令嬢はまったりをご所望。

三月べに

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第七章 龍が飛ぶ国。

86 望まぬ対峙。

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 生前に読んでいたが、タイトルは思い出せない小説。
 男爵令嬢のヒロインが、悪役令嬢を打ち負かして婚約者を奪う内容。
 ヒロインの名前は、ミサノ・アロガ。
 美しい黒の髪と瞳を持っている気の強さが醸し出された令嬢。
 悪役令嬢の名前は、ローニャ・ガヴィーゼラ。
 水色に艶めく白銀の髪と青い瞳を持った冷たい令嬢。
 冒頭から二人の攻防が始まる。始めたのはローニャ・ガヴィーゼラ。本の山を落として、危うくミサノが怪我をするところだったが「ごめんなさい、わざとじゃなくてよ」と笑った。
 ローニャの婚約者シュナイダー・ゼオランドと親しくなったから、それが理由だとミサノにはわかっていたのだ。
 別の日には、ある生徒が暴発させた魔法をローニャが弾き返して、ミサノにぶつけようとした。ミサノは無事だったが、明らかにわざとだと睨んだ。
 また別の日のこと、魔法対決でミサノと当たり、全力で負かされた。
 ミサノはやられてばかりではいられない攻撃的なキャラクターだ。反撃に出た。
 取り巻き令嬢とお茶会をしているところに、大きめの蜘蛛をたくさん降らせたのだ。
 ローニャは恐怖のあまり固まり、取り巻き令嬢達は悲鳴を上げて逃げ惑った。
 いい気味だと、ミサノは満足気に笑うが、これだけでは済ませない。
 シュナイダーにローニャから嫌がらせを受けていると話し、反撃したことも打ち明けた。
 それでもローニャはシュナイダーを騙して嫌がらせを認めなかったため、攻防は続いたのだ。
 しかし、ローニャはなかなか証拠を残さない。汚い令嬢である。
 よって、ミサノはローニャの取り巻き令嬢達を捕まえ、嫌いな虫の幻影を見せて拷問した。今まで嫌がらせの実行をしていたのだ。いい気味だと、またミサノは優越になった。
 ローニャが指示したと吐くまで、証言すると約束するまで、拷問を続けたのだ。
 そして、シュナイダーとともに、ローニャの悪事を学園の生徒達の目の前で暴き断罪した。
 シュナイダーはその場で、婚約破棄。ローニャは学園を飛び出した。
 ミサノは想い寄せていたシュナイダーを手に入れて、ハッピーエンド。
 それが、ミサノ・アロガ。ヒロインの視点の話だ。
 悪役令嬢ローニャ・ガヴィーゼラに転生した私は、故意に嫌がらせなんてしていない。
 本当にわざとではなかったのだ。
 本を落とした時も、たまたまそこにミサノ嬢がいただけ。暴走した魔法を弾いた時も、たまたまそこにミサノ嬢がいただけ。
 魔法対決は成績もかかっていたし、全力で勝たせてもらったまでのこと。
 ミサノ嬢の反撃の蜘蛛には、恐怖していなかった。驚いていただけで、むしろ可愛いとさえ思っていたけれど、ミサノ視点では固まっていたと見えたらしい。 
 シュナイダーには、ちゃんと嫌がらせはしていないから信じてほしいと頼んだ。
 けれども、その時点で私はもう、二人が結ばれる未来はないと思った。
 生前読んでいた小説は、きっと運命なのだろう。ミサノ嬢とシュナイダーの運命の話。
 その後は、取り巻き令嬢とミサノ嬢の対決だった。
 私も止めたが、虫嫌いな取り巻き令嬢達は、聞き耳を持たなかったのだ。
 私は生前の願いでもあった”まったりしたい”という願望を叶えるために、遠くで生活をする準備をした。
 そして、断罪と婚約破棄を受けて、シュナイダーとミサノ嬢のハッピーエンドを見送り、学園を出たのだ。
 王国の最果てに位置するドムスカーザの街で、私はまったり喫茶店を開いた。
 そこで出逢った人々とまったりと穏やかな日々を過ごしていたのだ。
 望んでいた日々だったけれど。
 美しい黒い髪と、黒い瞳を持つ、気の強さが示された容姿のミサノ嬢。
 彼女がまったり喫茶店に足を踏み入れた。
 私と対峙したのだ。
 サンクリザンテ学園の制服ドレスを着ているから、学園を抜け出して来たのだろう。
 変わらない鋭い眼差しで見てくるミサノ嬢は、未だに私を敵視しているようだ。
 ……第二ラウンドは、ご所望していません。


 
††† ††† ††† ††† ††† ††† ††† ††† †††
あとがき。
新章のプロローグ。
元々このシーンのために、連載を開始したのに七章目になりました。も
不穏な一話目ですが、次回は時間を遡りまったりした話を書こうと思います!
またしばらくお待ちくださいませ!
20200610
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