさんが調教したクジャタに乗って里帰りをする予定だ。
さて、帰省して休んだ分、しっかり仕事をしないと!!
◇◇◇◇◇◇
時間は少しだけ戻り───ビッグバロッグ王国から戻った夜。
ノーマは、ビッグバロッグ王国でのお土産を家族に配っていた。家にはディアムド一家も揃っている。
「これ、お母さんとネマさんにお土産!! かっこいいスカーフ見つけたからさ、首に巻いてみてよ!!」
「あらステキ。ありがとね、ノーマ」
「あたしにも? ふふ、ありがとう」
「で、これがお父さん!! お父さんと言えばお酒でしょ!!」
「む……ありがとう」
お父さんと言えばお酒。
少し釈然としないが、ビッグバロッグ王国の名工が手掛けたデザインの瓶に入った琥珀色の液体は、バルギルドの興味をそそる。
「シンハにはこれ。ナイフの詰め合わせセットだって」
「うぉぉ!! ありがとう姉ちゃん!!」
シンハには、武器屋で買ったナイフの詰め合わせセットだ。
大きな解体用ナイフから、投擲用の小さなナイフが十本入っている。なんとなくシンハが好きそうなので購入したが、大当たりだった。
「エイラにはこれ。リュックとぬいぐるみ。あとツノに付けるリングだよ」
「わぁ~……おねーたん、ありがとー!!」
「どういたしまして!!」
エイラは、魔獣の皮で作られた可愛らしいリュックと、モフモフの羊ぬいぐるみ、そして手首に付けるリストリングだが、ツノに付けるとぴったりだった。
さっそくリュックを背負い、部屋中をグルグル回る。エイラはネマの胸に飛び込み満足そうにしていた。
「キリンジにはこれ……その、武器屋で買った最新式の弓で、クロスボウっていう武器……」
「クロスボウ……すごい、見せてくれ」
「う、うん」
剣や斧など、状況によって武器を持ち変える戦いをするキリンジは弓も使う。見慣れない弓に興味津々だった。
「なるほど、弓を番えてここを引いて固定……この取っ掛かりを引くと……おお、面白い!!」
キリンジは、満面の笑顔をノーマに向けた。
普段から冷静なキリンジがこんな笑顔をするのは珍しい。というか、ノーマに向けられたのは初めてだった。
「ありがとうノーマ!! これ、すっごく面白いよ!!」
「う、うん……っ!! よかったぁ……」
「あのさ、よかったら一緒に狩りに行かないか? この弓、使ってみたい」
「い、いいよ? その、あたしでよければ」
「うん。ノーマには前衛を任せたい。俺はこの弓……クロスボウで援護をするから」
「う、うん!!」
「あ、じゃあおれも「シンハ、ちょっと黙ってなさーい?」……は、はい」
なぜか母アーモに睨まれたシンハはすくんでしまった。
ディアムドは、バルギルドと飲もうと大量に購入した酒をバルギルドに見せる。
「……今日は飲むか?」
「……ああ」
息子と娘の雰囲気に、少し寂しさを感じる男二人だった。
俺は久しぶりに日課の温室手入れへ向かう。メンバーはいつもの温室手入れ組だ。
「おはようございます師匠!! お久しぶりです!!」
「おー、なんや村長。久しぶりやん」
「フレキくん、エンジュ。久しぶり……あとでお土産渡すから」
「あ、ありがとうございます!!」
「おーきに。律儀なやっちゃなぁ」
そして、薬草幼女ことマンドレイクとアルラウネ。
首からは俺のあげたネックレスをしてご満悦。俺の足にしがみついていた。
そしてウッド。地面に埋まって寝ていたところをマンドレイクとアルラウネに引っ張られ起床。眠いのか欠伸をしていた。
そして、ルミナ。
「みゃぁぁぅぅ~……」
「なんだ、眠そうだな」
「みゃぁう……銀猫たちにお土産渡したら撫でられた。触るなって言ってるのにベタベタしてきて……あんまり寝られなかった」
「はは。愛されてるな」
「…………」
ネコミミがピコピコ動き、眠そうに眼を擦っていた。
全員揃ったので温室手入れに向かう。
留守の間はフレキくんたちに任せっぱなしだったが、俺の温室も含め綺麗に手入れされていた。
「師匠。アルォエの葉とドクダミーを摘んで干してあります。あとはムィントの消費が多かったので備蓄があまり……」
「わかった。ムィントは俺が魔法で成長させておく。足りない薬草があったら言ってくれ」
「はい。それと、師匠がいない間の治療記録もまとめてありますので、確認を」
「うん。ありがとう」
温室の雑草を摘みながら、フレキくんに留守の間のことを聞く。
「あ、あの……病気や処方薬のことに関して、師匠に必ず報告するようにと言われてますので……その」
「ん? 何かあったの?」
「え、えーっと……え、エルミナさんが『アシュトには内緒!!』って言ってたのですが、やはり師匠は裏切れないので報告します。エルミナさんが地下の貯蔵用ワインを一樽飲んでしまって、お腹を壊して……整腸剤を処方しました」
「…………そう」
エルミナ、あとでお仕置き。
地下に貯蔵してあるワインは寝かせ用のワインだ。これから数十、数百年寝かせて味に深みを出そうとしているのに……許せん。
「報告ありがとう。後は?」
「えーっと、クララベルさんが包丁で指を切ったんですがすぐに完治。火傷と腹痛のドワーフさんたち、爪が割れたブラックモールさんたちに爪の補修クリームを処方しました。大きな怪我や病気はありません」
「わかった。っと……そう言えば、人狼族の村の往診は?」
「まだです。師匠が戻ってから向かうつもりでしたので」
「そっか。じゃあ、明日にでも行けるように準備しよう。フレキくんのことだし、足りない薬品や持っていく薬品はリストアップしてあるんでしょ? 今日はそっちの準備をしようか」
「い、いいんですか?」
「うん。あとエンジュは……」
エンジュを見ると、マンドレイクとアルラウネを追いかけて遊んでいた。何やってんだよあいつは……。
「おーいエンジュ!!」
「ん、なんやー?」
「ちょっとこっち来―い!!…………あのさ、お前ってダークエルフの里に帰らなくてもいいのか?」
「……え、うち追放されるん?」
「違う違う。フレキくんみたいに里帰りしないのかってこと。緑龍の村で仕事してくれるのはすごく助かるけど、たまには実家に帰るのもいいんじゃないか? フウゴやライカもいるし……」
「あー……確かにそうやな。つーかあいつら、またここに来たいゆうてたしな。うちの話を聞かせてやるのもおもろいやん」
「しばらく留守を任せてたからな。フレキくんもエンジュも、実家に顔を出してきなよ」
というわけで、フレキくんとエンジュを帰省させることにした。
フレキくんの護衛にマカミちゃん、エンジュの護衛にバオブゥさんとサラマンダー数名を付けてやる。
エンジュがフレキくんと離れ離れになることにやや難色を示したが、それ以外は普通だ。
乗り物は、バルギルドさんが調教したクジャタに乗って里帰りをする予定だ。
さて、帰省して休んだ分、しっかり仕事をしないと!!
◇◇◇◇◇◇
時間は少しだけ戻り───ビッグバロッグ王国から戻った夜。
ノーマは、ビッグバロッグ王国でのお土産を家族に配っていた。家にはディアムド一家も揃っている。
「これ、お母さんとネマさんにお土産!! かっこいいスカーフ見つけたからさ、首に巻いてみてよ!!」
「あらステキ。ありがとね、ノーマ」
「あたしにも? ふふ、ありがとう」
「で、これがお父さん!! お父さんと言えばお酒でしょ!!」
「む……ありがとう」
お父さんと言えばお酒。
少し釈然としないが、ビッグバロッグ王国の名工が手掛けたデザインの瓶に入った琥珀色の液体は、バルギルドの興味をそそる。
「シンハにはこれ。ナイフの詰め合わせセットだって」
「うぉぉ!! ありがとう姉ちゃん!!」
シンハには、武器屋で買ったナイフの詰め合わせセットだ。
大きな解体用ナイフから、投擲用の小さなナイフが十本入っている。なんとなくシンハが好きそうなので購入したが、大当たりだった。
「エイラにはこれ。リュックとぬいぐるみ。あとツノに付けるリングだよ」
「わぁ~……おねーたん、ありがとー!!」
「どういたしまして!!」
エイラは、魔獣の皮で作られた可愛らしいリュックと、モフモフの羊ぬいぐるみ、そして手首に付けるリストリングだが、ツノに付けるとぴったりだった。
さっそくリュックを背負い、部屋中をグルグル回る。エイラはネマの胸に飛び込み満足そうにしていた。
「キリンジにはこれ……その、武器屋で買った最新式の弓で、クロスボウっていう武器……」
「クロスボウ……すごい、見せてくれ」
「う、うん」
剣や斧など、状況によって武器を持ち変える戦いをするキリンジは弓も使う。見慣れない弓に興味津々だった。
「なるほど、弓を番えてここを引いて固定……この取っ掛かりを引くと……おお、面白い!!」
キリンジは、満面の笑顔をノーマに向けた。
普段から冷静なキリンジがこんな笑顔をするのは珍しい。というか、ノーマに向けられたのは初めてだった。
「ありがとうノーマ!! これ、すっごく面白いよ!!」
「う、うん……っ!! よかったぁ……」
「あのさ、よかったら一緒に狩りに行かないか? この弓、使ってみたい」
「い、いいよ? その、あたしでよければ」
「うん。ノーマには前衛を任せたい。俺はこの弓……クロスボウで援護をするから」
「う、うん!!」
「あ、じゃあおれも「シンハ、ちょっと黙ってなさーい?」……は、はい」
なぜか母アーモに睨まれたシンハはすくんでしまった。
ディアムドは、バルギルドと飲もうと大量に購入した酒をバルギルドに見せる。
「……今日は飲むか?」
「……ああ」
息子と娘の雰囲気に、少し寂しさを感じる男二人だった。
応援ありがとうございます!
43
お気に入りに追加
24,142
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。