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ズボラライフ2 ~新章~
閑話 ~もしも雅が20才の時に転生していたら2~
しおりを挟む願えばどんな事も叶う能力をゲットしたのに、元の世界には戻れないんだもんなぁ……。
自分の能力もある程度実験し、把握しつつある異世界生活20日目。
今日も今日とて森を探検する為に家から出てきたわけだが……。なんかこの森も鬱蒼として昼間でも暗めだし。やっぱり人の手が入ってないと木々が繁りすぎて日の光を遮断するんだろうなぁ。
「キュルル……」
「あ、こんにちは。いつもパトロールありがとう」
一軒家程ある大きさの恐竜が、こちらに腹を見せて寝転がり、甘えた声を出している。それに声をかけるのが異世界に来てからの日課になっている。
この恐竜のような見た目の動物と出会ったのは、異世界にやって来た翌日だ。
とりあえず自分に防御結界を何重にもかけて家の周りを探索していたら、土の中から枕くらいの大きさの恐竜がボコッと出てきたのでびっくりした。そのままじっと見ていたら、至る所でトカゲやサーベルタイガーみたいなのやサンショーウオのようなものが誕生しはじめ、周りが異世界っぽい動物達で蠢き出した事で身動きがとれなくなった。
すると動物達は私を見つけ、キュ~っと可愛らしくひと鳴きすると、足元に群がってくるではないか!!
齧られるのか!? と身構えたのだが、皆が皆すり寄るだけで攻撃してくる様子はない。
何だか可愛くなってきてつい、餌付けしてしまったのが事の始まりだ。
ミルクに肉やら野菜やら果物やら、何が食べられるのかわからなかったので様々な食べ物を大量に出すと、最初は戸惑っていた動物達も嬉しそうに食べ始めた。
どうやら雑食らしい。
皆でそれを平らげると何でか二回り程成長しており、かなりびびっていれば、動物達はお腹を上に向けて甘えた声で鳴き、無害だとアピールし始めた。それから数日で恐竜のような大きさに成長した動物達だったが、私と出会う度にそのように無害アピールをしてくるので、最近では安心して森を散策出来るようになったのである。
なんなら、一度遭難して家に戻れなくなった所を動物達に発見され、背中に乗せて運んでもらった事もある。
その時乗ったのは黒い巨大トカゲだった。
とまぁ動物達に助けてもらいつつ探検していたのだが、森は森。どこまで歩いても森しかなかった。
道路なんて勿論ないし、人っ子一人歩いてはいない。
この世界、森しかないのかもしれない。
願えば叶う能力のおかげで特に不自由はしないが、独りは寂しいし、元の世界の家族(愛犬のクゥちゃん含め)や親友も気にかかる。大学だって卒業もしてないのだ。今年の成人式の振り袖もすでにレンタル予約してる。トモコと写真撮ろうって楽しみにしてたのに……。
父よすまん。高いお金払ってもらったのに全部パァになりそうだ。
「誰か~。いませんか~」
「キュル!」
「あ、うん。君じゃな……」
元気に返事をしてつぶらな瞳で見つめてくる白い巨大トカゲに、とてもじゃないが「君じゃないから。人間を呼んだんだ」とは言えなかった。
「あ~……君はいつも可愛いね」
「キュウ!!」
尻尾を振って喜んでる。砂ぼこりすごいけど良かった。
「っキュ!? グルル……」
しかし突如、あらぬ方角を見て唸りだした白トカゲにビクッと肩が跳ねる。
怖っ あの甘えたちゃんがこんなに怖いの!?
そんな事を思っていた時だった。
白トカゲが見ていた方角から、木々が何本も倒れるような音が耳に届いたのだ。
「何!? この森木こりでもいるの!?」
「キュウ!!」
白トカゲは早く家に戻れというように私と家を見る。
しかし、もしかしたら第一異世界人と遭遇できるかもしれないのだ。
いや、人じゃない可能性の方が高いかもしれないが。巨人とか居たらどうしよう。
「白トカゲちゃん!! 私をあっちの方に連れてって!!」
「キュウ!?」
勝手に背中へ飛び乗ると、お願いだと懇願する。
白トカゲは困惑しながらも、最終的には仕方ないと諦めたように移動を始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ロード視点
トーイ達と別れ、森の奥に向かって進む事一刻。日も昇りきった時間だった。突如顔面ギリギリを巨大な何かがかすめたのだ。
「っぶねぇ!!」
何とか上体をそらし回避したが、一歩遅けりゃお陀仏だった。
腰にさした双剣を抜き、次の攻撃に備える。敵の姿は見えねぇ。
「グルル……」
聞こえてきた唸り声に獣だと身構える。2体の気配を感じ唾を飲み込む。
ここにゃ獣までいるのかよ……てこたぁ食料も豊富ってか。
ドス……
獣が土を踏む音だ。かなり大型のようだな。こちらをなめてやがるのか、随分とゆったり歩いてるようだ。
丁度良い。腹も減ってきた所だ。狩って腹の足しにしてやるぜ。
出てきやがった!!
「グルル……」
!!? コイツは……っ “ディルバ”か!! 昔“魔物図鑑”で見た記憶がある。
「おいおい、魔素がねぇ世界に魔物が存在するはずねぇだろ……っ」
「グルァァァァァ!!!!」
巨体に合った巨大な爪が振り下ろされた!
「ぐ……っ」
なんとか双剣で爪を受け止める事が出来たが、なんつう重い一撃だ。
「グルル……」
コイツがもし本物の“ディルバ”なら、攻撃の主体は爪と……土魔法だったか。
「グルァァァァァ!!!!」
ディルバからの爪の連続攻撃を受け止め続けていれば、足元の地面が重さで割れ、どんどん沈んでいく。
「っだらァァァァァァ!!!!」
渾身の力を振り絞り爪を弾くとディルバの体勢が崩れる。チャンスだとそのまま斬り込めば、突如土が盛上り奴の盾になりやがった!
魔法だ!! 信じられねぇがやはりコイツは魔物だ!!
土壁を蹴りあげ距離をとる。しかし地面に着地した刹那、地面が割れてディルバが飛び出してきたのだ!
このやろう、地面を掘って移動しやがったのか!!
「グルァァァァァ!!!!」
「クソが!!!!」
双剣を振り下ろし、鋭い爪を受け止めるのがやっと……っ
「ギャオォォォォォ!!!!」
「しまった!!」
ディルバに集中しすぎた!! もう1体いやがったのを忘れてた!!
後ろから出てきた魔物だろうそれに、死んだかもしれねぇと頭を過った。その時、
「ロードォォォ!!!!」
ガキィィィ!!!!
「……遅ぇよ」
「お前が一人で行くって言ったんだろうがっ この阿保!」
トーイが魔物の牙を自身の剣で受け止めたまま、文句を言ってくる。
正直助かった。さすが俺の相棒だけはあるぜ。
「るせぇ。だが、助かったぜ」
「ったく。そんな事よりコレは何だ。図鑑でしか見た事のない“魔物”に見えるんだが……っ」
「オメェの思った通りだよ。コイツら、“魔物”で間違いねぇ。こっちのディルバは土魔法を使いやがった」
「魔法だと!!!? バカなっ 例え神域とはいえ、魔法を使用できるはずは……っ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
雅視点
ドゴォォォォン!!!!
バキバキィィ!!
「グルァァァァァ!!!!」「ギャオォォォォォ!!!!」
って恐竜大戦の様相を呈した音が聞こえてくるんだけど……。
「これ、もしかして動物同士で喧嘩してるの……?」
白トカゲに聞けば、「キュルル」と鳴いて首を横に振るので違うらしい。
でも絶対何かと戦ってるよね?
どんどん近付いてくる音に恐怖しながらも、いざとなれば白トカゲも森の動物達も居るしと気合いを入れて現場へと向かうのであった。
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※ディルバ
巨大なモグラような動物。本編ではロードに重症を負わせた珍獣で、上下水道のパイプを通すトンネル作りに貢献している。土魔法が使える。
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