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ズボラライフ2 ~新章~
123.妻に対してやからの顔をしてはいけません
しおりを挟むリン視点
王妃様の誕生日パーティーが開かれる今日。第3師団は王都の警備でバタバタしている中で、オレはなぜか纏まった休みを貰い、副師団長から浮島に遊びに行けと王都を追い出されてしまった。
「忙しい仕事、しなくていいんだろ? ラッキーじゃね」
「でもさ、同僚や先輩達は働いてる中で、オレだけ遊んでるとかさぁ……」
アスレチックとキャンプの浮島で、アルフォンスに愚痴る。
「お前働きすぎでワーカーホリックになってんだろ。上司が休み取れって言ってんだから、罪悪感なんて感じる必要ねぇって」
「そうそう。アルフォンスなんて仕事しねぇでプラプラしてんだぜ~」
「ぁあ!? こう見えて忙しくしてるっつーの!!」
アルの友人達が「嘘つけよ!」とアルをからかって笑ってる。コイツがエルフ神だって、友人達は知らないんだとか。
「ま、リンはさ、アルの言うとおり楽しめば良いんだよ。せっかく休みもらったんだからさ」
アルに負けず劣らずの美形エルフが、バーベキューで使う食材を準備しながら、騒ぐアル達に苦笑いしつつ言った。
「そう……かな」
「そうそう。ほら、テントとか準備しよ! 今日はキャンプ楽しむんだから」
「あ、うん」
その時、ゴウッと突風が吹いた。
太陽を雲が覆ったのか影がさし、さっきまでの晴天が嘘のように暗くなる。
アル達のいる方から「うげぇ!! テント飛ばされたァァ!!」と叫び声が聞こえ、何やってんだと笑っていれば、突如頭上で「ギュアアァァァ」と何かが鳴いた。
「あ、真っ白なドラゴンだね」
どうやら太陽の光を遮ったのは雲じゃなくて、巨大なドラゴンだったようだ。
「近いな」
「ドラゴンの住処が近いから。この辺の名物だよね」
ドラゴンが近くを飛んで、こんなに落ち着いてられるのは浮島の住人だけだろうな。
「テント追いかけろ!!」
「ざっけんな!! お前何手ぇ離してんだよ!!」
「あれ? オレの上着知らね?」
「知るか!!」
ギャーギャー騒ぎながら、飛ばされたテントを追いかけていく3人を見ながら、平和だなとほっこりした。
「おいっ ドラゴン!! テメェ降りてこい!! エルフなめんなコラァ!!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
雅視点
ロードの腕の中、死んだ目でモニターに映し出したパーティーの様子を観る。
今の流行は、なんとバッスルスタイル!!!
てっきりロココスタイルかと思いきや、バッスルとは!!
バッスルスタイルってどうやって座るの? って思うけど、実は折り畳み式だから座れるんだよ。考えた人すごいよね。
あ、ロココスタイルも半数は居るみたい。なるほど。保守派と最先端派か。
私はどっちも可愛くて好きだ。
「何を熱心に見てんだ? もしかしてダンスしてぇのか?」
「違うよ。ドレス見てるの」
「あぁ……。この間のオメェのドレス姿、綺麗だったよな。この世のもんとは思えねぇ綺麗さだった。勿論普段着のオメェも綺麗だけどよ」
頬を赤く染めて頬擦りしてくる旦那は、相変わらず目がおかしい。
胡乱な眼差しをロードに向けていると、モニターから一際盛り上がる声がして注目する。
今日の主役、王妃様の登場だ。
「おおっ 王妃様はロココスタイルか~。やっぱり幼女はバッスルよりロココが似合うよね~」
ふわふわのプリンセスラインのドレス、美幼女が着ると眩しいわ~。
『王妃様の御髪に付けられている花の飾り……あれが、陛下がサプライズでご用意されたブーケの?』
『間違いないですわ! あのように美しいお花、見たことございませんもの』
『ブーケを髪飾りにされるなんて……素敵ですわ~』
『虹色の薔薇とは……っ なんと美しい……』
周りに居る貴族達がざわついている。
それもそのはず。ルーベンスさんにあげた例のブーケだが、中央の宝石の花を除いて、王妃様へのプレゼントとなったのだ。
他の貴族にすでに見られてしまった事と、王妃様がサプライズプレゼントと勘違いした事で、プレゼントにするしかないという結論に達したからだ。まぁ、虹色の花自体は白薔薇を染色する事で作れると伝えた事がルーベンスさんのゴーサインの一番の理由なのだが。
「おい。あの花は何だ……」
マンガだったらゴゴゴゴ……という擬音が入ってるだろう表情で、低音ボイスをさらに低くしたロードが、説明しろというように見てくる。
「あ、あれは……白薔薇を染色したアレで……」
「嘘ついてんじゃねぇぞ」
「嘘じゃな……」
「あの花から、オメェの力の粒子みてぇなのが見えんだよ」
「ひぇッ」
神には見えちゃうやつ!?
「説明、してくれんだろ?」
あぁん? というやから特有の顔をして、脅してくるとは。
夫婦ってなんだろう。
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