自己評価下の下のオレは、血筋がチートだった!?

トール

文字の大きさ
上 下
6 / 10
第一章

6.イザークの酒場

しおりを挟む


「オレに出来そうな依頼あるかな……」

父さんを説得して始めた冒険者のバイトは、一応順調にこなしている。

学校帰りに(悪友達と一緒に)ギルドに寄って、週末に出来そうな依頼をボードから選び、受付へ持って行く。それが最近のルーティーンだ。
大概採取か掃除の手伝いか。そんなもんだけど、オレに出来そうな依頼なんてそれ位だ。

そして今日も、マーク、ジェイコブといういつもの面子で学校帰りにギルドへとやって来たのだが、

「オレ護衛依頼の指名入ったからそれ受けようと思ってんだ」

ジェイコブが突然そんな事を言い出しぎょっとする。

「護衛って、Eランク以上じゃないと受けれないだろ!?」
「それがオレ、もうEランクなんだよなぁ。もうすぐDランクの試験受けるし」
「はぁ!?」

何でだよ!? ジェイコブはオレと同時期に冒険者始めたんだからまだ一番下のGランクだろ!?

「オレもジェイコブと同じEランクだよ」

マークまで!? 何で!?

「ランクアップなんてポイント稼ぎゃすぐだろ」
「週末に採取や掃除やったとしてもそんなすぐポイントなんて貯まらないだろ!?」

ジェイコブが当たり前みたいにいうけど、オレはまだ2回しかバイト出来てない。もしジェイコブ達が放課後毎日バイトしていたとしても、そんなにすぐにEランクまでアップ出来ないだろう。

「あのなぁ、オレらはディークみたいに採取や掃除なんてやってねぇから」

は? Gランクが受けられる仕事は大抵採取や手伝いだろ。ジェイコブのやつ何言ってんだよ。

「ディーク、オレ達は最初から動物を狩って持ち込んだり、ポイントの高い鉱石を発掘したりしてポイントを稼いでたから、すぐEランクになれたんだ」
「一角兎みてぇな小さい動物ならGランクでも狩って良いしな。大量に狩ってポイントゲットしたんだぜ」
「オレは主に鉱石の発掘かな。探し当てるのも簡単だし、人間が入れない場所にもすぐ行けるしね」

なんて、二人共当たり前のように言ってる。
小動物は確かにGランクでも狩って良いらしいけど、オレにはあんな可愛い動物を殺す事はできないし、鉱石だって見ただけでは価値がどれ位のものかなんて見当もつかない。鑑定は出来るけど、前におじい様の持ってた鉱石を鑑定させてもらった時、どれを見てもとか、とか、そんな表示だったのだ。
きっとオレは鑑定の才能がないのだろう。

「でも、護衛は指名されないと受けられないんだろ? 長期の場合が多いから、信用が無いと出来ないって受付のお姉さんから聞いた事ある」
「それはな、先週末に狩りに行った帰り、脱輪してた馬車が居たから助けたら、偶々それが行商人の馬車でな、指名もらったんだよ」

お前どこの主人公だよ!? その馬車に可愛い女の子が乗ってて、旅をしている間に仲良くなったり、旅先で色んな女の子に出会って連れ帰るハーレム主人公か!? 

「明後日から長期休暇だし、丁度良い暇潰しになると思って受けた」

なんてカラカラ笑うもんだから、頬っぺたをつねってやった。

「マークは?」
「オレは鉱石の関係で知り合った宝石商の依頼で、港町まで遠征予定。まぁゆったり旅しようかなって思ってるよ」

こっちはこっちで儲けまくって貴族のお嬢様とか連れてくるパターンの主人公!!

「……オレだけいつもと同じかぁ」
「そんなに違うのがやりたいなら、これは?」

不満気なオレにマークが依頼ボードから取ってきた紙に書かれていたのは…………

「“イザークの酒場”。仕事内容、給仕、皿洗い、掃除等。16時~22時。期間長期。まかない付。定員1名? って、何これ」
「長期休暇の間、この依頼受けたら? ポイントも時給も高いし、昼は採取して夕方から酒場の仕事ならすぐにでもEランクに上がれるさ」

マークの言うとおり、この仕事なら2人のランクに追い付けそうだ。給仕や皿洗いなら危険な事はないだろうし。

「そう、だな!! この依頼受けてみるっ」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



“イザークの酒場”。酒場のマークと一緒にそう書かれた看板がかけられた店。
酒場というよりはレストランに近い品の良さと、まだ新しそうな清潔感のある外観に少しホッとする。

扉を開くとカランカランとドアベルが鳴った。

「すいませーん。冒険者ギルドで依頼を受けた者なんですが」

開店前なのか店内は薄暗く、厨房らしき場所からわずかな光が漏れていたのでそちらへ向かって声を掛ける。

「……どちらさん?」

暫くして厨房から現れたのは、30代位のくたびれたおっさんだった。

「あの、冒険者ギルドから依頼を受けて来ました……ディークと言います」
「あぁ、そういえば今日来るって言ってたな……ディーク君、か。俺はイザーク。ここのオーナーで厨房も担当してる。というか、この店は俺一人で切り盛りしてる」
「はぁ……」
「君にやってもらいたいのは、主にホールの仕事だ。注文取ったり料理や飲み物運んだり。手が空いたら皿洗いもやってもらえるとありがたい」
「はい。頑張ります」
「さっそくだが、いつから入れそうだ?」
「いつでも大丈夫です」
「なら今日からでも良いだろうか?」

今日から!? 随分急だな……。まぁ母さんには念話しとけば大丈夫か。

「分かりました」

頷けば、イザークさんは嬉しそうに「そうか!!」と笑顔を見せ、群青色のエプロンを渡してきた。
こうしてオレは長期休暇の間、“イザークの酒場”で働く事になったのだ。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【第2部開始】悪役令息ですが、家族のため精一杯生きているので邪魔しないでください~僕の執事は僕にだけイケすぎたオジイです~

ちくわぱん
BL
【第2部開始 更新は少々ゆっくりです】ハルトライアは前世を思い出した。自分が物語の当て馬兼悪役で、王子と婚約するがのちに魔王になって結局王子と物語の主役に殺される未来を。死にたくないから婚約を回避しようと王子から逃げようとするが、なぜか好かれてしまう。とにかく悪役にならぬように魔法も武術も頑張って、自分のそばにいてくれる執事とメイドを守るんだ!と奮闘する日々。そんな毎日の中、困難は色々振ってくる。やはり当て馬として死ぬしかないのかと苦しみながらも少しずつ味方を増やし成長していくハルトライア。そして執事のカシルもまた、ハルトライアを守ろうと陰ながら行動する。そんな二人の努力と愛の記録。両片思い。じれじれ展開ですが、ハピエン。

BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子 ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ そんな主人公が、BLゲームの世界で モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを 楽しみにしていた。 だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない…… そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし BL要素は、軽めです。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした

エウラ
BL
どうしてこうなったのか。 僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。 なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい? 孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。 僕、頑張って大きくなって恩返しするからね! 天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。 突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。 不定期投稿です。 本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?

「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。 王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り 更新頻度=適当

貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う

まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。 新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!! ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

名前のない脇役で異世界召喚~頼む、脇役の僕を巻き込まないでくれ~

沖田さくら
BL
仕事帰り、ラノベでよく見る異世界召喚に遭遇。 巻き込まれない様、召喚される予定?らしき青年とそんな青年の救出を試みる高校生を傍観していた八乙女昌斗だが。 予想だにしない事態が起きてしまう 巻き込まれ召喚に巻き込まれ、ラノベでも登場しないポジションで異世界転移。 ”召喚された美青年リーマン”  ”人助けをしようとして召喚に巻き込まれた高校生”  じゃあ、何もせず巻き込まれた僕は”なに”? 名前のない脇役にも居場所はあるのか。 捻くれ主人公が異世界転移をきっかけに様々な”経験”と”感情”を知っていく物語。 「頼むから脇役の僕を巻き込まないでくれ!」 ーーーーーー・ーーーーーー 小説家になろう!でも更新中! 早めにお話を読みたい方は、是非其方に見に来て下さい!

花の聖女として異世界に召喚されたオレ

135
BL
オレ、花屋敷コガネ、十八歳。 大学の友だち数人と旅行に行くために家の門を出たらいきなりキラキラした場所に召喚されてしまった。 なんだなんだとビックリしていたら突然、 「君との婚約を破棄させてもらう」 なんて声が聞こえた。 なんだって? ちょっとオバカな主人公が聖女として召喚され、なんだかんだ国を救う話。 ※更新は気紛れです。 ちょこちょこ手直ししながら更新します。

処理中です...