午後の紅茶にくちづけを

TomonorI

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第2章 ダージリン・セカンドフラッシュ

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金曜日、それは義務的に学校に行かなくてはならない1週間の終わりの日でその蓄積された疲れがピークを迎えベットから外に出ることさえも酷な曜日。
しかしそれと同時に次の日から始まる土日休みに向けて沸き起こる楽しみに胸を馳せる曜日であるが、今の紅音にとっては圧倒的に前者が強かった。
今日も一日学校に着ていったアレンジしまくりの制服をやっと帰ってきた自分の部屋で脱いで気にせずにその辺に放ると、自分のベットに用意していた部屋着に着替え始める。
肌触りのいい生地でできた真っ赤なミニキャミワンピースを頭から被り、さらにその上から薄手のカーディガンを羽織るとやっと開放感を感じて思わずうーんと伸びをする。
すると背後の方から部屋のドアをノックする音が3回聞こえた。
返事をする訳でもないがドアの方に目をやるとドア越しに女の子の声で話しかけられる。

「あの、お姉様っ!!…あの…私、入ってよろしいんでしょうか…?」

よく聞き慣れたその声は変に緊張しているようで後半につれてごにょり少し聞こえずらかった。
着替えは終わったが部屋の外でずっと立たせている訳にもいかないのでメイクも落とさないままドアを開ける。
内開きのドアを開けると夏服姿の智瑛莉が手前で荷物を手にして緊張した面持ちで立っていた。
部屋着姿の紅音が見えるとその露出の多さで大人っぽい部屋着なのに幼さの残る体格のギャップに智瑛莉は思わず見てはいけないものを見てしまったように目をそらす。
いつもは舐め回すように自分を見てくるくせに部屋着になった途端に見向きもしなくなった智瑛莉にムッとした紅音はふんっとそっぽを向く。

「別にずっと立っときたいならずっとそこに突っ立っときなさいよ」
「嫌です!!嫌です!!それなら中から出れない方がよっぽどマシですぅ!!」

そのままドアを閉めようとすると急いでその前に部屋の中に入ってきた智瑛莉はその勢いで背を向けた紅音を抱きしめる。
ドアも空気を読んでかバタンと勝手に閉まり2人だけの空間になった。

「もうっ!!離しなさい!!汗臭い!!」
「えっ?あぁ、すみません!!」
 
肩を押して汗臭いと引き離すと智瑛莉はちょっと距離を置き大慌てで自分の匂いを確認する。
紅音はムッとした表情のまま腕を組むと部屋で1番大きな家具である真っ赤なシーツと黒の枕のあるクイーンサイズのベッドに1人で腰掛ける。

「お姉様ったら…制服はハンガーにかけないとシワになりますわよ?」

床に放ったらかしにされていた紅音の制服に気づいた智瑛莉はそう言いながら制服を拾い上げる。

「その辺に掛けといて」
「わかりました」

ベッドに座ったまま足を組んで動こうともしない紅音は始めて自分の部屋にきた智瑛莉にさえ構うことなく真っ赤な壁紙の壁を指さして指図する。
しかし智瑛莉は嫌な顔ひとつせず指のさされた方を見ては黒のハンガーに制服をかける。
シワの寄らないように壁にかけてから整えると何も言わずにギュッと制服を抱きしめて匂いをかぐかのように顔をうずめる。
二個下の少女の怪奇的な行為に紅音は思わず鳥肌が立つ。

「何してんのよ気持ち悪い」
「だって…お姉様の匂いを感じていたいんですもの…」

胸元のスカーフとスカート丈をあたかも紅音の身体かのように撫で回して匂いを満足気にくかくかと嗅いでいた。
純粋にここまで自分に対して興味のある智瑛莉に羞恥と気味悪さを感じてカーディガンを羽織っていても肌寒さを感じた。
こんなことを平気で本人の目の前でやる智瑛莉と2泊過ごすのかと思うと紅音はため息を漏らさずにはいられなかった。
智瑛莉がこの土日休みに紅音の家に泊まることになったのは数時間前の部活中に発せられた陽菜乃の提案がきっかけだった。
今日の部活もいつも通りに紅茶とお菓子を食べていたら、どうしてだか刻々と近づいてくる期末テストの話題になり気にしないふりをしていた紅音は陽菜乃に赤点のことをいじられた。
睨んだり反論したり無視したりと反抗はしてみたがそんなものは効かない陽菜乃は、ならこの土日休みに智瑛莉にでも勉強をみてもらえと言ってきた。
とうの智瑛莉は嬉しそうに快諾するが馬鹿みたいな冗談と紅音は却下する。
しかし、真美子もそれはいいかもしれませんねと賛成するのでその場の雰囲気と智瑛莉の強引さに流されるままにお泊り勉強会が開催されることになった。
どこかのタイミングで上手く中止にしようとも思った紅音だったが、今後のテストの点数とそれによる補習ができた時のことを考えると仕方なく受け入れる苦渋の決断を下した。
はぁ、っと無意識にため息をつくと未だに制服を抱いていた智瑛莉にやっと声をかける。

「…まったく。本人がここにいるのにどうして制服になんか目がいくのよ」
「え…?」
「ほらいつまで制服でいるのよ。着替えるならとっとと着替えたら?」

紅音はそう言うと智瑛莉に背を向けるようにベッドに倒れる。
背を向けられた智瑛莉ははいと頷くと持っていた荷物から部屋着のTシャツと短パンを取りだし急いで着替え始める。
紅音と違って脱いだ制服は綺麗に折りたたんで鞄にしまい、横になった紅音に近寄る。

「…お姉様、お勉強はいつから始めますか?ご夕食の後からにします?」
「うるさいわね。やっとつまんない学校が終わったんだからゆっくりさせて」

ニコニコ笑いながら問いかける智瑛莉にも紅音は背を向けたまま素っ気なく答える。
そうですか、と智瑛莉はそれ以上何も言わずに大好きな紅音の部屋の中を隅から隅まで眺める。
赤と黒しかない家具ばかりの部屋は紅音らしさが出ていた。
ベッドの反対側には何冊かの教科書ではない本と白紙の五線譜ノートが開かれたまま置かれている木製の黒い勉強机と椅子、黒の床には真っ赤なラグマットが敷かれて高価なはずなのに雑にバイオリンがケースごと転がっていたが、壁には丁寧に三本の種類のそれぞれ違うギターが掛けられて飾られていた。
赤のソファーと黒のローテーブル、黒のチェストと真っ赤なコスメだらけのドレッサー、そしてクイーンサイズのベッド、ここで紅音が毎日生活しているのかと思うと底知れぬ喜びと幸せと少しの興奮を感じる。

「そんなにジロジロ見ないでくれる?」
「素敵なお部屋ですね…、どれもお姉様らしくて」
「あっそう、って、何よっ」
「あれ?誘ってたんとちゃうん?」

詮索しまくる智瑛莉に横になったままやめるように言うと、いつの間にか同じようにベッドに乗ってきた智瑛莉に抱きつかれて肌を重ねられる。
思ってたよりも早かったなと思いながらも関西弁になった智瑛莉に一応身構える。

「そんなわけないでしょ。暑苦しいからはなれっ、っん」

優しく抱き寄せられていたと思えばいきなり強引に左肩を強く倒されて仰向けに身体を寝かされるとそのままなんの了承もなく唇を勝手に塞がれる。
いきなりのことで驚きの方が強く紅音がやめろと行動に移す前に智瑛莉は有利になるようにマウントを取って四肢の動きを確実に封じていく。

「ん、ゃ…んっ…!!」
「んはっ…ごめん紅音ちゃん、しちゃった」

口を離すと嬉しそうに智瑛莉は笑うが紅音は自分の意思とは関係なく無理やりにキスされたことへの苛立ちを感じて思いっきり下から睨みつける。

「謝るくらいなら、最初からしないでよ!!」
「せやけど…やっと紅音ちゃんと2人きりになれたんやもん…それに、こんなえっちな部屋着まで着て…せやのにお預けなんて…抑えられへん…」
「はぁ?意味わかんないしそうだとしても、直ぐにこんなことして馬っ鹿じゃないの!?」

紅音はきつく睨んだまま露出の多い部屋着をカーディガンで隠し、智瑛莉が愛おしさ余って指先を絡めた手に思いっきり爪を立てる。
しかし智瑛莉は痛がることもせずにそれどころか嬉しそうに笑って上に乗ったまま続ける。

「せやろ?なぁ、紅音ちゃん…勉強する気になった?」
「は?」
「まぁ、どうするかは紅音ちゃんに任せるけど…勉強するか…それとも…」

わけがわからずに疑問符をうかべる紅音は智瑛莉がそれともとニヤッと不敵に笑うので嫌な予感がして逃げようとシーツを掴んで暴れるが智瑛莉の力には適わなかった。
短いキャミワンピースからのぞく紅音の子鹿のように細くすらっとして形のいい脚の左側だけを持ち上げてその太ももを自分の顔の近くに見せつけるように抱き寄せる。
片脚だけ持ち上げられると下着を見られないように裾を手で押えた紅音はやめろと睨んでいたが不安げな気持ちは隠しきれなかった。

「…5秒だけ待ってあげるわ。ウチと一緒に勉強するか、それとも…ウチにめいっぱい可愛がられるか…紅音ちゃん決めてや」
「ふ、ふざけないで!!なんなのよそれ!!」
「5,4,3…」

脚を抱えられたままいきなり難しい2択を迫られた紅音はややパニックになりながらも首を左右に強く振ってその場から逃げようと暴れるが笑顔で律儀にカウントする智瑛莉に抑えられてただただ2択の回答時間が削られる。

「2,1…」
「ダメっ、ヤダっ離してっ…っ!!」

迫られた2択の選択肢さえも覚えてられないほどテンパった紅音は逃げようとした頑張りも虚しく、約束した5秒が終わると智瑛莉は小さく紅音ちゃん、好きやとどこか嬉しそうに笑って無防備に晒された紅音の内ももに歯を立てた。

「いっ、たぃ!!あぅ…ん…やだ、っ!!」

噛みつかれると細い脚はビクッと震えそれまで逃げようとしていた紅音の動きは止まり、逆にその痛みに耐えるように大人しく手や身体に力を入れる。
その反応が面白いのか智瑛莉は歯形が残るほど強く噛んではわざとらしくちゅうっと音を立ててゆっくりと口を離す。
くっきりと智瑛莉の歯型の残った紅音の白い内ももはそこだけが絵の具でも塗ったかのように赤くなっていてさらに舐められたヨダレで濡れていた。
紅音は顔を握りしめた手で隠して悔しそうにしていたが、その意志とは反対に脚は痛みからか恐怖からか小さく震えていた。

「んふふ…紅音ちゃんて、ホンマに内もも好きやねんやなぁ…」
「う、るさい…っ!!…離して」
「そらアカンよ。今は…ウチが紅音ちゃんを可愛がる番やん」

噛んだ場所を恍惚の表情で眺めると反抗してくる紅音にまた不敵な笑みを見せると次は先程よりも脚の付け根の方に寄せて歯を立てる。
その時ずっと見られまいと紅音が裾を抑えていた手を払った。

「ひゃあっ!!あっやだ、っ…馬鹿っ…あぅ…!!」
「どぉ?気持ちえぇ?」

ビクビクと震える紅音の脚をそう問いかけながら噛んだところを癒すように舐める。
そんなわけないと首を振る紅音だったが、口を抑えていなければそれっぽく聞こえてしまうような声が自然と漏れてしまう自分を情けなく思い、痛みの分もあって涙が浮かんでくる。

「ね、ぇっ…お願い、もっ…やだぁ、ひゃっ」

智瑛莉がわざとらしく何度も立てる水気の多い音がする度に、普段なら感じない痛みと程よく熱くねっとりしたものが内ももを這うようなくすぐったい感触がして不本意にも腰や脚など下半身は智瑛莉から与えられる刺激に反応する。

「泣くほどええん?嬉しぃわぁ」
「ち、ちが…っう!!痛っ…嫌だっ…」

口を両手で軽く教えながらずっと首を横に振っている紅音にお構いなく智瑛莉は自分が噛み付いて出来た歯型の数と大きさを確認すると満足気にところどころ濡れてる左脚をゆっくりと指の腹で撫でた。
んんっとくすぐったさから紅音は内ももをもじらせる。

「で、どぉする?紅音ちゃんまだ続けたい?」
「やだっ、もぅ嫌だっ…離してっ…お願い…」

とうとう零れ出した涙を見られまいと両手の甲で顔を隠す紅音はもう反抗する力も気力も持ち合わせていないらしく大人しく智瑛莉に懇願する。
泣きながら自分に頼んでくる紅音の珍しい姿を見ると優越に浸った。

「うん、分かった。今日はここまでにしよか」

智瑛莉はニコッと笑うと脚を降ろして乱れたミニキャミワンピースの裾を整えてさらにベッドの足元の方にまとまっていたタオルケットを被せてやる。
紅音は枕元にいくつか並べられていた赤いクッションを1つ雑に手にするとそれに顔を填めてタオルケットにくるまって、あからさまに拒絶される。
やりすぎたかなとも思ったがここまでしないと、やる気になってもらえないと思った智瑛莉はタオルケット越しに紅音の頭を撫でる。

「紅音ちゃん…ごめんな。ちょっとやりすぎてしまったかもしれんな」

紅音からはなんの返事もなかったが、頭を撫でている手を振り払おうとはしなかった。

「せやなぁ…お風呂上がったら勉強しよな。それまで休んどき」

愛おしそうに紅音を撫でた智瑛莉はそれだけ言うとベッドから降りて、持ってきた自分の荷物からお泊まりの用意を始める。
ベッドに残された紅音はさらに身を縮こめているのか何回かゴソゴソと動いてた。










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