自己評価下の下のオレは、血筋がチートだった!?

トール

文字の大きさ
上 下
2 / 10
第一章

2. 家族

しおりを挟む


「ただいま~」

重い足取りで家に入りリビングへ向かう。

「母さん、今日のご飯何?」

ソファの下に座ってテレビを見ている母に声をかけると、「お帰り~」と欠伸と共に返事をされる。

相変わらずぐうたらしてんな。

「今日はね、お父さん特製のデミグラスハンバーグだよ。すぐ食べる? 先にお風呂入ってくる?」
「あ~……んじゃ先に風呂入ってくる」

そう言い残してリビングの扉を閉め、2階の自分の部屋へと向かう。

うちの母さんはいつもソファや床でゴロゴロしながらテレビを見ている、何もしない人だ。料理も父さんが作ったものをアイテムボックスへ保存して食べる時に出してくる。
働いてるらしいがそれも数時間で、夕方には家でゴロゴロしている。
人族と魔族のハーフらしく、魔法は得意らしいが後はいたって平凡な人間だ。外見は浮島のエルフ達や精霊様、神族を見る限り下の下。そう口に出したら拳骨をくらった事がある。

「あの人達は外見だけは上の上なの!! そんなのと比べるんじゃありません!! 母さんは平凡を売りにしてるんだからね!!」

そんな事言われても、村の人間も皆十分綺麗な外見をしている。やっぱり母さんは下の下だと思う。中身も。

オレはそんな母に似たらしく、魔法は得意で外見はぱっとしない。身長は女子よりもちょっと低く、何なら筋肉もつきにくい。母さんもそういう体質だから仕方ないと昔父さんに慰められた事がある。

「ただいま~。ママ、バイト決まったよ!!」

風呂から出てスポーツドリンクを飲んでいると、バタバタと妹が帰ってきた。

「お帰り~。バイトって何の話だっけ??」
「え~、この間言ったでしょ? もうっママったら本当に話聞いてないんだから!」

オレの双子の妹、ロビンは外見が父さん似でまぁまぁの美人だ。身長もすでに185センチあり、オレよりデカい。腕力も尋常じゃなく、剣の腕もすでに騎士になれるレベルで脳筋の武器オタクなのだ。学校が終わると騎士団の訓練に混ざり剣をふるっているゴリラのような女だ。

ちなみに父さんは人族の騎士で、オレと血が繋がってるとは思えない巨漢だ。小さい母さんと並んだら、大人と子供のように見える。

「ディークも私がママに話してたの聞いてたよね!?」
「あ~…うん」

双子なのにこうも違うのは何でだろう。ゴリラにはなりたくないが、顔や能力は父さんに似たかった。

「ロビン、ディークも、母さんお腹空いちゃったしご飯にしようよ」

母さんは相変わらずマイペースに机にご飯を並べていく。
熱々の鉄板に乗ったハンバーグが美味しそうでお腹が鳴った。

「ロビンの話はご飯食べながら聞くから。ね?」
「も~!!」

文句を言いながらも手を洗い席に付く妹は素直なのだ。

「「「いただきます」」」

父さんは帰ってくるのが遅いので、晩御飯はオレ達3人で食べる事が多い。よく母さんの友達が来たりして騒がしくなるけど、今日はどうやら3人だけのようだ。

「で、バイトって?」
「16才になったらバイトするように学校側が推奨してるでしょ。その話よ」
「ああ。腕輪をもらう為のね。でもあれって16才以上ならいつバイトしても良くて、自分のタイミングで決められるでしょう? ロビンはもうバイト始めるの?」
「うん! 腕輪も早くほしいし、今回を逃すと次の登録が1年後だもの。それにねママ、最近は皆16になったらすぐバイト登録するものよ」
「へ~。ロビンはどこでバイトするの?」

オレは全然決まらないのに、妹はもう決まったらしい。まぁコイツは強いし、どうせ冒険者だろう。

「えへへ。私はね、王都の武器屋さんでバイトするの!!」

ブフォ!!!!

うっかりお茶を吹き出してしまった。

「ちょっとディーク!! 汚い!!」
「おまッ お前が、接客業!?」
「何よ~。私だって接客くらい出来るんだからね!!」
「出来ねぇよ!! お前自分がゴリラだって忘れてんだろ!!」
「失礼ね!! ゴリラじゃないわッ れっきとした人間よ!!!!」

違う。お前はゴリラだ。ゴリラに物は売れない。店の武器を使用して店が消滅する未来しか見えない。

「こらこら。喧嘩しないの。それより、ディークはバイト決まったの?」
「オレは……「ディークは冒険者でしょ」」

はぁ!? ロビンの奴、勝手に何言ってんだ!? 

「冒険者かぁ~。良いかもね!!」
「母さんまで!? オレに冒険者なんか出来るわけないだろ!? 母さんだってオレが弱い事知ってんだろ!!」
「?? でもディーク、冒険者って何も魔物を倒したりするだけじゃないでしょ?」

え?? 

「母さんも昔冒険者した事あるけど、主な仕事は薬草採取かこの森の案内人だったよ?」
「その手があったか!!」

そうだよな!! 冒険者っつっても仕事は多岐にわたるし、母さんが出来るならオレでも出来る!!

「母さん!! オレ、冒険者になるよ!!」

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【第2部開始】悪役令息ですが、家族のため精一杯生きているので邪魔しないでください~僕の執事は僕にだけイケすぎたオジイです~

ちくわぱん
BL
【第2部開始 更新は少々ゆっくりです】ハルトライアは前世を思い出した。自分が物語の当て馬兼悪役で、王子と婚約するがのちに魔王になって結局王子と物語の主役に殺される未来を。死にたくないから婚約を回避しようと王子から逃げようとするが、なぜか好かれてしまう。とにかく悪役にならぬように魔法も武術も頑張って、自分のそばにいてくれる執事とメイドを守るんだ!と奮闘する日々。そんな毎日の中、困難は色々振ってくる。やはり当て馬として死ぬしかないのかと苦しみながらも少しずつ味方を増やし成長していくハルトライア。そして執事のカシルもまた、ハルトライアを守ろうと陰ながら行動する。そんな二人の努力と愛の記録。両片思い。じれじれ展開ですが、ハピエン。

BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子 ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ そんな主人公が、BLゲームの世界で モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを 楽しみにしていた。 だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない…… そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし BL要素は、軽めです。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした

エウラ
BL
どうしてこうなったのか。 僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。 なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい? 孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。 僕、頑張って大きくなって恩返しするからね! 天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。 突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。 不定期投稿です。 本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

炊き出しをしていただけなのに、大公閣下に溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 男爵家出身のレーヴェは、婚約者と共に魔物討伐に駆り出されていた。  婚約者のディルクは小隊長となり、同年代の者たちを統率。  元子爵令嬢で幼馴染のエリンは、『医療班の女神』と呼ばれるようになる。  だが、一方のレーヴェは、荒くれ者の集まる炊事班で、いつまでも下っ端の炊事兵のままだった。  先輩たちにしごかれる毎日だが、それでも魔物と戦う騎士たちのために、懸命に鍋を振っていた。  だがその間に、ディルクとエリンは深い関係になっていた――。  ディルクとエリンだけでなく、友人だと思っていたディルクの隊の者たちの裏切りに傷ついたレーヴェは、炊事兵の仕事を放棄し、逃げ出していた。 (……僕ひとりいなくなったところで、誰も困らないよね)  家族に迷惑をかけないためにも、国を出ようとしたレーヴェ。  だが、魔物の被害に遭い、家と仕事を失った人々を放ってはおけず、レーヴェは炊き出しをすることにした。  そこへ、レーヴェを追いかけてきた者がいた。 『な、なんでわざわざ総大将がっ!?』  同性婚が可能な世界です。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

スキルも魔力もないけど異世界転移しました

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!! 入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。 死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。 そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。 「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」 「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」 チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。 「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。 6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。

地味で冴えない俺の最高なポディション。

どらやき
BL
前髪は目までかかり、身長は160cm台。 オマケに丸い伊達メガネ。 高校2年生になった今でも俺は立派な陰キャとしてクラスの片隅にいる。 そして、今日も相変わらずクラスのイケメン男子達は尊い。 あぁ。やばい。イケメン×イケメンって最高。 俺のポディションは片隅に限るな。

花の聖女として異世界に召喚されたオレ

135
BL
オレ、花屋敷コガネ、十八歳。 大学の友だち数人と旅行に行くために家の門を出たらいきなりキラキラした場所に召喚されてしまった。 なんだなんだとビックリしていたら突然、 「君との婚約を破棄させてもらう」 なんて声が聞こえた。 なんだって? ちょっとオバカな主人公が聖女として召喚され、なんだかんだ国を救う話。 ※更新は気紛れです。 ちょこちょこ手直ししながら更新します。

処理中です...