556 / 587
ズボラライフ2 ~新章~
110.おかしなロビン
しおりを挟む「だぁう」
「ん? ロビンどうしたの??」
ロビンがディークと同じように、おじさんの方へ手を伸ばし、あぶあぶと何かを訴えている。しかし私達は湖へ向かう人混みに紛れている為、おじさんからは見えていないだろう。異世界人は背が高いのだ。
「う~ん……ロビン、あのおじさんに何かあるの?」
「ぁぶ、ぅんぶ」
うん、分からん。
とにかく必死におじさんに手を伸ばしている事は見て取れるが、ウチの子は何をしたいのだろう。
「ふぇ……」
届かない手に悲しくなったのか、愚図りだした娘をあやし宥めていれば、やっとおじさんが馬車に乗り込んで湖の方へと遠ざかっていった。ロードも人混みをかき分けてこっちへやって来る。
「ロード」
「ミヤビ、早くここから離れようぜ」
腰を抱き寄せられ、私達は急ぎ足でその場を離れた。後ろからは人々が驚き、喜ぶ声が聞こえてきたので、湖の花々や島は王都の名物になるだろう。ニヤニヤが止まらない。きっとこれから湖の周りに美味しいお店が出来るに違いないからだ。
「ふぇっ ふぇっ あ゛~!!」
皆が湖に行ってしまったのか、いつもより閑散としている中央通りの噴水の前まで来ると、愚図っていたロビンがとうとう本格的に泣きだした。
「ど、どうした!? ロビン」
泣き止まないロビンにロードが慌てているが、やはりさっきのおじさんが関係あるのだろうか。ディークを見れば、きょとんとして泣いてはいない。ロビンだけが愚図っているのだ。
「ロード、さっきの人……」
「あ゛? キュフリー侯爵がどうかしたか……ほらロビン、泣くな~。パパが高い高いしてやるからな」
ロビンを抱っこしてあやしながら、私を横目で見るロードにさっきあった事を伝えた。
「……いや、そんなバカな……いやいや、ねぇから。ありえねぇから!」
「え? なに?? 何かあるの「ねぇよ!! 絶対なにもねぇ!! だからオメェは気にすんなっ」」
食い気味に否定されたが、どうやらロードにはロビンのおかしな様子がどういうものなのか分かったらしい。
私には分からないのに、何故ロードに分かるんだ。解せない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ディーク君、ロビンちゃん、おばあちゃまですよ」
「サラ様、わたくしもお二人を抱っこしたいですわ」
「カーラはミルク当番でしょう? それでしたらサラ様の次はわたくしが抱っこさせていただきたいわ」
今日は1週間に1度のルーベンス邸の訪問日である。来て早々、奥様方から取り合いされている我が子を眺めながら、こうやってルーベンスさんも取り合いされているのだろうか……とハーレム主を地でいく宰相様の顔を思い浮かべる。
いつも困惑しているかムッとしているか無表情であるあの人が、ハーレムでウハウハしているところなどとても想像が出来ない。
「あらあら、皆気をつけてくださいませね~。ミヤビ様、申し訳ありませんわ。皆1週間ぶりに可愛い孫のお顔が見れたものだからはしゃいでしまって」
「いえ、いつもお世話していただいて大変助かってます」
ルーベンスさんの古参の奥様であるアイネさんは、私にその美しい笑みを向け、手際よくお茶を淹れてくれる。普通なら侍女がするらしいが、こうやって奥様が集まる時は自分たちで淹れるんだとか。
「ディーク君もロビンちゃんも、少し見ない間に大きくなりましたわね」
「え、さすがに1週間では変わらない気が……」
「そんな事ありませんわよ~。1週間でも赤ん坊の成長は早いものですのよ」
「はぁ、そんなもんですかね」
私の反応に目を細め、上品にフフッと笑うと淹れてくれたお茶を私の前に差し出す。
「ありがとうございます」
少し熱めの紅茶から湯気と共に良い香りが届く。今まで紅茶はティーバックで十分美味しいと思っていたが、トリミーさんのお茶やここのお茶を飲んで目覚めてしまった。今やティーバックのお茶など飲めない。
「そういえば、アイネさんはルーベンスさんとよくパーティーに参加するんですよね?」
「ええ。社交はわたくしの役割ですので」
「じゃあ、キュフリー侯爵家のパーティーに参加した事はありますか?」
「キュフリー……まぁっ ウィンちゃんのパーティーね~」
ウィンちゃん!?
「勿論ありますわ。だってウィンちゃんは旦那様のお弟子さんだもの」
「は……?」
お、お弟子さん?
41
お気に入りに追加
2,533
あなたにおすすめの小説
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
乙女ゲームに転生した世界でメイドやってます!毎日大変ですが、瓶底メガネ片手に邁進します!
美月一乃
恋愛
前世で大好きなゲームの世界?に転生した自分の立ち位置はモブ!
でも、自分の人生満喫をと仕事を初めたら
偶然にも大好きなライバルキャラに仕えていますが、毎日がちょっと、いえすっごい大変です!
瓶底メガネと縄を片手に、メイド服で邁進してます。
「ちがいますよ、これは邁進してちゃダメな奴なのにー」
と思いながら
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
幼女公爵令嬢、魔王城に連行される
けろ
恋愛
とある王国の公爵家の長女メルヴィナ・フォン=リルシュタインとして生まれた私。
「アルテミシア」という魔力異常状態で産まれてきた私は、何とか一命を取り留める。
しかし、その影響で成長が止まってしまい「幼女」の姿で一生を過ごすことに。
これは、そんな小さな私が「魔王の花嫁」として魔王城で暮らす物語である。
パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!
八神 凪
ファンタジー
勇者パーティに属するルーナ(17)は悩んでいた。
補助魔法が使える前衛としてスカウトされたものの、勇者はドスケベ、取り巻く女の子達は勇者大好きという辟易するパーティだった。
しかも勇者はルーナにモーションをかけるため、パーティ内の女の子からは嫉妬の雨・・・。
そんな中「貴女は役に立たないから出て行け」と一方的に女の子達から追放を言い渡されたルーナはいい笑顔で答えるのだった。
「ホントに!? 今までお世話しました! それじゃあ!」
ルーナの旅は始まったばかり!
第11回ファンタジー大賞エントリーしてました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる