異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

文字の大きさ
上 下
574 / 587
ズボラライフ2 ~新章~

閑話 〜夏祭り〜

しおりを挟む


「夏だ!」
「花火だ!!」
「「祭りでワッショーイ!!」」

トモコとハイタッチして盛り上がっていると、「何言ってんだオメェら」と呆れ顔でロードがやって来る。その後ろからは、ヴェリウスがゆったりと尻尾を振りながら顔を覗かせていた。

「諸君、夏祭りの季節がやって来たのだよ!」

この言葉に拍手をしたのは、トモコとショコラの2人だけだった。




「━━━……というわけで、浮島にて、夏祭りを開催したいと思います」
「何が、というわけなんだよ。祭りならこの間、王都であったのに参加してたじゃねぇか」

あのマズい屋台しか出てない、酒とダンスがメインの祭りの事か。
あれはあれで、外国のお祭りみたいで楽しかったが、私がやりたいのとは違う。

「私がやりたいのは、日本のお祭りなの!」
「“ニホン”のお祭りだぁ?」
「そうっ 夜店に花火に盆踊り!! 林檎飴に綿菓子、焼もろこしにトルネードポテトとフランクフルト。焼きそば、たこ焼き、イカ焼き、かき氷……挙げれば切りが無いほどの夜店グルメ」
「あぁ、美味ぇもんが食いてぇのか」
「ちがーう!! それもあるけど、違う!! とにかく、私は浮島で夏祭りを開催します!!」


◇◇◇


「右手~、左手~、はいっ ポポッポポン!」

何、ポポッポポンって……。

近所の夏祭りで盆踊りの練習に参加し、踊り狂っていた私は、現在トモコを指導者に立て、エルフ達に踊りの手本を見せている。
しかし、トモコの独特な言い回しが若干の混乱を招いていなくもない。

「こんなダンス初めてだわ~」
「神様達のダンスだってよ」
「まぁっ 奉納の舞かしら」
「このダンスを踊ると、神様達が喜んで下さるんだと!」
「それは頑張って覚えないとなっ」
「本番が楽しみだわ~」

嬉しそうに練習しているエルフ達を横目で見つつ、盆踊りを踊る。

今回の夏祭りで踊る曲は3曲あり、1曲目は定番の盆踊りの曲。2曲目はマツ○ンサンバ、3曲目はトモコが「ノリノリの曲を選ぶね」って言っていたので任せている。

練習が終わると、次は御神輿の準備だ。
トモコからは、祇園祭のお稚児さんが乗るような大きな山鉾を創ってほしいと言われた。一体誰が乗る気なのだろう。

『ミヤビ様、そちらが終わりましたら御衣装のご準備をお願いします。トモコからこちらのデザイン画を預かってきました』
「あ、うん。ありがとうヴェリウス」

衣装か……エルフ達にはそれぞれ浴衣のカタログ渡しておいたから、そこから好きなものを選ぶだろう。

なんたって夏祭りのドレスコードを浴衣にしたからね!

簡単に着られて、着心地も抜群の浴衣を生み出した私ってスゴイ!

自画自賛しながら、ヴェリウスから受け取ったトモコのデザイン画を見た。

「ん?」
『どうかなさいましたか?』
「いや……ドレスコードは浴衣なんだけどね、これ、どう見ても浴衣じゃないんだよね……」
『それは、下々の者と神王様の御衣装を揃いになど出来ないからではありませんか』

えー……。浴衣が良かったのに。

こうして、夏祭りの準備は整っていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



── 夏祭り当日 ──


朝早くから、エルフ通りには次々と屋台ののぼりが立ち始めて、ワクワクが膨らんでいく。

提灯や屋台の骨組み、広場の中央のやぐらは昨日のうちに準備されていたが、このトントン、カンカンという音や、準備の最中の人の声とか、気持ちを高揚させるね。

お祭り自体は夕方から始まるので、進捗状況を確認しつつ時間を潰す。

「順調、順調」

腕を後ろに組み、うんうん頷きながら見て回る暇人。私だ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ロリーオ視点


「フフッ 楽しみだな~」
「陛下、手を動かしましょうね。でないと、終わりませんよ」

ミヤビ殿からお祭りのお誘いを受けた日から、気付けば顔が緩んでしまう。
だって、あの空に浮いた島に初めて行けるんだよ!! これが喜ばずにはいられるか! ってものだよ。

「陛下、本日のノルマをこなせなければ、浮島には連れて行けませんよ」
「や、やだ!! それはダメっ ちゃんとやるから連れてって!!」

カルロの言葉に慌てて仕事に取り掛かる。

早く終わらせて、“ユカタ”に着替えて、行くんだっ 空の街に!!

僕は日が沈む刻を、こんなに待ち遠しく思ったことはないよ。


しおりを挟む
感想 1,621

あなたにおすすめの小説

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。 沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。 だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。 モブなのに魔法チート。 転生者なのにモブのド素人。 ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。 異世界転生書いてみたくて書いてみました。 投稿はゆっくりになると思います。 本当のタイトルは 乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜 文字数オーバーで少しだけ変えています。 なろう様、ツギクル様にも掲載しています。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※毎週、月、水、金曜日更新 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。 ※追放要素、ざまあ要素は第二章からです。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

処理中です...