529 / 587
ズボラライフ2 ~新章~
閑話 ~もしも雅が20才の時に転生していたら4~
しおりを挟むやべぇよォォォォ!!
動物達が警戒してるからどうかなぁとは薄々感じてた。感じてたけど第一異世界人だしさ、何とか接触を図ろうとするよね!?
まさかの山賊だったァァァァ!!!!
しかも巨人の!! 進撃の巨山賊!! イェーガーーーー!!!
「ブハッ」
ん? 誰かふき出してない? 空耳??
とにかく!! 動物の壁から上半身だけ出していたが、これは引っ込んだ方がよさそうだ。食われる。
身を振りながら後ろへ下がろうとするが一歩も動けない。
いや、動物達よ。少しどけろ。
と、その時。ズサッと音がしたかと思ったら、なんと!! 進撃の巨山賊が片膝をついて私の事をジーッと見ているではないか!! 近いっ そして怖い!! 主に顔が!!!!
「俺の名はロード・ディーク・ロヴィンゴッドウェル。王国騎士団に所属している。なぁ。オメェの名、教えてくれねぇか?」
え? 何、キシダン?? オウコクの?
「いやいや、嘘ツクナヨ。アンタ絶対山賊のお頭ダロ」
「ブハッ」
やっぱり誰かふき出してる?
「……正真正銘、ルマンド王国第3騎士団所属の大隊長だ。嘘じゃねぇ。だからオメェの名前を教えてくれ」
ちょっと怒ってるのか、目の前の山賊の顔は赤く染まっている。
そして何だって? 本当に騎士? 山賊ジョークじゃなくて??
「なぁ、名前言いたくねぇのか?」
「え? 名前……私の?」
「ああ。オメェの名が聞きてぇ」
何かこの人、顔はヤクザみたいに凶悪だけど……目がトロンとしてる?
「私の名前は、きた……」
“みーちゃん。異世界には名縛りって言ってね、本名をフルネームで名乗ると奴隷にされちゃうお約束があるんだよ!!”
昔トモコに言われた話を思い出してバフッと自身の口を塞ぐ。
うっかりフルネームを名乗る所だった!!
「キタ?」
「違います!! ミヤビ!! 私の名前はミヤビですっ」
慌てて下の名前だけ伝えると、凶悪顔の騎士はとろけるように笑って言ったのだ。
「ミヤビ……ミヤビか! 綺麗な響きの良い名だな。妖艶で可愛いオメェにぴったりだぜ」
あぁん?
これはアレか。山賊みたいな姿をして、中身は騎士ですアピールの為のお世辞か?
自慢じゃないが、顔と名前が合ってねぇなとは言われた事があっても、可愛いとかましてや妖艶なんて言われた事ないからな! 騙されんぞ!! そもそも妖艶ってなんぞや!?
「ミヤビ、オメェの手に触れても良いか?」
「え、何ですか? それ部族の挨拶的なやつですか?」
「ブハッ」
「いや、そこから引っ張り出す為にだ」
ああ、そういえば挟まれたままだった。
「じゃあ、お願いします……?」
「よし!!」
お願いすれば、遠慮なくがっしり手を握られて引っ張られ、スポンと簡単に抜け出せた。
「っトーイ!! つがい捕まえたから帰るぞ!!」
「は!? おい……ッ」
なんと!! そのまま片腕に座らされるように抱えられたまま、走り出したではないか!!
しかも異世界人がもう1人増えた!!
「ぅえええェェェェ!!!?」
「口しっかり閉じとけよ!! 舌噛むぜっ」
そう言いながら走る速度は車並み!? 人間じゃないの!?
「ロード!? お前いくらつがいでも誘拐は犯罪だぞ!! なに考えてるんだ!!」
「しょうがねぇだろ!! つがいに触った興奮で衝動的に拐って来ちまった!! 遭難してるつがいを捕獲……保護しただけだと思やぁ誘拐じゃねぇ!!」
「バカな事をッ」
お前今捕獲って言ったな!? やっぱりコイツ山賊か奴隷商なんだ!! 始めから騎士は無いと思ってたんだよぉぉ!!!
「グルァァァァァァァ!!!!!」
「ギャオォォォォォォォ!!!!!」
「グガァァァァァァァァァァ!!!!!」
モグラ君とサーベルタイガーちゃん。そして白トカゲまでもが怒り狂って追いかけてくる。
「もう1匹増えやがった!」
「だから拐うんじゃない!! 彼女が神なら追っ手がもっと増える!! 殺されるぞっっ」
速い、速いっ 速いィィィィ!!! 安全バーの無いジェットコースターか!!
走るスピードがどんどん速くなる2人に、異世界人怖いとガクブルである。
「俺のつがいだ!! 絶対ぇ離さねぇぞ!!!」
「ロード!! つがいに出会って興奮してるのは分かるが、少し落ち着け!! 嫌われるぞっ」
「!!!?」
あまりのスピードと風の音で2人の会話はよく聞こえないが、何だか揉めてるようだ。
からの急ブレーキ!!?
「それはダメだ!! 一体どうすればいい!? お前つがい持ちだろっ 教えてくれ!!」
「だから拐うな!!」
急ブレーキで首グキッてなったァァァァ!!!!
◇◇◇
「この馬鹿が申し訳ございませんでした」
平身低頭に謝罪するのは第2異世界人だ。山賊の仲間のようだが、誘拐を止めていたところからも話が通じる人らしい。
この人は山賊の頭と違って優しそうで話しやすそうな雰囲気と、なんとなく気品があるので騎士と言われたら納得できる。
「いや、拐わないならもう良いんですけど。……それよりコレ、どうにかしてもらえませんか」
現在、私を抱き上げたまま離そうとしない巨山賊が「頼むから嫌わないでくれ」と必死にすがってきている図。
「……申し訳ございません。どうやら貴女様はその男の“つがい”のようでして、引き離す事は出来ません」
と、謝罪の体勢のままこちらと目も合わさず言い切った第2異世界人に首を傾げる。
“つがい”とは何ですか??
31
お気に入りに追加
2,570
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?
せいめ
恋愛
女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。
大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。
親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。
「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」
その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。
召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。
「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」
今回は無事に帰れるのか…?
ご都合主義です。
誤字脱字お許しください。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる