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ズボラライフ2 ~新章~
閑話 ~もしも雅が20才の時に転生していたら1~
しおりを挟む※主人公が20才の時に異世界に転生したらというif話です。
ですので、主人公は引きこもりでも人間不振でもありませんし、ロードはまだオッサンでも師団長でもない若者です。
本編とは全く異なったストーリーとなりますので、興味のある方はぜひご覧下さい。
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ロード視点
神王の加護を無くした世界で魔素が尽きるのはもはや時間の問題だ。人々は病に倒れ植物は枯れて色を無くし、絶望が世界を包む。生きる事に希望を持つ者などこの世にいるのだろうか。後数十年もすれば世界は崩壊するというのに。
「あ゛? “深淵の森”に植物が繁ってるだぁ?」
「ああ。実際“繁っている”まではいかないにしても、新芽が生えていたり、花が咲いていたりと考えられない事が起きてるらしい」
「マジかよ……それで、第3師団に調査しろってか」
「先ずは少人数の先行部隊を組んで調査を行ってから、大々的に調査団を派遣するそうだ」
「その先行部隊に選ばれたのが俺らかよ」
“深淵の森”。ルマンド王国最大の河川を跨ぐようにして在る事がその由来となった森。昔は木々も繁り、実りのある森だったらしいが、今は枯れ果て白骨のような木々と岩ばかりの寂れた場所だ。
「枯れ木と岩しかねぇ場所に調査ねぇ……」
「まぁそう言うなって。本来大隊長であるお前が調査に行く事はないが、元気な奴が少ないからな」
「元気いっぱいで悪かったな!」
「ハハッ というわけで、1週間後に出発だからな。準備しとけよ」
「へいへい。テメェも当日つがいと離れたくねぇとかバカな事言い出すんじゃねぇぞ」
「それは離れたくないに決まってるだろ。そうだ! 最近アナシスタが騎士団に入りたいって言い出してな! 俺の息子可愛すぎだろ!! 素振りとか天才かって位見事なんだよ!!」
「あーうるせぇ」
俺の名前はロード・ディーク・ロヴィンゴッドウェル(22)。孤児から騎士になり、貴族の養子になって大隊長まで上り詰めた人族だ。俺の義父は騎士団の第3師団長で、貴族のボンボン共は親父のコネで成り上がった平民だとバカにしてくるが、コネで騎士団に入ってきたのはテメェらだとぶちのめしてやりてぇ。あの親父がいくら息子であったとしても実力もねぇ奴を出世させるわけねぇだろ。
そう確信できるぐらいにゃ俺ぁ自分の腕っぷしに自信がある。
そんで、今俺に息子自慢をしていたのはトーイ・ヒューバート・レブーク(22)。同期の騎士で生粋の貴族だが、何でか昔からウマがあってつるんでる悪友だ。つがいとは16の頃出会って、5歳になる子供が1人居る。人族だから勿論つがい狂いで何かっつーとつがいと息子自慢をしてくる阿保だ。ちなみにまだ息子の才能がどうとか喋り続けてやがる。うるせぇ。
「やっぱり俺に憧れてんのかなぁ!! ほら、息子は父親の背中を見て育つって言うだろっ」
「うるせぇ!! いい加減聞き飽きたっつってんだろ!」
「まぁそういうなって!! っ……ゴホッ ゴホッ」
「おい、大丈夫か」
「ゴホッ やべぇっ 息子の話に興奮してむせた。悪い」
「……バカだろオメェ」
暫咳き込んだトーイは、ニカッと笑って「よしっ 息子自慢も終わったし仕事するか!」と去って行った。
……多分トーイは病に侵されている。顔色もあまり良くねぇし、最近咳き込む事も増えた。
いずれ訪れる事だと無理矢理納得しても、気持ちは追い付かねぇもんだ。どうにかしてぇと心が叫ぶ。
━━━ 深淵の森に植物が繁っているらしい ━━━……
さっきの話を思い出す。もしかしたら、“深淵の森”に何か手だてがあるかもしれねぇ。
焦りと共に時は過ぎ、調査日がやって来た。
「大隊長っ 見えました!! “深淵の森”です!!」
馬を走らせること数刻。白く枯れた木々の森が目視出来る所までやって来た。
そのまま森の入り口まで馬をつければ、やはり枯れた木々しかないように見える。
「どこに植物が繁ってんだよ」
馬を降り、出来るだけ崩れそうにない枯れ木に綱をかけると馬番に任せ森に近づいた。
「入り口周辺じゃない事は確かだな……。森の中心部まで行って見るしかないようだ」
隣にやってきたトーイに頷き、5人の部下を集める。残り5人は森の外に待機だ。
「行くぞ」
こうして深淵の森に踏み込んだんだが……やっぱり枯れ木しかねぇじゃねぇか。
四半刻程歩いてるが変わらねぇ景色にうんざりする。
「……ロードっ」
トーイの声に何だよと振り返れば、奴はしゃがみこんでいやがった。
「おい、何して……」
「見ろ。草だ。こっちには苔がついてる」
「あ゛ぁ゛!?」
トーイの手元を見れば本当に、白く枯れた木々の根元に久しく見る事の無かった緑が見えたのだ。
「奥へ進もう」
相棒の言葉にうなずき、森の奥へ奥へと進んで行けば、いつの間にか青々と葉っぱを繁らせた木々が行くてを拒むように密集していやがった。
「んだこりゃ……」
「……神、域だ……。ロード、ここに新たな神が生まれたんだ!!」
「はぁ? 神王もいねぇ魔素もねぇ世界に新たな神なんぞ生まれるかよ」
「だが、そう考えなければ説明がつかないだろ!」
「そりゃ、まぁそうだがよ……」
滅多にねぇ語気を強めるトーイに眉をしかめる。
「これ以上近付くわけにはいかない!! 引き返すぞっ」
トーイはそう言うが、俺はこの奥に行かねぇといけねぇ気がしてる。
深淵の森にやってきてからずっと、この緑が生い茂る奥の方角に惹き付けられてる自分がいる。
「いや、引き返すのは部下だけで良い。俺ぁ進むぜ」
「!? ロードっ 神域は人間が立ち入って良い場所じゃない!! 神の怒りに触れたら……っ」
「かまやしねぇよ。世界が崩壊しかけてる時に神だの人間だのくだらねぇ事言ってんじゃねぇよ」
「ロード!!」
「びびってんなら部下共と帰りゃいい。俺ぁ一人でも行く」
そう言い置いて密集する木々の中へと入れば、草木とは違う甘い香りが鼻を刺激した。
「花か……?」
嗅いだこともねぇ良い匂いだ。
その匂いは森の奥から香ってきているように感じた。
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「異世界に来てからはや20日か……お父さんもお母さんも姉さんもトモコも心配してるだろうなぁ。もう戻れないのかなぁ……」
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