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第一章
2. 家族
しおりを挟む「ただいま~」
重い足取りで家に入りリビングへ向かう。
「母さん、今日のご飯何?」
ソファの下に座ってテレビを見ている母に声をかけると、「お帰り~」と欠伸と共に返事をされる。
相変わらずぐうたらしてんな。
「今日はね、お父さん特製のデミグラスハンバーグだよ。すぐ食べる? 先にお風呂入ってくる?」
「あ~……んじゃ先に風呂入ってくる」
そう言い残してリビングの扉を閉め、2階の自分の部屋へと向かう。
うちの母さんはいつもソファや床でゴロゴロしながらテレビを見ている、何もしない人だ。料理も父さんが作ったものをアイテムボックスへ保存して食べる時に出してくる。
働いてるらしいがそれも数時間で、夕方には家でゴロゴロしている。
人族と魔族のハーフらしく、魔法は得意らしいが後はいたって平凡な人間だ。外見は浮島のエルフ達や精霊様、神族を見る限り下の下。そう口に出したら拳骨をくらった事がある。
「あの人達は外見だけは上の上なの!! そんなのと比べるんじゃありません!! 母さんは平凡を売りにしてるんだからね!!」
そんな事言われても、村の人間も皆十分綺麗な外見をしている。やっぱり母さんは下の下だと思う。中身も。
オレはそんな母に似たらしく、魔法は得意で外見はぱっとしない。身長は女子よりもちょっと低く、何なら筋肉もつきにくい。母さんもそういう体質だから仕方ないと昔父さんに慰められた事がある。
「ただいま~。ママ、バイト決まったよ!!」
風呂から出てスポーツドリンクを飲んでいると、バタバタと妹が帰ってきた。
「お帰り~。バイトって何の話だっけ??」
「え~、この間言ったでしょ? もうっママったら本当に話聞いてないんだから!」
オレの双子の妹、ロビンは外見が父さん似でまぁまぁの美人だ。身長もすでに185センチあり、オレよりデカい。腕力も尋常じゃなく、剣の腕もすでに騎士になれるレベルで脳筋の武器オタクなのだ。学校が終わると騎士団の訓練に混ざり剣をふるっているゴリラのような女だ。
ちなみに父さんは人族の騎士で、オレと血が繋がってるとは思えない巨漢だ。小さい母さんと並んだら、大人と子供のように見える。
「ディークも私がママに話してたの聞いてたよね!?」
「あ~…うん」
双子なのにこうも違うのは何でだろう。ゴリラにはなりたくないが、顔や能力は父さんに似たかった。
「ロビン、ディークも、母さんお腹空いちゃったしご飯にしようよ」
母さんは相変わらずマイペースに机にご飯を並べていく。
熱々の鉄板に乗ったハンバーグが美味しそうでお腹が鳴った。
「ロビンの話はご飯食べながら聞くから。ね?」
「も~!!」
文句を言いながらも手を洗い席に付く妹は素直なのだ。
「「「いただきます」」」
父さんは帰ってくるのが遅いので、晩御飯はオレ達3人で食べる事が多い。よく母さんの友達が来たりして騒がしくなるけど、今日はどうやら3人だけのようだ。
「で、バイトって?」
「16才になったらバイトするように学校側が推奨してるでしょ。その話よ」
「ああ。腕輪をもらう為のね。でもあれって16才以上ならいつバイトしても良くて、自分のタイミングで決められるでしょう? ロビンはもうバイト始めるの?」
「うん! 腕輪も早くほしいし、今回を逃すと次の登録が1年後だもの。それにねママ、最近は皆16になったらすぐバイト登録するものよ」
「へ~。ロビンはどこでバイトするの?」
オレは全然決まらないのに、妹はもう決まったらしい。まぁコイツは強いし、どうせ冒険者だろう。
「えへへ。私はね、王都の武器屋さんでバイトするの!!」
ブフォ!!!!
うっかりお茶を吹き出してしまった。
「ちょっとディーク!! 汚い!!」
「おまッ お前が、接客業!?」
「何よ~。私だって接客くらい出来るんだからね!!」
「出来ねぇよ!! お前自分がゴリラだって忘れてんだろ!!」
「失礼ね!! ゴリラじゃないわッ れっきとした人間よ!!!!」
違う。お前はゴリラだ。ゴリラに物は売れない。店の武器を使用して店が消滅する未来しか見えない。
「こらこら。喧嘩しないの。それより、ディークはバイト決まったの?」
「オレは……「ディークは冒険者でしょ」」
はぁ!? ロビンの奴、勝手に何言ってんだ!?
「冒険者かぁ~。良いかもね!!」
「母さんまで!? オレに冒険者なんか出来るわけないだろ!? 母さんだってオレが弱い事知ってんだろ!!」
「?? でもディーク、冒険者って何も魔物を倒したりするだけじゃないでしょ?」
え??
「母さんも昔冒険者した事あるけど、主な仕事は薬草採取かこの森の案内人だったよ?」
「その手があったか!!」
そうだよな!! 冒険者っつっても仕事は多岐にわたるし、母さんが出来るならオレでも出来る!!
「母さん!! オレ、冒険者になるよ!!」
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