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◇05 ギルドマスターとレア
しおりを挟む「魔物討伐依頼の理由は?」と、レオはちゃんと必要性を知る情報収集を怠らない。
出来る子……!
魔物は人に危害を加える危険な生き物。そのくせ、食糧にも素材にもなるため、どんな魔物も金になるという話だ。
「説明が丁寧でわかりやすいですね」
「そんなこと……」
ニコニコと対応してくれるギルドのお姉さんを褒めるレオと、メロメロになって腰が砕けてそうなお姉さん。イケメン、罪深い……。
そんなお姉さんからは、仮の冒険者カードを預かる。これで街の中に戻ってこれるし、これを提示してもらったあとに持ち帰った魔物や素材を換金してくれるとのこと。
また荷物が全て盗まれたことにしているレオのために、気を利かせたお姉さんは魔物のオークなら三匹は収納可能なマジックパックも貸し出してくれた。イケメン、役得すぎる……。
そういうことで、仮カードを持って冒険者ギルドを出て、門も出て街を一度離れた。森へ戻る。
「レオ、上手くやってくれてありがとう。すごいよ」
「えへへ、もっと褒めて褒めて」
街から離れたところまで、魔法でビュンッと飛んだあと、ジャケットの下から出してもらったので労いを込めて褒めた。
頭の上まで持ち上げられたので、右翼でなでなでしておく。柔らかい髪の毛、もふもふ。
「じゃあ、サクッと魔物討伐するね」
「えっ。さっき仕留めたヤツを回収するんじゃないの?」
「構わないとは言われたけれど、時間経ちすぎたら調べるとか言って手間になるかもしれないから、今討伐するよ」
そう答えたレオは、またきゅるるっと小さくお腹の虫を鳴らす。冒険者ギルドの用事を済ませたら、すぐにでも食事をとりたいらしい。
多分、昨日の兎肉の残りでは足りなかったのだろうなぁ。私はぴよこなので、足りたけれども。食べ盛りな青年のレオは、お腹を空かせている。
「無理しないでね」
「大丈夫! 楽勝だよ! オレ、この世界の基準だと、かなり強いみたいだしね!」
それはそう。
ビュンビュンと風に乗って森まで引き返してきたレオは、また凛々しい獅子に獣化して、鼻をヒクヒクさせて魔物を探しながら討伐を開始した。
私はまたもや、レオの温かみのあるオレンジ色の鬣にしがみついて、討伐時間を耐える。
レオが感電死させた魔物は、オークらしき魔物が二匹、獅子姿のレオよりも一回り近く大きな猪の魔物。額のツノがエメラルドみたいだったけれど、気のせいだろうか。レア度高そう。
厚意で貸してもらったマジックパックには、ぎゅうぎゅうな感じにしまえた。ギリギリセーフなんだと思う。
「重さは感じないの?」
「あんまり感じなーい。これ絶対買わないとね。いくらくらいするんだろうねー? どれくらい美味しいかなぁー」
マジックパックは重量を感じさせない魔法の道具らしい。
レオにとって魔物は最早食べ物でしかないので、お腹をぎゅるるっと鳴らしている。
帰りも風魔法をブースト代わりにして街へ帰還。門番があまりにも早い戻りにギョッとしていたけれど、ちゃんと中に通してもらえて、冒険者ギルドの先程のお姉さんにも無事に同じくギョッとされたのだった。
「少々お待ちください」と一度席を外したお姉さんは、貫禄ある隻眼の男を連れてきた。
彼の逆立つ短い金髪を、こっそり見上げて気付く。
この世界の人達、髪色カラフルだなぁ。おかげでレオのオレンジ頭も目立たないみたいだ。比較的、色素が薄い髪色が多いように見受けられる。水色っぽい銀髪や、金髪やピンク頭が目を引く。
「ここの冒険者ギルドのギルドマスター、デイドリヒ・ロイドだ。いくつか質問をさせてもらいたい。先ずは、魔物は討伐したのか?」
「はい。三匹、詰めてきました」
ギルドマスターのお出ましか。厳しい目付きで警戒心を持って問う彼に対して、レオは笑顔で対応した。
「どんな魔物を?」
「えっと、豚顔の丸々太った魔物を二匹と、緑の角を生やしたでっかい猪みたいな魔物を一匹」
「「!!」」
驚愕で目を見開いたのは、ギルドマスターとお姉さんだけではない。受付カウンターの向こう側で聞こえていた他のお姉さん方と隣の受付に並ぶ冒険者達からも、驚いている気配を感じ取れた。
「解体作業場へ」と、ギルドマスターは移動を促す。隣の部屋は、すぐに魔物を解体してくれる作業場らしい。広々としている空間に、さっきの獲物を置けそうだ。出して見せろと言われたので、レオは借りたマジックパックからそれらを出した。
「本当にオーク二匹を……! そして、ストーンボア!!」
「なんて大きな魔宝石……!!」
オーク二匹を短時間で倒したことに驚かれたし、ストーンボアなるものの額の角の大きさにも驚かれたみたい。
興奮したギルドマスターの質問にレオはすらすら答えていき、お姉さんはメジャーでエメラルド色の角の長さを測っている。
なんか、レオが雷魔法で瞬殺したと聞いてドン引きしていた。「ストーンボアを? え?」と二回も聞き返していたので、名に“ストーン”がつくくらいだから、多分雷魔法は相性が悪いはずだったのだろう。
しかし、相性が悪くても強さがカンストしていれば、押し切れるところってあるよね。脳筋で押し切ったのである。うちの子が強くてすみません。
聞いた話、レオは心臓をピンポイントで狙い撃ちして感電死させたらしい。その件には私もドン引きである。他の部位を少しでもいい状態で引き渡したかったとは言え、心臓狙い打ち感電死とか……。絶対仕留めるマンじゃないか。強い。
魔宝石と呼ばれるエメラルド色の角だけでも大金になるというけれど、そもそもこの世界のお金を知らないレオと私は「そうなんだ、へー」という反応しか出来なかった。興奮していたお姉さんは、自分との温度差に気付いて恥ずかしそうに俯く。なんかごめん。
買取のために解体を始めて、そのあとまとめて換金してくれるとのこと。解体作業員に任せて、次は冒険者ギルドの二階の部屋へと案内された。
ギルドマスターとレオの二人きりで、応接室のように対になったソファーに向き合って座ったところ。
「だいたい質問に答えてもらったが……あと、一つ。そのジャケットの下の生き物はペットか?」
ジャケットの下に隠している私について問われて、流石にヘラヘラと受け答えしていたレオにも緊張が走る。
「……何か問題でも?」
打って変わって警戒を滲ませて尋ね返すレオに対して、ギルドマスターも緊張で身構えた。彼も心臓をピンポイントで撃ち抜かれたくなかったのだろう。
「いや、隠しているのだから、念のための確認だ。魔物でも招き入れてトラブルを起こされては敵わない」
「魔物じゃない」
「ッ……!」
レオの口から鋭い声が飛んだ。
ギルドマスターは、その剥き出しになる敵意に顔を引きつらせた。
私を魔物扱いされて怒っているのだろうけれど、ギルドマスターの立場を考えると致し方ない。ここはもう存在がバレているのだから、大人しく姿を見せた方がいいだろう。
「ぴよ」と、レオに落ち着くように声をかけるように鳴く。宥められたレオはしぶしぶ、両手に持って私をジャケットの下から取り出して自分の膝の上に置いた。
ちょっと大きなぴよこです。無害です。飛べもしませんよ。
ということで、こてんと首を傾げて可愛さアピールをしてみると。
「ぬわあああっ!!」と、ギルドマスターはソファーの背凭れを越えてひっくり返ってしまった。
なんだ、そのオーバーリアクション。私は愛くるしいぴよこですよ。無害ですよ。
「か、かかか、神様の眷属様ではありませんか!!!」
がばっと背凭れの向こうから強面の顔を出したギルドマスターは、そう叫んだ。
神様の眷属様…………?
私はぴよこですよ……?
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