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ズボラライフ2 ~新章~
閑話 〜夏祭り〜
しおりを挟む「夏だ!」
「花火だ!!」
「「祭りでワッショーイ!!」」
トモコとハイタッチして盛り上がっていると、「何言ってんだオメェら」と呆れ顔でロードがやって来る。その後ろからは、ヴェリウスがゆったりと尻尾を振りながら顔を覗かせていた。
「諸君、夏祭りの季節がやって来たのだよ!」
この言葉に拍手をしたのは、トモコとショコラの2人だけだった。
「━━━……というわけで、浮島にて、夏祭りを開催したいと思います」
「何が、というわけなんだよ。祭りならこの間、王都であったのに参加してたじゃねぇか」
あのマズい屋台しか出てない、酒とダンスがメインの祭りの事か。
あれはあれで、外国のお祭りみたいで楽しかったが、私がやりたいのとは違う。
「私がやりたいのは、日本のお祭りなの!」
「“ニホン”のお祭りだぁ?」
「そうっ 夜店に花火に盆踊り!! 林檎飴に綿菓子、焼もろこしにトルネードポテトとフランクフルト。焼きそば、たこ焼き、イカ焼き、かき氷……挙げれば切りが無いほどの夜店グルメ」
「あぁ、美味ぇもんが食いてぇのか」
「ちがーう!! それもあるけど、違う!! とにかく、私は浮島で夏祭りを開催します!!」
◇◇◇
「右手~、左手~、はいっ ポポッポポン!」
何、ポポッポポンって……。
近所の夏祭りで盆踊りの練習に参加し、踊り狂っていた私は、現在トモコを指導者に立て、エルフ達に踊りの手本を見せている。
しかし、トモコの独特な言い回しが若干の混乱を招いていなくもない。
「こんなダンス初めてだわ~」
「神様達のダンスだってよ」
「まぁっ 奉納の舞かしら」
「このダンスを踊ると、神様達が喜んで下さるんだと!」
「それは頑張って覚えないとなっ」
「本番が楽しみだわ~」
嬉しそうに練習しているエルフ達を横目で見つつ、盆踊りを踊る。
今回の夏祭りで踊る曲は3曲あり、1曲目は定番の盆踊りの曲。2曲目はマツ○ンサンバ、3曲目はトモコが「ノリノリの曲を選ぶね」って言っていたので任せている。
練習が終わると、次は御神輿の準備だ。
トモコからは、祇園祭のお稚児さんが乗るような大きな山鉾を創ってほしいと言われた。一体誰が乗る気なのだろう。
『ミヤビ様、そちらが終わりましたら御衣装のご準備をお願いします。トモコからこちらのデザイン画を預かってきました』
「あ、うん。ありがとうヴェリウス」
衣装か……エルフ達にはそれぞれ浴衣のカタログ渡しておいたから、そこから好きなものを選ぶだろう。
なんたって夏祭りのドレスコードを浴衣にしたからね!
簡単に着られて、着心地も抜群の浴衣を生み出した私ってスゴイ!
自画自賛しながら、ヴェリウスから受け取ったトモコのデザイン画を見た。
「ん?」
『どうかなさいましたか?』
「いや……ドレスコードは浴衣なんだけどね、これ、どう見ても浴衣じゃないんだよね……」
『それは、下々の者と神王様の御衣装を揃いになど出来ないからではありませんか』
えー……。浴衣が良かったのに。
こうして、夏祭りの準備は整っていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
── 夏祭り当日 ──
朝早くから、エルフ通りには次々と屋台ののぼりが立ち始めて、ワクワクが膨らんでいく。
提灯や屋台の骨組み、広場の中央のやぐらは昨日のうちに準備されていたが、このトントン、カンカンという音や、準備の最中の人の声とか、気持ちを高揚させるね。
お祭り自体は夕方から始まるので、進捗状況を確認しつつ時間を潰す。
「順調、順調」
腕を後ろに組み、うんうん頷きながら見て回る暇人。私だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ロリーオ視点
「フフッ 楽しみだな~」
「陛下、手を動かしましょうね。でないと、終わりませんよ」
ミヤビ殿からお祭りのお誘いを受けた日から、気付けば顔が緩んでしまう。
だって、あの空に浮いた島に初めて行けるんだよ!! これが喜ばずにはいられるか! ってものだよ。
「陛下、本日のノルマをこなせなければ、浮島には連れて行けませんよ」
「や、やだ!! それはダメっ ちゃんとやるから連れてって!!」
カルロの言葉に慌てて仕事に取り掛かる。
早く終わらせて、“ユカタ”に着替えて、行くんだっ 空の街に!!
僕は日が沈む刻を、こんなに待ち遠しく思ったことはないよ。
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