558 / 587
ズボラライフ2 ~新章~
112.父親は娘に彼氏が出来ると駄々を捏ねがち
しおりを挟むヴェリウス視点
『ロビン様のつがいが見つかったとはな……』
「おい!! そんなに落ち着いていられる事じゃねぇだろ!?」
『誕生されたばかりで、もうつがいが見つかるなど喜ばしい事だろう。それともおぬしは、ロビン様につがいが見つからぬ方が良いとでも言うのか』
「ぐっ そりゃいずれは仕方ねぇかもしれねぇが、赤ん坊の時に出会うにゃ早すぎんだろ! しかも相手は50代のオッサンだぞ!?」
『どうせ番えば歳などとらぬ。ミヤビ様の若返りの薬もあるのだ。問題はないだろう』
「人間だぞ!?」
『フンッ 貴様も人間だったではないか。それこそ番えば神になる。一体何の問題があると言うのだ』
「問題しかねぇよ!! 俺ぁ生まれたばかりの愛娘を俺よりオッサンの男に渡したりしねぇぞ!!!」
『つまりおぬしは、わざわざ忙しく飛び回る私を呼び出しておいて、娘を取られたくないと駄々を捏ねているというのか』
「ぅ゛ぐ……っ」
異界から神王様が帰って来られてからというもの、人間達のゴタゴタから内輪揉め、御子様のご誕生とその教育方針に魔石や魔物の対処と今までになかったような仕事に忙殺されている私を呼び出したかと思えば、娘につがいが現れたと騒いでいるバカ弟子に怒りよりも溜め息しか出てこないのは、疲れているからだろうか。
しかしここにきてロビン様の“つがい”とはな。
『とはいえ、神王様の御子様であるロビン様のつがいが人間から出たとなると神々が騒ぎかねんな。次から次へと……ミヤビ様に関わる問題は絶えぬ』
「そんな事良いつつニヤけてんぞ」
『フンッ これはニヤけているのではなく、幸せを噛み締めておるのだ。騒々しい事も、神王様がそばに居て下さるのであれば嬉しいものよ』
「違いねぇ」
つい今しがた騒いでいたバカ弟子は、口の端を上げると「そういやぁ人間側の魔物の対処だが……」と本題であろうそれを話し始めた。
ロビン様の件は、つがいが現れたとなれば結果は決まっているのだ。今更どうこう言っても仕方のない事だからな。
『ふむ。前に話した通り神側は、ジュリアスが中心になり人間の手に負えぬ魔物の対処をしている最中だ』
「ああ。人間側はギルドや城の騎士団を含め、今んとこ魔物と相対できるのはリンやカルロ、レンメイに冒険者の“焔の鳥”とSSランクのバードぐれぇだ。だもんで、人間がある程度魔法を使えるようになるまではその少人数だけで対処するしかねぇ。後10年はもらえねぇと人間側での対処は難しいのが現状だ」
『うむ。10年程度ならば神々も文句は言うまい』
「ああ。で、陛下や宰相を交えて話し合いを行ったが、まずは魔物の情報を民に発布し注意喚起を促した後、10年後に改めてドロップアイテムについて発表し、魔物退治は冒険者の生業とする事で話がまとまった」
『やり方は昔と変わらんな。むろん騎士団も魔物を倒せるレベルに強化するのだろう』
「勿論だ。俺がそうなるよう騎士団のレベル上げを図る」
『ふむ……おぬしが魔力の扱いを指導するのか』
この世の生きとし生けるものには大なり小なり魔力がある。魔力はうまく扱えば魔法の使用の有無だけでなく、体力や知力を上昇させる。
こやつは騎士団の底上げにまず、魔力コントロールを身に着けさせるのだろう。
「まぁな。魔力コントロールはオメェにさんざんやらされたから、人間に教えてやるぐれぇは出来んだろ」
『まぁおぬし程度でも人間ごときには充分であろう』
「程度とか言うんじゃねぇよっ」
『フンッ おぬしの魔力コントロールは結局雑なままだならな。言っておくが、おぬしとてまだ新神だということを忘れるでないぞ』
「わ、分かってるって!」
未熟者のバカ弟子はいい加減な返事をして気まずそうに目を逸らした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
雅視点
御前試合から数ヶ月が過ぎ、あれほど王都に溢れていた獣人もただの旅行者だったのか国に帰ったのだろう、程良い人混みに落ち着いて街歩きしやすくなった。
「移民かと思ってたけど、観光客だったんだなぁ」
獣王ブームは過ぎ去ったのか。
「今のブームは湖にピクニックだよね」
街歩きしやすく感じたのは、皆が湖に集まっているからかもしれない。
「アタシも湖行ったよ! すっごく綺麗だった!!」
「コリーちゃんも見に行ったんだね」
今日は、先日待望の弟が生まれたばかりのコリーちゃん宅にお呼ばれしているのだ。
コリーちゃんの弟君は勿論、双子の友人候補である。
「うんっ “ドラゴン湖”って『一生に一度は行きたい地上観光地ベスト5』に入ったんだよ!」
「ん? 何その観光ブックの文言みたいなの」
「浮島の街に地上観光ブックを配布している所があるんですよ。そこで先日コリーが貰ってきたみたいで……」
ニコニコと特製薬草パンケーキを出してくれるコリーちゃんのお母さんが、そう教えてくれる。
出産祝いであげた抱っこ紐が活躍しているようで何よりだ。
「浮島の観光ブック……」
エルフ達はそんな事までやり始めたのか。
「でもエルフのお友達はまだ地上が怖いからって、誘っても断られるんだよ」
「そっか~。エルフは美人さん揃いだから拐われる可能性があるもんね~」
一緒に来ていたトモコが頷きつつ薬草パンケーキを口に含んで「ぅぐッ」と変な声を上げている。
「うん。だからいつもは学校が終わった後に浮島で遊んでるんだぁ。でもせっかく綺麗なドラゴン湖が出来たから、一度は見せてあげたいの!」
コリーちゃんはそう言うが、元々エルフは臆病な性格の上、長い歴史の中でずっと虐げられてきた……。子供が地上に来るのは少し難しいのかもしれない。
「そういえば、お二人は知ってらっしゃいます? 今度この王都で大規模な工事を始めるらしいですよ」
少し神妙な雰囲気に、気を遣ったコリーママが話題を変える。するとトモコがその話に食いつき、驚きの言葉を発したのだ。
「あ、それ知ってるっていうか、私がその工事の監修頼まれました~」
「あらあら、神様が工事の監修をされるんです?」
「表立っては問題になるので、一応内緒って体なんですけどね~」
おい、それ初めて知ったんですけど?
21
お気に入りに追加
2,509
あなたにおすすめの小説
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます
銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。
死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。
そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。
そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。
※10万文字が超えそうなので、長編にしました。
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた
愛丸 リナ
恋愛
少女は綺麗過ぎた。
整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。
最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?
でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。
クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……
たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた
それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない
______________________________
ATTENTION
自己満小説満載
一話ずつ、出来上がり次第投稿
急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする
文章が変な時があります
恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定
以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる