528 / 587
ズボラライフ2 ~新章~
閑話 ~もしも雅が20才の時に転生していたら3~
しおりを挟む「わが君の魂が消えた!!!?」
「アーディン様!? 如何なされたのですか!?」
「っオリバー!! わが君が……っ 異界の果物の皮で亡くなられ、その気高き魂が消えてしまわれたのだ!! ああっ 私のつがいもあんなに悲しんで……っ」
「神王様が異界で亡くなられたのですか!?」
「私が……っ 私の力がまだ満足に溜まっていないせいで……っ わが君の魂をこちらに引き戻す事も出来ず……っ」
「アーディン様……」
「あぁぁっ わが君……っ わが君……っ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ロード視点
ギィィィィィィンッ
振り下ろした双剣がディルバの爪に当たる度、ビリビリと腕に痺れが走る。
「硬ぇな……っ」
「ロード!! このままじゃ埒があかない!」
背中越しにトーイが叫ぶ。奴が相対している魔物も相当手強いようで苦戦を強いられている。
ありゃあ確か“サベルガ”だ。素早い動きと見ただけでやべぇと分かるでけぇ牙、そしてディルバよりは小せぇが、あの鋭い爪。風魔法を使うらしいって図鑑には書いてあった。あのトーイですら防戦一方だ。
俺達でこれだ。部下ならひとたまりもないだろう。あそこで帰しておいて良かったと、あの時のトーイの判断に感謝する。
「トーイ、ディルバとサベルガに魔法を使わせて相討ちさせる作戦なんてどうよ」
「!? どうやって魔法を使わせる気だ」
「ディルバは爪の攻撃を出せない時土魔法を使う。サベルガも牙と爪を封じりゃあ魔法を使うだろうぜ」
「それなら俺がディルバの相手をする。双剣を持つお前の方がサベルガの牙と爪を同時に防げるだろう」
「そりゃそうか。ならタイミングを合わせて位置を入れ替えるぞ」
そう言うとトーイは頷き、息を整えた。
今だ!!
背中合わせになっていた俺達は息を合わせ、反転した。
「ぬかるなよ!!」
「お前もな!!」
同時に魔物達へ仕掛ければやはり獣か、こちらの思惑通り飛びかかってきやがった。
「絶対テメェを食ってやるぜ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
雅視点
白トカゲの背に乗って暫く。木々の向こう側から動物達の唸り声と同時に「絶対テメェを食ってやるぜ!!」っていう日本語が聞こえてきた。しかもイケボだ!!
「白トカゲちゃん! あの木の向こう側に行ってもらえるかなっ」
しかし白トカゲはこの場から動かなくなってしまった。
すぐそこに人間がいるというのに!
「ここまで連れてきてくれてありがとうね。ちょっと行ってくるからここで待ってて」
「キュウ!? キュウッ キュウッ」
ダメだと首を振る白トカゲの顔をひと撫でし、生い茂った草木の先へ足を進めたのだ。
「ギャオォォォォォ!!!!」
「っだらァァァァ!!!!」
ぶわっと土埃が上がり、台風のような強い風が巻き起こる。
「ぶわっ」
口に土が入った!!
「っ……ゴボッ」
あ、誰か咳き込んでる。この土埃の中だ。そりゃ咳き込みもするだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ロード視点
「っ……ゴボッ く、そ……っこんな時に!!」
一斉に攻撃を仕掛けてすぐだ。後ろで戦っているトーイが咳き込み、体勢を崩しやがった!!
「グルァァァァァ!!!!」
まずい!! このままじゃトーイが殺られる……っ
「ぶぇっ ぺっ ちょ、ストーーーップ!!!!」
トーイが片膝をつき、ディルバの爪がその頭上に迫っていたその時、あの甘い香りと共にこの世のものとは思えないほど可憐な声が、その攻撃を止めた。
あのディルバが、今まで敵対心剥き出しで攻撃していた相手が無防備な状態にあるというのに、その爪をピタリと止めたのだ。
「ギャオッ」
「あ゛?」
しかもサベルガまで、今までの唸り声とは全く違う甘えたような声を上げ、俺から離れると声があった方へ移動を始めやがった!!
「ゴボッ これは、一体……っ」
「トーイ!! 大丈夫かッ」
トーイが無事で良かったとホッとしつつ駆け寄れば、聞こえてくるのはあの可憐な声だ。
「クルルッ」
「ギャオッ」
「ぅわっ モグラ君もサーベルタイガーちゃんもどうしたの? かなり暴れたみたいだけど……」
なんつー可愛い声なんだ!! この声の主は一体どんな姿をしてやがる!? 今すぐ顔が見てぇ!!
だがこっちを警戒してんのか木の影から出て来ねぇ上、魔物達が壁になって全く見えねぇ。
「クルゥ~」
「ギャウ~」
おい、クソ魔物共。何甘えた声出してんだ!!
よく分かんねぇがすげぇイラつく。
「ロード、一体何が起きてるんだ……」
「俺にもわかんねぇよ。だが、あの魔物共をまるでペットみてぇに扱ってる奴が居る事は確かだ」
「……まさか、新たに生まれた神か?」
神……あの声が可憐で甘ぇ香りの存在が?
「人が居るんだよね?? 話がしたいんだけど「ギャウッ」……え、ヤバい系の人なの? まさか奴隷商とか!?」
どうやら神? は俺らと話がしたいらしいが、魔物は俺達に会わせまいとしているようだ。
「神が、俺達と話したがっているのか??」
「そうみてぇだな」
驚くトーイに相槌をうつと、さっきから気になってしょうがねぇその声の主へと足を進める。
その瞬間、魔物達がわかりやすく警戒したが構っちゃいられねぇ。
「ロード!!!?」
「え? 何??」
早くその姿を拝みてぇと心がはやる。何でこんなにソワソワすんのか自分でもよく分かんねぇが、壁になってる魔物を睨みつけた。
「どけ」
「グルァァァァァ!!!!」
「ギャオォォォォォ!!!!」
「あ゛ぁ゛!!! 3枚におろして食うぞゴラァ!!!!」
ビリビリと空気が震え、魔物と俺の殺気のぶつけ合いが始まる。
「ま、待って下さい!! この子達は食料じゃないので食べないで!!」
そこへ、魔物達の壁の隙間からにょきっと生えた……ゴホッ 割って入ったのは、とんでもねぇ妖艶な美少女だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
雅視点
動物達が突然威嚇を始めて誰かが近付いてきた事に気付く。動物の壁で姿は見えないけど、この声はさっき「絶対テメェを食ってやるぜ!!」って言ってた人で間違いない!! やっぱりこの子達を食べる気で狩りをしてたんだ。
日本語を話してるし、足音からして二足歩行だから人間だと思う。ケモミミが生えてるかもしれないけど人間は人間だ。とにかくこの子達が狩られる前に、ウチのペットだと伝えないと!!
動物達の壁の隙間に身体をねじ入れると、もふもふした中を突き進む。そして、スポンッと上半身だけが動物達の壁から抜けたので叫んだのだ。
「ま、待って下さい!! この子達は食料じゃないので食べないで!!」
言って顔を上げたそこに居たのは………………。
「ぎぃやァァァァァァァァ!!!! 山賊ゥゥゥゥ!!!?」
「俺のつがいが生えてきやがったぁぁぁ!!!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※サベルガ
サーベルタイガーのような動物。風魔法を得意とする。
実は雌で、雅の前では牙の大きなただの猫。雅とのブラッシングタイムが大好き。
20
お気に入りに追加
2,533
あなたにおすすめの小説
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
乙女ゲームに転生した世界でメイドやってます!毎日大変ですが、瓶底メガネ片手に邁進します!
美月一乃
恋愛
前世で大好きなゲームの世界?に転生した自分の立ち位置はモブ!
でも、自分の人生満喫をと仕事を初めたら
偶然にも大好きなライバルキャラに仕えていますが、毎日がちょっと、いえすっごい大変です!
瓶底メガネと縄を片手に、メイド服で邁進してます。
「ちがいますよ、これは邁進してちゃダメな奴なのにー」
と思いながら
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
幼女公爵令嬢、魔王城に連行される
けろ
恋愛
とある王国の公爵家の長女メルヴィナ・フォン=リルシュタインとして生まれた私。
「アルテミシア」という魔力異常状態で産まれてきた私は、何とか一命を取り留める。
しかし、その影響で成長が止まってしまい「幼女」の姿で一生を過ごすことに。
これは、そんな小さな私が「魔王の花嫁」として魔王城で暮らす物語である。
パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!
八神 凪
ファンタジー
勇者パーティに属するルーナ(17)は悩んでいた。
補助魔法が使える前衛としてスカウトされたものの、勇者はドスケベ、取り巻く女の子達は勇者大好きという辟易するパーティだった。
しかも勇者はルーナにモーションをかけるため、パーティ内の女の子からは嫉妬の雨・・・。
そんな中「貴女は役に立たないから出て行け」と一方的に女の子達から追放を言い渡されたルーナはいい笑顔で答えるのだった。
「ホントに!? 今までお世話しました! それじゃあ!」
ルーナの旅は始まったばかり!
第11回ファンタジー大賞エントリーしてました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる