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ズボラライフ2 ~新章~
85.接近禁止命令
しおりを挟むゴゴゴゴ……
っていう擬音がぴったりのトモコの威圧感に、スタッフが漏らしそうなほど怯えてるナウ。
胸の事以外でトモコがここまで感情的になるなんて少し驚いたが、止められるのは私しかいないと大きく息を吸い込む。そして吐き出す。
「トモコの言うとおり帰ろうか!!」
もうスイーツどころじゃないし、グレさんには悪いけどこのままではグレさんにもトモコの怒りが向いてしまうだろう。
「うん。でもその前にこのお店潰そう?」
物理的にって顔してる。
笑いながら怖い事言うの止めてもらっていいですか。
「コラコラ。1人失礼な態度とったからって店ごと潰すのはやり過ぎだよ」
「やり過ぎじゃないよ~。だってみーちゃんに失礼な態度とったんだもん」
「トモコ、私は気にしてないからもう帰ろう?」
額から流れるおかしな汗が目に入って痛い。
早くここを離れないと……あ、スタッフがあまりの恐怖に気絶した。グレさんも神の威圧で震えだしてる。
「さ、店を出ますよ!」
トモコの腕を掴んで出口へ引っ張る。
「グレさん、せっかく誘ってくれたのにごめんね!! 私達帰るからっ」
部屋を出る前に震えて動けないグレさんに声をかけておく。トモコは「え~。潰そうよ~」と駄々っ子のように言っていたが、個室を出てすぐ深淵の森へと転移したのだ。
◇◇◇
「あの給仕だけでも仕留めてくればよかった~」
リビングのソファへ寝転んでいるトモコが不穏すぎる。
仕留めるって何!? 狩りでもしてるんですか!!
「もう忘れようよ。あんなのいつもの事だよ」
全てはこの平凡顔が悪いのだ。
「いつもの事?」
しまった! 収まりかけていたトモコの怒りを再点火してしまった。
「いや、これは言葉のあやというか~……ハハハ」
「みーちゃん!!」
「はいぃぃ!!」
「私はね、みーちゃんがいっちばん大切なんだよ!」
「う、うん。ありがとう……?」
「だ・か・ら! みーちゃんを馬鹿にされるのは許せないの!! みーちゃんが神王様とか関係なくね!!」
「トモコ……」
なんて友達想いなんだ!! やっぱりトモコは心友だ!!!
「みーちゃん、そろそろ存在感薄めるの止めようよ」
「え、薄めてないけど??」
そんなに存在感無い? そりゃあトモコみたいに美人でキラキラしてないし、ロードみたいに大きくて威圧感もないけど。普通の人間くらいの存在感はあると思ってたよ。なんかショック。
「それ無意識なの!?」
「これが私の通常ですが!?」
心友が容赦なく心を抉ってくる。泣いてもいいですか?
「も~。そんなところがみーちゃんらしいのかなぁ」
やれやれといわんばかりに呆れたような、笑いを堪えたような微妙な表情をされて複雑な心境に陥ったのは私の方だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「━━━……っなんてことを……」
「え……?」
「なんてことをしてくれたのっ!!!」
「ヒィッ も、申し訳ありません!! お許しくださいッ」
「許せですって!? 私が信頼を得るまでにどれ程苦労したか……っ それを、それを、貴方が水の泡にしたのよ!!」
「どうかお許しをっ」
「まさか父の店で足を掬われるなんてっ 貴方の処分は後程連絡致しますわ!! 誰かっ オーナーを呼びなさい!!」
「お嬢様!! お許し下さいッ 私は良かれと思って……っ」
「黙りなさい!! 後少しだったのに……っ 私が謝罪しなければならない事態に追い込まれるだなんて!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「みーちゃん。今日の事だけど、ドレスコードがある店ってグレちゃんから予め聞かされてなかったでしょう。それってグレちゃんが私達を陥れようとしてたって事だと思うの。だから、グレちゃんにはもう近付かない方がいいと思う」
「? グレさんが私達を陥れて何か得な事でもあるのかなぁ??」
「ん~。貴族が考えてる事はわかんないけど、平民をバカにして喜ぶような趣味でもあるんじゃないかな~?」
トモコはそう言うが、そもそも悪意のある者は私達の店に入れない。しかしグレさんは入店できているのだ。
「そうだとしても、今回の件でみーちゃんをグレちゃんに近付けるわけにはいかないと思ったよ。もし次にグレさんが来ても私が対応するからみーちゃんは姿を現さないでね」
トモコから、接近禁止命令が出てしまった。
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