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ズボラライフ2 ~新章~

64.何か違う

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「うぉ~!! すげぇっ オレ神獣様を間近で見たの初めてだ」
「バカ!! 失礼な事言うなッ 目を合わせると失礼になるから出来るだけ下を向け!!」
「師団長って本当に精霊様がつがいなんだなぁ」
「シッ 精霊様を見るんじゃねぇぞ。師団長に瞬殺される!!」
「師団長に殺されたくなけりゃ床を見つめろ!!」


復帰祝いのはずが、何故か張りつめた緊張感が場を支配している。
ロードは私を抱き上げ、まるで手負いの獣のように周りを威嚇し、ヴェリウスは騎士達を見下すように堂々と闊歩。そしてトモコはキョロキョロとしながら今にも何処かへ行ってしまいそうで、オリバーさんはそれを阻止しようとたまに注意するオカンになっている。

一応お祝いということでよそ行きのワンピースを着てきたのだが、それもロードにとっては気に入らなかったらしい。

「んな可愛くて綺麗な格好して来やがって。野郎共が全員オメェに惚れちまうだろうが!」

絶対に有り得ない事を呟いている。恥ずかしいからやめてほしい。大体、皆一斉に下を向いたままこちらを見てもいないのだ。惚れる以前の問題だろう。


それよりも、どうやら主役のアナさんはまだ来ていないのか姿が見えない。来ていたとしても出て来づらいのかもしれないが、そこは本当に申し訳ないと反省している。


◇◇◇


「━━━……で、どうしてこんな事になったんだ?」

で、じゃない。何故私だけ食堂から連れ出されてロードの私室で尋問されなくてはならないのか。大変不服である。
これではBとLを見学するという目的が達成できないじゃないか!
しかし無視すると強制送還されそうなので、不本意ながら渋々答えるしかないのだ。

「ヴェリウスとトモコが、アナさんがロードの側役になるなら私の側役と同じだから見極めないとって」
「見極めだぁ? アイツはオメェの正体さえ知らねぇんだぞ。なのに側役も何もねぇだろ」
「そうなの? てっきりロードが教えてるもんだと思ってた」

リンも仲間ができるって喜んでたし。

「んなわけあるか。ったく。………………そんな事よりも、オメェ可愛すぎじゃねぇか。見れば見るほど襲いたくなる「さぁ!! 早く食堂へ戻ろう!! トモコが暴走してもいけないしっ」」

ロードの視線に身の危険を感じ、早く、早くと転移をこわばる。

「チッ 仕方ねぇ。いいか、オメェは俺が抱き上げたままの参加だからな。もし俺から離れたら即家に帰るぞ」

大変不服である。しかし一応この男がここのトップなので渋々頷き、食堂へと戻ったのだ。




オリバーさんが精霊の魔法(?)で綺麗にしてくれた食堂は、ワントーン以上に明るくなっていて見違えるようにピカピカだ。
主役もどうやらやって来ており、騎士たちに囲まれまるでアイドルさながらの様子に、変に目立たなくてラッキー! 丁度良い所に来た。と一人頷いていた。

「神獣様、その節は大変なご無礼、申し訳ございませんでした」

その中心では、アナさんがヴェリウスに跪き、謝罪しているなどとは知らずに。

『フンッ あれは我等に非があったのだ。謝罪を受ける謂われはない』
「しかし……ッ」
「レブーク殿と言われましたかな?」
「は、はい」
「神獣様もこう仰っておいでですし、貴方は本日の主役。お互い水に流し、今を楽しみましょう」
「っ……私などには勿体無き御言葉です」
『オリバーよ。さっさとそやつを立ち上がらせてパーティーを始めさせよ』
「ハッ。さぁレブーク殿、顔をお上げになって宴を始めましょう」

トモコから後々こんな会話があったと知らされたのだが、一人蚊帳の外であった。


「ロード、私ちゃんと差し入れ考えて来たから出して良い?」

食堂の料理らしきモノは給食のように大鍋に入って用意されているようなのだが、正直期待できるような匂いは漂ってこない。なので、今回は天空神殿のシェフ達に色々作ってもらったのだ。

「今回だけは特別だぞ」

可愛がっている部下の為にロードも許可を出してくれたし、騎士達も主役を囲んでいて誰もこっちを見ていないので丁度良い。とこの場に料理の出現を願う。

勿論ビュッフェ形式で並べられた料理の数々は、腹ペコ騎士達の鼻を刺激し、主役に注目していた意識を一気に料理へと傾けた。

「ぅわ!? なんかすっげぇ旨そうな香りがする!!」
「おいっ見ろよ!! さっきまであんなのなかったのにいつの間に!?」
「んだよこの豪勢な料理達は!!!?」
「よ、涎がとらまない……っ」

騒ぎ出した騎士達にロードが声をかける。

「オメェらよく聞け!! 神獣様と俺のつがいとその友人達からの差し入れだとよ!! 沢山あるから取り合うんじゃねぇぞ!!」

その言葉に「おお!!!!」と色めき立つ騎士達は、今か今かと料理に目を奪われて、正に心ここにあらずの状態であった。

皆から一斉に言われた「ありがとうございます!!!!」は鼓膜が破れるかと思う程煩かったが、嬉しそうな顔を見ると差し入れした甲斐があったとニヤついてしまう。

そして、ロードのお許しが出て始まった料理争奪戦は、さすが鍛え上げられた騎士団だけあり凄まじい気迫と筋肉のぶつかり合いで……若干、いや、かなり引いた。あのトモコですら引く位だった。

「間近でBL見れると思ったのに、なんか違う……」

心友の呟きに同意し頷けば、ロードに胡乱な目を向けられた。

「っんだこれ!? うっま!!」
「見たことも食った事もねぇ料理だ!!」
「神々の料理ってこんなにうめぇのかよ!!」
「それ俺んだろ!! 横取りすんなよ!!!」
「はぁ!? こりゃオレが狙ってたんだよ!!」

私は大食い選手権を見に来たわけじゃない。アハハ、ウフフのイチャイチャを見に来たというのに、皆口一杯に食べ物を詰めて、かつ大皿に山のように料理を盛っている。


「師団長、つがい様に謝罪とお礼をお伝えしたいのですが、宜しいでしょうか」

そんな血で血を洗う争奪戦の最中やって来たのは、本日の主役、アナさんであった。

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