自己評価下の下のオレは、血筋がチートだった!?

トール

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第一章

1. プロローグ

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「━━━……というわけで、バイト先登録期限は後5日ですから、忘れないようにお願いしますね。登録を忘れてしまうと次回が1年後になりますから気を付けてください。それでは今日はここまでです」
「起立!! 礼!!」
「「「「ありがとうございました!!」」」」

キーンコーンカーンコーン……

HR終了のチャイムと同時に帰る準備を始めた生徒達。立ち上がる音や筆記用具を片付ける音、楽しそうな話し声等が教室を包む。

「今日モック寄ってこうぜ~」
「ナゲット食いてぇ!!」
「ポテト奢りな」

等と寄り道の話に花を咲かせるのは日常的に目にする光景だ。

「ディーク、何ボーッとしてんの? 今日もゲーセン寄ってくだろ」
「早く行こうぜ! 今日こそお前に勝つ!!」

通学カバンで頭をこずきながら絡んでくるこの二人、マークとジェイコブは、小学校の入学式で意気投合して以来腐れ縁の悪友達だ。
マークはエルフと精霊様のハーフで、ジェイコブに至っては妖精神様のご子息様という、驚きの血筋である。
ぶっちゃけ一般人を両親に持つ俺とは釣り合わない家柄なのだが、そんな血筋をひけらかす事もしない気の良い奴らなので今まで付き合ってこれたのだ。

「へいへい。オレ様に勝とうなんて100年早ぇけど仕方ねぇな。その勝負受けてやるよ」

席を立ちながら鞄を手に取り歩きだす。
これがオレ、ディーク(16)の日常だ。



普通ならエルフや精霊、神族等は姿さえ見る事も畏れ多いとされる。

ただの人間(庶民)を両親に持つオレは、住む家もルマンド王国という人族の国にある。
家から一番近い街がルマンド王都だって言えば悪くない場所にあると思うだろ? まぁ、間違っちゃいないんだけどさ。
実際は王都から車で2時間以上かかるド田舎なんだよ。
だってさ、家の周りは生い茂る木々と牧歌的な村が広がる、コンビニすら無い森の中だ。

そんな場所で生活しているオレの唯一の楽しみが“学校”だった。
“学校”は浮島っていう空に浮かぶ大きな島にあって、小学校、中学校、高校、大学と年によって通う学校が変わっていく。ま、こんな事誰でも知ってるから省くけど、オレは小学校入学と同時に浮島に自由に出入する権利を得たわけだ。
浮島は家の周りと違って、コンビニもモック(ハンバーガーショップ)もショッピングモールもゲーセンだって、何でもある。

そんな所だから、本当は神に連なる者しか出入りできないらしい。
なのに何故、ただの人間、しかも庶民であるオレが出入りできるようになったのか。

それは両親の交友関係にある。

ウチの両親の友人は、実は神様なのだ。まぁ下っ端の神らしいんだけど、そのコネでここに出入り出来るようになった事は感謝したい。
小学校に入る前はたまに両親に連れてきてもらってたけど、小学校に入ってからはやっと一人で遊びに行けるって、何か自由になった気がして嬉しかった事を覚えている。

あれから10年、この春から高校生になった俺は難しい問題に直面していた。

「っし!! 勝った!!」
「っだぁぁ!! また負けた!! お前学校の成績はそんなに良くねぇのに、何でゲームはんな強ぇんだよ!!」
「るせぇ。人をゲームだけみてぇに言うんじゃねぇよ」

もう一回ボッコボコにしてやろうか! とポケットに手を入れてハタと気付く。

「あ~。もう金がない……」

何も入っていないポケットにがくりと項垂れる。

「あ、俺ももうないわ~。これ、本格的にバイト先探すしかねぇなぁ」

悪友の言葉に頷けば、もう一人の悪友が言うのだ。

「え? お前らまだバイト先決めてねぇの? 俺もう決めたけど?」
「「はぁぁぁ!? お前いつの間に!?」」




浮島で現金を使用するのは16才以下の子供だけだ。16才以上は腕輪を与えられ、その腕輪を会計時に翳して精算するのが常識である。ただ腕輪を貰える条件が銀行口座を開設し、そこへ給料を振り込むこと。つまり仕事を持つ事が条件なのだ。

勿論本格的に働きだすのは大学を卒業した後だが、16才からバイトが認められる。認められるっていうかほぼ強制なんだけど、とにかく。著しい問題というのはそのバイトがまだ決まってないって事なんだよ。

「てか、ジェイコブのバイトって妖精神様オヤジさんの補佐?」
「違うって。どうせなら学生時代しか出来ねぇ事したかったから、地上で冒険者登録してきたんだよ」
「「はぁぁぁ!!!?」」


◇◇◇


ジェイコブの驚愕の告白後、公園へと場所を移したオレ達はバイトについて話し合っていた。

「━━━……バイト先登録期限が5日後までだろ。お前ら決まってないならさっさと決めねぇと腕輪貰えねぇぞ」
「だよなぁ。冒険者かぁ……俺もそれにしようかな」

マークまで冒険者とか言い出してる……こいつらは神や精霊の血筋だから強いけど、オレは冒険者になれる程強くはない。
そりゃ父さんから剣の扱い方は習ってるし、魔法もそれなにり使えるけどさ。父さん曰く、オレは父さんに守ってもらわないと生きていけない程弱いんだってさ。
まぁ妹よりも弱い事は自覚してるし……いや、アイツは父さんに似てゴリラだから。

「オレは……冒険者は無理そうだな……」

自分の男らしくない手のひらを見て溜め息が出る。
父さんは2メートルを超す巨漢なのに、オレは母さんに似たのか平均身長すらないヒョロヒョロの身体だ。168センチってなんだよ。妹だってオレよりデカイのに。

「あ~……お前はさ、わざわざ地上じゃなくてもモックとかでバイトすりゃいいだろ?」
「そうだよ。なんならゲーセンでバイトとかさ」

コイツらはこういうが……浮島の学生の間では、男子は地上。女子は浮き島でバイトという暗黙のルールがある。

「オレ女子じゃないからな!!」

そりゃ身長は女子と同じ位……なんならちょっと低いけどさ。

「そうじゃなくてさ、いくら暗黙のルールっつっても、学校側が決めたわけじゃねぇだろ。地上の方が危険だから女子には行かせらんねぇって感じのもんなんだしよ」
「そんなに浮島が嫌なら、地上でも安全な王宮って手もあるし。まぁコネが無いと難しいらしいけど」

それはオレも考えたさ。一応父さんは王宮に勤めてるし、なんならおじい様も王宮に勤めてる。父さんには絶対頼りたくないけど、おじい様ならオレに出来そうな仕事をすぐに手配してくれるだろう。

でも、妖精神様の息子ですからコネに頼らないのに、オレがそうするってあまりにもクズだろ。

「後5日あるし、考えてみる……」

そう言って悪友達と別れ、家に帰る為に転移扉を潜ったのだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ」の主人公の息子、ディーク君のお話がとうとう始まりました!!
初めましての方も、ズボラライフを読んでいただいていた方も楽しめる作品にしたいと思っております。

ちなみにディーク君のお話はBLです。途中まではあまりBLっぽくないと感じられるかもしれませんが、がっつりBLになりますので、ウェルカムな方、楽しんでいただけたら嬉しいです。
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