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ズボラライフ2 ~新章~

閑話 ~もしも雅が20才の時に転生していたら6~

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ロード視点


「うわぁ! 馬に乗ったの初めて!! 視界が高いっ」

きゃっきゃと喜ぶつがいを前にニヤけながらも、森の外に出る間の非常識な出来事に、俺は内心頭を抱えていた。

数時間前まで白く枯れ果てていた森の入り口は、ミヤビを連れ出す際には葉が青々と繁り、ひび割れていた地面には苔や草花がびっしり生えていた。
ミヤビは森から出た時に「この世界はずっと森が続いてると思ってたけど、違っててよかった!!」と笑っていたが、多分コイツの力で植物が急成長し森が出来ているんだろう。
生まれたばかりだというし、力の制御が出来ていないのかもしれない。

「この大きな馬は草を食べるんですか? まさか肉とか食べないよね?」

などと能天気な事を呟くつがいが可愛すぎてツライ。

こっちはさっきまであった魔物達の気配に冷や汗かきっぱなしだったっていうのによぉ。などと思いながらもその可愛さにニヤける口が止まらない。

背後の深淵の森に目をやれば、先程の光景に背筋が震えた。

ミヤビはあの3体の魔物だけが付いてきたと思っていたが、実際には数百の魔物が俺たちを取り囲んでいた。
それに気付いたのは森の出入口付近だった。
魔物はさすがに連れて行けねぇぞと話している時だ。数百の気配が突如現れたのだ。きっとずっと気配を消して追ってきていたに違いねぇ。さすがのトーイもその数に震え上がって顔色を悪くしていた。
当のミヤビは、「王都をちょっと見学したらすぐ帰るから待っててね~!」と魔物3匹に手を振っていたが、本当にきもが冷えた。

神っつうのは魔物にも守られる存在なんだろうか? よく分かんねぇが、ミヤビの存在は公に出来ねぇ事だけは確かだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ミヤビ視点




北○の拳のラオ○が乗るようなデカすぎる馬に乗せられて駆けること数時間。
私の尻が4分割されたんじゃないかという事件も起こりつつ辿り着いたのは、すっかり日の暮れた…………寂れた街でした。

夜という事もあるのか人は疎らで薄暗い。空気は乾燥していて砂ぼこりが上がっており、建物にはよく見るとひび割れが見える。街道の中心にある噴水には水が一滴も無く、大きな街ではあるのだが、何か違和感が拭えない。
今日はここで1泊して王都に向かうのだろうかと馬の上から周りを見つつ考える。

「ロードさん、王都まで何日くらいかかるんですか?」
「呼び捨てで良いっつったろ。後ここが王都だ」
「アハハッ ご冗談を。だってこの街、人もあまり出歩いてないし? 街並みも閑散としてるし? 王都って夜でもお祭り騒ぎ位の人混みに溢れててわいわいしてるもんでしょ?」
「滅びを待つだけの世界にそんな街があるわきゃねぇだろ」

は?

「ま、ルマンド王国の王都は他と比べりゃマシな方だよ。食糧難とはいえ、土壌はまだ死んじゃいねぇから芋やなんかは生るしな。後数十年は何とか持つんじゃねぇか」

ショクリョウナン??

「問題は流行り病だな。魔力が多い奴程病に罹りやすいらしくてよぉ。トーイはオメェのおかげで完治したみてぇだが」

は、流行り病!?

「とんでもない状況だったァァァァ!!!?」

どういう事!? 滅びを待つだけの世界!? 食糧難に流行り病!? 終わるの!? 異世界転生したらすぐに人生終了のお知らせ!?

「ろ、ろ、ろ、ロードさん!! なん!? どうして!? 何があってそんな恐ろしい事に!?」
「あん? もしかして何も知らねぇのか?? 神なのに?」
「そもそも神じゃないし、この世界の事なんて何も知りませんよ!!」

落ち着けと頭を撫でられるが、これが落ち着いていられるか!!

「簡単に説明すっとだな……この世界を創った創造神ってのが消えちまって、世界を覆っていた魔素が無くなったんだよ。で、魔素が尽きりゃ植物も育たなくなるし、病も流行るしで世界が滅びるっつーわけだ」

説明適当すぎだよ!! 何なのこの山賊!!

「その“マソ”っていうのがよく分からないんですけど……」
「魔素はアレだよ。あー……世界の力的な? 魔力の素?」
「なるほど。そのマソがあれば世界は滅びないって事だよね?」
「そうだが、魔素は……「よし!! なら魔素よ満ちろ!! そして病よ無くなれ!! みんな完全回復!! 食糧よ豊富に生れ!!」あ゛?」


「世界は、蘇る!!!!」


あ、ちょっとだけ力が抜けた気がする……。まぁちょっとだけだけど。でも力が抜けたって事は願いが叶ったって事だよね。なら世界は滅びないよね?

などと思っていたら、突然空に幾つもの光の柱が立ち上がったのだ。



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トーイ視点


「魔素よ満ちろ!! そして病よ無くなれ!! みんな完全回復!! 食糧よ豊富に生れ!!━━━……世界は、蘇る!!」

馬上で突然ミヤビ様がそう叫んだ瞬間、空に幾つもの光の柱が上がり、世界を白く染め上げた。

光は弾けて粒になり、世界を優しく包んだ。そして枯れかけの植物が一気に鮮やかさを取り戻していったのだ。

滅びを待つだけだった世界が、一瞬で鮮やかな緑と色とりどりの花で埋まり、それが目の前の御方の仕業だと理解した。


ミヤビ様は神などではなかった。


「っ……おい、ミヤビ、オメェ何した……?」
「え、ロードさんから世界が滅びるって聞いたから……マソ、増やしたら良いんですよね?」


神よりももっと高貴な御方。
この世界の唯一。


神王様が、お戻りになったのだ。

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