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ズボラライフ2 ~新章~
70.ロードの神殿2
しおりを挟むいざ!! と門の前に立つ。
石造りの門の周りには美しく繊細な彫刻が掘られ、木造の門と相まってヨーロッパのお城の重厚で華美なデザインがお伽噺の中に入ってしまったかのような感覚を思い起こさせる。
ドキドキしながら手を伸ばすと、扉に触れる前にガコンと音がしてギギー……と軋みを上げながら扉が開いた。
まるでホラー映画の始まりのような現象と音に顔が引きつる。
「と、トモコ……これは一体、」
「大きな扉は基本自動で開くようになってるよ。雰囲気を損ねないよう開き方を工夫したんだ~」
「ほ、ほほぅ……」
トモコの説明に納得しながら中を見れば、何故か明かりもなく暗い。しかし勇気を出して一歩踏み出す。
すると蝋燭の明かりが手前から順に奥側へ点灯していき…………
ギィィィ……バタンッ と扉が閉まったのだ。
蝋燭に照らされた薄暗い廊下……ヨーロッパのお城のようなそこは蝋燭の明かりだけでは心許なく、気のせいか冷気が漂っているようでゾクッと悪寒が走った。
「ここ、本当に神殿……?」
ボソリ呟くが、誰からも返答はない。
「ちょっ 何か話してくれないかな!?」
皆の無言に怖くなってきて声を張り上げる。するとトモコが、
「私こういうの映画で見たことある……」
と低い声で話し始めた。
「ヨーロッパの城巡りが趣味の仲良し女子2人がね、パンフレットには載ってない古城に迷い込んだ所から話は始まるの……一人は怖いから帰ろうって止めてたんだけど、もう一人が写真だけでも撮りたいから近くまでは行ってみようって説得してね、まぁそれ位ならって、その古城に近付いたの」
怖い怖い!! いきなりこんな所でそんな話しないで!?
「写真を撮ろうとした所で突然、」
コツ……コツ……コツ━━……
「突然何!? てか足音聞こえるんですけどぉ!?」
聞こえてきた私達のではない足音に心臓がはねた。だって一本道の回廊なのに、人(神)の姿形もないんだから。
「みーちゃん落ち着いて! こういう時は大概予想だにしない方向から声をかけられるもんなんだよ!!」
「姿形もないのに!? もうホラーだよ! 今すぐ出ようよ!?」
トモコの怖い話のせいでビビって足がガクガクしているのだ。
そもそも何でここで怖い話するの!?
「……お待ちしておりました」
「「ぎゃああぁぁァァァァァーーーーーーー!!!!」」
予想だにしない方向から聞こえてきた声に、トモコと2人絶叫を上げる。
「何か聞こえたァァァァ!!!」
『ミヤビ様、落ち着いてください。ロードの精霊です』
「オバケェェェェっ……ん? 精霊?」
「ぎゃああァァァァァ!!!!」
トモコと抱き合い絶叫していたのだが、ヴェリウスの一言に首を傾げる。トモコはずっと絶叫している。可愛い顔が台無しだ。
『精霊です。この闇に身を溶け込ませる事が出来る者なのでしょう。ロードは闇の力も強い神なので』
「ぎゃああァァァァァ!!」
「そ、うなの? び、びっくりした……」
『トモコうるさいぞ。いい加減黙らんか』
未だに絶叫しているトモコをヴェリウスが嗜め、落ち着いてきた所で周りを見る。
「驚かせてしまい申し訳ございません。我々は闇に紛れて移動する事が多く……」
めちゃくちゃ顔色の悪い執事っぽい格好の男性が萎縮しているではないか。今にも倒れそうだ。
「こちらこそ驚いてすみません。このおバカが怖い話を始めるものだから。気にしないでください」
元凶の頬っぺたをつまみ上げながら許すと言えば、ロードの精霊らしい男性は真っ青な顔色のまま深々とお辞儀をして、「ロード様の元までご案内致します」と歩き出した。ヴェリウスもショコラも何事もなかったかのように歩き出すが、私とトモコの足は未だガクガクである。
「みーちゃん、あの人めちゃくちゃ顔色悪くない?」
「うん。私達を驚かせたから罰せられるって思ったんじゃないかな?」
「……でも、何か不自然な顔色の悪さじゃない?」
「んん??」
「あのね、さっきの怖い話の続きなんだけど…………古城に近付いた2人はね、顔色の悪い美形の男性に声をかけられ古城の中に案内されてね━━━……」
“殺されるんだ”
その男性……ドラキュラに。
何でその話を今したんだァァァァァ!!
もうそれじゃん!! 完全にあの人ドラキュラじゃん!!
チラッとのぞく牙もあの異様に白い肌もさぁ!!!! 見れば見るほどドラキュラじゃん!?
「逃げよう。今なら扉も見えてるし、すぐ外に出られる」
「みーちゃん……うん。逃げよう」
二人で頷き、自身の全速をもって駆け出す。
息を切らせながら先ほどの扉の前に立ち、扉が開くのを待つ。
「……………………開かないんだけどぉぉ!?」
「閉じ込められたんだよみーちゃん!!」
心臓がバクバクして変な汗がこめかみを流れる。
「そ、そうだ!! 私達には冷静なヴェリウスも空気クラッシャーのショコラもいるよ!! とにかく二人とはぐれないよう、に…………」
ヴェリウス達が歩いていた方を振り返れば、そこは暗闇と静寂に包まれ、誰の姿も見えなくなっていた。
「み、みーちゃん……はぐれちゃったよ」
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