異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール

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ズボラライフ2 ~新章~

閑話 ~もしも雅が20才の時に転生していたら5~

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第2異世界人……トーイさんというらしいが、彼曰く“つがい”とは魂で繋がったの伴侶の事らしい。なんでも“人族”は“つがい”のみを愛する種族で、どうやら私はこの山賊の“つがい”なのだとか。

ちょっと意味がワカラナイ。

「ミヤビ。俺の愛しいつがい。俺と共に王都へ来てほしい」
「ロード、一緒に居たい気持ちは分かるが、この御方は神だろう。神域を離れる事は出来ないんじゃないか?」

オウト? カミ?? シンイキ……???

まだ二人を警戒している動物達を見れば、キョトンとした瞳が返ってくる。

うん、可愛い。

「あの……お二人が言ってる事がよく分からないんですが」

恐る恐る問えば、山賊からは「ミヤビと離れたくないんだ。だから俺と一緒に王都で暮らそう」と斜め上の答えが返ってくる。

「ロード、落ち着け。この御方は人族じゃあないんだ。無理に事を進めようとするな」
「俺のつがいだ」
「嫌われるぞ」
「!!!?」

さっきからトーイさんに窘められては項垂れ、大人しくなるを繰り返す山賊は、それでも私を抱き上げたまま離さない。
何とか腕をふりほどけないものかと身をよじってみたが、丸太のように太い腕からは抜け出せないでいる。

「ロード、この御方にいくつか質問しても良いか?」
「俺以外の男が話しかけるのは嫌だが……しょうがねぇか」

渋々といった様子でトーイさんの言葉に頷いた山賊は、次に私を見ると口を開いた。

「ミヤビ、少し聞きたい事があるんだがいいか? オメェの質問にゃあその後答えるからよぉ」
「あ、はい」

大丈夫だという私に、山賊はチラリとトーイさんを見る。

「尊き御方様。貴女様はこの“神域”の神でお間違いありませんか?」

さっきから“シンイキ”とか“カミ”とか、よく分からない。質問は後と言われたが、これは今聞いても良いのだろうか。

「……よく分からないです。気付いたらこの森に居たので、あなたが言う“シンイキ”とか“カミ”というのも分からないんですけど……」
「気付いたら……なるほど。貴女様は生まれたばかりなのですね」

はい?? 生まれて20年目ですが!?

「戸惑われるのも無理はありません。貴女様はこの地に神として誕生されたのです。神が生まれた地はその御力に包まれまれ、そうしてできた場所を神域と呼びます」

成る程。カミとは神の事で、シンイキとは神域の事なんだね! 理解できたわ~…………じゃねぇよ!? 私が神様!? とんでもない誤解ィィィ!!! 

「私、神様じゃありませんよ!? いたって普通の人間です!!」
「は………………? ゴホンッ 失礼しました。通常、人間が魔物を従える事は不可能です」
「魔物って動物達の事ですか? この子達は生まれてすぐ餌付けしたんです。元々大人しくて人懐っこい子達で……」
「それは貴女様がこの神域の神だからです。現に我々には攻撃してきました」

確かに警戒されてますもんね。でも、

「それは……この人の顔が怖いからでは……」

チラリと目の前の山賊を見る。

「あ゛ぁ゛?」

こっわ!! ドスの効いた声と凶悪な顔。ムキムキの筋肉と巨体。動物達が攻撃したのは絶対この人のせいだと思う!!

「ブハッ」
「トーイっ 何がおかしいんだテメェ……っ」
「ゴホッ すまない。正論だと思ってな」

あ、さっきふきだしてたのってこの人だったんだ……。

「ゴホッ 尊き御方様。確かにこの男の見た目は凶悪ですが、魔物達が攻撃してきた理由と外見は無関係だと思います……っ ゴホッ ゴホッ」

あれ? この人、風邪引いてるのかな。
病気が治る薬持って来てるから渡してあげた方が良いよね。

そう思い、肩にかけていたバッグから薬を取り出した。

「? んだそりゃあ……」

覗き込んでくる山賊に「病気が治る薬だよ。私が作ったの」と渡せば、怪しんだ表情を向けてくる。

「怪しい薬じゃないよ。トーイさん咳き込んでるから。使ってください」
「……だとよ。本当は、ミヤビが作ったもんは俺が全部貰いてぇが……仕方ねぇ」
「俺がいただいても、宜しいのでしょうか……?」

驚愕の表情で薬と私を交互に見るトーイさんに頷く。
早く飲んで風邪を治して下さい。

トーイさんは何故か震える手で山賊から薬を受け取ると、恐る恐る口をつけた。

そんなに怯えなくても、怪しい薬じゃないってば。

「!? こ、これは……っ」
「どうした!?」

カッと目を開き、自分の身体を確認しているトーイさんになんだ、なんだと驚いている山賊。

「……治ってる……ッ」
「あ゛?」
「治ってるんだ!! 身体が軽いんだよ!!」

どうやら風邪は治ったらしい。良かった。私だけでなく異世界人にも効果があったようだ。

「っおい、ミヤビ! この薬何なんだ!?」
「え? だから病気が治る薬だよ」

怖い顔を向けてくる山賊に少し引きながら答えれば、「この薬の存在は誰にも言うんじゃねぇぞ」と脅された。怖すぎる。

「トーイ、神ってなぁ病気を治す力を持ってんのか?」
「……魔素が満ちている時ならそれも可能だろうが、滅びに向かっている世界では自身の神域を維持する事以外に力は回せないだろう……多分」
「多分ってなんだ」
「俺は神じゃないんだっ 詳しい事情なんてわかるわけないだろ」

二人はこそこそ話しているので、会話がよく聞こえない。なので観察する事にする。
この人達は自分の事を騎士と言っていた。にしては鎧を纏っていない。金属肩当てと腕にも金属のアームカバー。胸当ては革っぽい。あまり良いとはいえない生地の外套を羽織っているので騎士より冒険者といった風情だ。二人共同じような格好だが、山賊はやはり山賊のお頭にしか見えない。

しかし、先程“オウト”で一緒に暮らそうと言われたので、山賊は山に住んでるわけではなさそうだ。騎士から連想される“オウト”という言葉は、多分“王都”の事だと思われる。つまり街があるのだ。それは是非行きたい!

彼らの格好から、多分この世界は中世ヨーロッパ調のファンタジーの世界だ。私が魔法? を使える事から、魔法も使える世界なのだろう。そうなるとギルドで冒険者登録をして身分証明を手に入れなければならないのだろうか。リアルドラクエ。楽しそうだ。

暫く二人はこそこそと話した後、トーイさんから王都に行くかどうかを聞かれた。勿論行きたいと答えたら、山賊が滅茶苦茶喜んでいた。

こうして私は、森から異世界の街へと移動する事になったのだ。

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