異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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ズボラライフ2 ~新章~

114.計測

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ロード視点(半年前)


「あー……今日はここにいる全員の魔力量と魔力属性を測る為、魔力研究……じゃねぇ、王立研究所の所長に来てもらってる。忙しい方だからなぁ、時間を取らせないよう、効率良く検査するように」

第3騎士団の演習場に集められた騎士達は戸惑いながらも、最近使いだした魔力の事をよく知れる機会に高揚しているようだ。

「魔力量を測る方はこちらへお並びくださーい」
「属性を測る方はこっちへお願いします!」

魔石研究の功績で最近発足された王立研究所の所長となったガブリエル・ハイソン・ジャスパー公爵が、その魔石を使用して作り出したルマンド王国初の魔石を使用した魔道具が、魔力量と属性を数値化し計測するものだった。
俺はこの魔道具を第3師団強化の為に利用させてもらう事にした。
自身の魔力量と属性を知っておく事は、魔法を効率良く使用するにあたり、重要な事だと考えたからだ。

魔素の尽きかけていたこの世界で、魔法は定着していないが、寝物語などでは親しまれ、特に魔族にとっては身近なものだ。
実際使えるとなれば、誰もが興味を示すだろう。

事実、あのカルロやレンメイもこの検査に興味を惹かれやって来ている。自身も計測する気満々のようだ。
前にミヤビが言っていたが、ミヤビと親しい者で魔力や強さを無意識にでも望んでいれば魔力量は増えるらしい。きっと二人もリンと同様に魔力量が増加しているだろう。

奴らの計測に関しては別室で行うべきだな。

「しかしジャスパー公爵は素晴らしいね。この短期間で魔石だけでなく、魔力量や属性を計測する魔道具を作るなんて」
「陛下も計測されたと伺いましたが、いかがでしたか?」

この大規模な計測に当然とばかりにやって来て、ウキウキした表情でアナシスタに話し掛けた陛下は、興奮気味に自身の測定結果を話している。

「僕は魔力量が28で属性は風と土だったんだ!」

人間の魔力量の平均は5だ。つまり陛下はかなり魔力量が高いという結果だが、計測人数が少ない現状それには気付いていない残念な方だったりする。

「それは素晴らしいですね。陛下も魔法の訓練をされるのでしたら、ルーテル宰相にご教示いただくと宜しいですよ」
「ロードじゃなくてルーベンスに?」
「宰相は魔法の扱いが得意な魔族ですし、神獣様に師事されているとか。師団長は教える事には向いていませんからね。ルーテル宰相の方が魔法の腕は上がると思います」
「そ、そうなんだ。アナシスタは誰に師事しているの? やっぱりロード?」
「私は……「アナシスタ、悪ぃがオメェは属性の方見てきてもらえるか」はい。では陛下、お話の途中で申し訳ございませんが失礼致します」

人手の足りてねぇ属性計測にアナシスタをやれば、陛下が話の途中だったのにと恨みがましく呟くので、こっちは仕事中だと黙らせた。

第3師団の8割が計測を終わらせた所で、騎士団の魔力量を数値化出来た事がよほど嬉しいのか、ほくほく顔のジャスパー公爵が陛下のそばへとやって来た。

「やはり魔族の魔力量は他より高いようです。意外なのは人族より獣人族のほうが魔力量は低いのです。もしかしたら身体能力の高さが魔力量の低さと関係しているのかもしれませんなぁ。やはりデータ量が多いと把握できる事も多い。騎士団にご協力願ったのは正解でしたのぅ」
「ジャスパー公爵の研究は我が国のみならずこの世界の繁栄に必要な事。これからも研鑽してもらいたい」

陛下が初めて国王らしい事を言いやがった。

「無論でございます」

ホッホッホと笑ってチラッと俺を見た公爵は、「師団長方とリン殿の計測は別室にて私がさせていただきますぞ。勿論御二方以外に口外はしませんのでご安心下され」と言葉にした。

先に言っておくが俺ぁ計測しねぇからな。
おい、んな残念そうな顔して「精霊様とつがった人間のデータが欲しかった」とか呟くんじゃねぇ!



◇◇◇



「陛下! ロード殿! 師団長方とリン殿の計測結果ですが、素晴らしい数値が出ましたぞ!!」
「えっ そうなの?」

別室でカルロ、レンメイ、リンの計測をしていたジャスパー公爵が、ジジイとは思えない走りで部屋に飛び込んできやがった。

「はい! まず魔力量ですが、リン殿が飛び抜けて多く、なんと76もあったのです!!」

76ねぇ。神族は皆100超えで、そっからの細けぇ数値はステータスにゃ出ねぇんだよな。多分各々ステータスを隠匿してるからだとは思うが。
ちなみにミヤビの魔力量を聞いた事があるが、「あー……無限、かなぁ」と苦笑いしていた。何だ無限って。

「76!? えーっと、僕の数値が28だから……やっぱり僕って魔力量低いんだ……」
「何を仰っているのですか! 騎士団の平均魔力量は5~8ですぞ!! 陛下のそれはそこらの騎士より遥かに上なのです!!」
「えぇ!?」
「まぁそんな事より「え、そんな事!?」リン殿の魔力量は獣王となった影響ではないかと考えます。興味深いのは、リン殿は魔力を身体能力の強化に使用しているという点ですかな」
「身体強化……ってどうやるの?」
「どうやら属性は関係なく、魔力を強化したい部分に巡らせるようですな」
「へぇ。魔力を巡らせるのかぁ……僕にも出来るかなぁ?」
「どうですかなぁ。そんな事より「2回目のそんな事発言!!」師団長方も素晴らしく、ブランチャード侯爵はさすが魔族というだけあり、魔力量は54。レンメイ殿は41といずれも他の追随を許さぬほど!」

ジャスパー公爵のはしゃぎようは年甲斐なく、陛下すらも少し引いていた。

「しかし……こう言ってはなんですが、御三方の魔力量はです。わしは、御三方の魔力量は外部の要因が働いているのではないかと考えておりますがな」

ジャスパー公爵の視線が俺を捉えている。
コイツ……気付いてやがるのか。

「何が言いてぇ……」

「この御三方の他に魔力量が平均よりも高いと思われる方々には共通点がありましての。皆、とある人物と親しくされておるようですなぁ」
「…………」

公爵を睨みつけるが、当人は口の端を上げ飄々とした様子で俺をただ見据えているだけだった。

「え? え? ナニ!? 何なのこの雰囲気ィィ!?」



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