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ズボラライフ2 ~新章~
119.やっぱり食べ物が良いんですか
しおりを挟む「バカなのか!? 馬鹿なのか君は!!!!!?」
ジェントルーベンスさんに、バカって2回も言われた。
「このような貴重な神宝を、差し入れと称して執務室に持ち込み、たかが人間に渡すとは……ッッ」
「え、し、しんぽう……??」
「おかしいなぁ~。貴族は薔薇と宝石が好きなのに~??」
「っこの……ッッ 馬鹿者共がァァァァ!!!!!!!」
3回もバカもらいました。
「やっぱり食べ物が良かったんだよ~」
コソコソとトモコが耳打ちしてくる。どう見ても観賞用でしかない虹薔薇のブーケを見て眉尻を下げる。
「え、ならこのバラ食べ物に変える!?」
「ああああぁぁぁ!!!! やはり逃げ出せば良かった……ッ こんな……こんなアホな事に巻き込まれるとはっ」
雄叫びを上げて頭を抱えたルーベンスさん、初めて見たや。
「何だこの花は……っ 虹色の薔薇などこの世に存在しないだろう? それとも天空神殿には咲き誇っているのかね!? いや、このような薔薇ならばミヤビ殿が真っ先に見せたはず……つまりこれは思い付きでミヤビ殿が創ったとしか考えられん! それにこの真ん中にある宝石……これ程の物となると、神々の秘宝中の秘宝になるのだろう……あぁ……っ 頭が痛くなる!!」
頭を抱えたままぶつぶつ言い始めたんだけど。それより、この花何味のお菓子にしたら良いか教えてほしいんですけど。
「そもそも大前提として、差し入れの定義がおかしいのだ…… 。何故差し入れが花や宝石になる!? それは差し入れではなくプレゼントだろう!?」
「私は~、ヨックモッ○のシガールみたいなお菓子にしてほしいな~」
「それはトモコの好きなお菓子でしょ。ルーベンスさんへの差し入れなんだから、ルーベンスさんの好きなお菓子にしないと」
「もしやこれは、試されている……のか? 私は今、神から試練を与えられていると……?」
「え~。みーちゃんもシガール食べたくない?」
「そう言われると食べたくなってくるけど……」
晩御飯前のお腹が空く時間、悪魔の囁きに心が揺れる。
横目でルーベンスさんを見れば、未だに頭を抱えていた。
「し、シガールにしちゃう?」
「しちゃおう、しちゃおう!」
トモコに促され、虹薔薇ブーケをシガールブーケに変えようとしたその時、ドンッと何かが爆発したような音と、震度1程度の小さな揺れを感じブーケから顔を上げる。
「なに?」
「何か爆発したね~?」
トモコと顔を合わせ首を傾げる。と、そこへガンガンと若干荒めなノック音が響いた。
「何事だね」
「ルーテル公爵! 王宮敷地内で爆発が起きた模様です!! 念の為避難をお願い致します!」
いつもルーベンスさんの執務室の前に立っている護衛の声だ。先程まで頭を抱えていたルーベンスさんは、正気を取り戻したのかすっかりいつも通りになっていて、冷静沈着に受け答えしている。
「ふむ……爆発音は騎士団の訓練場がある方角から聞こえて来たようだ。お二人は今すぐお帰り下さい。私は何があったのか確かめに行く必要があるようなのでね」
そう言って、ルーベンスさんは足早に部屋を出て行った。
「トモコ……」
「うん。みーちゃん」
トモコを見れば、何も言わずとも頷き返してくれる。
「「行こう!!」」
こんな楽しそうな事、野次馬しないわけにはいかないだろう!!
手に持っていたブーケは邪魔だったので、机の上に置いておいた。ルーベンスさんにあげたものなので、後でルーベンスさんが持って帰るだろう。
騎士団の訓練場を目指し、無駄に長い王宮の廊下をひた走る。途中、数人の貴族に抜かされたので方向は間違いないだろう。
それにしてもこっちは全力で走っているのに、貴族達は早歩きしている程度の余裕さで私を抜かして行ったが、やはり足の長さの違いが問題なのか。
「ねぇみーちゃん、本当にこっちで合ってるのかな~?」
「合ってるよ。さっき貴族の人もこっちの方向に行ってたし、騎士団の訓練場でしょ。こっちだよ」
「え~? 訓練場ってあっちじゃなかった~?」
トモコが進んでる方向とは別の場所を指差すので、そういえばトモコは方向音痴だったなと溜め息を吐く。
「トモコ、訓練場はこっち。あっちは王妃様の庭園だよ。間違いない」
「そうかなぁ~? こっちの方向が王妃ちゃんの庭園の気がするんだけど~」
そんなトモコの呟きに首を振ると、訓練場へと急いだ。
「な、なぜ王妃様の庭園に辿り着いてしまったのか…………っ」
「だから言ったじゃん。こっちは王妃ちゃんの庭園だって」
「でも、貴族もこっちに向かってたよ!?」
「貴族は爆発音聞いて、反対側に逃げてたんじゃないかな~」
「っ……ま、迷いの王宮」
「みーちゃん、いい加減認めなよ。みーちゃんは方向音痴なんだよ」
「!!!!!?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ロード視点
「……イメージトレーニングの成果が出過ぎただと?」
「ああ。ミヤビの教えてくれた魔法の訓練方法を試した結果、少しの魔力でも攻撃力がアップしたらしい。ただ、そこまで威力が出るとは思って無かったんだろう。動揺してコントロールを誤ったため起きた事故だそうだ」
爆発音のせいで、慌てて訓練場に駆け付けた宰相に状況を説明する。
俺も先程駆け付けたばかりで、原因である騎士に聴き取りを行ったばかりの為、憶測の域は出ねぇが……。
周りを見れば、訓練場を囲う壁の一部が崩れ落ち、その周辺に集う騎士達を部隊長達が宥め、事態の収拾にあたっている。
「ふむ……。安全性を考慮した改善方法を提案してもらわねば、今後の魔法訓練は許可しかねる。反省文と共に改善案を提出したまえ」
「チッ 面倒くせぇが、了解した」
「訓練場の修復は第3師団の予算から引かせてもらう」
「ハァ!? 魔法訓練は他の師団もやってんじゃねぇか!! 大体、やらかしたのは第1の奴だぞ!?」
「訓練方法を提案したのは第3師団長だろう。責任を取りたまえ」
「っ勘弁してくれよ……」
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人生初の作品です。皆様に楽しんで頂けるものを作っていきたいと思っています。宜しくお願い致します。
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