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第一章
10.オレのつがい
しおりを挟む「んなわけあるか」
父さんが帰ってくるなり捕まえて重婚の事実を問い質せば、当然のようにそう返ってきた。
父さんには動揺もなく、若干呆れ顔になっているので嘘ではなさそうだが……。
「ならなんで“王宮の精霊様”と結婚してる事になってるのよ」
「そりゃあ“王宮の精霊様”がミヤビだからに決まってんだろ」
今まで聞いた事もない冷たい声で父さんに対峙する妹にも、一切怯まない父さんすげぇ。普通娘からあんな蔑むような目で見られたら動揺の一つもするだろ。
「ママは魔族でしょ。精霊様じゃないわ」
「“王宮の精霊様”って王都で有名なんだろ。父さんその言い分は苦しいんじゃない」
ロビンに追随すれば、父さんはニヤリと笑って口火をきった。
「オメェらもデカくなったしな。しょうがねぇ。ミヤビが“王宮の精霊様”と呼ばれるようになった経緯を話してやるよ」
オレとロビンは互いに顔を見合わせて頷くと、父さんの話を聞くことにしたんだ。
「あれはミヤビと初めて出会った時の事だ。俺達の出会いはここから目と鼻の先にある……あの辺りだな。怪我を負っちまって動けなくなった俺を助けてくれたのがミヤビだった。俺ぁミヤビの姿を目にした瞬間、精霊だと確信した」
「は? いや、なんでだよっ」
「精霊の見た目は、この世のものとは思えない絶世の美貌だっつー噂が出回ってたからな。こりゃ間違いねぇって思ったもんだ」
「だからなんでだよ!?」
話の出だしからおかしいんだけど!? 母さんの容姿は平凡以下だぞ!!
「おい、ディーク。オメェ黙って話聞けねぇのか」
父さんがおかしな事言ってるからだろ!!
「で、だ。一目で互いに惹かれ合った俺達は、すぐこの深淵の森で暮らしだしたわけだが、俺にも仕事があってな……。身が引き裂かれるような思いで王宮に戻ったんだよ。そしたらあの、引きこもりのミヤビが追い掛けてきやがってなぁ! 可愛いだろ。あんときゃ夢かと思ったぜ。そんで、俺のつがいは精霊を超越する美貌を持ってるって同僚に自慢してたら、王宮の奴らに噂が広まって、いつの間にか“王宮の精霊様”って呼ばれるようになったわけだ」
え? つまり、父さんの惚気が王宮に広まってとんでもない噂になったって事?
「なにそれ!! はっっず!!!!」
「なぁんだ、良かった。そうよね、パパが浮気するわけないものね!!」
ロビン、そこじゃねぇだろ!!
「ったりめぇだろ! 俺ぁ例え人族じゃなくても浮気はしねぇぞ。ミヤビしか見えねぇ」
「さっすがパパ!! やっぱり人族って、自分の気持ちを素直に伝えてくれる所が素敵よねっ 私のつがいも同じような事言ってくれるのよ!」
すでにつがいに出会っているロビンは、惚気ているのかそんな事を言うもんだから、父さんの顔が般若の面のようになっている。
「おい、ディークはつがいに出会ってねぇだろうな」
うわっ こっちに飛び火してきたよ。
「オレはまだだよ。出来ればロビンみたいなゴリラ系女じゃなくて、可愛いリスみたいな女の子が良いなぁ」
「もうっ 私はゴリラじゃないって言ってるでしょ!!」
「ディークにゃつがいはまだ早ぇ。ロビンも、つがいと一緒に暮らすのは高校を卒業してからだからな!」
「はーい。ふわぁ……安心したら眠くなっちゃった。私もう寝るわ。おやすみなさーい」
ロビンはさっさと部屋に戻り、父さんもいそいそと母さんの部屋に行ってしまった。
「つがいかぁ」
妹は幼い頃に見つかったが、父さんはなかなか母さんに出会えなかったって言ってた。人族の中には、一生つがいに会えない人も結構いるらしい。
最近では、そんな人族の為に、大きな街で大規模なイベントが行われるようになったっておじい様が話していた。
ちょうどルマンドの王都でもイベントがあるって言ってたし、
「オレも参加してみようかな……」
人族と魔族のクォーターとはいえ、妹はつがいを認識したんだ。人族の血が濃いって事なんだから、オレもそうだろうしな。
イベントに参加する事が、まさかあんな事になるなんて、オレには想像も出来なかったんだ。
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