上 下
548 / 587
ズボラライフ2 ~新章~

102.余韻に浸る

しおりを挟む


「精霊がルーテル公爵の執務室に入っただと……?」
「はい。幼い侍女らしき少女を連れられ、陛下とブランチャード侯爵がいらっしゃる時間に入室されました」
「陛下もその場に居たというのか……いや、それよりも、やはり精霊というのは第3師団長の偽りであったか」
「そのようです。精霊様は神に仕えるお立場。神獣様が共を付けていない事を考えると、あの方は神獣様と同等かもしくはそれ以上のお立場にあるかと」
「ふむ……確かマガレー子爵の娘が、あの精霊は神王様の御子様の乳母だと騒いでいたか……荒唐無稽だと思っていたが、あながちそうでもないらしい」
「ウィンストン様、例え第3師団長のつがい様が神王様の御子様の乳母君とはいえ、人間(第3師団長)があのように神王様に触れることなど神々が許すはずはございません。そして神獣様のあの御方への態度は乳母君のそれではないと考えます」
「お前の推測はこうだろう? 恐らくあの精霊は、神王様の御息女ではないか」
「ご推察の通りでございます」
「とはいえ未だ推測の域を出ぬ。精霊の調査は引き続き行い、逐一報告をしろ」
「かしこまりました」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ロリーオ国王視点


「はぁ……楽しかったなぁ。ばーべきゅパーティー」
「フフッ あれから2週間は経つというのに、楽しまれたようで良かったですね」
「だって見たこともない建物に、開放感のある自然の中での美味しい料理、そしてシメのきゃんぷふぁいやー!! どれも素晴らしかったじゃないか」

何より最高だったのは、面倒な貴族たちが居なかったって所だよね!!

「それに、神王様のお住まいが空の上だっていうロマン!! カルロは知ってたかい!?」
「存じ上げておりますよ」
「やっぱりカルロも知ってたんだね。招待された事はあるの!? どんな所!?」
「陛下、そのようにご興味がおありならロードに聞いてみてはいかがですか」
「え……お、怒られないかな?」
「案外招待してくれるかもしれませんよ」

マジで!?


◇◇◇


「あ゛? 天空神殿について教えてほしいだぁ?」
「う、うん。あっ  聞いたからって何かしようって思ってないよ!? ただ空の上に街があるって男のロマンじゃないか! だから話だけでも聞きたくてっ」
「あー……別に構わねぇが、何が聞きてぇんだ?」

ロヴィンゴッドウェル卿から聞いた“天空神殿”の詳しい話が聞きたくて、怒られるのを覚悟してロードを呼んだんだけど、こんなに軽く了承してもらえるとは思わなかった!!

「本当にいいの!? 神王様のお住まいの話だよ!?」
「いや、ありゃミヤビが悪ノリして創った遊び場で住処じゃねぇ」
「ええ!?」

悪ノリで空に遊び場を創った!? お住まいじゃない!? ど、どういう事!?
カルロを見てもニコニコ笑っているだけだ。

「まぁ偶に音楽祭やらパーティーやらで使っちゃいるが」
「音楽祭? そんな楽しそうな催しに呼んでもらった覚えはないけど?」
「お前らがミヤビの正体に気付く前にやったんだよ。笑顔で凄んでくるんじゃねぇ」
「次にそういう催しがあったら是非招待してほしいものだね」
「わかったから近付いてくんな!!」

カルロいいなぁ。僕も招待してもらいたいけどダメだよね……。

「音楽祭は1年に1回行うらしいから、どうせミヤビがオメェらを誘うだろうぜ」

え? オメェって言った?

「良かったですね陛下。次は招待してくれるようですよ」
「ぼ、僕も良いの!?」
「あ゛? 深淵の森に招待してもらってんだから誘われると思うぜ。あそこに誘われるのはミヤビが信頼してる奴だけだ」

え? え? 僕、信頼……? え、本当に?

「なっ 何泣いてんだ陛下っ」
「だって、嬉しくて……っ」
「何も泣くこたぁねぇだろ」

呆れた声をロードは出したけど、僕が神王様ミヤビ殿に信頼されてるなんて……思ってもみなかったんだっ

「と、とにかく、そんなに天空神殿が見たけりゃミヤビに言ってみろ。すぐ連れて行ってくれんだろ」

え? 招待されるの待たなくて良いの?

「ロード、陛下には仕事をしてもらわないと困るんだけどね? もしミヤビ殿がを陛下の為に創ってしまったら、“浮島”から戻って来なくなってしまうかもしれないだろう」

あの扉?

「……ミヤビにゃ陛下の部屋にはを創らねぇよう注意しとく」
「そうしてくれると助かるよ」

ねぇ、扉って何の扉なの??

「さぁ陛下、楽しいお話の後はきちんとお仕事しましょうか」

カルロが子供に諭すように僕を執務机に追いやる。僕はもう子供じゃないからね? って言ってもニコニコするだけだから困ってしまう。

「お、なら俺も戻るとすっかな」
「ロード、ちょうど君に渡す書類があったんだよ」
「え゛」
「はいこれ。先日提出された第3師団の予算概算要求書だけど、計算間違いかなのかな? バカみたいな予算増額要求がきてるみたいでね。もう一度精査して再提出してもらいたいんだ」
「げっ な、何でお前が陛下の書類見てんだよ!?」
「私は陛下の護衛だけでなく秘書官のような役割も兼任しているからね。補佐として書類の精査も先日から行っているよ」
「んな事聞いてねぇぞ!?」
「今言ったからね。次はこんなふざけた予算概算要求出してこないように頼むよ」
「わ、分かったよ……」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


※いつもご愛読いただきありがとうございます!!
今回は閑話のような話が続くので、2話同時更新です。一応本編のつもりなんですけど、主人公が一切出てこないのでスミマセン。
楽しんでいただけると嬉しいです。
しおりを挟む
感想 1,620

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

乙女ゲームに転生した世界でメイドやってます!毎日大変ですが、瓶底メガネ片手に邁進します!

美月一乃
恋愛
 前世で大好きなゲームの世界?に転生した自分の立ち位置はモブ! でも、自分の人生満喫をと仕事を初めたら  偶然にも大好きなライバルキャラに仕えていますが、毎日がちょっと、いえすっごい大変です!  瓶底メガネと縄を片手に、メイド服で邁進してます。    「ちがいますよ、これは邁進してちゃダメな奴なのにー」  と思いながら

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...