525 / 587
ズボラライフ2 ~新章~
89.砂上の楼閣
しおりを挟む「私のせいでルーベンスさんが陥れられる……っ」
どうしよう。そんな事になったらルーベンスさんに会わせる顔がない!! それに執務室に遊びに行けないのも嫌だ!! だって午後のお茶とお菓子の時間が無くなる!!
「こうなったらあのオジサン達の記憶を消すしか……っ」
「ミヤビ、記憶を消しても奴らはまた同じ事を繰り返すと思うぜぇ」
「師団長のおっしゃるとおりです。それに今回の事は彼らの思い通りにはいかないと思われます」
ん? どういう事??
「例え彼らから宰相が王位を狙っていると聞かされても、陛下は宰相が王権奪取を考えているとは疑いもしないでしょう」
「だろうな。なんならあの陛下の事だ。チャンスといわんばかりに、ルーテル宰相が王になるなら喜んで譲るとか言い出しかねない」
ええ!? 確かに王様って権力を行使できる代わりに、休みもなく労働を強いられるブラックさだもんね。あのルーベンスさんでさえ宰相の仕事で疲れてる位だし。それを思うと王様の過酷さは相当だろう。
「宰相の疲労の原因は半分オメェのせいだと思うぜ」
「そんな事ないでしょ!? ねぇアナさん!!」
「ぇ……と、」
ただでさえ合わない目をさらに反らされただと!?
「しかしアナシスタ。もう一つの目的であるミヤビとの距離はどうしても取らざるを得ねぇぞ。俺ぁ嬉しいが、奴らが図に乗るのはなぁ」
「それでしたら問題はありません。ミヤビ様がお一人で宰相の部屋に入っていた事が問題だったのですから、今後は護衛か師団長を伴えばよろしいのです」
護衛? 私、護衛なんて居ないんですけど。常にロードとルーベンスさんを訪ねるのも嫌だし。多分ルーベンスさんも嫌がる。
「護衛ねぇ……ショコラが居るが、見た目がガキだからなぁ。なめられる可能性もある」
あ、そういえばショコラは護衛だったな。私の中では家族に入ってるから忘れてたよ。
「御子様方の御披露目でお側にいらした方々は護衛ではないのですか?」
「ああ。3人娘か。あいつらでも構わねぇが、ショコラがなぁ……」
◇◇◇
「主様の護衛はショコラです!! 他に任せるつもりはありません~!!」
結局護衛の話は何も決まらず、ロードの仕事が終わるまで膝の上に拘束され続けた。
その後深淵の森に帰ってロードがショコラに先程の話をしたのだが、案の定私の護衛を他の珍獣に任せる気はないらしい。
「言うと思ったぜ……」
「私はショコラで問題ないと思うけどなぁ。大体“精霊”に護衛が居るのもおかしな話だし、とにかくルーベンスさんの部屋で2人にならなきゃいいんだよね?」
「まぁ、そうだけどよぉ」
私の頭に頬擦りしつつ、いまいち納得してない風にうーんと唸っているロード。それに対し、ショコラはニコニコ上機嫌だ。
「ショコラは嬉しそうだねぇ」
「はい!! ショコラは護衛なのに修行の身で主様の御側にあまり居る事が出来ませんでしたから、これからはしっかり護衛出来ると思うと嬉しいのです~!!」
そういえばヴェリウスが、ショコラとマカロンに修行させてるって言ってたなぁ。『本来であれば護衛にはティラーが向いておりますが、奴らの序列ではミヤビ様が最初に名付けされたショコラが1位ですので……』とか言ってたような気がする。それでティラー姉さんは双子の護衛になったんだっけ。3人娘は侍女的なポジションだしね。
「しゃーねぇか。ショコラ、相手は人間だ。くれぐれも本気を出すんじゃねぇぞ。力のコントロールは出来るようになったんだろ?」
「はい!! ショコラは頑張りました。コントロールは完璧です~!! マカロンとは違って、ヴェリウス様にも褒めていただきました~」
「ヴェリウスが褒めたなら大丈夫そうだな。よし。ミヤビを頼んだぜ」
ロードは極力ルーベンスさんに会いたくないのか、ショコラに任せる事にしたらしい。
ルーベンスさんとアナさんにも話しておかないとなぁと思いながら、ジョリジョリする頬擦りに身を委ねたのだ。
「それにしても、精霊と仲が良いだけで王様になれるもんなの?? 王様って血筋とか重要なんでしょう?」
「精霊と関係があるって事ぁ国民の支持も高くなるし、神に近ぇ存在が国に居りゃあ祝福だなんだって国が安定すると考えてんだろうよ。となりゃあ、王の血筋よりゃ精霊をとった方が国の為にも良いだろ」
「なるほど。でもルーベンスさんには子供はいないし、作る気もないらしいよ?」
「関係ねぇよ。それなら現陛下の子や他の公爵家から養子をもらやぁ良いだけだしな」
「うぇぇ~。結局精霊関係なしに血筋に戻るんだ」
「重要なのは、精霊から親のように思われている宰相の家から王を出す事だからな」
国が安定するならそっちを優先するけど、それも表面上の事かぁ。そりゃあそうだよね。
「王様の地位って砂上の楼閣なんだね……」
「ルマンド王国は精霊だの神獣だのが王宮をうろうろしてっからな。普通はそんな事ねぇよ」
私のせいだった。
21
お気に入りに追加
2,516
あなたにおすすめの小説
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる