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ズボラライフ2 ~新章~
134.影の魔物
しおりを挟む足の下で、何かが動いている。
怖い。正直、下を見たくない。
「ろ、ロード、た、タスケテ……っ」
「ミヤビ、今から抱き上げるからな。カルロ、レンメイ、俺がミヤビを抱き上げたら、足元を攻撃してくれ」
「分かりました」
「準備は出来てるよ」
武器を私の足元に向けているカルロさんとレンメイさんが頼もしい。
「ミヤビ、腕を伸ばせ」
「う、うんっ」
背伸びをして腕を伸ばすと、ロードが「3、2、1」とカウントを始め、0で私を抱き上げその場を離れたのだ。
同時に、さっきまで私が居た地面に剣が突き刺さる。
すると、私の足の下で動いていた何かが、シュッとすごい速さで移動したのだ。
何か黒かった!!
必死にロードの首に縋り付き、「虫!? もしかして虫!?」と騒いでいると、トモコが、「みーちゃん、シャドーだよ!!」と叫んだ。
シャドー??
「影の魔物かっ」
「どうやら物理攻撃は無効になるようですね」
影の魔物……よ、良かったぁ!! 虫じゃなかったぁ!!
「あれ? でも私の足の下から動けなくなってたよね? 物理攻撃無効なの??」
「さっきのは、オメェの神力に縫い留められていたみたいだな」
「え!? じゃあ魔法は効くの!?」
私達が会話している中でも、シャドーはシャシャシャッと凄い速さで移動している。
「影の魔物なら、光属性の魔法は効くんじゃねぇか?」
「それ、浄化とかそういう系?」
ただ光らすだけじゃダメだよね?
「ああ。カルロかレンメイに任せりゃ大丈夫だろ」
「え!? 二人とも浄化の魔法使えるの!?」
チラリと二人を見れば、レンメイさんは頷き、カルロさんはウィンクしてきて、「俺のつがいにウィンクするんじゃねぇ!!」とロードに怒られていた。
「レンメイ、どうにか足止め出来ないかい?」
「そうですね……ライトの魔法で動ける範囲を絞り込みましょう。カルロはそこで浄化の魔法をお願いします」
うわぁ。二人共ロードの事完全無視だ。
レンメイさん4つの光の玊を出し、シャドーを囲むように照らす。シャドーは光を避けるように中央へと逃げ、光の玊は徐々に範囲を狭めて逃げ場を断つ。
「浄化」
カルロさんがそう唱え、刹那、シャドーが光り輝き眩しくて目を閉じる。
「トモコ、魔石を手に入れたよ」
「ありがとうございま~す! みーちゃん、魔石貰ったよ~」
目を開ければ、カルロさんが魔石を拾ってトモコに渡している所だった。
「狡いですよカルロ! 私だって協力したのに」
「ハハッ 悪いねレンメイ」
何だかあっさり倒したなぁと思いながらロードを見る。
「さっきの魔物はミヤビの攻撃で弱ってたんだろうよ。それに、二人は人間にしちゃあなかなか強ぇんだぜ」
「そうなの? 随分あっさりだったから、これなら冒険者も……って思ったけど、違うんだね」
「まだ難しいだろうなぁ。ルマンドに魔物がいりゃあ騎士団の丁度いい相手になるんだがなぁ」
普通の人は無理って言ってるのに、騎士団ぶつけようとしたらダメでしょ!?
もしかしてロードって、鬼師団長なんじゃ……。
「ミヤビ殿、他に魔物がいる場所はありませんか!? 次は私がホワイトローズに魔石をプレゼントします!」
こっちはこっちで、叶わぬ恋なのに貢ごうとしているし……。
「じゃあ、複数魔物が居そうなところに、今度は転移扉で行きます」
また踏んでも嫌だし。
「複数か。なら俺も出番があるかねぇ」
ロードがワクワクし始めたが、私を抱き上げたままだけど大丈夫?
扉を出して、複数魔物がいる場所を願う。
「この先に魔物がいるから、気を付けてね」
こうして、暫く魔物狩りをした私達は、魔石を沢山手に入れる事が出来てホクホクだ。
魔石以外のドロップアイテムはカルロさんとレンメイさんにあげたのだが、二人は貴族だし、必要ないかもしれないなと考えたのだが、思いの外喜んでいたので良しとしよう。
ちなみにドロップアイテムは、一見一人用のテントだが、中はホテルのようになっているものと、アイテムバッグである。
「このテントは素晴らしいね。遠出したときに使うよ」
「物がいくらでも入れられ、重さも変わらないとは、凄く便利ですね」
空間魔法が使えるなら自分で作れる魔道具だけど、いいのかな?
「本人が喜んでんだから良いんじゃねぇか?」
「そうなのかな?」
「そうなんだよ。しっかし、俺ぁ不完全燃焼だな。ほとんどあの二人が倒しちまったからよぉ」
「魔物の生態調査って言ってたもんね。ちゃんと調査出来たのかな?」
「出来たんじゃねぇか?」
「もうっ ロードは適当なんだから! 魔物の調査ってロードの仕事でもあるんでしょ?」
「二人がしっかり調査してっから大丈夫だ。それより、オメェはなんでわざわざ魔物を倒して魔石を手に入れようとしてんだよ」
「ロード、私は服屋と冒険者を兼業してるんだよ。魔物を倒して魔石を手に入れるのは当たり前でしょ?」
「神王が何言ってんだ」
神王だって冒険したいんだよ。
「はぁ~。今日は冒険者って感じの体験が出来て楽しかったね~」
「ロード様が居たのでショコラの出番はほとんどなかったです~」
マイペースなトモコとショコラはそんな事を言いながら家に帰ろうとしているが、まだ冒険者の仕事は終わっていないのだ。
「トモコ、ショコラ、まだ魔石を売却してないよ」
「え? みーちゃん、それ明日でも良いんじゃないの~?」
「ダメ! 報酬を得るまでが冒険者の仕事なんだからね」
「え~? お腹空いたよ~」
いつの間にか日が落ちて、トモコのお腹がぐぅぐぅ鳴っているが、妥協は出来ないのだ。
「私達は王宮の仕事が残っているから、戻らせてもらうよ」
「今日はとても楽しい一日でした。ホワイトローズ、また会いましょう」
とカルロさんとレンメイさんは帰って行った。
「ロードは王宮に戻らないの?」
「言っただろ。今日は休みだってよぉ」
ギルドについて来る気満々のロードと、お腹を鳴らす美少女と、護衛の美幼女を伴い、私達はギルドへと移動したのだ。
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