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序章
10 強敵。
しおりを挟む虫の知らせを、感じたことがある。
それは両親が死を伝えられた日のことだ。
家で大人しく帰りを待っていた。その家は、普段よりも異様なほど静まり返っていたのだ。今思えば、それが虫の知らせだった。
怖さすら感じ始めてきた静寂の中、ドアが叩かれて喜んで開いたのだ。
そこに立っていたタイリースさんに、告げられた。両親の死。
あの件以来、ネマさんと目が合うと必ずにこっと笑みを送られる。だから、私もにこっと笑い返すことにした。
双子のカランとクランには、すっかり懐かれたみたい。
「ノークス兄さんイケメン!!」とか「男の中の男!!」と褒めちぎられた。
ちなみに心配していたネマさんのファンのお呼び出しはない。代わりに目に入ると睨まれるということが多くなった。「ネマさんをお姫様抱っこした野郎」としっかり認識されたようで、冒険者からの殺気が刺さる。
でもそんな敵意の視線が刺さる中、私は静寂を感じていた。
冒険者で賑わうギルド会館なのに、自分を取り巻く空間だけ静まり返っているように思えたのだ。
なんだろう。そう思っていると、その知らせが届いた。
「大変だ!! シルバーランクの森で、パーティーが壊滅させられていた! ありゃ『ドムステイワズ』のメンバーだと思う!!」
一人の冒険者の報告に、身体が先に動く。
ギルド会館を飛び出そうとしたのに、首根を掴まれて止められた。
見上げれば、ギルドマスターのリグルドさんだ。
「武器も持たずにどこに行くつもりだ?」
「あっ」
私はギルドの制服だった。武器は更衣室だ。
「だいたい、動転しているのに行かせられない。オレ達が事情を把握しておくから、お前は家に戻って知らせてこい」
「っ! オレが確認します!」
私の属している団体だとわかっているリグルドさんはそう言うが、森に行ってこの目で確認すると返す。
「だめだ。家に戻って、仲間に知らせてくるんだ。それがお前の役目だ」
「っ……」
向き合う形で、真剣に告げられた。
私は、家に向かう。足取りは重かった。
仲間の死を伝えるのだ。誰かはまだはっきりしていないけれど、仲間の誰かが死んだと話さなければいけない。誰だとしても、悲しみ、苦しむ。
私に両親の死を伝えに来たタイリースさんも、こんな思いだったのだろうか。
家についた。
「……」
ドアを開けた私に気付いて、タイリースさんが笑いかける。
「おう、ノークス! 早かったな! おかえり!」
「……」
「ただいまはどうした? ペナルティーを食いたいのか?」
賑わう家には、ほとんどのメンバーが帰ってきていた。
そう、ほとんど、だ。
いないのはーーーーシルバーランクのレベル1のパーティーメンバー。
ウォンさん、シャロンさん、エイブさん、ウィルさん。
彼らが、死んだのだ。それがわかって、目の前が真っ暗になった。
「おい……ノークス……」
タイリースさんは感じ取ったのか、笑うことをやめて近付く。
「ウォン、さん、達がっ……!」
「……っ!」
なんとか絞り出した言葉で伝わった。
タイリースさんに、抱き締められる。壊れそうなほど強く。
私達『ドムステイワズ』はギルド会館に行き、調査結果を聞かされた。
今回、死亡が確認された冒険者は、間違いなくウォンさん達だ。
シルバーランクのレベル2の魔獣に、やられたと推測。ウォンさん達を見付けた別のパーティーは、血に濡れた隻眼の熊型の魔獣を目撃したらしい。
ギルド側は、シルバーランクの冒険者に警戒を呼びかけ、すぐに討伐依頼を発注した。
シルバーランクのレベル2、レッドマティベア。
体長は森から顔が突き出るほど、大きかったそうだ。シルバーランクの掲示板に映し出された絵を睨むように見た。
隻眼の巨大熊型の魔獣。
レベルが足りないから、その依頼を受ける資格は、今の私にはない。
「行きましょう、ノークス」
ルーヴァが、そっと促す。
バカな真似をさせないためなのか、ギルドマスターはルーヴァを休ませて、冒険者業に同行するように言った。
そんな風に、見えるのだろうか。
そりゃ、仇を討ちたい。
私にその力さえあればーーーー。
「うん、行こう」
ギルドのメンバーが声をかけたそうにいたのはわかっていたけれど、私はギルド会館から、街から飛び出した。
いつものように、リーデの鼻で魔獣を見付けては、狩りをしようとしたのだが。
ブロンズランクのレベル3の魔獣が出没する森に到着するなり、片腕を押さえた冒険者が駆けてきた。
「逃げろ!! 隻眼の魔獣だ!」
隻眼の魔獣!?
すぐにナイフを抜いて構えた。ブロンズランクの森にまで侵入してきたのか。
すると、その冒険者が来た方角から、悲鳴が響く。
襲われている冒険者達が、まだいる。
「ノークス! だめです!」
「助けなきゃ!」
ルーヴァの制止も振り払うように、悲鳴の元まで駆け付けた。
二人の冒険者とすれ違う。
空気が変わる。圧倒的に強い魔獣の気配。
強敵が空気さえも支配する空間に、私は立った。
「隻眼っ……!!」
真っ赤な毛に覆われた熊型の魔獣が一匹。森から頭が突き出そうなほど、背が高い。そして、隻眼だ。
ビリビリと肌が刺激されるような威圧を感じた。
腹部を引っ掻かれたような傷を負った同じくらいの少年が倒れている。呻いているから、まだ生きていた。
「リーデ! 治癒魔法をかけて治したら逃して!」
「ノークス! 君も逃げるんですよ!」
「だめ! 今引きつけなきゃ、彼もオレも死ぬ!」
倒れた少年の前。レッドマティベアのに立ちはだかる。
「オレと一緒に戦ってくれ! 生き残るにはーーーーコイツを倒すしかない!!」
ナイフを逆手に握り締めた。
「仕方ありませんね!」
「やるなの!」
ルーヴァとローズが、左右で構える。
レベルが足りないとか、そういう話をしている場合ではない。生き残るために、協力して戦うしかないのだ。
「ルーヴァは顔を! ローズは手を!」
指示をしてから飛び出す。
ルーヴァの水の魔法で、顔を覆わせる。
ローズの雷のような火の魔法で、手を攻撃してもらう。
その隙に、足を切り崩そうとした。
ルーヴァとローズは、指示通りに魔法を行使。木々の背を越しそうなほど上にある顔は水が覆う。振り払おうとする両手を、花火が打ち上げられたような火の魔法が攻撃。
低く駆け込み、まずは右足を切り裂こうとした。
水の刃のナイフで切り付けたがーーーー浅い!!
思ったほどの深さを切れなかった。毛皮が硬すぎる。
「っ!!」
もう一度。地面を踏み込んで、同じ箇所を切り付けようとした。
「だめです!! 離れて!!」
ルーヴァの声を聞いたが、遅い。
レッドマティベアの右足が、振り上げられた。足には鋭い黒い爪が伸びている。
それを受けないように、ナイフで叩き下ろす。
だが、力で負けて、後ろに後退させられた。そこに足の爪よりも鋭利で長い爪が伸びた右手が振り下ろされる。防御が間に合わないと判断して、後ろに飛んだ。
ザッ。
軽く胸を切られて、血が出る。痛みで顔が歪む。
しかし、痛がっている場合ではない。
ルーヴァの水を振り払った隻眼の魔獣と睨み合う。
素早くナイフを投擲。狙いはこちらを睨み付ける右目。
キン!
レッドマティベアの右手が、弾き落とす。
そのナイフをキャッチして、もう一度、右足を切りつけようとした。
しかし、今度は右腕で振り払われる。
「ぐあ!」
吹っ飛ばされて、地面に転がされた。二回くらい地面に身体を打ち付けたが、なんとか足を立てて回転を止めて踏み止まる。身体が軋むように痛い。
やっぱりレベルが上だけあって強烈な一撃に感じる。
「!」
今度はレッドマティベアの方から、仕掛けてきた。
ドドドッと四本足で駆けてきて、噛み付こうとしてきたのだ。
あまりの早さに返り討ちを考える暇なく、避けるしかないと判断して横に飛ぶ。
今のを受け止めるように攻撃していたら、間違いなく力負けして食い殺されていた。
ヒヤッと胸のうちで死を連想したが、怖気付かないようにナイフを握り直す。
「ローズ!」
「はいなの!」
私はもう一度、目を狙うことにして、ローズには両手を狙ってもらう。
雷のような火の魔法が、真っ直ぐこちらを睨む右目に飛ぶ。ローズの火の魔法も、ほぼ同時に放たれた。
地面を蹴って距離を詰めれば、両手と目に直撃。
その爆音で、シャロンさんの声が過ぎる。
ーー聞き覚えのある雷みたいな爆発の音、ノークスの魔法でしょ?
加速し、右足を魔力を込めた水の刃のナイフで切りつけた。
今度は思ったより深く切ることに成功し、どす黒い紫色の血が吹き出して浴びる。
しかし、レッドマティベアは崩れることなく、雄叫びを上げた。右目も、まだ見えているようだ。
怪我を負ったその右足で、私を蹴る。爪が刺さらないようにナイフで防ぐ。でも衝撃で、宙に放り投げられてしまう。
ドサッと、地面に叩き付けられるように倒れた。
「っ! ……!?」
レッドマティベアが、咆哮を放つ。
真っ赤な光が牙が並ぶ口の前に集まり、閃光が放たれる。
魔法攻撃!? 避けられない!!
「だめー!!」
目の前に、リーデが割って入る。
手を伸ばして、リーデを守ろうとしたが、それも間に合わない。
けれど、リーデに攻撃は当たらなかった。
薄い黄色の壁が現れて、赤い光の魔法攻撃を消し去る。
「ほう……」
「!」
男性の低い声が後ろから聞こえた。
振り返れば、漆黒の髪を靡かせたあの魔族の男性が立っている。
「光の防壁魔法か」
そう。魔族の男性が言うように、リーデが作り出したのは魔法の防壁だ。
とても貴重な魔法の一つ。
リーデは、もうさっきの冒険者を治癒して逃したらしい。
「……」
スッと魔族の男性は、右手を上げた。
きっと魔法攻撃を仕掛けるつもりだ。
「やめてっ!」
私は、そう声を張り上げた。
「! ……貴様には、荷が重い相手だとわからないのか?」
紅い瞳が少し目を見開かれて、私を見下ろす。
確か、彼はゴールドランク。きっと彼には、一捻りの相手だろう。
普通なら、私が身を引いて、彼に任せるべき。
「私の……オレの相手だ!!」
立ち上がり、ナイフを逆手に握り直す。
「……好きにしろ」
魔族の男性は、そう手を下げる。
「ローズ、ルーヴァ、リーデ。力を貸してくれ」
私は、一人じゃない。一人なら無理でも、皆と一緒なら!
「当たり前なの!」
「わかっています」
「やるのー」
闘争心が燃えているような精霊達から、反対はなかった。
ローズは、バチバチと手に灯す火を弾けさせる。
ルーヴァでさえ、この戦いに乗り気だ。
リーデも、やる気十分の様子で尻尾を振る。
そんな精霊達に、指示を下した。
「行くぞ!!」
また四本足で突進をしてくるレッドマティベアに、立ち向かう。
左右から、ローズの火の魔法が放たれる。前足に集中攻撃。
バランスを崩すことに成功した。地面を滑って、こっちに向かってくるレッドマティベアを飛び越える。背中を切り裂きながら。
背中に、二つの切り込みを入れた。
悲鳴を上げて立ち上がったレッドマティベアから、距離を取ろうとしたが、右から腕がスイングされる。
それをリーデの防壁魔法で防いだ。
大きな右腕は弾け、抉り取れた黒い爪を落とす。
水のナイフを投擲。右目に突き刺さった。
ルーヴァの魔法でそのナイフから水を出してもらい、また顔を覆わせる。
視覚を塞がれ、呼吸も出来ないレッドマティベアは、大暴れをした。
頭を振り、両腕を振り回す巨大熊。水は突き刺さったナイフから延々と出るから、今度は振り払うことが出来ないはずだ。鋭利で凶暴な腕に当たらないように、避けては、その左腕を足場にして数歩駆けた。
狙うはーーーー心臓。
足と同じく、深く刺したつもりでも、心臓に届かない。
そんなことわかっていた。
「爆ぜろ!!!」
火の魔法を発動させて、爆発させる。
ナイフの火の魔法と、私の精霊魔法の二つの合わせ技。
私が出せる最大の攻撃だ。
「爆っぜっろっ!!!」
もう一度、込めた。
ウォンさん達の笑顔が過ぎり、私は堪らずナイフをねじ込み、もう一度叫んだ。
「爆ぜろっっっ!!!」
雷のように轟いた爆音のあと、濃い紫の煙の中に落ちた。
魔獣を仕留めた証拠に、ボトッと魔石も落下する。
全力で魔力を注いだから、目眩を覚えた。魔力切れだ。
強敵をーーウォンさん達の仇を、倒した安堵も広がって、意識が遠退く。
こんなところで意識を飛ばしてはいけないと理解していたのに、それでも繫ぎ止めることが出来ず、私は崩れ落ちるように倒れてしまった。
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