異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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ズボラライフ2 ~新章~

110.おかしなロビン

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「だぁう」
「ん? ロビンどうしたの??」

ロビンがディークと同じように、おじさんの方へ手を伸ばし、あぶあぶと何かを訴えている。しかし私達は湖へ向かう人混みに紛れている為、おじさんからは見えていないだろう。異世界人は背が高いのだ。

「う~ん……ロビン、あのおじさんに何かあるの?」
「ぁぶ、ぅんぶ」

うん、分からん。
とにかく必死におじさんに手を伸ばしている事は見て取れるが、ウチの子は何をしたいのだろう。

「ふぇ……」

届かない手に悲しくなったのか、愚図りだした娘をあやし宥めていれば、やっとおじさんが馬車に乗り込んで湖の方へと遠ざかっていった。ロードも人混みをかき分けてこっちへやって来る。

「ロード」
「ミヤビ、早くここから離れようぜ」

腰を抱き寄せられ、私達は急ぎ足でその場を離れた。後ろからは人々が驚き、喜ぶ声が聞こえてきたので、湖の花々や島は王都の名物になるだろう。ニヤニヤが止まらない。きっとこれから湖の周りに美味しいお店が出来るに違いないからだ。

「ふぇっ ふぇっ あ゛~!!」

皆が湖に行ってしまったのか、いつもより閑散としている中央通りの噴水の前まで来ると、愚図っていたロビンがとうとう本格的に泣きだした。

「ど、どうした!? ロビン」

泣き止まないロビンにロードが慌てているが、やはりさっきのおじさんが関係あるのだろうか。ディークを見れば、きょとんとして泣いてはいない。ロビンだけが愚図っているのだ。

「ロード、さっきの人……」
「あ゛? キュフリー侯爵がどうかしたか……ほらロビン、泣くな~。パパが高い高いしてやるからな」

ロビンを抱っこしてあやしながら、私を横目で見るロードにさっきあった事を伝えた。

「……いや、そんなバカな……いやいや、ねぇから。ありえねぇから!」
「え? なに?? 何かあるの「ねぇよ!! 絶対なにもねぇ!! だからオメェは気にすんなっ」」

食い気味に否定されたが、どうやらロードにはロビンのおかしな様子がどういうものなのか分かったらしい。

私には分からないのに、何故ロードに分かるんだ。解せない。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ディーク君、ロビンちゃん、おばあちゃまですよ」
「サラ様、わたくしもお二人を抱っこしたいですわ」
「カーラはミルク当番でしょう? それでしたらサラ様の次はわたくしが抱っこさせていただきたいわ」

今日は1週間に1度のルーベンス邸の訪問日である。来て早々、奥様方から取り合いされている我が子を眺めながら、こうやってルーベンスさんも取り合いされているのだろうか……とハーレム主を地でいく宰相様の顔を思い浮かべる。

いつも困惑しているかムッとしているか無表情であるあの人が、ハーレムでウハウハしているところなどとても想像が出来ない。

「あらあら、皆気をつけてくださいませね~。ミヤビ様、申し訳ありませんわ。皆1週間ぶりに可愛い孫のお顔が見れたものだからはしゃいでしまって」
「いえ、いつもお世話していただいて大変助かってます」

ルーベンスさんの古参の奥様であるアイネさんは、私にその美しい笑みを向け、手際よくお茶を淹れてくれる。普通なら侍女がするらしいが、こうやって奥様が集まる時は自分たちで淹れるんだとか。

「ディーク君もロビンちゃんも、少し見ない間に大きくなりましたわね」
「え、さすがに1週間では変わらない気が……」
「そんな事ありませんわよ~。1週間でも赤ん坊の成長は早いものですのよ」
「はぁ、そんなもんですかね」

私の反応に目を細め、上品にフフッと笑うと淹れてくれたお茶を私の前に差し出す。

「ありがとうございます」

少し熱めの紅茶から湯気と共に良い香りが届く。今まで紅茶はティーバックで十分美味しいと思っていたが、トリミーさんのお茶やここのお茶を飲んで目覚めてしまった。今やティーバックのお茶など飲めない。

「そういえば、アイネさんはルーベンスさんとよくパーティーに参加するんですよね?」
「ええ。社交はわたくしの役割ですので」
「じゃあ、キュフリー侯爵家のパーティーに参加した事はありますか?」
「キュフリー……まぁっ ウィンちゃんのパーティーね~」

ウィンちゃん!?

「勿論ありますわ。だってウィンちゃんは旦那様のお弟子さんだもの」
「は……?」

お、お弟子さん?

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