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ズボラライフ2 ~新章~
101.楽しい席では口を滑らしがち
しおりを挟む「ぼ、僕もいいんですか!?」
零れ落ちんばかりに目を見開き、聞き返してくる王様に頷く。すると王様の瞳がキラキラと輝きだし、キョロキョロとルーベンスさんとカルロさんを行ったり来たりし始めた。まるでワンコのようだ。
「ミヤビ殿、一国の王をパーティーに誘うなど些か軽率ではないかね」
「え? パーティーっていっても親しい人が集まって野外でご飯を食べるラフなものですよ??」
ルーベンスさんに注意され首を傾げる。王様は怒られた犬のようにしょげているではないか。
「とはいえ、神々から神王様が一国の王に肩入れしていると捉えられかねん行動は控えるべきではないかね」
「え~。それを言ったら誰も誘えなくなりますよ?」
「ミヤビ殿、貴女はご自身が神王である自覚を持って行動すべきだと思うがね」
うわっ ルーベンスさんの説教モードのスイッチが入っちゃったよ。
「まぁまぁルーテル宰相閣下。その辺にしてあげて下さい。今回は神王様としてではなく、ミヤビ殿として友人を誘っているという事でお目溢ししてあげても宜しいのでは?」
にっこり微笑んで説教を止めてくれたカルロさんは、「陛下が参加するのであれば私もご一緒できるしね」とこちらにウィンクを寄越した。さすが人族すらも魅了する貴公子である。
「……今回だけですぞ」
ルーベンスさんは王様と私にそう言って、何事もなかったように書類に視線を落とす。
「ルーベンス!! ありがとうっ ミヤビ殿……様っ 僕のつがいは誘ってはダメでしょうか??」
子犬のような上目遣いで見てくる王様に、計算か!? と思わないでもない。というか、王様のつがいって、あのロイヤルな気品を醸し出す幼女だよね……ま、いっか。
「良いですけど、野外で食事なんですよ? そちらが大丈夫ですか?」
誘っておいてなんだが、ロイヤルな夫婦はBBQって大丈夫なのか?
「大丈夫です!! ガーデンパーティーみたいな感じですよね? 僕達パーティーは慣れてますから!」
ガーデンパーティー……何か違うけど、今更違うとは言えない。ルーベンスさんもガーデンパーティーだと思ってそうだなぁ……。
◇◇◇
「まぁ! こちらが深淵の森ですのね!! 森の中にあるとは思えない美しい村ですわ!!」
「わぁ~珍しい造りの建物だね~」
BBQらしく串に刺さった魚介類と野菜、肉が所狭しと網の上で焼かれる中、ロイヤル夫婦はキャッキャウフフと仲良く手を繋いで珍獣村を観光していた。
「ミヤビ……何で陛下と王妃が居んだ」
「いや~何か流れで?」
「流れで一国の王を神王の本拠地に招待してんじゃねぇよ!」
現在絶賛説教され中の神王こと雅です。
「もう! みーちゃんってば港町に行ってたんだって!? 何で私を誘ってくれなかったの~!? 行きたかったのに~」
トモコはトモコでマーレに行けなかった事が不服なのかずっと文句を言ってるし。私BBQ食べたいんだけど、一体いつになったら食べれるの?
「うわっ なんだよこれ! リンっ おいリンっ 見てみろよこの腰が曲がった赤いの!」
「これ食えるのか?」
「食ってみようぜ!」
あっ海老焼けた!? ちょっとロード、リンとアルフォンス君が海老狙ってるからもう説教止めて食べようよ! 無くなっちゃうよ!!
「ばーべきゅうというものは自分で取りに行きますのね。好きなものをえらんでもよろしいの? すてき!!」
「僕あの貝食べたいなぁ」
「ガハハッ 陛下は細っこいですからな! もっと精のつく肉を食べんといかん!!」
「え、ちょっ ロヴィンゴッドウェル卿!? 僕貝が食べたいんだけど……」
「肉が美味い!!」
お義父さんたちも楽しんでくれてるみたい。思ったより招待する人数多かったかなぁ。でもルーベンスさん家族招待したらお義父さんたち呼ばないと不貞腐れちゃうし、人間呼ぶなら神々呼ばないわけにはいかないもんね。
あ、お義父さん王様の所に行って食べ方教えてあげてる。やっぱりロイヤルファミリーはBBQに戸惑ってるのかな。
「しかし深淵の森は初めて来たが、このような村があったとはな!」
「そうだね。あ、肉も美味しい……。あれは藁を固めてるのかなぁ? 珍しい造りの建物だね」
「うむ。あれで雨風を凌げるのか……? ミヤビ殿が収められている土地だと伺ったが、わしはてっきり天空神殿のような建物があるのだとばかり思っておった」
「天空神殿?」
「むっ 陛下は知りませなんだか! 神王様はこの空の上のそれは美しい神殿にお住まいなのですよ!」
「ええ!? そ、空!?」
「まぁ!! 神王様が!? お空の上に神殿がうかんでおりますの!?」
「神殿もですが、美しい街や島が丸ごと浮かんでいるのです!! 」
「ま、ま、ま、街ィィ!!!? それに島って、そんなのが空の上にあったら僕達にも見えるんじゃないの!?」
「フフフ……陛下、そんなもの可視化魔法をかけとるに決まっておるではないですか!!」
「か、可視化魔法!?」
「そう。可視化魔法で我々人間には見えなくなっておるのです! 無論陽の光も遮らぬようにされているので人間は気付かんのですよ! ハッハッハ!!」
「す、すごいっ」
「ロヴィンゴッドウェル卿はどうして神王様のおすまいを知っていらっしゃるの?」
「それは私の義娘が「ロヴィンゴッドウェル卿。口が過ぎますな」お、おぉ……すまん。しかしこの肉は美味い!! なぁっ 宰相閣下」
「本日は肉よりも魚介が中心だと聞いたがね」
あ、ルーベンスさんもお義父さん達と合流した。何話してるかわからないけど、楽しんでくれてるみたいで良かったよ。
私もBBQを堪能しよ~!
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