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第七章 龍が飛ぶ国。
95 懐かしき和のお祭りと遭遇。
しおりを挟む三月べにです! お久しぶりです!
二年以上の深刻スランプをようやく抜け出せました……!
『無理しない』を合言葉に、時間をかけて『まったり』が書けないスランプから抜け出せると信じてました……! プレッシャーに圧し潰されまいと、他の小説をたくさん書いたりして、ひらすら待ってました、脱スランプ。
皆様には長らくお待たせしてしまいました。待っていてくださり、ありがとうございます(´;ω;`)
♰♰♰♰♰♰♰♰♰
龍神の加護がある龍雲の国。
煙玉型の転移道具だったから、包み込む煙が晴れて目にした光景は、妖の世界に迷い込んだような気分だった。
瓦の屋根の屋敷が並び、ぶら下げられた提灯が並び温かな光で街を照らす和風の光景。
私達は、巨大な門の下にいた。
それに呆気にとられて見上げていれば、空を泳ぐ巨体にも気付く。大蛇と表現するにはあまりにも大きな巨体がうねり、動いていている。話に聞いていた龍だ。
雲のように頭上にある龍。
龍雲。それがこの国の由来だった。
ちなみに、それが龍神様のお身体だ。
「約束は夕食の時間だから、それまでは観光よ」
黄色の揚羽蝶の刺繍が施された振袖とフリルをふんだんにあしらった深い青色のロングスカート姿のレクシーが先陣切って門をくぐる。
「お祭りの音がしますにゃ!」
巫女風の着物姿のキャッティーさんもご機嫌に尻尾を揺らしてついていく。
「たくさんの食べ物の匂いもしますね」
紫色の蝶が描かれた長い袖と前開きになる暗い紫色のロングスカート姿のセティアナさんも、スンと鼻をひくつかせてあとに続く。
私も空気を吸い込んだが、仄かに食べ物の匂いが嗅ぎ取れた。それに懐かしい気持ちにさせる祭囃子も耳に届く。吸い込まれるみたいに、足が進んだ。
レクシーの護衛も和装で馴染んでいるけれど、先頭を突き進んで周囲を警戒している。
彼らについていく形で進めば、到着したのは華やかな夏祭りのような空間だった。外見は、和風というより中華風寄りを思わせる建物だけれど、人々の服装は和と洋を絶妙に取り入れたもののようだ。
二階のベランダには、お囃子なのか、太鼓を並べて奏でている一行が見える建物もあり、賑やかだった。
小鳥の合唱のような軽やかな笛の音も響く。
「今日はお祭りなの? レクシー」
「いいえ、ここはいつもこの賑やかさなのよ。この時間は特にね」
屋台まで並んでいて、お祭りじゃないと言われて驚いてしまう。これは平常の光景。本当に賑やか。
「それでも屋台の食べ物を食べねば!」
びーんと尻尾を立てているキャッティーさんは、目をキラキラと輝かせていた。
「先ずは、たこ焼きですにゃー!!」
「あ! キャッティーさん! はぐれてしまいますよ!」
ドジっ子属性キャッティーさんなら、はぐれかねないと慌てて追いかける。
でも、ぴたりとキャッティーさんが足を止めた。危うくぶつかりかけてしまう。
どうしたのかと思えば、屋台の一つに気をとられている様子。
「お面、買っていきましょうにゃ!」
食よりお面を選んだことに驚きつつ、特に留めなかった。
「店主! お面を四つくださいにゃ!」
「ん? なんだ、外国の方かい? 龍雲の国にようこそ! 好きなの、選ぶといい」
屋台の中にいたのは、にかっと笑いかける中年の角刈りの男性。
「お面は魔除けだ。不幸を跳ね返してくれるよ」
魔除けの意味合いが強いらしいお面を、見てみた。
陳列されたお面は、前世の日本ならキャラものが並んでいただろうけれど、こちらは妖のお面のように見える。龍のような凛々しい顔が描かれた面があれば、目を模っただけのシンプルな白い面まであった。
でもどうやら選ぶ権利があったのは、購入者のキャッティーさんだけだった。
「みんなで猫さんのお面をつけましょうにゃん!」
と、いうことで猫を彷彿させる仮面を渡されたのだ。
私は水色の猫の面。ちゃんと猫耳がある仮面だった。レクシーとセティアナさんは同じ黄色だけど、微妙にデザインが違う猫の仮面。一つ一つ、化粧が違うデザインになっているとのこと。そして、キャッティーさんは赤い猫の仮面。
互いに髪型を崩さないように、頭のサイドにつけ合った。
ルンルンした足取りで、キャッティーさんは今度こそたこ焼きの店へ到着。
「おっちゃん! たこ焼き、二つ!」
「はいよ! 元気なお嬢さんにはひと玉、サービスだ!」
「やったにゃーん!」
キャッティーさんの注文に気をよくした店主は、笑顔で対応。
そのあまりにも自然なやり取りに唖然としているレクシー。
「馴染むの、早いですね」と呆れ交じりに感心するセティアナさん。
そんなセティアナさんとキャッティーさんは、たこ焼きが出来上がる過程をじっと凝視した。
鉄板の穴に注がれた生地がぐつぐつする頃合いで、一口サイズより大きなタコの足がポッポッと一つずつ放り込まれては、クルクルとリズミカルにひっくり返される。そうして出来上がる球体。
次は、パックの中にポンポンと移されていき、タレを塗りたくられては、鰹節と青のりまで添えられた。正真正銘のたこ焼きが出来上がった。
「たこ焼きー!」
キャッティーさんと同じくらい感激したが、叫ぶのはグッと堪えておく。
私とレクシー、キャッティーさんとセティアナさんで分けて食べることに。
セティアナさんは様子見でキャッティーさんを観察。キャッティーさんは出来立てでもお構いなしに自分の口の中に放り込んだ。
「ほふほふっ! あふあふっ!」
熱い熱いと、ジタバタするキャッティーさんが涙目になる。
「おバカ!」と、レクシーは呆れ果てて叱る。
苦笑した私も、キャッティーさんの無事を確かめたあと、ふーふーと息を吹きかけて冷ましたたこ焼きにかじりつく。サクッとした表面と、とろみが残る中身が熱い。
タレのこの味が懐かしい。思わず、ふふっと笑ってしまうくらい。気分は、お祭りだ。
「爪楊枝では取りにくいですね……」
「中にあるタコを狙うのがコツですにゃん!」
「ああ、なるほど」
たこ焼きを口に運べないセティアナさんにドヤ顔でアドバイスするキャッティーさんのそれを聞いて、納得してしまうレクシーがいた。愉快である。
あら。タコも歯ごたえがあって美味しい。
一つおまけをもらったので、ブラウスの襟に潜んだロトにもこっそり。一個だけでも「はふはふ!」と食べるのが大変そうな妖精さんだったけれど、満足そうにタコもしっかり平らげた。
「飲み物も買っていきましょうにゃん!」
ルンルンした足取りで進むキャッティーさんがすれ違うのは、浴衣姿の龍雲の国の国民。
レクシーが言うには、浴衣姿でここを利用することは龍雲の国の国民の常識らしい。
ので、浴衣姿ではなく、流行りの着物姿の私達は一目瞭然で外国人観光客なのだという。
「かちわりだしたっけ? ビニールお氷のカラフルな飲み物」
「そうだったと思います。甲子園名物でしたっけ? 氷とシロップの飲み物だったかと」
「そうなんですかにゃ!? 初めて知ったにゃん……」
「カラフルな飲み物ならば、あれでは?」
前世の祭りを思い出してみたけれど、あるとは限らない。ここは異世界だもの。
セティアナさんが見つけたのは、プラスチックらしき透明な容器に果物とカラフルなジュースが入ったカップ。ストロー入りだ。
イチゴ、オレンジ、ブドウ、パイナップル、メロン、ココナッツだった。見た目も綺麗なジュース。
レクシーはイチゴを選び、私はロトが選んだのでメロン、キャッティーさんはパイナップル、セティアナさんはココナッツを選んで喉を潤した。
「ハッ!? リンゴ飴ですにゃ!」
「あなた、ちょっと落ち着きなさいな!」
目を移りしているキャッティーさんを窘めたレクシーだったが、行ってしまったあとだった。
「あら、餅の磯辺焼き。美味しそう」
「ローニャまで! まだ食べるの!?」
「一緒に食べましょう、レクシー」
「しょ、しょうがないわね……。一つだけなんだから」
醤油が香ばしい焼き餅が串で売られていたから、ついつい食がそそられたので、レクシーに微笑みかけて一緒に一本を分け合った。もちもち、美味しいわ。
セティアナさんもキャッティーさんに誘われて、リンゴ飴を一緒に食べている。
赤や黒だけではなく、水色もいる金魚すくいを覗き込み、射的屋の様々な景品を眺めた。
風鈴屋さんが、涼やかな音色を奏でている。どんどんと食べ物の匂いで満ちていく。
空が夕焼けに染まる度に、人も多くなってきたみたいだ。
ゆるりと動く頭上の龍の身体。日常的にあるそれを、誰も気に留めていない様子だった。
「すごい光景ですよね」
同じく初見のセティアナさんも、私と同じく龍の身体を見上げて呟く。
落ちてきたら街なんてひとたまりもない巨体だものね。
「あの龍と対面ですか……」
口にしなくとも、不安は伝わった。
今回説得するのは、龍のために用意された贄姫の少女。龍本人とも対面は避けられないが、一応龍からこの説得の機会は与えられている。レクシーが直談判したところ、龍から『出来るならしてみるがいい』という返答が返ってきて、設けられたのだとか。
「専念すべきは、贄姫の方です」
私としては、ちゃんと説得出来るかが不安だ。
生贄の立場に甘んじているらしい少女に、どんな言葉なら響くのだろうか。
「あう~」
襟から飛び出すロトが、ちょんちょんと首をつつかれた。
どうしたのかと思えば、綿あめをご所望らしい。
買いました。
ちょこっと摘まんで、渡しておけば、首元で「もっもっ」と食べている気配。
私もかじりつく。甘くてふわりと溶ける。
「セスが喜びそう」とセティアナさんが言うから「お持ち帰りするより、作ってあげた方がいいでしょうね」と作り方を考えておいた。
それがいいと「あい~!」とロトが賛成したから、店に来る妖精さん達の分も作ってあげましょうか。
「そろそろ時間ね、行きましょう」
レクシーが言うので、龍の頭が突っ込んだような巨大な城へと向かう。
自国と違って、和と中華を両立したような城だった。一際大きな建物であり、広々とした要塞のようでもある。
贄姫の彼女の住まいは、龍雲の国の龍神様の住居でもある一番高い塔にあるため、そこが目的地。
全てが繋がっているようなお城だけれど、外から入る私達は先ず立派な城門を通る。
城の者の案内がついて、城内へと入った。
とんでもなく広い廊下が続く。人気が少ないから、しんみりと静まり返っている建物だが、豪華爛漫な壁や装飾だ。天井は遥か上。吹き抜けになっていて、お目当ての人物に会うには七階まで上がらないといけないんだとか。
「んにゃ? にゃんだか、ここ、変ですにゃ」
ふと、足を止めたキャッティーさんが廊下の壁を凝視している。
あ、嫌な予感。
凝視しているところに迷わず手を伸ばすキャッティーさん。その指先がガコリと音を立てて壁をへこませた。
途端に、ガシャコン! と鉄格子がキャッティーさんとセティアナさんの目の前で廊下を塞いだ。
キャッティーさんは危うく挟まりかけたが、反応したセティアナさんが素早く首根っこを掴んで引っ張ったので免れた。
「にゃにゃん!?」
「あなた! 何してるの!?」
驚愕の勢いでレクシーがキャッティーさんを叱りつける。
キャッティーさんはそういう人なのだ。トラップを引き当てるようなドジっ子体質なのだ。
でもまさかお城の中でトラップを当てるなんて……。
お城の防御システムなのだろうか? なんて、案内の人を見てみれば。
「そ、そんな! こちらの塔の罠は何百年も前に取り払われたはずなのに!」
と、一番驚愕して青ざめていた。
撤去されそびれたトラップをわざわざ作動させるキャッティーさんって、一体……。
騒然として、案内は一旦中断。
撤去作業をするために城勤めの方々が右往左往と慌ただしくなる。
「大丈夫ですか? 二人とも」
「びっくりしましたにゃん……」
「私のセリフですよ……」
鉄格子を引っ込められて合流。レクシーにこっぴどく叱られて意気消沈して尻尾を垂れ下げるキャッティーさんと、話には聞いていたから呆れ果てているセティアナさんが困り顔だ。
「ローニャ! 黙ってて!」
急にレクシーが私がサイドにつけていたお面を顔に被せてきたかと思えば、黙るように言われてしまい、お面の下で目を真ん丸にした。
目を離した隙にどうかしたのだろうか? やけに切羽詰まったような……。黙ってと言われてしまったので大人しくしていたが……――――。
「――――これはこれは、ベケット嬢。自国に戻っていると伺っていましたが、戻ってきたのですね。ご機嫌よう」
冷たい女性の声が耳に届き、凍り付いた。
凍り付いた心臓は遅れたように、バクバクと軋みながら脈打つ。それが痛い気がした。
じっとりと手汗を握って息をひそめる。視線は落としたまま、決して顔を上げない。
「ガヴィーゼラ伯爵夫人。奇遇ですわね、ご機嫌よう」
壁になるように立っていたレクシーが、対応した。
……やっぱり。ガヴィーゼラ伯爵夫人――――つまりは、私の母がいる。
眩暈がしそうだ。息が詰まる。
動揺しないように、ただ嵐が過ぎ去ることを待つ。
キャッティーさんが右横で前に出て頭を下げた。それに倣うように、セティアナさんも左横で頭を下げる。
二人も私を庇うようだった。守られていることに安堵して、私も頭を下げる形にしておく。
冷たい美貌の彼女は、着物ではなく洋風のドレス姿のようだ。
「こちらにいらっしゃるということは、贄姫様に挨拶でしょうか? それとも龍神様へ?」
「龍神様にお目通りしたかったのですが、断られてしまいましてね。ベネット嬢は?」
「わたしは贄姫様とお約束があるのですわ」
「まあ、相変わらず無駄がお好きなこと。わたくしの娘とも無駄と思える交流をなさっていたようですが……今となっては交流自体が無駄でしたわね」
背中姿だけでもわかる。レクシーの怒気が伝わった。
レクシーは冷血なガヴィーゼラ家が嫌いだと私との初対面でも言っていた子だ。無論、母のことも嫌いである。
怖くて見られてないが、いつものように冷たい美貌で見据えているに違いない。
「まったく。生んだことが無駄でしたわね」
「っ……」
「贄姫もすぐにいなくなる存在。交流は無駄でしょうに。ああ、忙しい。我が家に泥を塗られてしまったから、挽回しなければ。お暇で羨ましいですわ。では、ご機嫌よう」
冷たい言葉の刃が刺さった。
恨まれてもしょうがないとは割り切っていたけれど、そう言われてしまうのは、いくら何でも傷つく。
いつものレクシーならば噛みついただろうけれど、この場には私も居合わせている。気付いていない様子だから堪えてくれたみたいだ。
立ち去る母を、レクシーは睨みつけていた。
でもすぐに振り返って、私を抱き締めた。
「ごめんなさい、ローニャ。まさかいるとは思わなくて」
「う、うん……」
「大丈夫?」
「……うん」
カタカタと震えてしまう手で、なんとかレクシーを抱き締め返す。レクシーは、ギュッと腕に力を込めた。
「……あのローニャさんの容姿だけが似た方が、母親ですか?」
セティアナさんが警戒したように廊下の先を見つめながら尋ねる。
「似てないでしょ! ローニャは似てなんかないんだから!」
言い聞かせるようにして、レクシーはまたぎゅうぎゅうに締め付けてきた。
「いたこともビックリですが……本当に発言までお冷たい方ですにゃん」
背中をさすってくれるキャッティーさんは、ぺしょんと耳を垂らしたままだ。
「眼差しも声音も言葉選びも、雰囲気までもが、冷たいですね……。逆に驚きですね、先程の方と血縁関係にあることが。一度、どこかで休ませていただきすか? ローニャさん」
セティアナさんも、肩を撫でてくる。
それには首を振って見せた。約束の時間があるのだから、休んではおけない。
「大丈夫です」
「顔。真っ青ですよ」
「……」
微笑んで見せたが虚勢がバレバレで、気遣う眼差しが注がれる。
まだお面をつけているべきだったわ。
「ロトも涙目よ」
襟元にいるから見えないけれど、そこでプルプル震えていることはわかる。掌に乗せて確認すると、つぶらな瞳をウルウルさせて泣き出しそうだった。大丈夫ですよ、と込めて、人差し指で頭を撫でたけれど、ひしっとそれに抱き着かれてしまう。
「どうする? 念のために帰る?」
「いいえ、レクシー。せっかく約束を取り付けたのだから、説得に行きましょう」
不安げなレクシーは、また遭遇して、今度こそ私がいることがバレてしまうことを恐れているよう。でも迷いもある様子だった。私に後ろめたそうにしている。
今回の説得の切り札は、私が持っている。大精霊のオリフェドートの威厳だ。
オリフェドートなら、この国の龍神様と真っ向からぶつかって、生贄問題を解決してくれるだろう。
でもその前に、私達が出来る限りをしなくてはいけない。龍神様もまた、説得の機会をくれたように、私達はその説得を成功させれば解決するかもしれないのだから。
私も怖い。万が一にも母と再会なんて、ゾッとする。
正直、もう一生会うこともないと思っていたのに。
こんなバッタリ遭遇するなんて、悪魔との遭遇並みに最悪である……。
実の母親に対して、表現が悪いとは思うけれど”生んだことが無駄”と蔑まれているのだから、しょうがない。
「うん、切り替えていきましょう」
幼い少女の命がかかっているのだ。
私のトラウマは振り払って切り替えていこう。私は意志を固めた。
「ありがとう、ローニャ。無理はしないでね」
「大丈夫よ。忙しいと言っていたし、もう帰ったでしょう」
何かガヴィーゼラ伯爵家の名誉挽回になることがあったみたいだけれど、龍神様と面会を断られたと言ったし、あちらも切り替えて他の手に移るのではないだろうか。そうなれば、すぐに帰ったと思っていいはず。
レクシーの頭を一撫でして、にこりと笑って見せる。ホッとした様子からして、今度は上手く笑えたみたい。
そういうことで、案内役に気を取り直して案内を続行してもらった。
エレベーター式の転移魔法陣が敷かれた『移動の間』に入って、階段を上らずに七階へ。
贄姫の住まいだと言う廊下へと進み、一つの広間に通された。
円形の黒いテーブルをポツリと置いた広間。そこについているのは、一人の少女。
艶やかな黒髪は、顎の長さで切りそろえた前髪を真ん中分けにして、あとは簪でまとめられて髪型。
小顔は色白で、とても小柄な印象。まるで人形のように無感情の顔。大きな黒い瞳も、生気が漲るような感じはない少女だった。
「お待ちしておりました、レクシー嬢とご友人様方」
鈴の音のような可憐な声が、私達を淡々と歓迎する。その表情は、微動だに動いた様子がない。
彼女が、生贄の立場を受け入れてしまっている少女。
これは一筋縄ではいかないと、直感で理解した。
♰♰♰♰♰♰♰♰♰
あとがき。
最後まで登場を迷ったガヴィーゼラ夫人。
物語再開! 今後、月一回の更新、頑張ってみます!
2024年3月9日
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